しずかなインターネット

日記やエッセイにちょうどいい
文章書き散らしサービス

ログイン

【後編】制度への異議を、パブコメにする―国民投票法施行令改正案を読む

Break the Frame@サリー
·
公開:2026/9/16

前編では、今回の改正には私自身が支持できる投票環境の改善がある一方、2021年改正法附則4条に残された有料広告、運動資金、インターネット利用など、公平・公正をめぐる課題は、2026年法律第73号による改正後の条文でも残ることになっていることを確認しました。

私は、個々の改善そのものではなく、その宿題を残したまま投票環境側の法整備が先に進む順序に反対しています。

後編では、その問題意識を実際のパブリックコメントへどう落とし込むか。そして、今回の政令案・省令案そのものに直接言える問題は何かを考えます。


このパブコメで、どこまで言えるのか

最初に、今回のパブリックコメントの射程を確認します。

意見募集されているのは、国民投票法そのものではなく、国民投票法施行令の改正案と施行規則の改正案です。

運動資金、有料インターネット広告、最低投票率などは、少なくとも今回公示されている政令案・省令案の改正事項としては示されていません。

最低投票率の導入には法律そのものの改正が必要です。また、広告や運動資金について新たな規制を設ける場合にも、その法的根拠を別に検討する必要があります。

ただし、制度全体への問題意識を書いてはいけないわけではありません。

行政手続法42条は、命令等制定機関に、提出された「当該命令等の案についての意見」を十分に考慮するよう求めています。

だから重要なのは、制度全体への問題意識を、今回の政令案・省令案をどう評価するかという形へ戻すことです。

たとえば、

2021年改正法附則4条が公平・公正確保の課題として掲げた広告、運動資金、インターネット利用に関する措置が完了していない状態で、今回さらに実施環境側の整備を進めることに反対します。

と書く。

今回の意見募集要領は、募集対象以外への意見を提出意見として扱わない場合があるとしています。

制度全体への問題意識を捨てず、今回の案との関係が分かる言葉へ翻訳する。

私はこの方針で書きます。


第一の意見――私は、この順序を是認しません

前の章で確認した通り、2021年改正法附則4条に残された有料広告、運動資金、インターネット利用の課題は、2026年法律第73号による改正後の条文でも法律上の検討事項として残ることになっています。

三年という検討の目途も、すでに経過しています。

その状態で、今回はさらに、過去の公職選挙法施行令改正を「公選法並び」として国民投票制度へ取り入れる整備が進められています。

私は、「法律上、この政令改正をしてはいけない」と主張しているわけでも、「将来起こり得るすべての問題が解決するまで何一つ変えるな」と言っているわけでもありません。

問題にしているのは、国会自身がすでに法律に書き込んだ公平・公正の課題を残したまま、実施環境側の整備が進む順序です。

ですから私は、まず次の趣旨の意見を書きたいと思います。

2021年改正法附則4条が国民投票の公平及び公正を確保するための検討課題として掲げた、有料広告、国民投票運動等の資金、インターネット等の適正な利用については、2026年法律第73号による改正後の条文でも法律上の検討事項として残ることになっています。

その状態で、今回さらに国民投票の実施環境側の制度整備を先行させることには反対します。

公平・公正の確保に必要な措置を先行して、又は少なくとも実施環境の整備と一体的に進めるべきです。

ただし、今回の個別改正には私自身が支持できるものもあり、2026年法律第73号を施行するために必要な整備も含まれています。

だから、「今回の政令・省令を一文字も制定するな」と言いたいわけではありません。

特に確認したいのは、法律第73号の施行に直接必要な整備とは別に、過去の公職選挙法施行令改正を「公選法並び」として追加的に取り入れる項目です。

公選法で採用されたというだけで機械的に導入せず、国民投票でも同じ制度を採る必要性と相当性を示してほしい。

「投票に関する書類等の保存期間の見直し」は、まさにその一つです。これは法律第73号による国民投票法本体の改正事項ではなく、今回の政令案で別に加えられています。


総論だけでは足りない――今回の案そのものを見る

制度全体への異議とは別に、今回の案そのものへ直接言える問題もあります。

前編で結論を保留した、1(2)③「投票に関する書類等の保存期間の見直し」です。

総務省の概要には、

投票に関する書類等の保存期間の見直し

投票に関する書類等の保存に係る事務を合理化する。

とあります。

しかし、何を、どの保存期間・ルールへ変えるのかは書かれていません。

私がここにこだわるのは、憲法改正国民投票の手続が適正だったかを後から確かめる資料を、どこまで、どのくらい残すのかという問題だからです。

保存期間を見直すのであれば、何を、どの期間まで残し、そのルールで十分だとする理由は何なのか。

まず現在のルールと、今回の概要が参照している2023年改正を確認します。


「保存に係る事務を合理化する」とは何なのか

国民投票法施行令57条は、「投票に関する書類」を、国民投票無効訴訟が裁判所に係属しなくなった日または国民投票の期日から5年を経過した日のうち遅い日まで保存すると定めています。

つまり、少なくとも5年間、訴訟がそれより長ければ終了まで保存する仕組みです。

では、今回の「合理化」で何を変えようとしているのでしょうか。

手掛かりになるのが、2023年の令和5年政令第33号です。

今回の概要は、令和5年政令第33号による「投票に関する書類等の保存期間の見直し」を、国民投票法施行令に反映させる対象として挙げています。


未使用投票用紙は、ただの「余った紙」なのか

今回の話を理解するには、さらに2019年まで遡る必要があります。

当時、地方自治体側から、選挙や最高裁判所裁判官国民審査で使わなかった投票用紙について、保存期間を見直してほしいという提案が出されました。

背景にあったのは、未使用投票用紙を長期間保存し続けることによる、保存スペースなどの実務上の負担です。

2019年の対応方針では、国は、

保存スペースの確保などの支障を踏まえ、法制的な面等から可能な方策を検討し、令和元年度中に結論を得る。その結果に基づいて必要な措置を講ずる。

としていました。

その結果が、同じ資料の「現在の対応状況」にまとめられています。

ここで重要なのは、当時の総務省が、未使用投票用紙を単なる「余った紙」とは考えていなかったことです。

資料は、1976年6月16日の名古屋高裁判決を踏まえ、

未使用の投票用紙は、選挙等が適正に施行されたことの証拠となる

と説明しています。

そのため当時は、使用済みの投票用紙と未使用の投票用紙について、同様の期間の保存が義務づけられていました。

では、未使用の投票用紙だけ、保存期間を短くすればよいのでしょうか。

総務省は、この点についても慎重でした。

検討の結果、

  • 未使用投票用紙だけを見直すことは、国民審査や選挙における制度の整合性を損なうこと

  • 投票に関する犯罪の時効との関係があること

  • 類似した投票を伴う他制度とのバランスも考える必要があること

などから慎重な検討が必要だとして、当時は「実現が困難」との判断に至っています。

ここで対立していたのは、長期保存による行政負担と、適正な投票だったことを後から確かめる証拠としての価値です。

2020年時点では、制度の整合性や犯罪の時効なども踏まえ、国は保存期間の見直しを「実現が困難」と判断しました。

しかし、その後、制度は変わります。


2020年には慎重、2023年には短縮――何が変わったのか

前の章で確認した通り、2020年には、未使用投票用紙の証拠としての性格、制度の整合性、犯罪の時効、他制度とのバランスなどから、保存期間の見直しは「実現が困難」と判断されていました。

しかし、その後、制度は実際に変わりました。

2023年2月10日、「最高裁判所裁判官国民審査法施行令及び公職選挙法施行令の一部を改正する政令(令和5年政令第33号)」が公布され、同年2月17日に施行されました。

公職選挙法施行令45条では、「当該選挙に用いなかった投票用紙」について、その他の「投票に関する書類」とは別の保存期間が設けられています。

国政選挙では、選挙の効力や当選の効力を争う訴訟の出訴期間が経過する日、または訴訟が係属しなくなった日のうち遅い日まで。

地方選挙では、異議申出や審査、訴訟の手続が終了するまでの期間に応じて保存する仕組みです。

最高裁判所裁判官国民審査についても同様です。

現在の施行令6条は、「審査に用いなかった投票用紙」を、それ以外の投票関係書類とは別に扱っています。

それ以外の書類は原則として審査の日から5年間保存する一方、未使用投票用紙については、国民審査の効力などを争う訴訟の出訴期間が経過する日まで、訴訟が提起された場合にはその訴訟が係属しなくなった日まで保存する仕組みです。

つまり2023年には、未使用投票用紙だけを、その他の投票関係書類から切り分け、争訟手続に対応した別の保存期間を設けるという制度へ変わりました。

ここで分からないことがあります。

2020年に「実現が困難」とされた理由を、その後どのように評価し直して2023年の制度変更へ至ったのでしょうか。

政策判断が変わること自体はおかしくありません。

しかし、本稿で確認した2019年の総務省第1次回答、2020年のフォローアップ資料、2023年の政令及び現行条文からは、2020年に示された懸念をその後どのように評価し直して2023年改正に至ったのか、その詳細までは確認できませんでした。

これは、その説明がどこにも存在しないという意味ではありません。

分からない理由を、私の側で補うことはしません。

確認できるのは、2020年には実現困難とされ、2023年には未使用投票用紙を別枠とする制度が導入されたというところまでです。

そして今回、その2023年改正の「投票に関する書類等の保存期間の見直し」が、国民投票法施行令へ反映する項目として挙げられています。

では、公職選挙や国民審査で行われた2023年の見直しを、国民投票法施行令へ反映することをどう評価すべきでしょうか。


公選法で合理化したから、国民投票でも同じでよいのか

そして2026年。ここで、前編から繰り返してきた問いに戻ります。

「公選法並び」であることは、それだけで国民投票への反映を正当化するのでしょうか。

通常の選挙と国民投票には、共通する実務がたくさんあります。

だから、公職選挙で改善された制度を国民投票へ取り入れること自体がおかしいわけではありません。

しかし、憲法改正国民投票は、通常の選挙と全く同じ制度でもありません。

日本国憲法96条は、国会が発議した憲法改正について、国民の承認を求めています。

その結果によって決まるのは、一人の議員や首長を誰にするかではなく、憲法そのものを変えるかどうかです。

だからこそ、前の章で書いたように、私は、国民投票が適正に行われたことを後から確かめるための資料を、どこまで、どのくらいの期間残すのかを、単なる保存事務の問題として扱いたくありません。

まず、現在の保存制度を整理します。

国民投票法85条は、実際に投じられた投票について、有効・無効を区別した上で、投票録・開票録とともに、国民投票無効訴訟が裁判所に係属しなくなった日または、国民投票の期日から5年を経過した日のうち遅い日まで保存するよう、法律そのものに定めています。

一方、現行の国民投票法施行令57条は、「投票に関する書類」についても、国民投票無効訴訟が裁判所に係属しなくなった日、または国民投票の期日から5年を経過した日のうち遅い日まで保存すると定めています。

現在の57条には、公職選挙法施行令などの現在の条文のように、未使用投票用紙だけを取り出して、別の保存期間を定める規定はありません。

しかし、前の章で確認した通り、2023年の改正では、公職選挙と最高裁判所裁判官国民審査について、未使用投票用紙だけをその他の投票関係書類から切り分け、争訟の期間に対応した別の保存期間が設けられました。

そして今回の概要は、その2023年改正における「投票に関する書類等の保存期間の見直し」を、国民投票法施行令へ反映する項目として挙げています。

2023年改正で、その他の投票関係書類とは別の保存期間が設けられたのは、未使用投票用紙でした。

一方、今回公示された概要には、保存期間見直しの対象となる書類が具体的に示されていません。

したがって、今回も未使用の国民投票用紙が対象になるのかは、現在の公示資料からは確認できません。

具体的な改正条文も、改正後の保存期間も示されていません。

参考までに、国民投票法127条は、国民投票の結果に異議がある投票人が、

国民投票の結果が告示された日から30日以内

に、東京高等裁判所へ国民投票無効訴訟を提起できると定めています。

ただし、今回公示された概要には、保存期間をこの30日という出訴期間に連動させるとは書かれていません。

したがって、「今回の案では、未使用国民投票用紙を結果告示から30日で処分できるようになる」とは言えません。

具体的に何を保存期間見直しの対象とし、どの保存期間・ルールを設けるのかは、現在の公示資料から確認できません。

なお、実際に投じられた票については、先ほど確認した通り、国民投票法85条が別に保存期間を定めています。

私が主張したいのは、「未使用投票用紙も絶対に5年間残せ」ということではありません。

前の章までに見た通り、総務省自身がかつて未使用投票用紙の証拠としての意味や、制度の整合性、犯罪捜査との関係を認めていました。

仮に今回、未使用の国民投票用紙について現在より短い保存期間を設けるのであれば、2019年に総務省が選挙等について示した証拠としての価値と、行政負担との関係を、国民投票ではどのように評価したのかを示してほしい。

そのような見直しの妥当性を検討するためにも、まず何を、どの保存期間・ルールへ変えるのかを明らかにする必要があります。

「公職選挙などでそうしたから、国民投票でも同じようにします」だけでは、私には十分な説明に見えません。


第二の意見――保存期間を短縮するのであれば反対します

したがって、今回のパブリックコメントでは、1(2)③について次の趣旨の意見を書きたいと考えています。

政省令概要1(2)③「投票に関する書類等の保存期間の見直し」について、仮に今回の見直しが、未使用の国民投票用紙について、現在より短い保存期間を設けるものであるならば、その部分に反対します。

未使用投票用紙については、総務省自身が2019年に、適正に管理され残存していること自体が選挙の適正な施行を示す証拠となることや、争訟期間終了後も投票に関する犯罪の捜査に利用されることが想定されると説明していました。

仮に憲法改正国民投票についても、2023年の公職選挙等と同様に未使用投票用紙の保存期間を短縮するのであれば、公職選挙等について先に同様の見直しが行われたことだけで、その短縮が当然に正当化されるとは考えません。

国民投票における事後的な検証可能性への影響と、保存事務の負担軽減をどのように比較衡量したのかを具体的に示してください。

ここで根拠としている2019年の総務省回答は、次の資料です。

総務省はこの回答で、1976年6月16日の名古屋高裁判決を踏まえ、未使用投票用紙について、

その性質上それが適正に管理され残存すること自体が適正に施行されたことの証拠となる

と説明しています。

また、争訟期間が終了し、選挙や当選の効力が確定した後でも、詐偽投票罪や投票偽造・増減罪などの犯罪捜査に活用されることが想定されるともしています。

一方で、自治体側には、未使用投票用紙を長期間保存するためのスペースや費用といった負担がありました。

私は、その負担が存在しないと言いたいわけではありません。

また、

「未使用投票用紙は絶対に5年間保存しなければならない」

と主張しているわけでもありません。

行政側の保存負担も認めた上で、

仮に憲法改正国民投票でも未使用投票用紙の保存期間を短縮するのであれば、なぜその短縮が妥当なのか。

その場合、国民投票を後から検証する可能性に支障は生じないのか。

そこを具体的に説明してほしいと求めます。


何を変えるのか示さずに意見を求める、という姿勢

今回のe-Govの意見募集ページには、「命令などの案」として「政省令概要」が掲載されています。

そこに保存期間について書かれているのは、

投票に関する書類等の保存期間の見直し

投票に関する書類等の保存に係る事務を合理化する。

という説明です。

前の章で見た通り、この説明だけでは、何を、どのくらいの期間保存する制度へ変えるのか分かりません。

ここで私が次に疑問に思ったのは、

その状態で、改正案について意見を求めることができるのか。

ということです。

今回の概要は、1(2)③について、2023年の「最高裁判所裁判官国民審査法施行令及び公職選挙法施行令の一部を改正する政令(令和5年政令第33号)」の内容を国民投票法施行令へ反映するとしています。

そこで私は、その2023年改正まで遡り、

「同じ構造なら、未使用国民投票用紙について、他の投票関係書類とは別の、より短い保存期間を設けるのだろう」

と推定しました。

しかし、本来、意見を求められる側が本稿のように過去の別法令の改正まで調べなければ、今回何を変えようとしているのか推定もできない状態でよいのでしょうか。

行政手続法39条1項は、命令等を定めようとするとき、その案と関連資料をあらかじめ公示し、広く一般の意見を求めることを定めています。

そして同条2項は、公示する命令等の案について、「具体的かつ明確な内容」であることを求めています。

保存期間を見直すとして意見を求めながら、

  • 何が見直しの対象なのか

  • 現在の保存期間はどうなっているのか

  • 改正後はどのくらいの期間になるのか

  • 具体的にどの条文をどう変えるのか

が、公示された資料から確認できません。

行政が国民に意見を求める以上、何について意見を求めているのかを分かる形で示すのは最低限の前提ではないでしょうか。

その核心を示さず、「合理化します」とだけ説明して意見を募る。

私は、この公示の仕方では、意見を提出するための情報提供として十分ではないと考えます。

保存期間は、具体的な数字によって評価が変わります。

5年から4年にするのか。

1年にするのか。

それとも、国民投票無効訴訟の出訴期間などに連動させるのか。

いずれも「保存に係る事務の合理化」と表現することはできますが、その意味は同じではありません。

だから、「保存事務を合理化します。意見をください」と言われても、それだけでは賛否を判断できません。

何を、どのように変えるのか。まず、それを分かる形で示してほしい。

そこから、私の第三の意見につながります。


第三の意見――具体案を示し、意見を言えるようにしてほしい

したがって、1(2)③については、保存期間の見直しそのものへの意見とは別に、次の意見も書きたいと思います。

政省令概要1(2)③について、現在公示されている「投票に関する書類等の保存に係る事務を合理化する」という説明だけでは、具体的な改正内容を確認できません。

少なくとも、

  • 保存期間見直しの対象となる書類

  • 現行の保存期間

  • 改正後の保存期間

  • 具体的な改正条文案

を示してください。

その上で、具体的な改正内容を公示し、それについて実質的に意見を提出できる機会を確保してください。

私は、今回の意見募集が直ちに違法だと断定しているわけではありません。

求めたいのは、何を変えるのか分かる状態で、意見を言えるようにしてほしいという、かなり基本的なことです。


自分のパブコメを組み立てる

ここまで、かなり長く調べてきました。

しかし、実際にパブリックコメントを書くときに、この記事を全部要約する必要はありません。

そして、この記事で取り上げた論点だけを書く必要もありません。

私が見落としていることも当然あると思います。

今回の改正について、私が持っていない知識や経験から別の問題に気づいた人がいれば、その人自身の論点で意見を出してほしいと思っています。

パブリックコメントは、同じ意見を何通集めたかを競う多数決ではありません。

e-Govの制度説明にも、下記のように明記されています。

パブリック・コメント制度では、提出された意見の「量」ではなく「内容」を考慮します。同一内容の意見が多数提出された場合であっても、その数が考慮の対象となる制度ではありません。

ですから私は、この記事を読んだ人に、判で押したような同じ文章を量産して送ってほしいわけではありません。

この記事で示した論点を使うのであれば、自分が重要だと思った部分を選び、自分なりの理由で書く。

この記事にはない問題に気づいたのであれば、それを書く。

異なる知識や経験を持つ人が、それぞれ別の角度から今回の案を検討し、補完するように意見を出す。

その方が、この制度の使い方として意味があると私は思います。

その上で、意見を文章にするときには、これもあくまで私なりの目安ですが、次の四つの部品に分けると整理しやすいと思います。

対象。 どの改正について書くのか。

結論。 反対するのか、修正を求めるのか、賛成するのか。

理由。 なぜそう考えるのか。

求める措置。 行政に何をしてほしいのか。

今回、この記事で扱ったものだけでも、たとえば三つの論点があります。

  • 制度整備の順序。 公平・公正確保のための課題を残したまま、国民投票の実施環境側だけを先行して整備しないでほしい。

  • 保存期間。 未使用国民投票用紙について、より短い保存期間を設けるのであれば、その必要性と、事後的な検証可能性への影響を具体的に示してほしい。

  • 公示内容。 保存対象、現行の保存期間、改正後の保存期間、具体的な改正条文案を示してほしい。

このうち、自分が重要だと思うものだけを書いて構いません。

そしてもちろん、この三つ以外について書いても構いません。

今回の政省令概要には、投開票、不在者投票、投票管理者、選挙事務関係者の住所、在外投票など、ほかにも複数の改正項目があります。

私とは別の資料を読んだ人。

選挙実務を知っている人。

在外投票や不在者投票を実際に経験した人。

プライバシー、アクセシビリティ、情報セキュリティなど、別の分野から制度を見る人。

そうした人だからこそ気づける問題もあるはずです。

この記事は、論点を閉じるためではなく、それぞれが自分の論点を見つけるための足場として使ってもらえればと思います。

ただし、どの論点を書く場合でも、今回の政令案・省令案との関係が分かるようにしておく方がよいでしょう。

今回の意見募集要領は、意見募集対象である命令等の案以外についての意見は、提出意見として取り扱わない場合があるとしています。

だから私は、制度全体への異議だけで終わらせず、保存期間や公示内容のように、今回の案そのものへ直接言える意見も書きます。

同じ文章を百通つくることより、それぞれの人が、それぞれの根拠を持って具体的な意見を一つ出す。

私は、そういうパブリックコメントを増やしたいと思っています。


賛成する項目があってもいい

もちろん、今回のパブコメは反対意見を書くためだけの制度ではありません。

前編で確認したように、今回の改正には、災害時の投開票、不在者投票、投票管理者の交替制、期日前・不在者投票の宣誓、在外投票手続など、私自身が支持できる改善もあります。

そうした項目について、「この変更には賛成します」と書くこともできます。

私は護憲派ですが、護憲派だから全部反対するというパブコメを書くつもりはありません。

支持できる改善は支持する。

問題のある部分には反対する。

そして、個々の制度とは別に、制度整備全体の順序には異議を述べる。

その方が、私自身の考えに正確です。皆様も自分自身の考えに正確なパブコメを是非書いてください。


1000字は「上限」ではありません

実際に提出するときの注意点も一つ。

今回の意見募集要領では、意見が1000字を超える場合には、その内容の要旨を添付するよう求めています。

つまり、1000字以内でなければ提出できない、という意味ではありません。

また、各意見について、対象となる命令等の案の名称や該当ページ等を記載するよう求めています。

長く書く場合でも、前の章で整理したように、対象・結論・理由・求める措置が分かるようにしておけば、意見の筋道はかなり見えやすくなります。


私はここから抗います

前編の最初に書いた通り、私は護憲派です。

現時点で、日本国憲法の改正に反対しています。

だからこそ、「改憲に反対なのだから、国民投票の制度なんてどうでもいい」とは思いません。

もし憲法という国の根本的な規範を変える手続が行われるのであれば、誰もが適切に投票できる環境と、その一票に至るまでの意思形成が、できる限り自由で、公平で、公正であることの両方が重要です。

投票箱へたどり着ければ、それだけで民主主義が完成するわけではありません。

  • 有料広告。

  • 運動資金。

  • インターネット上の情報環境。

2021年の国会自身が、国民投票の公平・公正を確保するための課題として法律に書き込んだこれらの問題は、2026年法律第73号による改正後の条文でも、検討事項として残ることになっています。

その一方で、投票環境側の制度は「公選法並び」で前へ進んでいく。

私は、その順序を是認しません。

今回のパブリックコメントだけで、国民投票法をめぐる問題を全部解決できるわけではありません。

広告、運動資金、最低投票率、インターネット上の情報環境は、少なくとも今回公示されている政令案・省令案の改正事項としては示されていません。

だからといって、

「今回のパブコメとは関係ないから」と、制度全体への問題意識を自分から切り捨てる必要もないと思います。

制度全体への問題意識を、今回の案との関係が分かる言葉へ翻訳して書く。

同時に、保存期間のように、今回の案そのものへ直接言える問題について具体的に書く。

何をどう変えるのか分からないのであれば、分かるように示してほしいと求める。

そして、この記事で扱っていない問題に気づいた人は、その人自身の論点を書く。

私は、同じ文章を大量に送ることよりも、それぞれが持っている知識や経験を持ち寄り、異なる角度から具体的な意見を出すことに意味があると思っています。

パブリックコメントは、賛否の票数を競う国民投票ではありません。

行政手続法42条は、意見公募手続で提出された「当該命令等の案についての意見」を十分に考慮することを、命令等制定機関に求めています。

一通書けば、何かが必ず変わる。そういう制度でもありません。

それでも、いま行政が意見を求めています。

今回のパブリックコメントの入口はこちらです。

案件番号は145210768

締切は、2026年9月24日(木)23時59分です。

提出する場合は、e-Govのページに掲載されている「意見公募要領」と「政省令概要」を確認した上で、自分の意見を書いてください。

私は、「対象外」として切り分けられることを恐れて、自分の問題意識を最初から消すのではなく、今回の案へ届く言葉にして出したい。

護憲派として。国民投票法に残された宿題を、終わったことにしないために。

そして、憲法を変えるための手続が整えられていく過程そのものを、黙って通過させないために。

私はここから、意見を出します。

@sallypenguin
サリーといいます。普段はBlueskyに生息しています。 bsky.app/profile/sillysallypenguin.bsky.social