ししとうの本気

半井ユキヤ
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 今年の畑には、ししとうを植えた。超有名飲料メーカーがとても力を入れて開発した苗であるおかげか、雑に育ててもすくすく育ち、ほぼ毎日のように収穫できるまでになった。

 そう、順調も順調、超順調なのである。

 調子がいいと、一日に十本くらい獲れる。

 これは全くの想定外であった。昨年育てたオクラなんかは、多くて一日三、四本ぐらいだったのに、ししとうはどんどん花を咲かせてどんどん実を結んでいる。そんなにか? そんなにもか? これがメーカーの言う「本気」というやつなのか?

 そもそも、何故ししとうを植えたのか、というと、私がししとうが好きだからである。数ヶ月に一度行く食べ放題の焼肉屋では三本入りの小鉢を二回は注文して網の隅でじっくり焼いてニヤニヤしているし、天ぷらの盛り合わせや天丼にその姿があると嬉しくなる。ときどき辛いのに当たるものの、実質細長くて丸ごとイケるピーマンのようなものだ。こんなに気軽な野菜なのだから、好きに決まっている。ししとうおいしい!

 しかし、だ。

 そんな、毎日獲れなくても……と思う。何しろうちはふたり暮らしなのだ。週に二回ぐらいのペースでいい。そうは思っても、ししとうは容赦なくどんどん実る。このままでは、シーズンが終わるまでノンストップししとうなのではないか。いくら本気だからって、そんな本気出さんでも。六割くらいでいいのに。

 とはいえ、好きなものが豊作なのはそれなりに嬉しいもので。

 私は今日も台所の片隅でポリポリししとうを囓り、「うめえな」と呟くのだった。

@nakyukya
まったくここはしずかなインターネッツでつね