趣味の抽象化

okunokentaro
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この前、こんな記事を書いた。

雑多に「これは趣味かな」と感じる物事をつらつらと列挙してみたものだ。思った以上に感想レターを集めてしまい、趣味の列挙というのは興味深く読まれる対象であることを知った。

さて、それぞれの趣味からやはり開発職っぽさを感じるとのコメントを受けて少し考察してみた。そして、それぞれの趣味から本質部分を導き出し、各項を抽象化してみた。(ほら、こういうところがもう、ね)

ひとつは膨大な変数の管理だ。

『なぜ自炊をするのか』の回でも書いたように私は変数の多い物事、動作、概念を好む傾向にある。たとえば、この記事にあるように料理は時間変化による食材のパラメータの変化があるし、どういった食材を使うかや、どんな温度で調理するかという変数の掛け合わせで出力(料理)が求まる。

続いて飲料類だ。私はクラフトジン、日本酒、ウイスキー、コーヒーを好むが、これらは全て産地、銘柄、価格帯によって大幅に風味の異なる食品だ。これも多変数の掛け合わせによる変化を楽しむ概念であり、五感による比較という官能を得られる。もちろん比較自体は野菜であれ量産品であれ存在するのだが、特に嗜好性が強く、業界として嗜好性を煽る傾向がある点でも、それを楽しみそこに乗っかっている節がある。ただし、焼酎およびワインについては純粋に体質に合わず、飲みはするがのめり込んではいない。

旅行カテゴリでは、まず運転好きが挙げられる。

『信号待ちの暇つぶし』にあるように、カー・ブランドに興味があり、それぞれのデザイン傾向やエンジン特性、駆動系、センサー系など興味は尽きない。

そして運転行為そのものに関しても関心が高い。運転中は隣の車線の状況、歩道やバイク・自転車の状況、信号の値、対向車の出方、緊急車両の有無…といったあまりにも膨大なリアルタイム変数が存在し、その変数結果に基づいた適切なリアルタイムの状況判断および身体的な反射を要求される。このリアルタイム状況判断およびリアルタイム問題解決にたまらなく興奮を覚える。職業病まちがいなしである。この先どれだけ自動運転が普及しても手動運転を続ける老害に成り果てる自信がある。

美容カテゴリにおいては、もしかするとありふれた「プログラマー像」からは外れるかもしれないが、自分としては醜いより美しくありたいというポリシーで生きている。

それはソースコードひとつとってもそうだし、PRの差分や改行ひとつにしても、それがソースコードとして美しいかどうかを求める。関数の引数順もだし、オブジェクトのプロパティ宣言順も必然的であるかどうかを気にする。リファクタリングを家業にしている理由も、まさにこれだ。

となると、自身の身なりにも美しさが備わっているかを気にするのは、自分にとっては必然的な流れとなる。これは安易な「モテたい」などとは異なり、気にしておかないと収まりが悪い、みたいなものだ。私のこの美に対する意識には全て根源があり、それはミース・ファン・デル・ローエの「神は細部に宿る」である。全ての行動原理はこの格言に基づいている。

音楽趣味については、それ自身がひとつのトピックを構成するのでまた今度。そしてゲーム趣味については…、まあこれはありふれた「プログラマーらしい好み」だと思う。

私は自他共に認める「凝り性」なのであるが、これを頑固ではなく美的と映るよう、所作に気をつけている日々である。

@okunokentaro
京都生まれで東京在住。様々なWebアプリケーションを開発し続けて10年。すきなものをすきと言っていたい。