前回、おれは銀座三越のアートアクアリウム美術館に行き、アクアパーク品川について言及した。
書いていたら行きたくなった。というわけで、数少ない大学時代からの友人を誘い早速週末に訪れることに……なったはずが、どうしてここにいるのか?
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グランドプリンスホテル新高輪。丘の上に建つ荘厳な屋敷のよう。
目的は何だったか。
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Lounge Momiji 『メロン×桃×マンゴーのFresh Summer Afternoon Tea』
お土産のハーブティー付きで7,800円 / 1人だった。
友人とは久し振りの再会ということもあり「ゆっくり話せる場所がいいよね」「でもホテルのラウンジにただ行くのもなんだし (?)」ということで、食事を兼ねて。
ちなみにおれは普段ドトール (コーヒーフロートが大好き!) にしか行かないし、8,000円あれば10日は暮らせる。だが、たまにはいいだろう。人と会うときにだけ、特別だ。
当然、味もホスピタリティも申し分なかった。
美味い菓子と茶で満腹になり、17:00くらいにホテルを出て、今度こそ向かうのは……
マクセル アクアパーク品川。
おれはたこであるから、水族の一員として関東近郊の水族館を巡回している。その中でもここは何度もリピートしているお気に入りの一つだった。
映画館の隣にある大きな建物の中にある、屋内型の水族館。入口近くのチケット売り場にはキャラメルポップコーンの甘い香りが充満していて、都会のオフィスビルのような洒落た外観からも、来る度に「本当にここで合っていたか」と思ってしまう。
入館してもなお払拭できない疑念。違和感は続いていく。
なぜか入ってすぐにはバイキングの姿が。海賊ではなくて、遊園地にある左右 (前後?) に揺れるあの海賊船型のアトラクションのことだ。それが、想像するサイズのまま、なぜか建物のなかにすっぽり収まって鎮座している。
あまりの衝撃と突拍子のなさに、毎回新鮮に面食らってしまい写真を撮り損ねる。今回もそうであったので、賊共の宴会の模様は各自「ポート・オブ・パイレーツ」でGoogle検索されたい。
仰天しながら海賊船の脇を通り過ぎると、またしても度肝を抜くのが…
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メリーゴーラウンド。ドルフィンパーティーと名付けられている。回転木馬ならぬ回転タツノオトシゴだ。
なんだ、画角がおかしい? 臨場感に溢れすぎじゃないかって?
よく気付いてくれた。何を隠そう、上の写真はおれが真珠貝 (2人乗り) に乗車 (乗貝) した状態で撮影したものである。
このドルフィンパーティーはなかなか規模がでかく、直径が異常に大きい。公式サイトによると約12mもあるという。外側のほうなどは遠心力が掛かると共に凄まじいスピードとなる。ちなみに500円 / 1人だ。
おれは人生で一度もメリーゴーラウンドというものに乗ったことがなかったのだけれど、このタツノオトシゴの乗り物を見た瞬間、そういった状態で生涯を終えていいものかと葛藤した。最終的に同行者が「乗れ」と言うので…結果がこれだ。何というか、サーカスっぽくて良いだろう。
上下に揺れながら猛スピードでぐるぐると回され、下車 (下貝) した友人には「大学のときからの付き合いだけれど、おまえがそんなにはしゃいでいるところを初めて見たよ」と言われる。
あと1周多ければ確実に酔っていたぎりぎりの塩梅。率直に言ってかなり楽しかった。
それにしても、イルカやサメはともかくとして、ラッコは鋭角すぎやしないか? このときは誰も乗っていなかったが、子供なんかは転落するんじゃないかと冷や冷やしたものだ。
さて、いい加減に魚を見に行こう。
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なあ、魚はどうした?
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水槽の中で垂直に突き刺さっているチョコバナナ。
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…少し文字が遠くて申し訳ないが、「バナナフィッシュ」ということで、夏祭り風にこういう展示をしているらしかった。チョコバナナよりも小さい白黒の魚がひらひらと泳いでいる。
このエリアは季節ごとの特別企画をやっていて、床や壁にもプロジェクションマッピングが投影されている。春などは桜に因んだ展示をしていて、そちらも綺麗だった記憶がある。
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おれのお気に入りはこいつ。
ルートを辿れば「コーラルカフェバー」というアルコールを含むドリンクやフードを販売している場所に出る。
だが、おれたちはアフタヌーンティーで散々茶を飲んできたばかりであるので、ここは一旦スルー。
しかし、ブラックライトで照らされた店内は洒落ていて、珍しい瓶のソフトドリンクが売られていたり、テーブルが水槽になっていたりと、なかなか趣向が凝らされているようだった。
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そうこうしているうちに、18:00。イルカショーの時間だ。
アクアパーク品川では、デイver.とナイトver.の2種類のイルカショーをやっている。これはデイver.の最終公演だった。(初回は10:30から1時間30分おきに開催)
おれたちは開演の10分ほど前にこのスタジアム (その名も「ザ スタジアム」, 館内2Fに位置し、プールの周りを360°ぐるりと客席が囲っている) に辿り着いたが、席はまあまあな埋まり具合で前から4列目を確保。以前に昼頃の公演に行った際には立ち見も発生していたほどだったから、比べるとかなり空いているように感じた。完全な屋根付きの屋内であるから、こんな猛暑日でも全く涼しく過ごせる。
「前方の何列かは水が掛かる可能性がある」と注意のアナウンスが繰り返され、周りを見るとレインコートを被った人たちの姿も。塩水だろうし濡れたくねえな、とは思いながらも少し緊張して開演を待つ。
会場内ではレインコートの他、ホットドッグやソフトクリームなど軽食の類が販売されている。現地に設置の自動販売機はかなり強気な価格設定。
やがて、バックヤードから出てきてステージに立ったMCの女性が「手拍子や簡単な振りを皆で一緒にやってください」と言う。「わかりました」とおれたち。イルカ抜きで何度か練習もさせられた。
定刻になり、トレーナーたちが登場。イルカたちも位置につく。
そして、ジャンプ!
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普段「人気者はもういいからタコとかカニとかを見せてくれや」と言っているおれも、思わずこれには歓声を上げた。
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この水族館の見どころは、何と言っても先進的な技術を交えたダイナミックな光と水の演出にあるだろう。
天井からはカーテンのように水が降り注ぎ、そこに色とりどりの光が投影される。その中を、イルカが跳ねる。
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さらにはトレーナーを乗せて宙高く。
会場内に響くクラブ音楽のような重低音のきいたBGMとのタイミングもばっちり。ここぞというところで完璧に決められるようになるまで、いったいどれだけの訓練を積んだのか。
あっという間に15分が過ぎ、拍手喝采でショーは幕を閉じた。
退場する観客の流れに逆らって、おれたちは少し順路を戻る。
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クラゲを見ていると不思議な気持ちにならないか?
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この部屋では、打ち上げ花火のSEに合わせ、クラゲを照らすライトが赤や青に次々と光る。
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光っていないときはこんな感じ。自然のままも美しい。
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縦長の水槽の中にはえらく長細いやつもいる。
続いて、大型水槽のコーナーへ。
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びゅんと通り過ぎる影。速すぎて写真がぶれぶれ。
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ニモも忘れずに見なくてはならない。
それにしても随分でかい水槽だな、と感心しながら先へ進むと…
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なんと、20メートルにもおよぶ海中トンネルが現れた。
上はその中に入って煽るように撮ったもの。歩きながらダイビングをしているみたいで、ちょっと息苦しさを感じるほどの臨場感がある。
おれはこの展示に一番心を奪われた。マンタやエイたちもサービス精神旺盛だ。何度も来ているのだけれど、毎回このトンネルの存在を忘れて驚き感動しているような気がする。
さらに道を辿ると、海獣のエリアへ。
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ペンちゃんの群れ。
そして時刻は19:00に。ドルフィンパフォーマンス (ナイトver.) の時間だ。
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「デイver.とは違って客席に向かってわざと水飛沫を飛ばすことはありません」との案内。前の公演がかなりびしゃびしゃになるものだったから、おれたちは「本当だろうな?」とやや疑いながら3列目に着席。18:00の回よりも混雑していた。一部のスタッフは色浴衣姿だ。
強烈なビームのようなライトが、日が落ちて暗くなった会場を照らす。(屋根部分が透明なので日中は明るかった)
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湿度の高い潮のにおいに混じってどんどんと響く音楽。投影される打ち上げ花火。衝撃波を感じる。
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もはやイルカがいなくても成り立ってしまう。
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フラッシュライトが急に眩しい。イルカたちは大丈夫なのかな、と少し心配になった。
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ついには煙まで吐きはじめる。
どうなってしまうのか?
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そして…
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イルカの背に乗って水面を滑走するトレーナー。そのままプールの縁を一周回ってみせる。大歓声。
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クライマックスは再び花火の映像と共に。
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そうしてイルカたちは退勤していった。
デイver.とは全く異なるテイストで、圧倒的な迫力で魅せるショーだ。メインとなるイルカたちの泳ぎも素晴らしく、どこを見ていればいいのか戸惑うほど。
終演後、20:00で閉館ということもあり、満足した客たちは出口近くにある売店の方へ流れていく。ぬいぐるみや菓子などを販売しているギフトショップだ。
おれたちも眺めにいったが、レジは人でごった返していた。水族館として特に珍しいものはなく、お土産を揃えるには過不足ない印象。
これで館内全てをまわり終えたことだし、そろそろ帰るか。
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…いや、まだ最後にビッグイベントが残っている。
19:45からのウォーターカーテンコールだ。
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これは、イルカショーのイルカ抜きと表現して差し支えないだろう。
幻想的な光と共に、天井の装置から放出される水滴が水面を打つざあざあとした音。屋内であるにもかかわらず、空からシャワーの如く強い雨が降っているかのようだ。皆帰ってしまったのか、観客はほとんどいなかったが、そのおかげで最前列に座ってゆっくりと鑑賞することができた。
(先ほど退勤したイルカたちは演出とは関係なくプールの中を自由に泳いでいた)
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そうして、今度こそその日に予定されていた全てのショーが終了。
スタッフに見送られながら夜の水族館を後にした。
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辺りはすっかり暗くなっている。
おれたちが品川駅で解散するまで、日記はあと少しだけ続く。
同行の友人は小説をよく読む人であり、おれにお勧めの本を考えてきてくれたとのこと。
本屋に行ってそれらを入手すべく、おれたちは夜遅くまで開いているエキュート品川 (JR品川駅改札内, 150円の入場券が必要) の「BOOK COMPASS エキュート品川」を目指した。
購入したのは、阿部智里の『烏に単は似合わない』と米澤穂信の『満願』。
それとは別に、前から読みたいと思っていた道尾秀介の『向日葵の咲かない夏』と伊坂幸太郎の『逆ソクラテス』も買った。
4冊の文庫を抱え、そのまま品川駅ビル内 (改札外) にあるスターバックスコーヒーへ。
互いの一押しカスタムドリンクをオーダーして相手に飲ませよう、という企画だ。
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友人がおれに寄越してきたのは、「エスプレッソアフォガートフラペチーノ」のチョコレートソーストッピング。
この土台となるフラペチーノ自体を初めて飲んだのだが、ラテよりも豆の香りが強く、コーヒーの存在感があり、何より冷たくて美味しい。
おれが友人のために頼んだのはこちら。
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謎の「← in」の文字。
「コーヒーフラペチーノ」にチョコレートチップとホイップクリームを追加し、さらにそのクリームを上面にではなく内側にトッピングしたものだ。
おれは元々、期間限定のフラペチーノが売り切れたときにのみ店頭に登場する「コーヒー&クリームフラペチーノ with コーヒークリームスワール」という飲み物を好んでいて、けれどこれは通常メニューではないから、常時注文することはできない。その代打として再現したのが、「コーヒーフラペチーノ」をベースとした今回のカスタムオーダーというわけだ。
味は「砕いたオレオ入りのクリーミーなカフェラテ味のアイス」といった感じ。オリジナルのほうはホイップクリームがコーヒー風味だという違いはあるが、それ以外は割と忠実なのではないかと思う。クリームが中に入っていることで、よりマイルドな味わいとなっている。
休憩に甘いカフェイン入りの飲み物で心身を回復させたいときにはぴったりの一杯なので、機会があれば試してみてほしい。
おれと友人は互いにプレゼンしたフラペチーノを片手に小説や仕事の話などをして、1時間後、ついに手を振って別れ帰宅した。
帰りの電車の中「充実した休日だったな」と思う。
まだまだ夏は暑いが、それを理由に家に籠もるのは少し勿体ない。自分にあとどれだけの時間が残されているのかということを、おれはいつでも忘れないでいるつもりだ。
マクセル アクアパーク品川は、本当の情熱と水族への敬意に満ちた素晴らしい水族館であるが、休日の日中などは想像を絶するほどに混雑している。
これからのお盆期間はチケット料金の一時的な値上げなどで入場者数の調節をするようだけれど、それでもとてつもなく混むことには変わりないだろう。
訪問を予定している人には、本来のクオリティを存分に満喫するためにも、ぜひとも平日や夕方に行くことを検討してほしい。
おれはこの一日が楽しかったし、振り返って文字に起こしてみることもまた面白かった。あなたもきっとそうだと嬉しい。
長い話を読んでくれてありがとう。
それじゃあ、また。