【※注意】
ゲーム、「Mouthwashing」のネタバレがあります。
前の日記では「気が向いたら来来来世にでもネタバレ感想を書く」と言いましたが、耐えきれませんでした。登場人物への想いに思考が振り回されています。
このままではマジでやるべきこと、やりたいことに支障が出る(何なら既に出ている)。
勝手に追い詰められた私は思考の出力形式を「Mouthwashingの登場人物」に絞ることで、自傷ダメージを極力抑えつつ脳みそから妄執を振り払いたいと思います。
つまりはマウスウォッシュですね、はい。
ゲームとしての評価は書きません。そんな余力はありません。
「スウォンジーとのサバゲー難し過ぎる」とか「ケーキを切り分ける演出の伏線最高!」など思うところ語りたいところは色々あるので残念。
いつか書けるかな…………無理そう。
長いですが、以下注意書きです。
がっつりネタバレします。ごめんね。
ここまでの前フリから分かる通り、この感想は私個人が吐き出すことで楽になりたい以外の意図はありません。たすけて。
他の異なる意見、感想を否定する狙いはありません。むしろ私の感想は主観モリモリすぎるので、他の人の感想の方が読みやすいと思います。すまぬ。
登場人物がまあなんというか色々アレなため、非常にナイーブな話題に言及せざるをえません。なのでメンタルが弱っている方は読まない選択肢をお勧めします。いっぱい食べてたっぷり寝て。
私の言葉は「フィクションのゲームに登場する架空の人物に対しての」追慕です。「現実の類似した環境に置かれている実在の人物に宛てたもの」ではありません。いい歳してこんなげーむにまじになっちゃってどうするのな自覚はあります。ゆるして。
私はどの登場人物も決して嫌いではありません。なので悪意だけはありません。思いが重いだけ。しんじて。
ただしポニー運送、テメーはダメだ!!!!!!!!!!!!
(人物ではないですが……)
なが〜い……。
それじゃあ輝度高めの言葉で綴ることができる登場人物から、順繰りに追慕していきます。
つまり後になるほど、重油のようにどす黒く重たいドロドロした文章になっていきます。嫌なこととか思い出したら引き返してくださいね。
【ダイスケ】
1/5 ダイスケという若者への感想
忌々しい 日差しみたいな 役立たず(675)
率直に言うと、最初のうちはダイスケが好きではなかった。
ダイスケに非があるという話では全くない。根暗ぼっち陰キャの道を極めた私はたとえ二次元のキャラであろうと、愛想よく笑顔を振り撒く軽薄そうな人間に対して「分かり合えない人種である」と判断し心の壁を作ってしまう。書き出してみるとなんとも身勝手な話である。
だからこそと言うべきか。ゲームを進めるほど、スウォンジーの心境を辿っていくかのように私のダイスケへの印象は変化した。
序盤こそ浅慮な言動に「なあお前さぁ、死ぬかもしれないんだよ? 状況わかってる?(なお救出確率0%)」「やらかしそう。そしてプレイヤーが尻拭いさせられそう」とイライラクサクサしていた。ごめんなさい。
だが話が進み暗雲が立ち込めるほど、ダイスケの軽口が雲間に差し込む日のように感じられるようになった。
「なんだ、ただの面白いやつじゃん」と、そう思う自分は何様だ感はあるがダイスケの軽口に少し頬を緩ませるくらいには気を許していった。
開発者インタビューの「ダイスケの好きなポケモンはワーガルルモン」という情報にはさすがに噴き出して笑ってしまった。
2/5 ダイスケへの心境の変化
そんなダイスケに「死んでほしくない!」と強く思ったきっかけは、「お袋に罪悪感を抱えてほしくないんです」と泣き言を吐露し、飲みかけのマウスウォッシュを持っていってほしいと渡された時だ。
私は衝撃を受けた。
そこは死にたくないじゃないのか? 自分が助かりたいじゃないのか?
言っていいんだぞそれぐらい。言ったって誰もお前を責めやしないぞ。
どうして今、ここで、母親を想うことができるんだよ!?
じわじわと生殺しのように迫る死を前にして、他人を思いやれる善性の持ち主。それこそがダイスケだった。
スウォンジーがまるでダイスケの父親であるかのように、悪態をつきながらも辛抱強く面倒を見ていた理由がようやくわかった。
かわいいわ。かわいくていい奴だわ、こいつ。死んでほしくないわ(なお救出確率0%)。
しかし悲しいかな、善良な人間ほど悪い奴に食い物にされるのが世の常である。同じことがタルパ号でも起こってしまった。
誰のことを思って言っているかわかるかい?
なあ、ジミ坊……?
3/5 ダイスケの苦しみ
アーニャが医務室に閉じこもった異変に一番に気付いたのがダイスケ、という時点で胸が詰まる。たすけて。
各々が自分の都合ばかりに気が取られても仕方がない状況で、彼は他人の異常に気付き、他人のために行動できた。
だが非常に残念なことに、ダイスケはこの時点で失敗している。絶対に頼ってはいけない人間を頼ってしまった。
誰のことを指して言っているかわかるかい?
おい、ジミ坊……?
スウォンジーはダイスケを努力の方向音痴と評したが、まさにその通りの状況に自らを追い込んでしまった。つらい。
ダイスケは若く、善良で、他人を思いやる思考力があり、自ずから努力ができる人間だ。可能性の塊だ。
そんな彼に致命的に足りなかったものは、経験だ。
それさえあればジミーではなく酔っぱらうスウォンジーの方に、スイングで頬をぶっ叩いてでも助けを求めるべきだったと判断できただろう。スウォンジーの酔いが覚め、理性的に話し合いができるまで待つべきだった。ジミーに通風口を通れとクソ船長命令を下された段階でもいい、見限って逃げるべきだった。
スウォンジーを昏倒させるためのカクテル作りをするシーンは、結末を知っている今でも正直かなり好きだ。ダイスケの魅力が詰め込まれているからだ。作者の悪意すら感じる。
特に「甘味料はもしかしたら置き忘れたかもしれません、うっかり」「オレの荷物のあたり調べませんか」と実質自白するシーンは、まるでイタズラをやらかした子犬のような可愛さがある。かわいい。作者の悪意を感じる。
だが、楽しい時間が終わるのは早い。この先を思い出すだけで胸が詰まる。
スウォンジーを昏倒させた後になって事の重大さを実感したのだろう。ダイスケは「スウォンジーさんは職場の安全にすごくこだわるけれど、それってすごく大事なんじゃないかと思うんです」と待ったをかける。彼らの信頼関係をよりにもよってなタイミングで再認識させてくる。作者の悪意がある。
ジミーが口八丁でダイスケを煽り通風口を通るようにそそのかす場面では、もはやプレイヤー≠ジミーだったため「ダイスケ頼む逃げてくれ行くんじゃない!」と祈った。
ダイスケが通風口を通る決意を固めたダメ押しの言葉が、私を今でも苦しめている。作者の悪意ぜったいあるプレイヤーの苦しみを祈っている。
「スウォンジーだって起きたら喜ぶさ、誇りに思う」
「……船長命令だ」
こんな主人公もう操作したくねぇ……と絶句した経験は初めてだ。
ダイスケは苦しみながらも、果たす必要のない責任を果たした。
苦痛に耐えて這いつくばり辿り着いた医務室で、アーニャの無惨な有様を目の当たりにしたダイスケはどれほど絶望しただろう。想像もつかない。
だが彼は医務室のロックを解除した。やり遂げた。
自分だけでなくスウォンジーまで苦しめてしまう結果になったが、私は彼の苦しみを無意味で愚かだと笑うことはできない。
彼の苦しみには、他者を思いやる優しさが伴っていたからだ。
4/5 ダイスケの責任
インターンであるダイスケには、果たすべき責任はなかったと私は思う。
けれども彼は責任を果たす人間になりたかったのだろう。
その理由が己の出世欲や名誉欲を満たすためであったなら、私はこれほど苦しんではいない。
彼は作中で「何になりたいのか分からなかった」と語っていた。そんな彼がアーニャを救出に向かうことを決意した理由は、スウォンジーや母親に認められる自分になりたいと望んだからだ。私はダイスケのことを、そういう人間だと思っている。
スウォンジーはダイスケの可能性を認めていたからこそ、メカニックの基礎から叩き込んでいた。
母親はダイスケを信じ愛していたからこそ、インターンに送り込んだ(マジモンのクズはインターンなどバックレる)。そのインターン先がポニー運送というのは……ただの不運であり悪意はなかったと信じたい。
彼は既に、大切な人から認められる存在になっていた。そのことに気づけないほど彼は若かった。若すぎた。
だからこそダイスケの結末が、クソ終点が、無念で、無念で、いくら悔やんでも悔やみきれない。
(追記)
Daisuke really, really didn’t want to do the internship. His parents made him go because he’d been kind of aimless so far as a young adult. They thought it’d ultimately help him find his way in life, to have some time in a stricter environment and away from home. They were just worried for his future. When he does end up on the Tulpar, while at first anguished, he eventually decides to put on a brave face and try his best to make his parents proud.
(MOUTHWASHING Q&A: PART I. OVER 4K REVIEWS!!より
ダイスケはインターンシップを本当にやりたくありませんでした。両親は、若い頃は目標がなかったため、インターンシップに参加させました。両親は、厳しい環境で家から離れ、最終的に人生の道を見つけるのに役立つと考えました。両親は、ダイスケの将来を心配していました。ダイスケがタルパーに配属されたとき、最初は苦悩していましたが、最終的には勇気を出して、両親を誇りに思うために最善を尽くすことを決意しました。
つらい。たすけて。
5/5 ダイスケへの追慕
忌々しい日差しのような役立たず、とスウォンジーに表されたダイスケ。
けれどもダイスケはそう遠くないうちに成長し、スウォンジーと価値ある時間を与え合える関係になれただろう。
ダイスケがスウォンジーの手によって苦しみから解放され、心穏やかに最後を迎えられたことを祈らずにはいられない。
悔しさと祈りが混じりあった嘆き。それが私から、ダイスケという心優しい若者への追慕だ。
【スウォンジー】
1/7 スウォンジーという老人への感想
口が悪い上に酒癖が悪すぎる、7割くらいは理想の上司。
だが理想を完璧に体現した人間などそうそういないから、理想の上司と言っても差し支えはない気もする。禁酒さえ続けてくれていたら、堂々と理想の上司と言い張れた。
私がスウォンジーと同じくらいの年齢になれば欠点も見えてくるのかもしれないがどうしようもないため、ダイスケに似た視点になってしまう。
ゲームを始める前は「このオッサンが酔っ払って暴れ回って均衡を崩壊するんだろうな。太ってるから食料を独占とかしそうだな」と考えていた。ごめんなさい。
2/7 スウォンジーとアルコール依存症
スウォンジーは、強い意志を持った努力の人だと思う。
13年間禁酒をし続けた事は本当にすごい。スウォンジーがアルコール依存性なのかは明言されていないが、少なくともそれだけの長期間禁酒をする必要があったのだろう。なので私は彼をアルコール依存性ではないかと考えている。
アルコール依存症については治療患者の体験談を読んだことがある程度だが、誰でも些細なきっかけでアルコールに依存する可能性はあり、一杯でも飲めばそれまでの努力が水泡に帰す恐ろしい症状だという知識はある。そして依存症は脱することはできても、完治することは不可能とも聞く。
努力を日常化しなければ脱するのは困難だろう。私は酒を飲めないが、好きな食べ物に置き換えればその辛さは少しだけ想像できる。ポテチおいしい。
スウォンジーはそれをやり遂げた。13年という期間から推察するに、恐らくは家族のために。禁酒が膿のように破れた、マウスウォッシュをラッパ飲みした瞬間。彼は死を覚悟したのだと私は思っている。家族に会うことも叶わないと悟ったのだろう。
初見では「うわぁ……こいつ絶対に酔ってやらかすわ」とドン引きしたものだが、2週目以降では胸が張り裂けそうな気持ちになる。
(余談だが、マウスウォッシュに偽造した密造酒を運ばされていたという考察もある。実際のところはどうなのだろう……?)
3/7 スウォンジーとダイスケ
私はスウォンジーが好きだが、スウォンジーとダイスケの師弟関係がいちばん大好きだ。大好きだった。
カーリーを操作している状態で作業室のデスクを調べると、彼がどれほど辛抱強くダイスケを育てていたかが窺い知れる。微笑ましい。つらい。
ダイスケも口が悪く不器用なスウォンジーの本質を「口ほど悪い方じゃない」と見抜き、「超一流のメカニックなんです!」と敬意を口にしている。
タルパ号の惨劇さえ起こらなければ、と悔やまずにはいられない。というかメカニック二人、特にダイスケは部外者すぎて可哀想ですらある。たすけて。
私は二人が好きで、二人の強い師弟関係を知っている。
だからこそ、ダイスケを介錯する直前のスウォンジーの言葉は本当に辛かった。皮肉屋で不器用にすぎる彼なりの、優しさにあふれた言葉に胸が詰まった。
「忌々しい日差しみたいな役立たず」
「目を閉じろ、ダイスケ」
スウォンジーが苦しむダイスケに斧を振り下ろしたあの無音の瞬間、私はただただ嘆息することしかできなかった(そして呆然と佇むスウォンジーに対して化け物と罵ったジミーに「おっま……どの口が……!」と怒りで絶句した)。
スウォンジーはマウスウォッシュに逃げてはいけなかった。ダイスケの上司として監督する責任があった。その責任を怠った結果、ダイスケが苦しむ羽目になった。
過去の過ちは正しようがない。スウォンジーは最悪の形でツケを払うことになった。スウォンジーは己の過ちへのケジメも含めて、ダイスケに対して責任を果たした。
どれほどの喪失感と後悔に襲われたか、想像を絶するに余りある。あの時マウスウォッシュで酔っていなければ。イソプロパノール入りカクテルを飲んでいなければ。……イソプロパノールがあったところであの傷では助からなかっただろうが、事実ではなく心のケジメの問題だろう。
(友人に教えてもらったのだが、そもそもイソプロパノールは人体に塗布していい薬物ではないらしい。医療器具の消毒に用いられる薬品なのだそうだ。だからイソプロパノールがあったところでダイスケの苦しみは変わらなかった。そしてそんなイソプロパノールを一瓶呑まされて昏倒で済んだスウォンジーさんは、マジ超一流のアル中っす!)
4/7 スウォンジーとジミ坊
スウォンジーとジミーの会話は少なく、想いも少ない。少ないが、忘れ難いシーンが二つある。
一つは、ジミーの精神世界。脈略もなく墓場に佇むジミー。どこからか赤子の泣き声が聞こえてくる。しばらく道なりに進むと、ハイビスカスの花が供えられたダイスケの遺影が見つかる。つらい。そして視界にノイズが走った瞬間、スウォンジーに斧で叩き殺される。
スウォンジーにこそ敵討ちという大義名分があるとしか思えず、何度も何度も殺された。どうすればいいのか分からなかったのもあるが。すると「グッドエンド」という実績が取得できた。スウォンジーに10回ほど殺されると取得できるらしい。
そういう意味、なのだろう。
どこまでが現実か分からないが、ジミーという悪はスウォンジーによって成敗された。めでたしめでたし。たぶんスウォンジーなら、カーリーの苦しみも楽にしてくれるはずだ。
正直なところ「いつも酔っ払ってたのに、取り返しのつかない段階になって責任を果たしてもなあ」と思わないでもなかったが、ジミーのように最期まで逃避するよりはずっと上等だ。
ダイスケの死に対して責任を果たそうとするスウォンジーに、ジミーを止めてほしかった。ここでゲームを止めようか割と本気で悩んだ。
結局、続けた。ここまできたら彼らの結末を見届けたかった(それなりのお値段がするゲームだし……)。スウォンジーに向けて銃を撃った。
その後ジミーによって椅子に縛り付けられた際のスウォンジーの話は、胸に迫るものがある。
正直言って、馴染みのない比喩が多く解釈が難しい。それでも伝わってくる何かはある。
スウォンジーは「クズで、控えめに言っても飲んだくれ」だった。 ささやかなきっかけで一念発起し、良い人間になろうとした。結婚し、家族を持ち、働いた。クソみたいに働き続けた。
口の悪い彼の言葉をどこまで鵜呑みにしていいものかわからないが、改めてスウォンジーの意志の強さを実感する。
ただ、彼の家庭は上手く回っていなかったような言い回しだったことが気がかりだ。単にスウォンジーの口が悪いのか判断できないが……仕事で一年以上不在ならば、自然と家庭に居場所がなくなってしまうのは道理だろう。
(追記)
Swansea’s kids are all grown up, but there’s always something broken or needing repairs in their apartments. It’s also an excuse to go make sure they’re keeping their places clean. He’ll treat them to a meal, the kids should be eating good at least. Swansea makes a mean paella but his wife is sick of it at this point. Not to worry, he takes her to fancy restaurants when they want a night out. They’ll call ahead to see if the dog is allowed to come
(MOUTHWASHING Q&A: PART Ⅲ. OVER 4K REVIEWS!!より
スウォンジーの子供たちはみんな成長しましたが、彼らのアパートには常に壊れたり修理が必要なものがあります。また、彼らが部屋をきれいに保っているか確認する口実にもなります。彼は彼らに食事をご馳走します。子供たちは少なくとも良いものを食べているはずです。スウォンジーはパエリアをうまく作りますが、彼の妻はもう飽きています。心配はいりません。夜出かけたいときは、彼は彼女を高級レストランに連れて行きます。犬を連れて行ってもいいかどうか、事前に電話で確認します。
救いなのに誰も救われないんですが……???
彼は「一生かけて追い求めた達成感」について語る。「ゴールライン越えても、思ったほど大したものじゃなかった」と。
私もスウォンジーと近い年齢になれば理解できる感覚なのか、分からない。
だが私はスウォンジー本人がどう思おうと、彼は大したことをやってのけたと称賛を送りたい。彼の意志の強さ、勤勉さ、たゆまぬ努力、それらは本当にマジスゴ鬼ヤバっすよ! と言いたい。
ダイスケへの慈愛も強く伝わってくる。
「……オレは小僧を守ってやるべきだった」
「一つでも正しいマネができたなら。このクソみてえな場所で、アイツに小さなチャンス一つでもやれればな」
ただただ悲しい。後悔と悲哀に満ちている。
ジミーに銃口を突き付けられ命乞いをするでもなく、目の前の愚かな男への説教と守るべき弟子への悔恨だけを語る姿は、苦しみを生き抜いた老人の貫禄すら感じる。
最期の言葉が「クソくらえ」もまた、スウォンジーらしい。
……本当に、マウスウォッシュに酔ってさえいなければ理想の上司だったんだけどなあ。
5/7 スウォンジーと秘密の凍結ポッド
凍結ポッドも部屋みたいなもんでしょ(某魔法世界を舞台にした作品に勝手にちなんだ小見出し)。
スウォンジーがやたらとマウスウォッシュに逃げていたのは、この秘密を一人で抱え込む重責に耐えかねていた事が理由かもしれない。
誰にも相談できはしないだろう。会話が出来ない上に犯人に仕立て上げられたカーリーは論外。何かの拍子に喋りそうなダイスケも論外。アーニャは精神的に脆すぎる。ジミーはやたらと威張り散らし情緒不安定。たいへん見事な詰みである。参りました。将棋やっとるんちゃうぞ。
ならば誰に希望を託すか、スウォンジーが決断しなければならない。
順当に考えれば、可愛い弟子でインターンでもあるダイスケを乗せるつもりだったのだろう。そしてダイスケを安全にポッドで眠らせる機会を伺っていたと思われる。
そうこうしているうちに、ダイスケが死に瀕する事態になった。
希望を託そうとしたダイスケに、全てを終わらせる斧を自らの手で振り下ろす。責任から目を逸らし逃げてしまった代償は、あまりにも大きすぎた。
スウォンジーは本当に……マウスウォッシュに、酔いに逃げてさえいなければ、という言葉に尽きる。
だが、死がじわじわと迫るあの状況で正気でいられるはずがない。「それでも酔いに逃げず状況を見据えるべきだ!」と正義感を振りかざせるほど、私は苦しみについて無知ではない。
閉鎖空間で狭まる視野、黄昏色の船内で沈む思考、じわじわと肉体を蝕む空腹や吐き気、ぼんやりと身を包み込むように迫る死の空気。私も大なり小なり身に覚えがある。
仮にスウォンジーが作中でずっと酔いに逃げていたとしても、私は彼を責められない。むしろあの絶望的な状況で、彼はできる限りの責任を果たしたと私は思う。
6/7 スウォンジーの責任
スウォンジーは聖人君子にはほど遠く過ちを犯したが、タルパ号船員の中で最も責任を果たした人間だと私は思う。より正確に表すなら、責任を果たし続けてきた。
働くということ、家庭を持ち家族を養うことは責任の連続だ。
立場の違いはあれどカーリーは働くだけで疲弊しきっていた。あの劣悪な労働環境で、プレイヤーに置き換えれば不平等で理不尽な社会の中で、地味に真っ当に責任を果たし続ける事はどれほど困難な道であることか。少なくとも今の私は成し得ていない。
スウォンジーが責任を果たした場面として強烈に焼きついて離れないのは、やはりダイスケへの介錯だ。
作中で最も残酷かつ慈悲に満ちた責任の果たし方だと私は思う。作者に人の心とかないんか……?
直後にジミーがスウォンジーに放った「化け物!」「俺なら、俺たちならなんとかできた!」となじるセリフのなんと幼稚で薄っぺらいことか。ジミーに人の心とかないんか……?
7/7 スウォンジーへの追慕
スウォンジーが忌々しい日差しを浴びながら、それほどクソではない終点に向かってゆっくりと歩む。そんな穏やかな未来があり得てほしかった。それが私からスウォンジーへの、未練がましい追慕だ。
【カーリー】
1/5 カーリーという男への感想
ビジュアルも相まってどう見ても黒幕にしか見えない人。
ストアページでしれーっと嘘つきやがってェ!
ミスリード云々については巧みだと思うがそこに語りたい苦しみはないため、本編を完走した後の感想を書いていく。
2/5 船長カーリーという男への感想・完走後
中間管理職カーリー。
ジミーから嫉妬されまくった結果あの惨劇を招いてしまったが、実際のところは優雅に湖面を泳ぐ白鳥が如く、水面下で必死に足をバタつかせて働いていた。加えてミドルエイジクライシスでマジスゴ鬼ヤバ可哀想。
パイロットルームに向かうカーリーの幻覚は、突拍子もなく出てきたのもあるが印象深く恐ろしい。終わりの見えない階段。先のないハシゴ。警告の赤い字が幾つも浮かぶ暗闇の下、血の色をした水を掻き分けて進んでいく……。
休め!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
カーリーの精神状態に気付けないアーニャも良くないが……。ここで開発者インタビューを引用する。
・Are there any little fun facts about the characters?
Anya has tried and failed to get into medical school eight times. She completed Pony Express provided nursing classes to qualify for her position on the Tulpar (valid ONLY on board Pony Express property and company jurisdiction) because she needed money so she could keep trying. She’s been reading a lot of books about psychology while on the Tulpar though...
(MOUTHWASHING Q&A: PART I. OVER 4K REVIEWS!!より)
Q.登場人物について、ちょっとした面白いエピソードはありますか?
A.アーニャは医学部に8回挑戦しましたが、失敗しました。彼女は、挑戦を続けるためにお金が必要だったため、タルパ号での職務に就く資格を得るために、ポニー運送が提供する看護クラスを修了しました(ポニー運送の敷地内および会社の管轄区域内でのみ有効)。彼女はタルパ号にいる間、心理学に関する本をたくさん読んでいましたが……。
ははっ……(失笑)
マジで悪い方にばかり噛み合わせが良すぎるんだよチクショウ!!! 悪意のピタゴラスイッチかよ!!!!!
カーリーを操作している状態で色々なオブジェクトと調べると、温和な人柄であることが窺える。
例えば医務室のサウンドプレイヤー、スウォンジーとアーニャの好きな音楽が保存されているらしい。これを調べるとカーリーは「やっぱこれでなくっちゃ」と肯定的に語る一方、ジミーは「残念ながらスウォンジーとアーニャのプレイリストは、事故が起こっても無事だった」と冷たい言い様だ。
他にも喋るポレ人形を調べると「よう、調子はどうだい?」と陽気におどけるカーリーに対し、ジミーは「信じられないことに、このキャラクターのグッズが売られている。しかも子供向けに」と冷めた言葉だ(まあこの例に限ってはジミーの気持ちに同意する)。
カーリーという人間は、劣悪な労働環境にあってもその本質は善良だった。
あとかわいい。そして何気にイケメン。金髪碧眼はいい……そう思わないかいレオナールさん。あっゲーム間違えました。
3/5 船長カーリーの失敗
よくカーリーは聖人、何も悪くない人という意見を見る。だが私は正直、まあまあやらかしている人だと思う。
だからといって、あのザマが相応しいとは思わないぞ!!!!!?????
まずはアーニャの問題。
カウンセリング代行のくだりは本当によろしくない。
部下が仕事に悩んで相談したというのに、アーニャを軽んじる言動も本当に本当によろしくない。力なく流すアーニャの様子が痛々しい。これが日常なのだとしたらあんまりだ。
さらには、船室のカギについて疑問を呈するアーニャのSOSを見逃してしまった。これは致命的なやらかしである。
カーリーにも余裕がなかったのは、プレイヤー視点では理解できるが……安全性の発言は擁護できない。船員の身体よりも医薬品や機械の安全性を確保する事が先決だ、と受け取られかねない。どうしても同性であるアーニャの肩を持ってしまう自覚はある。
まあ、寝不足過労クビ(ブラック企業の推薦状有♡)気まずいバースデーという悪魔のコンボの後では……察しろというのは無茶ではある……が……。
冷たい言い方になって「すまない! マジですまないカーリー!」ではあるのだが、それが船長として「責任を果たす」ことじゃないかな……と、思ってしまう……「すまなry。
欲を言えばカーリーがどの程度ポニー運送のクソ規則を遵守し、具体的に何時間働いていたのか作中で描写されていればなあ。もう少し具体的な感想が持てるのだがなあ。と歯噛みしつつ……モヤモヤした出力になってしまう。
そして今回のしくじり同僚、ジミーの問題。どうしてもアーニャの問題と少し混ざる。
カウンセリングを身内贔屓でなあなあにしていなければ……していなくてもクソポニー運送なら普通にこき使いそうな気がしてしまうのが怖い。
同制作陣の他作品で、他ならぬカーリーがジミーをポニー運送に招いたことが判明する。それほどカーリーにとって、ジミーという人間は精神的な拠り所だったのだろう。その作品で「1、2回の航海でそれなりの金を稼げる」と言っていたことから、ジミーへの善意もあったのかもしれない。
だがカーリーがジミーに抱く友情こそが、彼の青い眼を曇らせていたのは何とも皮肉である。そして取り返しがつかない状態になった後で、彼の目は閉じることも出来なくなり親友の醜悪な本性を目の当たりにする羽目になる……肉を覆う皮すらないという皮肉。
カーリーの操作視点から察するに、ジミーがアーニャに対して振るった性暴力やジミーの自己中心的な本質に全く気づかなかったのだろう。
コックピットでのカーリーとジミーの会話には不穏な影がちらついている。「コックピットは俺たちが掌握している。悪い気分じゃない」「(カーリーのポニー運送での評価に対し)正直、ちょっとイラつくほどな」というジミーの言葉は、そこに込められた感情を知るとぞっとするものがある。
カーリーが人の善性を信じすぎるお人好しだったのか、劣悪な労働環境での疲労が原因か、あるいはその両方か。
カーリーに関しては情報が少なく、今となっては何も分からない。
ジミーが銃を手に取った時の笑いも、果たして現実だったのかすら分からない。
彼はもはや、ただの靴下人形に成り果ててしまった。
4/5 船長カーリーの責任
カーリーとジミーのコックピットでの会話から、彼らは荒んだ環境に置かれていたことが分かる。家族の話題がないことからおそらく身近に相談できる人間もなく、間違いを重ねながらも孤独に頑張り続けてきたのだろう。
カーリーは本当に頑張った。頑張ってきた。いざこざの仲裁から泡取り、カウンセリング代行、果てはクソポニー運送上層部の尻拭いまで進んでこなした。カウンセリング代行はいかんと思うが。
ろくに寝ないで頑張った。それはよーーーく分かる。
しかし責任のある立場だからこそ、いついかなる時でも船員にとって最善の判断を下せるように休むべきだった。休憩は5時間までとかいうクソ規則なんざ破るべきだった。冷たいと思われようが、疲れたから引き受けられないと雑務を断らねばならなかった。助けを求めてよかった。
毎日の小事に気を取られすぎた。肝心な時に、決して目を逸らしてはいけない大事を見過ごした。
船長としての責任を、果たせなかった。
果たせなかったけど…………だからってあのザマが相応しいとは思わねーよ!!!!!!!???????
というか、たぶんカーリー死ぬよね……。
コールドスリープに耐えられる体力があるかとか、果たして20年後までに見つけてくれる人がいるのかとか、そういう未知の問題は置いておくにしても。
だってさあ、そもそもの話さあ。あのカプセル……ポニー運送の用意したモンだぜぇ……?(ポレ人形をロッカーに入れて蹴り飛ばしながら)
絶対に耐用年数とっくの昔に過ぎた安物だって、絶対に……。(ロッカーにバットでスイングかましながら)
(追記)
How does the technology of the Pony Express compare to other ships?
The Tulpar is very much an older and cheaper model than what would be standard. Pony Express is the shipping option you know has like a consistent 30% chance of losing all your stuff entirely. But you just can’t beat those prices.
(MOUTHWASHING Q&A: PART Ⅱ. OVER 4K REVIEWS!!より
Q.ポニー運送の技術は他の船と比べてどうですか?
A.タルパ号は、標準のものよりはるかに古くて安いモデルです。ポニー運送は、荷物をすべて失う可能性が常に30%ある配送オプションです。しかし、その価格に勝るものはありません。
カーリーの冥福を祈る。
5/5 船長カーリーへの追慕
衝突事故の間際。カーリーは危険を承知の上でコックピットに向かい、身を挺して船員の命を守ろうとした。
カーリーは最後まで、責任を果たそうと努力した。努力はしていた。たとえ報われない結果になったとしても。
ツイてない船長カーリーの苦しみに、祈りを捧げたい。安らかな眠りにつけることを願いたい。それが私から船長カーリーへの、敬意を込めた追慕だ。
残念なことに字数制限を超えてしまったため、残りの2名についてはこちらの日記にまとめます。
マジで激ヒマ鬼やることない人だけ、気が向いたらどうぞ……どうか無理はしないでください。