強く、たくましく、美しく、そしてデカく

半井ユキヤ
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 先述の通り、魚取沼系鉄魚『ふかひれ』を飼っている。フナや金魚によく似ていて、でもなんかフナとも金魚ともちょっと違う不思議な魚。私は「ふかひれちゃん」「お嬢ちゃん」と呼んでいる。

 鉄魚の飼育方法は金魚とほぼ同じである。給餌はもちろんのこと、ときどき水槽やフィルターを掃除して、水替えをして、夏場は水温が上がりすぎないように専用ファンで風を送る。さほどの手間はない。雑に生きる私でもじゅうぶん管理できるくらいだ。

 しかしそれにしたって、あまり大きくならないな、と思っていた。

 ヒレが長いというのが特徴的な鉄魚であるが、エサをホイホイ与えすぎると体ばかりが大きくなってヒレがあまり育たないのだという。なので、ヒラヒラのヒレに憧れて飼い始めた鉄魚、せっかくならヒレをヒラヒラさせたい――そう考えて、以前飼っていた金魚よりもやや控えめの量で給餌していた。あまり多く与えても、その分排出されるものも多くなり、水が汚れるのが早くなってしまうというのもあった。水槽管理はさほど難しくはない、が、一応いろいろ考えてやらなければならない。

 それに疑問を持ち始めたのは、最近である。

 『ふかひれ』がうちに来てから一年九ヶ月、彼女は一回りくらいしか大きくなっていない。

 検索してみると、彼女と同い年であろう鉄魚は結構デカい。ヒレを含めなくても十センチ以上ある。それに比べて『ふかひれ』はヒレを含めても十センチもない。手のひらサイズでかわいい。いや、そうではなくて。

 もう少し、エサを多くしてもいいのではないか?

 何かに目覚めたのか、近頃『ふかひれ』はエサに敏感になり、よく食べるようになった。

 以前はぶっちゃけ結構どんくさく、水槽の縁を指先で叩いて「ごはんですよ」と知らせてようやく気付き、しかも食べ方も下手クソだった。浮いている乾燥赤虫を食べようと水面で口をぱくぱくさせるのだが、そのときにできてしまう気泡が邪魔になってなかなか食べられず、不器用な子だなと思っていた。

 しかしここしばらくは私が水槽に近付くと期待して水面近くに上がってくるようになり、食べ方も少し上手になった。どうしたお嬢ちゃん、成長期か?

 よかろう、ならば増量だ。でも水汚れるから様子見ながらちょっとだけな。

 鉄魚の寿命は平均十年、最大で三十~四十センチにもなるという。

 水槽は六十センチ、そこまでクソデカくならなくてもいいが、しかし、もうちょっと大きくなっていただきたい――そう願いつつ、私は乾燥赤虫を五十パーセントほど増量した。元々たいした量ではないけれども、大きな一歩であった。

@nakyukya
まったくここはしずかなインターネッツでつね