数分間のエールを クソデカ感情まとめ怪文書

そろそろ怪文書がいい感じに貯まってきたので、鑑賞してて思ったけどまだ放流できていないことなんかもまとめて書きつつ映画全体の感想としたいと思います。現時点で3回見たからな。任せろ。

他の人の感想怪文書とか考察ツイートとかも結構見た状態で書いてるからもしかしたらn番煎じなことしか書けないかもしれないけど許してほしい。

あ、めちゃくちゃネタバレしてるので未鑑賞の人は映画見てボイスドラマも聴いてから読んでください!!!!!!!!!!いいから映画館に行け!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

見る前の話

数分間のエールを という完全オリジナル映画が出るらしい、というのを知ったのはたぶん公開2ヶ月前くらいだったと思う。職場の社内チャットに流れてきた。主線なしパステル調の画風にめちゃくちゃ既視感があって調べた。Hurray! という名前自体は知らなかったけどメンバーの方々(ぽぷりかさん・まごつきさん・おはじきさん)はめちゃくちゃ見覚えがある。だから僕は音楽を辞めたと雨とカプチーノのMVの人たちやんけ!!!(ここまで3分くらい)雨とカプチーノ、ヨルシカの中で1番好きなMVです。これで公開されたら見に行くと決めた気がする。

見に行くと決めてからは徹底的に情報をシャットアウトしてました。プロモーション用楽曲の先行公開とかも見なかったし制作情報とか情報解禁とかも見ないために公式のアカウントも初鑑賞が終わるまでフォローしてなかった。彼方トノ織重先生萌美ちゃんがどんな声をしているのか、映画見るまで知らなかったです。外見だけは知ってた。なんでここまで事前情報避けてたのか今となってはよくわからないけど、たぶん先入観を少しでもなくした状態で見たかったんじゃないかな…ちなみに後述するけど、この選択自体はとても正解だったと思ってます。

映画本編の話

前項で「キャラがどんな声してるのか一切知らない状態で見に行った、外見だけは知ってた」と書いたけれど、実際に声を聞いてみたら4人とも外見から予想したそのままでキャラデザすげ〜〜ってなった。あるいはそれぞれの声優さんの「ぽさ」がすげ〜のかもしれない。

彼方が初めて作ったMVに、数は少ないけど好意的なコメントばかりがついていたの、個人的にはこれが彼方の中でかなり大事な経験になっているんじゃないかなと思っている。MVという表現手法に惚れて、細かい技術は全然ない状態で、「自分の好きな」風景や絵を合わせて作った「初めて」の作品が他の人に気に入ってもらえた、という経験。どんな趣味でも活動でもその後を大きく左右する「始めたばかり」の時期に、自分の「好き」や感性が誰かにも響いたというある種の成功体験を味わえたことは、きっとその後の彼方がMV制作にあれほど前向きに取り組み続けられる礎になったと思うし、その後の作品に批判的なコメントがついても、劇中で作曲者本人から作品を否定されても、ギリギリのところでMVのことを信じ続けるための最後の小さな砦になったんじゃないかなあと、勝手に思っている。

見に行くと決めてから映画の情報を避けていてよかったなと思ったのは、この後の路上ライブのシーンで彼方が感じたのと同じ衝撃を味わうことができたから。私は恥ずかしながらこの映画で初めて菅原圭さんを知ったのだけれど、それも込みで全く知らなかったからあのシーンであそこまでぶん殴られることができたと思っている。

この辺のツイートがその辺の話なんですけど、私は基本歌詞偏重で音楽鑑賞するんですよね。先に歌詞読んで、この曲は何を言いたいのかをなんとなく把握した状態で本体を聴くタイプ。だから曲に感動することがあってもどちらかというと「そういう表現するんだ、言葉選びのセンスすごいな〜」みたいな感じ(八月、某、月明かりはそういう感じだった)で、どこをすごいと思ったのか、どうすごいと思ったのか、割と言語化できることの方が多い。

ただ本当にごく稀にその曲そのものが持つ「圧」で真正面から殴られて「なんかよくわからんけどとりあえずすごかった、何があんなに衝撃だったのか上手く言えないけど、なんかはなんかだよ(彼方)」となることはあって、今までこの殴られ方をしたのはTK from 凛として時雨の「melt」、米津玄師のライブでの「KICK BACK」初披露(まだ音源が出てないタイミング)、今回の「未明」の3回だけなんじゃないだろうか…? KICK BACKの時もそうだったけど、そういうよくわからん殴られ方をした曲って後から音源を聴き返してもどこで衝撃を受けたのかわからないんですよね。きっと劇中で彼方が感じた衝撃もそんな感じだったんじゃないのかなあって勝手に思っている。

翌日の「織重「あーーーーーーーーーーー!!!!!」…夕です」、めちゃくちゃ好き。扱うテーマ、特に織重先生とトノが抱える心情はどうしても重いものになってしまうと思うから、他の要素や場面でキャッチーさを増やすことで釣り合いを取っている感じがよかった。

その後のトノの「俺は嫌だけどな、お前がこの絵に映像つけたいなんて言ったら」「なんでだよぉ」「お前は俺の気持ちをわかってないからだ」もすごくいいなと思った。特に「俺の気持ちをわかってないからだ」を言わせたことで、トノが大人びてはいるけれどなんでもかんでも抱え込めるほど大人なわけじゃない、ちゃんとそういうアイデンティティ的な部分は年相応の高校生なんだよってことが示されてた感じがある。「俺の気持ちをわかってないからだ」が重々しく発された台詞じゃないのもいいよね。クソデカ感情を飲み下して抑えつけて少しでも軽くした上で冗談っぽい言い方をした感じがトノという人間を示している気がするし後々のシーンにも効いてくる、気がする。

公園で先生と話して(ポールに頭ぶつける音で毎回笑いそうになる)トノと通話した後に先生に見せるための作品を選ぶシーン、わかりみしかなくて苦しい。デザイナー専門職として就活をした人間なんですけど、面接の前にポートフォリオを提出するんですよね。デザイン事務所とかではなく自社開発のUXデザイン部署をメインに受けていたので出しても出さなくてもいいよと言う企業がほとんどだったけれど出しても出さなくてもいいよなら出した方が印象はいいわけで。授業とインターンとバイトの合間を縫ってポートフォリオサイト作ったりしました。それで「今までの実績一覧」みたいなページに自分が今までやったことを並べる時、マジであんな感じだったな…なんで私はこんなゴミしか作れないんだ?って気持ちになった。こんなレベルの低いものをお出しするくらいなら丸腰で行った方がマシなんじゃねえのかと思った。それを実績として載せることがあまりにも苦しすぎて吐きそうになったことも覚えてる。せめてこのポートフォリオサイトは今作れる1番いいものにしたいという気持ちでcss書いたので、結局見せる用のMVを1から作ることにした彼方の気持ちも痛いほどわかる。まあそのポートフォリオサイトも作った当時から1年半経った今思い返せば直視したくない程度には酷いんですが。全ては完成したその瞬間から駄作になるんだよ…。よくあれでデザイナーとして採用されたなと思います。いつか成長を実感できた暁には課長と部長になんで私を採ったのか訊いてみたい。人が足りなすぎて誰でもいいから採りたかったけどお前しか応募してこなかったからとか言われたら泣いちゃうかもしれない。

ここでも書いたけど、ボイスドラマで3年前の片町フェスに行った彼方とトノが教育大軽音部のフライヤーを受け取るシーンがあるんですよね。その時にいた「ビオトープ」という曲を演奏する予定の、おそらく結局見ずに帰ったであろう軽音部唯一のオリ曲出演者のことを、MV作るために動画を見ても思い出していないのが本当に残酷で、でも「そんなもんだよな」感があまりにもリアルで、ボイスドラマ聴いた後ものすごく苦しくなってしまった。

全然本編には関係ないんですけど、個人的には織重先生が教育大に進学した理由がめちゃくちゃ気になる。親の意向に従ったのか本人の意思なのか、本人の意思ならなぜ音楽を専攻できる大学ではなくて教育学部を選んだのか…本格的に作曲にのめり込んだのが大学入った後だったとかなのかな。

「土曜日から寝てない」が若さって感じであまりにも眩しい。私はそもそもが体力クソ雑魚すぎて20歳超えたあたりで徹夜ができなくなりました。どれだけ忙しい時期でも最低でも毎日3時間は寝てた。2徹…若いなあ……。彼方がぶっ倒れてしまってからどういう経緯かはわからないけど、織重先生にMVのことを伝えてあげたトノの優しさが沁みる。トノ、なんだかんだ言って彼方の情熱や感性は尊重しているよね…。

「なんでMVを作りたいの?」と問うた時の織重先生の目にほんのうっすら光が揺れているのがめちゃくちゃよかった。つい先日最後の路上ライブをして、本人的には断ち切ったつもりになっているはずの未練が顔を出そうとしているのを必死に抑えつけているのがあの瞳の中の小さなハイライトに全部詰まってる。好き…。

彼方のそれに対する答え「自分が作ったもので、誰かの心を動かしたいから」、最初に聞いた時はあまりにもキャッチコピー感が強くてほんまか?ってなった(というか彼方という人物像と発言が合っていない気がした)んだけど、ボイスドラマを聴いた後だと「何者かになれるのか」「クラスメイトとは違うって証明してからじゃないと」「僕は、僕の絵でみんなに認められれば、救われると信じていた」の延長線上にある回答だったのかもしれないな…という気持ちになっている。3年経って、中学生の頃のどうしようもない気持ちを対外的に開示できるところまで落とし込んだ結果が「自分が作ったもので、誰かの心を動かしたいから」なんじゃないかな…みたいな。きっと彼方にとっては、自分の作品で人の心を動かすことが「何者かになる」ということであり「他人とは違うと証明する」ことであり「僕の絵でみんなに認められる」ことだったのかもしれない。

ライブハウスのシーン、ライブハウスって初めてだと怖いよね〜〜わかる〜〜〜って感じ。大体雑居ビルの地下にあるし、薄暗いし、なんか煙草の臭いするし、余所者は帰れって言われそうな印象があるのめちゃくちゃわかる。ビビってない、あるいは顔に出してないトノは通常運転でさすがだなと思った。行ったことあるのかな。ところであのライブハウスそこそこキャパない?500-1000人くらいはありそうな雰囲気がある。ステージがちょっと広めで羨ましい!!!!!!!!!!88鍵置いても余裕ありそう。

演奏始まる時の織重先生の表情が本当に苦しそうでこっちまで気持ちがきゅっとなってしまった。大好きだった音楽にお別れを言おうとしてるんだね…。

一緒にライブに出ていた人たちがどういう思いでサポートメンバーやってたのか気になる。織重先生の才能を信じていたのか、最後だからと思い出作りに協力したのか…他の楽器のことはわからないけど、未明のキーボードパート結構めんどくさそうだったからさ…。彼らが織重先生の音楽に何か思うところがあってサポートメンバーやっているんだったらいいなって思う。

演奏聴いてる時のトノの表情も心にくるものがある。この時にはもう美大には行かないと決めてたんだろうか、瞳から色が消えて呆然としていて、一体どんな気持ちで聴いてたんだろうな…。彼方が撮った路上ライブの動画はほとんど音入ってなかったし、きっと初見だっただろうし、誘われたからついてきてみたら死角から刺されたようなもんでしょたぶん。終わってから「いい歌だったな」しか言わなかったの、むしろそれしか言えなかったんじゃないかと思う。それ以上言ったら自分が絵辞めることまで喋ってしまいそうだったんじゃないかな。彼方に言ってしまったら心を抉る返しが来ることがわかっていたんだと思う。序盤の「お前は俺の気持ちをわかっていないからだ」が…効いてくるね…。

ここでも書いたけど、彼方の「諦めたことがない側」としての台詞選びがあまりにも秀逸だなと思った。別に傷つけるつもりでは言っていないけどただただ無神経な感じ。100曲積み上げて何も残らなくて、ただひたすら自分の才能のなさを呪って、それでもずっと好きでい続けた音楽を辞めることを決めた、自分でクリエイターとしての自分を殺した人に向ける「音楽、諦めるんですか?」はね…本当に残酷だよ…。トノもそれがわかっていたから美大に行かないことを彼方には言わなかったんだろうなって。

出来上がった1本目のMVを拒絶された時もそう。「どこが気に食わない(気に入らない、だっけ)んですか?」も、自分が作ったものが見た人にまっすぐ届くことを疑ったことがないからこそ出てくる言葉だよな…。織重先生の、純粋な気持ちで創作に向き合っている彼方を否定したくない優しさと、それはそれとしてこれを「未明」のMVとして認めることはできないというクリエイターとしての最後の自我がぶつかった末の絞り出すような「朝屋くんらしいなって、思った」があまりにもしんどすぎる。「言ってもわからないよな」と心を閉ざしてしまった感じも。でもそうだよな、「未明」は自分で殺したクリエイターとしての自分に対する鎮魂歌なんだよ、トノが言う通り「終わりの歌」なんだよ…日が落ちた後の公園で彼方のMVの、旅人の女の子が大写しになっている画面を凝視し続ける先生の姿が苦しい。

喧嘩した次の日に美術室?に足を運んでるの、羨ましくても妬ましくても大切な友だちなんだなあというのが伝わってきていいな。本人と直接話すんじゃなくて美術室に行くの、まあ喧嘩した気まずさもあるのかもしれないけど、「俺の気持ちをわかってないからだ」って言ってるし直接訊いても答えてくれないよなとか、トノは「未明」の意味がわかってる→織重先生とトノの共通点は創作で自分よりずっと先にいること→トノの作っているものを直接見た方がヒントになるかも、みたいな思考の動きがあったのかなーと思う。織重先生と彼方がトノの話をしているシーンにトノ本人は最後まで現れなかったのも、彼方には本心を話そうとしなかったトノらしいよね。

トノのスケッチブックがNo.51まであることに気づいたところと、中のページが途中鉛筆でぐちゃぐちゃに塗りつぶされてて「才能ってなんだ?」って小さく書いてあるところでこっちの情緒までぐちゃぐちゃになっちゃった。きっとトノにとっては絵を写実的に描くことは昔から当たり前のようにできた特別でもなんでもないことで、そこに途方もない努力を積み上げているんだからこれくらいのクオリティで絵を描けることは「当然」でしかなくて、それを才能の一言で片付けられるのはものすごく苦しかっただろうなと思う。

私は高校も大学もそれなりに(少なくとも関東圏では)名前の知られているところに進学した、要するに所謂勉強が得意な方の人間だったのだけれど、就活のために長期インターンでお世話になっていた会社の上司に定期面談で「頭いい人は最初からそれなりにできちゃうから、泥臭く努力することを知らない(要約)」的なことを言われてそれまでの人生を全て否定されたような気がしたことがある。私が国語が得意なのは小さい頃におもちゃもゲームもあまり買ってもらえなくて暇すぎて子ども向けの辞書を隅から隅まで何周も読んで、小中学校で7000冊近く本を読んできたからだし、数学がそれなりにできるのはメンタルぶっ壊した末に再起を誓った浪人期間に毎日、1日も例外なく15時間勉強し続けたからであって、最初からそれなりにできちゃうように見えるのだとしたらそれは間違いなくアホみたいなインプット量を積み上げた先に得たものだと思う。いや前者を努力と思ったことはないけど。それでも目の前の人間がこれまでの人生で何をどれだけ積み上げてきたのか知らずに「才能」みたいな記号で済ませるのはあまりにも残酷じゃねえかなとは思うよ。私はこれを言われたその日帰ってから冗談じゃなく3,4時間くらい泣き続けたよ。

でもね、彼方の「いいよなお前は才能があって」も、スケッチブックがNo.51まであることに気づいた時の気持ちも痛いくらいわかるんだよな。音楽や絵で私よりずっとすごいものを作る人はたくさんいて、得意なはずの勉強ですら自分よりずっとできる人がたくさんいて、ふとした時に彼らが途方もない時間を、労力をそこに捧げてきたことを知ってしまった時に打ちのめされたような気持ちになるんだよな。安易にわかるよとは言いたくないけど、わかるよ…。

その後の「それはダメなんですか」「ダメじゃない、ダメじゃないよ、ただこの歌はそうじゃないってだけ」、「なんでMV作っていいって言ったんですか」「なんでだろうね」もめちゃくちゃ苦しい。どれだけ話しても理解されない感じが彼方と先生(とトノ)の間の距離の大きさを表してる気がするし、泣きそうなギリギリの声での「なんでだろうね」はずるいよ…。

意気消沈してても頼まれたMVはちゃんと仕上げてるのめちゃくちゃえらいぞ彼方…締切には遅れてたっぽいけど…。

休み時間はいつもスケッチブックを広げていたトノが英語の参考書を広げてることに気づいた彼方が何も言わなかったの、彼方の心情の変化が現れている気がしてていい。「諦めた側」の気持ちそのものは理解できていないけれど、「積み上げた末に諦めること」の重みをなんとなくわかってしまったんだなって感じがする。本当に諦めちゃったんだ、あんなに上手い絵描けるのに、でもトノの気持ちがわからない自分は何も言う資格はないんだな…って感じの「なんでもない」。トノは彼方がそう思っていたことに気づいているんだろうか。

この後の萌美ちゃんの「彼方のMVって元気でるよね」「自分でも気づけてなかった曲のいいところを教えてくれる気がする」「彼方のMVは応援なんだよ、その曲の」で序盤の彼方自身の「MVっていうのはさ、応援なんだよ」が回収されるの熱すぎる…彼方はずっと俯いてたから気づいてないかもしれないけど、1番反対側のバンドメンバーの子めちゃくちゃ感動してたよ…ちゃんと君が作ったMVは人の心を動かせてるんだよ…。

そのまま勢いに任せて飛び出していくの、彼方が自分の行動原理、元々のMVを作る理由に立ち返ることができたのが現れていてとてもいい。そうだ、元々は自分は先生の歌に感動したんだ、だから曲に映像をつけるという形で先生を応援したかったんだ、先生が曲に込めた本当の思いは、好きな音楽を諦める苦しさは自分にはわからないけど、応援するのは自由なはずじゃないか、受け取ってくれないとしても僕は先生を応援したいんだ、って感じ。どうでもいいけど「気分悪いんで、早退しまぁぁーーーーーーーーっす!!」「…どこが……」、好きすぎる。彼方がチャリで飛び出して行ったのを見つけたトノの表情もね…「それでこそお前だ」みたいな、「俺はもう諦めた側だから、諦めた側の気持ちがわかってしまったから何も言えないけど、お前なら」みたいな…。

彼方が学校飛び出した時まだ日高かった気がするんだけど、夕焼けになるまでってことは最低でも3時間くらいはチャリを漕いでいたことになる…?クソ暑い中をひたすらチャリ漕ぎ続けて、途中で派手に転んで、ボロボロになっても砂浜まで追いかけて辿り着いた彼方の台詞で3回とも泣きそうになっちゃった。あくまでも「諦めることの苦しみを知らない側」として発される言葉なのがすごくいいなと思った。「諦めることの苦しみはわからないけど、諦めることは苦しいことなんだ」とわかった上での言葉だからこその重みだと思う。「作り続けてきた人がそのことを誇ってほしい」「僕には諦めることの苦しさはわからない。それでも僕は先生の歌に感動したんだ」「まだ3曲しか聴いてない」「先生がそう思えないならせめて僕は、100曲全部聴いて感じたことを形にします」(毎回ここで情緒崩壊してるので記憶が怪しい)のこの畳み掛けが…もう…特に「作り続けてきた人がそのことを誇ってほしい」は、作り始めたばかりの彼方からの、先生の100曲やトノの51冊への今表明できる最大級の敬意だったんだと思う。それと同時に、3年目でプロに憧れるのをやめてもなお19年弾き続けてきた、7000冊読んで6年書き続けてきたけど新人賞に応募することすら許されずに筆を折った、4年間専門にし続けたけど割としょうもない理由で研究者を諦めざるを得なかった、私自身への肯定でもあったような気がした。この台詞だけであと100回は泣ける気がするしあと5年はとりあえずデザイナーとして頑張れる気がする。ありがとう彼方。

2本目のMVもね…すごくいいよね…最後の着地点になる、1番大事なMVが先生だけじゃなくて我々観客のこともしっかり泣かせにくるの、そうじゃないといけないはそうなんだけどなんか…いいMVだなって思います(IQ2)。曲名が未明で歌詞は快晴なのに夕方〜夜の空を選んだのも「終わりの歌」という本質を大事に作ったのが伝わってくるし、主人公のおさげの女の子が何を描いてるのかは見えないけど手に青っぽい絵の具がついてるのも示唆の仕方がお洒落だし。女の子の瞳にずっと人影が映り込んでいて、きっとこの子は先生でもあり、彼方でもあるんだろうなって思った。描きたいものを何度も何度も描こうとトライするその姿は100曲積み上げてきた織重先生であり、瞳の中の人影は織重先生にとっての音楽であり、音楽で表現したかった何かであり、それでいて人影なのは彼方の「僕はこのMVで先生を描きたい」という気持ちの表れでもあるんじゃないかな…って。MVが「新規作成(N)」で始まるのも「新規作成(N)」と「書き出し(O)」が繰り返されるのも、途中で涙で視界が歪んで「新規作成(N)」がぐちゃぐちゃになるのも、画面が「新規作成(N)」で覆われるのも、MV最後の締めが「書き出し(O)」じゃなくて「新規作成(N)」なのも、「作り続けてきた、完成させ続けてきたあなた」への賛歌でありそれ以上に「たとえ何も生み出せなかったとしても、筆を取る選択をしたあなたは尊い」「苦しくても前に進もうとする意思だけは捨てなかったことを誇れ」「そして願わくは、またいつか前に進もうとしてくれますように」という祈りだったような気がして…本当に…。いいMVだった。映画の公開期間が終わってからでもいいから未明のMVもようつべに上がってほしいな…円盤の付録にMVだけ抜粋したボーナストラックがついてるとかでもいいよ。円盤出たら買うから…。

織重先生、即退職届出しちゃうのあまりにもロックで笑っちゃった。先生続けながらでもよかったんじゃ…?という気持ちと、親にはどうやって話したんだろうという気持ちと、この先どうするんだろう…とりあえずバイト…?という気持ちと、その思い切りがあればきっと大丈夫だよ、今後に幸あれ…という気持ちが共存している。最後笑ってくれてよかったね…かわいいね…。いつか先生と生徒じゃなくてプロのアーティストとプロの映像クリエイターとして再会して、公式のMVを彼方が作ったりしてほしい。そのイラストとかコンセプトデザインをトノがやったりしてたらめちゃくちゃいい。

映画のその後について

そうトノですよ、後日談コミックですよ。参考書選んでる時に1冊だけ絵の参考書も黙って手に取って、彼方には(おそらく)何も言わないの、らしくてすごくいい。トノも彼方の2本目の未明MV見たのかな。きっと見たんだろうな。「新規作成(N)」の群れにトノも少しでも救われてくれてたらいいよね…。トノはずっと「周りが言うから」で絵続けてきたんだろうから、それを美大行かない!ってしたことで肩の荷が少しでも降りてたらいいな。周りの期待とかを背負わずに、受験勉強の息抜きとかにちょっと絵の練習したりとか、今後感動する景色に出会えたりして描きたい!ってなったら描くとか、そういう力の抜けた向き合い方ができるといいな〜。いつか、絵ってやっぱり楽しいじゃんって心の底から思えるようになったらいいね。

ちなみに映画初見は6/15だったんですけど、14日にCDだけ先に買いました。なんでや。いやカセットテープがほしかったからなんですけど。映画も曲もめちゃくちゃ刺さったので買っておいて正解だった〜〜。先週の仕事中と作業中ようつべmusicでずっと聴いてたからたぶん「未明」の4.5万回中500回くらいは私だと思う。

「アイデンティ」と「ナイト・アンド・ダーク」はなんか雰囲気変わった?というか未明やビオトープあたりと比べて声色のコントロールが効いてる気がするな〜と思っていたら「映画の後の時系列で、アーティストとして活動していく中で出会った人たちの意見を取り入れて作った曲という設定」らしいです。

設定、エモ〜〜〜〜〜。というかこういう形で「織重夕はちゃんとこの後アーティストとしてどうにかこうにか生き残ってるよ、活動続けてるよ」って示してくれるのめちゃくちゃ嬉しい。退職届出した後の動向がわからなかったらちょっと心配で夜しか寝れないところだった。

「ナイト・アンド・ダーク」聴いてる時に見えた幻覚でも置いといてそろそろ終わりにしようと思います。1万字あるらしいですこの怪文書。なんだよ1万字って…

@raychan
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