バースデイ・イン・ブルー

半井ユキヤ
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 昨日まで晴れていたのに朝から雨。桜が咲くこの時期に雨。ちょっぴり憂鬱な感じ

 というわけでもなかった。今日は誕生日。注文してあったケーキが食べられる。シンプルな、いちごと生クリームのケーキ。いちごの赤にクリームの白、すなわち紅白。めでたさいっぱいである。私はウキウキであった。

 配偶者からの贈り物のこともある。今年はフライングもなく、当日まで全く秘されていた。一体何を繰り出してくるのだろうか? 私はワクワクであった。

 しかし雨が降っているせいで原付は使えない。危険だから雨の日は乗るなと言われているからだ。それゆえにケーキの受け取りには行けない。なので、配偶者が出勤する直前に「特典のピザかジュースは好きな方選んでいいから」と伝票を託した。週間天気予報で今日の天気は雨だろうことは予測しており、仕事帰りに受け取りに行ってもらうかもしれないとあらかじめ伝えてはいたのだが、配偶者はこのキャンセル不可クエストを快く受諾してくれた。これで大丈夫である。大丈夫かな? 忘れないかな? 私はちょっとドキドキであった。

 そんな心境で日中を過ごし、夕方「今から帰るよ」と連絡を受け。私は夕食を作った。別段特別なメニューではない。昨日食べたいと思ったからカレーにした。

 夕食を済ませて居間の定位置につくと、配偶者は紙袋を持ってきた。

「ギフトをお楽しみ下さい」

 Amazonでギフト仕様にするとついてくるカードに書かれている文言である。以前これを見てから気に入っているようで、彼は私に何かをくれるときにたびたび口にする。彼にとっては何かが面白いらしい。

 紙袋の中には、

 ラッピングされた包みが三つ入っていた。同じ大きさのものが二つ、小さいものが一つ。

「三つもありますが」

「どっちか好きな方選び。片方は俺が使う」

「この、一つ小さいのは」

「ケース」

「ケース」

「ドラゴンケースに入れてね!」

「ロートこどもソフト……」

 箱の形状からして目薬ではなさそうだが。

 開封してみると、

 ボールペンが入っていた。何やら高級そうである。なるほど今年はそうきたか。

「太軸と細軸やねん。芯とか中身は一緒。使いやすい方選び」

「じゃあ、太い方を」

「ほう?」

「少し重めの方が安定しやすくて好きなんですよ」

 そんなわけで、太軸の方をいただいた。

 ケースは本革。まだ新しくて固いのと、ペンが太いのもあって、ちょっと出し入れが大変だ。これはバッグに入れて持ち歩けばいいのかな。でも家に置いておいた方が確実に使用頻度は高い。迷う。

 しかし、何でまた高級ボールペンなのだろう? 私が「アホほど」ペンを持っていることは知っているはずなのに。

 試し書きをしたり、替え芯はどうかなと分解してみたりしていると、彼は言った。

「青やぞかっこいいやろ」

 すとん、と丁度いい重さのものが、心の丁度いい窪みに落ちた。

 私が好きな色を、彼は知っている。

 形違いのお揃いの青色。

 少し笑った。

 その後、ケーキを食べた。

 配偶者が選んだ予約特典は、ぶどう味のスパークリングドリンクだった。祝いの席に相応しいチョイスだ。

 ケーキと一緒にいただく。

   ハッピーバースデイわたくし!

@nakyukya
まったくここはしずかなインターネッツでつね