ドールってすごく○○っぽいなって話し(後編)

noi7025
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公開:2024/10/1

後編だよ。前編から読んでね。

https://sizu.me/noi7025/posts/ath0k27m9d6u

2024.10.04

誤字脱字修正とちょっとだけ文章追加。

プラスチックと布その2

いやまず、オベロンとか関係なくもはや人形として綺麗じゃない。綺麗なのはあくまで既にメイク済みで完成している状態だったウィッグを除いたヘッド部分だけ。そりゃそうだ。腕捻じれてる(触っている間に人間としてはあり得ない方向に曲がっているためそう見える)し、服ズレてるし、髪の毛暴れてるし、翅もやっぱり暴れてるし、猫背だし。

さっきなんとか立たせたと書いたが、これは立っているのではなく倒れていないだけだ。スタンドに支えられている状態になっただけ。これは立っているわけではない。

……自分の浅はかさを曝け出すようで恥ずかしいが、自戒の意味と今後キャラグッズとしてドールの購入を考えている人に釘をさす形でもう一度はっきり言っておくが、ドールとは完成品ではない。メイク済みのキャラドールを購入しあなたの元に届くのは、完成してすぐ食べられる料理ではなく、下処理された材料だ。最後の調理はあなた自身がしないといけないし、それをなによりあなたが納得する形に仕上げなければこれはデザインがあなたのよく知るキャラと同じただの人形か、下手するとプラスチックと布の塊でしかない。

「キャラクターグッズ」としての“ドール”

ドールの前で項垂れている当時の私のことはいったん置いておいて、あくまでキャラクターのグッズ、というジャンル分けでのドールについて、実際に手に取った上での主観と意見をまとめておきたい。あくまで個人の定義と感想に近いものであるということを念頭に置いて読んで欲しい。

昨今、キャラクターグッズというのはもはや何が何だかわからないレベルにまで多様性に満ちている。キャラクターの形をしているものならともかく、あくまでそのイメージとしてデザインされたもの、もっと概念的な物だったり、キャラクターが設定上使っているものや、なんならイメージ香水とかお酒とか形態をガラッと変えたモノまで。 そんな「キャラクターグッズ」すべてに適用する定義なんてものはないのかもしれないが、あくまでそれを手に取り、飾るなり、使うなり、または食べるなりする人間個人として定義するのなら、それはこの物体にあなた自身が思い描く「キャラクター」の息遣いを感じられるか否か、ということになるのだろう。それを感じられればあなたは、キャラクターグッズとしてそれを消費するだろうし、感じられ無くなればそこにある物質として消費することになる、例えば紙、布、アクリル、書類を挟むクリアファイル、食品、としてだ。

私が思うキャラクターの姿を模したドールの異質さは、この「キャラクターにする」という段階が物理的な作業として存在すること。心理的な問題だけではない、工程として存在する。もちろん、箱に入れたまま置いておくのも自由だし、別に何もしなくてもいい。ぶっちゃけこれは私が感じただけでドールに限った話ではないだろう。 ただ、これはグッズを触っているというより正直二次創作してる感覚に近いなと感じた。好きなキャラクターのイラストを描いていて「うわーん!!○○はこんなブサイクじゃないもーん!」って叫んでる時と同じと言えば伝わるだろうか。あるいは、じゃあ自分がキャラに求めるものってなんだろう、この人物を通して何を感じているのだろうと、思考の鍋をぐるぐるかき混ぜている時だろうか。 向き合うのはモノとしての鑑賞ではなく、自分の定義と感情。キャラのこんなところを見たい!の前にまず、コレを自分の思い描く、何より自分自身が納得できる彼に仕立て上げないといけない。話はそれからだ。 そして、これをオベロンのキャラクターグッズとして手に取った以上は不器用だろうが初心者だろうが、やるしかない。別に私はそんな真面目な人間ではないので、作ってくれた人ガーとか、買った責任ガーとかそんな綺麗な理由じゃない。単なるプライドである。 というわけで、項垂れてる場合じゃねぇと無理矢理自分を奮い立たせた当時の私と思いを同じくしたところで話を戻そう。

だって「妖精王」だもの

まず、服をちゃんと着せること。そこからやることにした。仕方がないのでもう一度ヘッドを外して、服を整えた。そしてこの時点で靴を履かせて、足をまっすぐに。「真っすぐ立ってるんじゃなくて立ち絵みたいにカッコよく立たせたいよ~!!」と自分の中の面倒なオタクが涙目で喚きだすのでしょうがないから実際の立ち絵を確認し、それでもうまくできなくて結局自分で立ってみて、足をどれくらい前に出すのか、後ろにするのか参考にしたりしていた。……深夜に私は一体何をしているんだろうか。

そしてウィッグと翅だが、まずヘッドを取り付ける前に髪のどの分け目で翅の前と後ろ側にわけるのか決めておいて、それに合わせてくしで軽くウィッグを整えておく。そしてその位置を参考に、翅を隙間に入れていくイメージで取り付ける。これでかなりマシになる。ウィッグで翅をしっかり固定してあげれば、翅もあまり暴れなくなる。(ただしこれは顔を曲げるポーズをさせたい場合、あまり意味がない)それでもそこからウィッグを納得のいく形に仕上げるのに結構な時間を要した。だって髪の毛が跳ねてる妖精王とかあり得ないから。

そして、もう一度服の全体を整える。特に、スタンドで支える部分はシワがないように伸ばしてしっかりドールを挟めるようにしておく。とにかくコイツはマジで面倒くさい服を着ている(2回目)。なんでそんなに面倒な服着てるんだよ!!妖精王だからだよ!!(2回目) スタンドで立たせるときはまず、土台に立たせたときどこをスタンドで支えて立たせるのかちゃんと確認すること。靴を履かせて飾るなら靴を履かせた状態で。そしてスタンドを少しだけ長く高めに伸ばした上で、ドールをスタンドで挟み、上から足を土台に着地させるイメージでスタンドを少しずつ背面側に曲げていく。するとバランスを取りやすい。あと靴も脱げにくい。あと、とにかく安定させたいなら腰部分は動かさず真っすぐな方がバランスはとりやすい。頭も曲げずに真っすぐに。

ちなみにドール用のスタンドは単体でも色んな種類のものが売っているらしいので、サイズが合えば別のものも使えるらしい。付属スタンドを使わないで自分で合うものを買ってしまうのも一つの手。私は今のところコイツ(付属スタンド)とわかりあう方向性でやっていこうと思う。

追記10/05

公式から着せ付けガイドの記事が出ました。普通に私のやり方間違ってるので、(いないと思うけど)真似しないようにね。

無事にしっかり「立った」ら、腕や足の位置、マントなどを整えていく。マントは白い布の部分に針金が入っており、自由に曲げて好きな形にすることができるようになっている。腕の動きでマントの内側が見えるような動きや、風に揺れるような動きなどがつくれる。すごい。これ考えた人天才かもしれない。 その他諸々細かいところをあーでもないこーでもないと文句を言いながら手を入れていく。

「いや、オベロンの髪はくるん!じゃなくてス……とんっ。って感じなんだよ、違うんだよ……」「ポーズが堅苦しい……もっとこうふわっとしていて、でもちょっと威厳もある感じ……」「アー!!冠がずれた!!」「……実際のマントってどうやって曲がるの?」「立ち絵ではこう見えてるけど、逆側から見るとどうするべきなんだ?」「違う!!なんかわかんないけど違う!!!」「……襟曲がってるな」「目線ちょっと左に寄せとくべきだった……」「前髪上過ぎ!!眉毛にかかるくらいで、でも眉毛が髪の間から見えなきゃダメ!!」「痛ッッッ!!(冠が指に刺さる)」「自分の髪の毛もまともに触れないくせに、妖精王の髪整えられる訳なくない?」「この服マジで何なの?」「あッ……(靴脱げた)」「アアアアア!!!(ドールが倒れる音)」「だから痛いって!!(冠が指に刺さる)」 というもはや何をしているのか自分でもわからない戦いの末、なんとかこのドールがオベロンと認められる形にはした。でも未だになんか違う……なんか違う……と思いながら結局ずっと触っている。コイツのせいで最近寝不足である。

色移り問題

ドールはずっと飾らないで必ず片付けて!とハルモニアのサイトにも書いてあるのだが、その最大の理由はこの色移りである。色移りとは、ドールに濃い色のものを長時間密着させた状態にするとドール素体にその色が移って取れなくなってしまう現象のことである。

この色移りなのだが最初に知った時は「それの何が問題なの?」と思った。というか今でもあんまりその感情は変わっていない。これは私が特に他の服を着せる予定がないため、別に色が移ろうがなんだろうが服で見えない部分はどうでもいいと思っているからである。ただ進んで色移りさせたいわけでもあるまいし、結局ポーズや組み立てに100%納得がいっているわけではないので1日くらい飾って、片づけてまた飾って、と意識して放置しないようにしていた。

問題はこの長時間の定義だ。数時間とかのスパンなのか、それとも1か月くらい放置していたら大変なことになりますよ!という意味なのかがわからない。調べたのだが、素材や色、また温度や湿度、かかる圧力などでまちまちらしく結局、こうしていたら絶対移らない!というのもないし、こうやったら絶対に移る!みたいなのもないらしい。だからこそドールを扱う人は誰もがぶつかる問題でもあるようだ。中には色移りはあまり気にしないで、長く飾るというスタンスの人も居た。

ただこのオベロンの衣装の場合、ドール本体に直接触れるのがほとんど白いタイツやワンピース、そしてウィッグも色が薄めなので比較的リスクは低めらしく、今のところ手もとにあるものも色移りは特にしていない。 ……と、言いたいところなのだが実は既に色移りしている。

足である。特にかかとを中心にうっすらと青くなっている。当然、靴から移ったものである。タイツなしで直接履かせたことはないので、タイツを貫通して色移りしたことになる。基本靴を履かせて飾っていたのと、恐らくだが履かせるときに結構強めに扱っていた(だって脱げるから)のが原因だと思われる。足の裏側にしか移っていないので、立たせて飾っているときの圧力も一因だろう。かなりよく見ないと気づかないレベルなのでそこまで気にしていないのだが、絶対に色移りしたくない!(そんな人がこれを読むかどうかはともかく)という人のために一応書いておく。他は特に変わったところはない。あくまで私の目で見てという話で、見る人が見たらここも移ってますよと言われそうな気もする。

○○っぽい

遅すぎる本題。飾った感想。すごい。存在感が凄い。そこに“居る”感が凄い。ていうかやっぱデケェ~。通常サイズのアクスタとかと並べると巨人に見える。 それから、ポーズはもちろん見る角度、視線によって別物かと思うくらい表情が変わる。イラストより絶対的にモノらしいのに、何よりも生き生きしている。限りなく死んでいるのに、限りなく生きている。

……なんか死体っぽい。死んでいるのに今にも動き出しそうなとこが。あと、倒れるとコロンとかストンとかじゃなくてゴンッ!とかドンッ!て音するし。良い意味で死体っぽい、いや普通に悪い意味でも死体っぽいと思うし、キャラ次第な気もするけど苦手な人は確実に居ると思う。

コレを彼に仕立てあげる、なんとか彼と頭が認識できるようにする、と言ったが、この感覚もかなりぼんやりしていて、どこからモノでどこからキャラになってるのかはっきりしていない。クリアケースの中に飾ってるのに、見る瞬間によってオベロンに見えたり見えなかったりする。目線が合ってるんだか、合ってないんだかも正直よくわからない。写真で撮ってみると結構普通に「わ~きれ~」って感じなんだが、なぜか生活の一部にいると途端になんだかふわふわした存在になる。

これがまぁ~何とも不思議な感覚で、ドールが持つなにかのおかげなのか、それとも『オベロン』というキャラ要素が混じったせいで私の脳が謎の錯覚を起こしているのかはわからない。(恐らく後者)わからないのだが、なんかとんでもねぇもんに手を出しちゃったな~感だけがじんわりある。

これだと夏の夜は夏の夜でも、怪談になってしまいそうだ。決して怖い話ではないのである。特にコレを怖いとは思ってない。死体っぽいとか言っといて何言ってんだと思われるかもしれないが、怖くはない。怖くはないのだが……「これはオベロンか?」と正面から聞かれると「限りなくオベロンに近い何か」としか答えられない。このドールをキャラグッズとして消費するのであれば、私にとっては『オベロン』というキャラクターの定義を問いかけなおす存在になるだろう。 怖いのはドールではなく、キャラクターという限りなくあやふやな何かをいつかどこかに落として、無くしたことすら忘れ去ってしまうのではないかという不安とたしかな予感だけである。

なんかそれらしいまとめ

というわけで謎の距離感でドールとは付き合い続けるしかなさそうだ。えぇ~続くのかこの生活……あとドールに関しては本当に素人なので、これ間違ってるよ!って時は教えてほしい。また彼きっかけで今まででは考えもしなかった方向に世界が広がって気持ちわr…………いやワクワクしているのだが、ごめん嘘こればっかりは気持ち悪い。まぁ、どうにかこうにかやっていくしかない。

ハルモニアでFateシリーズのキャラが扱われるのはこれが初めて。主に羽海野先生方面からのご縁、ということで私個人の話を除いても、彼をきっかけにたしかに昨日とは違う明日に世界が広がっていくのは変わらないらしい。今日もまたこうして、現実は更新されていく。皮肉なもんである。プラスチックと人形とキャラクター、その境界線のありもしない果てを目指して、私も進むしかないらしい。

正直よくもまぁ、こんなわかりやすい消費のされ方をする形になったものだなと思う。持ち手のされるがままの物体でありながら、まるで意志を持っているかのような何か。どう感じるか、どう考えるかはともかく、文字通りそのガラス玉の瞳に私たちの姿が確かに映っているのは事実である。

……あなたは一体、彼に何を求めるのだろうか?

なんちゃって。ちょっとロマンチストが過ぎるな。

それでも私は、夜中に妖精みたいにこっそり動いててくんないかな、と思いながら今日も眠っている。だからホラーじゃん。

服着せて「妖精王」にしようとしたらあんなに大変だったのに脱がせたら、頭ついた瞬間『オベロン』になったの「生まれながらにして死体のよう」とはこういう意味なのかと全てに納得しそうになったのでやめてほしい。

@noi7025
gerohakihaki