ヒントを与えるのか、答えを言ってしまうのか

okunokentaro
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再び、脱出ゲームである。

今回失敗した脱出ゲームを、ゲームマスターの「ヒント」の観点からデザインについて考察したい。先に言うと、答えを直接教わることなど一度も無かった。

実は失敗した脱出ゲームは、たびたびゲームマスターからヒントをもらっている。しかし、そのヒントが絶妙なのだ。

調子がよく、あと少しでひらめきそうな時にヒントを言われてしまうと興醒めしてしまうかもしれない。そこは専門店だけあって、そのようなテンションのときは一切触れてこない。しかし、明らかに数ステップ前が失敗しており大きな手戻りになる場合、少し進んだところで手戻りがある事実と大幅なヒントを与えてくださる。

ここが本当にうまい。たしかに徹底したノーヒントだと、おそらく最終問題に程遠いところでカタルシスも得られないまま、ただ単にひらめかなかったで終わったかもしれない。最終問題のハードさすら味わえない。

しかし、絶妙に手戻りの大きいところは大幅ショートカットをさせてくるのだ。しかし、そうは言っても答えは教えてくれない。我々が前提を勘違いしたまま進みすぎたことだけを教えてくれる。

その結果、かなりのショートカットをしたにも関わらず後ろめたさはなく、自分で解いた感はギリギリ残るのだ。例えば「そりゃわからんわ!」みたいなミスは的確に指摘してくれる。しかし達成感は失われない。

おそらく、これはかなりのケーススタディが用意されているはずだ。「N問目かつ残り時間M分であれば、ここに到達していない場合大幅なヒントを与え、その時の内容はこういう内容であるべき」というヒントポリシーがおそらく設計に含まれている。そうじゃないと、複数人のゲームマスターの個人の感情でヒントを与えてしまうと、ゲーム体験に品質差や属人性が生まれかねない。なので、私はあのヒントの出し方すら設計された内容であると感じる。

このヒントの出し方は業務への学びを感じる。コードレビューだ。

コードレビューでは、自分が理想のコードを書いて「もうこのスニペットをコピペしてmergeしてください」と投げやりに終わらせることも可能である。が、やはりレビュイーのスキルアップやタスク完了の達成感を、私は奪い去りたくない。とはいえ、あまりに悩まれると納期遅延に繋がるため、適度にクオリティコントロールをしながら遅れずにmergeしてもらいたい。ここが本当に悩ましいのだ。

どういう状況でどういうフォローをしながら完遂してもらうか。ある意味コードレビュー業務はゲームマスターのヒントに近いコミュニケーションの側面を感じる。学びがとても多い。

@okunokentaro
京都生まれで東京在住。様々なWebアプリケーションを開発し続けて10年。すきなものをすきと言っていたい。