妙なものを食べてみる (メキシカン・チャレンジ編)

洗われるたこ
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公開:2025/8/29

初めに断わっておくと、タイトルにある「妙なもの」とは、メキシコ料理そのものではなくて 明確にサボテンのことを示している。


打ち合わせで外出していた水曜日、たまたま近くで働いていた友人を誘って夕食を取りにいくことになった。「鳥貴族とかでいいのでは」と話していたが、おれは無性にタコスが食べたく、付近のメキシコ料理屋を捜索。浜松町駅から少し歩いた所にちょっと大きめのターゲットを発見した。

ちなみに今回登場するタコスは正統派のものであり、おれが以前に作ったスナックとは別物の手間が掛かった逸品だ。

「CIELITO LINDO BAR AND GRILL」

ラテンフードだと エルトリート (チェーンのメキシカンファミリーレストラン) やタコベル (ファストタコス店) なんかが好きで 見掛けると半自動的に吸い寄せられてしまうのだけれど、ちゃんとした大人用のレストランに入るのは初めてかもしれなかった。

店内は派手な柄の骸骨やお面が飾られていて映画『リメンバー・ミー』の世界観。キャパシティーも結構ありそうで、予約なしで訪れたにもかかわらず 広々としたソファー席に通してもらえた。

メニューを開くが、何が何やらわからない。とにかく知らないものにアタックしてみる方針でいく。

…と、ワインリストならぬテキーラリストを眺めていると、見慣れない文字列を発見。飲み方 (割り方, ソーダとかストレートとか) の種類の羅列の最後に『バンデラ代として500円頂戴します』というようなことが書かれている。

"バンデラ" とは?

その500円が何の費用なのか見当もつかない。リストを捲ってみても特に解説もなさそうだ。一般常識なのだろうか。おれは昔バーでアルバイトしていたことがあるのだけれど、これはちょっとわからないぞ。

手元のスマートフォンで『バンデラ』を検索。どうやら "旗" を意味する言葉らしい。つまり、メキシコの国旗と同じ色の飲み方ということ。…余計に謎が深まっていく。

緑 = レモンやライムジュース

白 = テキーラ

赤 = サングリータ

「サングリータがそもそも何なんだよ」という話であるが、これは "血" を表す "sangre (サングレ)" から派生した"小さな血" と訳せる飲み物らしい。テキーラを飲む際のチェイサー的な役割の赤いドリンクで、トマトジュース、オレンジジュース、ライム、チリ等を混ぜて作るみたいだ。吸血鬼も仰天のパンチのありそうなカクテルじゃないか。

ショットグラスに注がれた3種の液体を、緑 (ライムジュース) → 白 (テキーラ) → 赤 (ヴァンパイアドリンク) の順番で一気に飲み干すのが作法とのこと。なんだか少しゲーム性を感じる。『クッキングパパ』に出てくる「サラミに大量の塩とレモンをのせたものを口に含み、ウィスキーで流し込む」という死の乾杯のことを思い出した。

ともあれ、まずは前菜から火を点けていこう。

[左 - ポークチチャロン:660円]

アメリカのYoutuberの間で流行っている謎のスナック。正体は塩味を付けた豚の皮の素揚げ。ばりばりとした強い食感。

[右 - フレッシュワカモレ (Sサイズ):880円]

これは見たことがある。トウモロコシのチップスに刻んだトマトとタマネギ、アボカドディップの組み合わせ。

(サボテンのサラダというのがラインナップに載っており、非常に興味を惹かれていたのだが 欠品中とのことで残念。次回トライしたい)

[マイタイ:1,100円]

友人が頼んだラム酒ベースにパインとオレンジを加えたトロピカルカクテル。刺せるだけのものが全部突き刺さっている。そして輝くドレンチェリー。

(背後にぼんやり写っているのはタコスのアレンジ用ソースとレモンの切り身。赤はオーロラソースに近く、緑のほうは ぱきっと辛い唐辛子味。容器がモアイ像みたいな素材 (おそらくは溶岩) でできていて大迫力だった)

[ハマイカ:825円]

赤色が鮮やかなハイビスカスティー。甘いジュースだと思って飲んだから無糖のシンプル茶でびっくりした。爽やかな酸味があって食事ともよく合う。

[タコス・コチニータ:550円 × 2]

スパイシーなプルドポーク (豚の肩肉を柔らかくなるまで低温調理し細かく解したもの) にアボカドとタマネギをのせた定番のトルティーヤ。3口くらいの手巻き寿司サイズ。もちもちした皮が美味い。

[左 - タコス・ノパール:550円]

サボテン (どうしても食べたかった) とアボカド、サルサソース、パクチーの組み合わせ。焼かれたサボテンは葉物野菜のようなしゃきっとした歯応えと海藻寄りの粘り気があって、若干の苦味が感じられる。味付けのないもずくや茎わかめのよう。無臭だが、その分パクチーの香りが強烈に…(苦手とわかっていながら毎回「そろそろ平気になったのでは?」と挑み、敗北する)。

[右 - タコス・カマロン:605円]

友人がオーダーするとき はっきりと「マカロン」と発音していたので黙っていたけれど、正解は「カマロン」。ダイナミックに沢山のエビを使っている。

[ボルカン・コチニータ:660円]

さっきのプルドポークタコスのトルティーヤ部分を揚げ、チーズと角切りパイナップルを追加したもの。アボカドのペーストが滑らかで上品だが、パクチーの存在感が凄いぞ (たぶん言えば抜いてもらうこともできる)。

[左 - タコス・カルネアサーダ:660円]

ビーフステーキとアボカド、ピーマン。こういう具材のラップは理想的。

[右 - タコス・カマロン:605円]

友人が美味そうに食べていたのが羨ましくなって再注文。エビの密度が120%くらいある。

[ケサディージャ・ティンガ:770円]

たっぷりのチーズとチキンのトマト煮をブラックな (墨だろうか。イカ墨? 竹炭?) トルティーヤで挟んで焼いたもの。他のタコスより一回りボリューミーな見た目で、注文した元ピザ屋の友人は「めっちゃ美味い」と絶賛。満腹でなければおれも試してみたかった。

(追記:有識者の方から "maiz azul" という青いコーン (画像検索したら本当に綺麗なアズールブルーだった) を使ったトルティーヤであろうと教えてもらい、また一つ賢くなった。感謝!)

[フローズンマルガリータ・ツナ:1,650円]

「ツナ…!?」と思っていたら、サボテンの実のことをメキシコではそう言う (正確には "トゥナ") らしい。リッチな価格なだけあって、想像の3倍量がこんもりとかき氷のように盛り付けられている。マルガリータなので当然テキーラがベースだが、アルコールを飲まないのにサボテンが食べたくて堪らないおれのために友人が頼んで分けてくれた。

ベリーかスイカのような真っ赤なビジュアルに反し、ドラゴンフルーツ (これもサボテン科) をアクエリアスで割ったかのようなさっぱりした薄甘&薄酸のジェラート感覚。付属のストローでは飲めないのでスプーンで掬って食べた。

[オルチャータ:825円]

問題作。水に浸したチュファを撹拌して絞り、濾過した末に砂糖で甘みを付けたもの。へえ、ところでチュファって何だ?

カヤツリグサ (別名:タイガーナッツ) という落花生みたいな草の塊茎らしい。聞いたことがないが、甘酒とココナッツミルクの中間のようなまろやかさのある甘い味。氷が溶けても粘度はだいぶ高い。そこに大量のシナモンが振り掛けられているので、ちょっとインドのチャイみたいな雰囲気もある。

これはドリンクというよりデザートだな。朝食代わりにしてもエネルギー補給ができていいかもしれない。

というわけで、テーブルチャージも含めて10,780円 / 2人。

基本的にどれを食べても美味かったし、ボリュームも十分にあり、何より珍しいメニューが揃っていて会話が弾むこと間違いなし。店員の人たち (全員メキシコの方のようだった) にも親切にしてもらって大いに満足した。ランチメニューなんかも気軽で充実していそうだし、近くへ来る用事があれば是非また寄りたい店だ。

(この日は友人の30歳の誕生日だったので、華やかな食事と酒でお祝いができてとてもよかった。おめでとう🌮🐙)

@octopus
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