何が起こるか分からないもので、11月1日(金)の記事で書いた例の古楽器の名前が判明した。「判明した」と言っても確固たるものではなく「恐らくこれでほぼ間違いないかな…」という程度だが、長期間何の進展もなかった状況においては飛躍的な一歩である。
前回記事の再掲になるが、改めて件の作品の情報を。
作者:ヤーコプ・オホテルフェルト(1634-1682)オランダ
画題:《トリックトラックに興ずる人々》
展覧会名:バロック・ロココの巨匠 天才たちの競演(2005年)
どうにもこの不思議な形状をした楽器の名前が知りたいと思い、「バロック 擦弦楽器」とか「17世紀 オランダ 弦楽器」とか「17世紀 リュート属」などとネットで調べてみたが、一向に探し当てることが出来なかった。何度試みても駄目だったため、そのうち「もういいや」と放置気味になり、今回記事を書くまですっかり記憶から消し飛んでいた。
で、なぜ急に謎が解けたのかというと、前回記事で「最近やっと『どうもポルトガルギターに似ている』ということが分かった」と書いたことが契機となった。そのポルトガルギターについて、ウィキペディアに「おそらくはイングリッシュ・ギターとシターンの融合から生まれたと考えられている」と記載されていたため、今度は「シターン」という楽器を検索してみたところ、同じくウィキペディアに掲載されていたシターンの画像が、このポストカードの女性が持つ楽器に瓜二つだったのである。「ルネサンス期には8~20弦まで多様であった」との解説からも、古楽器であることに間違いない。
ああそうか…この楽器はシターンというのか…なんか突然あっさり分かったな…。
さらに調べると、同時代の画家ヨハネス・フェルメールの絵画作品にもシターンが描かれていることが分かった。それがこちら。
作者:ヨハネス・フェルメール(c.1632-c.1675)
画題:《恋文》(c.1669-c.1670)
所蔵先:アムステルダム国立美術館
引用元:
※同館所蔵作品(パブリックドメイン)画像をダウンロードし自由に使える会員制度に登録したうえ引用しています※
「エー!同時代作品にあったのか!(*`⊙0⊙´*)」
とびっくり。驚きと同時に非常に恥ずかしくもあり情けない。
というのは、私は学生時代に西洋美術史を専攻していたうえ趣味でルネサンスリュートを弾いているのに、機転が利かず解決するのにここまで時間を要してしまったからだ。このような環境ならすぐにでも分かりそうなものである。恥の上塗りになるが、私はあまりフェルメールが好きではなく、その作品に真面目に向き合って来なかった。フェルメールとその作品について人並みの知識を持っていれば、案外すぐに気が付いて解決していたかも知れない。学生時代の怠慢がこのようなところに響くとは…。
各方、勉強は抜かりなく。