仮説理論④ 「問題の解消」

ryosukediary
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前回の内容で、より良いパートナーシップを育むための仮説理論の全体像を示しました。この理論は4つの分類からなるため、それぞれの要素について、できる限り言葉にしていきます。

今回は、非日常×短期に分類される右下の「問題の解消」についてです。

問題の解消

  • 軸:非日常×短期

  • 目的:不和や対立を乗り越える

  • 例:喧嘩を収める

概要

どれだけ仲の良い関係であっても、異なる価値観を持つ2人である以上、お互いの違いから対立することや、精神的な余裕がなく上手く接することができない日はあるはずです。コトの大小はあれど、このような問題は必ず起こります。そんな瞬間に問題を共に乗り越え、解消していけることは、2人の良好な関係を続けていくために外せない要素です。

日本において、離婚の原因として最も多く挙げられるのは、男女ともに「性格が合わない」ことです。つまり、性格が違うということは向き合うべき問題の筆頭です。これは「全ての問題は対人関係の悩みである」と説いたアドラーの言葉も重なります。

一方、違うということはむしろ豊かなことなはずです。違うからこそわかり合う喜びがあるし、この世界を生きていく上で互いを補い合うことができます。

お互い違う人間であることは疑いようのない事実です。この事実を苦しみとしてではなく、喜びとして享受できるように、2人の関係性の中で起きる問題に同じ目線で立ち向かう協力関係を作れるとことが大切です。

この要素がもたらす効果

2人の間に不和や対立を抱え続けることは、関係を終える十分な理由になり得ます。問題を解消することは、関係性を壊すリスクを排除することとも言えるかもしれません。

一方で、2人の間に立ち現れた問題を乗り越えることができると、関係性はより深まりを見せるでしょう。仮説理論でいう信頼関係の深化、関係の発展に繋がっていきます。起きた問題に屈するか、より良いパートナーシップの基点とするかは2人の向き合い方次第です。

具体的実践

対立が起きた時は、やはりお互いに対話の中で2人にとってより良い形を見つけていくことが基本方針になるでしょう。しかし問題の渦中にいる状況の中、建設的に対話をすることは簡単なことではありません。ここでは二つのヒントを紹介します。

  1. 関係性の毒素

カップル研究の第一人者であるジョン・M・ゴッドマンの提唱するモデルで、対立が起きた際の失敗に繋がる4つのタイプが紹介されています。4つのタイプとは「非難」「侮辱」「自己弁護」「逃避」です。非難や侮辱に関してはわかりやすいですが、自己防衛的に他者批判をする自己弁護や、会話を無視したりする逃避といったタイプも関係にとって同等に毒であるとしている点が示唆に富んでいます。それぞれのタイプに応じた処方箋も紹介されているので、現時点で対立に苦しんでいる方にはとても参考になるかと思います。

  1. ネガティブ・ケイパビリティ

ネガティブ・ケイパビリティとは「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える力」のことを指します。2人の間に起こる対立の中には、その場ですぐ解決できないほど深刻であったり複雑であることもあると思います。問題に対して向き合うことは基本姿勢とはなりますが、解決の糸口が見えずにお互いに疲弊していくことや、腹落ちしていない状態で「あなたと私は合わない」と早急に結論を出すことは望んでいないはずです。問題は解決しようという人間の性に逆らう行為ですが、問題を保留して、お互いに気持ちを整理することや考え方を熟成させていく時間を取ることで、解決に向かうことや問題が問題でなくなることもあるのです。この仮説理論において、問題の"解決"ではなく"解消"と表現しているのはそのためです。ゴッドマンの研究でも、幸福なカップルのうち69%のカップルは、10年後にも同じ未解決の対立を抱えているというデータも出ています。解決だけが全てではないのです。

対立に誠実に向き合うことと、解決が難しいことに早急に結論を出さないという矛盾したスタンスを共存させることが問題の解消には必要なことのように思います。

ハードル

親密な関係であるが故に、「この関係を壊したくない」「壊れるくらいなら我慢しよう」などと、問題を目の前に向き合うことを避けてしまう恐れは誰にでもあると思います。2人の間に生じる問題は、これまで扱えていなかった2人にとって必要なことを教えてくれる存在と捉えることもできます。日常的に培った信頼関係や時に勇気で恐れを乗り越え、問題に向き合った先にある2人の新しい在り方を掴んでいきましょう。

サポート

2人で解決できない問題の解決は、大きなインパクトがあり、一定のサポートがあります。カップル向けのカウンセリングは検討すべき支援サービスだと思います。第三者を交えての対話は、建設的なコミュニケーションを促し、確実に関係を前に進めてくれるはずです。

また、対話の質を向上させることも有効な手段です。上記の関係性の毒素やネガティブ・ケイパビリティといった対立を扱う上でのリテラシーを高めていくことも、今すぐできることとして取り組む価値があります。

@ryosukediary
日々過ごす中で思うことを超個人的な目線で書き留めた言葉たち。