down to dawn

洗われるたこ
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公開:2024/9/28

承前。出版社からプレリリースが出され、ネットニュースとして掲載された後、ついに当該の特集が載った月刊文芸誌 (10月号) が発売となった。

おれが頑なに賞や雑誌の名前を挙げないのは、リアルの知り合いにSNSを特定されるのを避けたいからであって、ここにいる親切な皆におれが何者であるかを知られるのは一向に構わないと思っている (ので、気安く話し掛けてくれよな)

プレリリースの文章も月刊誌の記事の中身も、当然おれは事前に把握していたのであって、この週になって新しく知らされた情報はない。

なら、一連の発表と月刊誌の発売を経て、何が変わったか?

まず、びっくりするくらい多くの人たち、具体的には何十人という方々が件の文芸誌を買ってそのことをおれに伝えてくれた。ぴんとこないかもしれないが、これは本当に信じられない数だ。あまりにもおれに都合が良すぎて、いつからかずっと夢を見ているんじゃないかとすら思う。

また、SNS上の反応に関しても 担当編集者の書いた凄まじい才気を感じさせられる宣伝文句の効果によって いまのところ「抄録が面白く続きが気になる」「早く全文を読みたい」「単行本化が待ち遠しい」など好意的なものだけで溢れている。おれは、この期待を裏切らないようにしなければならない。

いままでは良くも悪くも自分の手が届く範囲だけで完結していた。捨てられるために書かれた原稿の山。エナジードリンクの空き缶。煙草の吸殻。どんなに酷い物語を作っても、書ききれなくても、誰もそのことを責めてはこず、ただひたすら無視されていくだけであった。

だけどいまは違う。それはおれが長年求めてきたことであったはずなのに、いざ舞台の上に立つとなると眩暈がして逃げだしたくなる。とても不安で眠れない。

丸1年良いこともなく辛い思いをするだけなら去年死んでおけばよかったのにね

度々すまないが、これは、23歳のおれが書き残した日記の一部だ。

この頃は展望もなく昔の自分を羨んで早く消えたいとばかり願っていた。

いま、一年前に戻りたいとはもう思わない。

そして一年後の自分に「よくやった」と声を掛けてやるために、できることもできないことも頑張ってこなして成し遂げていこうと決めた。暮らしは散々だし、相変わらず金はなくて、いつか気持ちも揺らいで崩れていくかもしれないけれど、少なくとも、いまだけは。

今回のことに際し、公にも密かにもメッセージをくれた皆に対して、改めて心からの感謝を伝えたい。何よりもあなた方のその言葉が励みとなり、いまもこのおれの身体を駆動させている。

月刊誌内の抄録や受賞のことばへの感想も本当に嬉しく拝受した。どうもありがとう。あのコメントは後も先もなく退路をかなぐり捨てたおれ自身の決意表明であり、同志たるあなたに向けての渾身のラブレターでもある。潰れて駄目になってしまった人間の泣き言を、執念を、再起を信じてもらいたい。そういう思いをぶつけた文章だ。

単行本化に関する諸々も新作の執筆も正に鋭意作業中というところであるから、先々の展開もぜひ楽しみにしていてほしい。


【おまけ】

複数件、ネットの記事やポストにおれの名前や年齢や何かが誤って記されているものを発見した。

おれは混沌と騒乱を愛する者であるから、べつに何を間違われても構わないし、むしろ自分のあれこれに関しては色々と錯綜しているほうが面白いとすら思っている……が、怪しい情報を見たらまず鵜吞みにせずに「本当かな?」と疑ってみておいてくれよな。おれがあんたに見せているものだけが真実だ。

(記載間違いや勘違いが起きているだけであって、僕が鯖読んだり嘘を吐いているわけではありません (いや、吐くこともあるけれど)、という釈明)

@octopus
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