なにもしらないからともだちでいられる 第2話

愁羽淋
·
公開:2026/2/21

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第2話 お金を稼がなきゃ

A デネアの提案

 レイチェルとヒミツの相談を終えて、わたしは学園を出て魔女っ子寮へ。ふとその道すがら、大きなキノコに腰掛けた白いドレスの魔女っ子が目に入った。甘ロリのフィッシュテイルに、胸と頭にペールゴールドの大きなリボン。白いパラソル。

 デネア姉さまだ……。

「ひさしぶり~♪ アリスロッテ~♪」

 同郷のご近所さんだけど、いまじゃ敵か味方かわかんないクソ要注意人物。

「何しに来たの!? まただれかを拐いに来たんじゃないでしょうね!?」

「やだ、口ぎきの悪い子♪ それに、魔女っ子を拐っていったのはあなたじゃない?」

「わたしが拐った!? 魔女っ子たちは自分からついてきたの! 自分の意志で!」

「あらそう♪ でも彼女らの親たちは、そうは見ないわぁ♪」

 キノコに座って、白いパラソルをくるくる回すデネア姉さまと、軽く臨戦態勢のわたし。

「魔法院の学費がいくらか知ってるぅ? 最低でも5千ゴールドよ?」

「それで? なんの用?」

「魔法を使える子のなかで、地域の貴族に気に入られたラッキーな子だけが魔法院に通えるの」

 わたしが聞いても、デネア姉さまはお構い無し。

「そこで3年過ごして『聖印』を受けて、卒業後は地元の貴族のお抱え魔法使いになる。その子たちがぁ、百人も失踪してるの。学費だけでも50まーんゴールドよぉ?」

「どういうこと? それを払えって言いにきたの?」

「ええ~っ? 払えって言ったら払えるの? グレイス・ミストを知っているでしょう? 彼女の地元からは学費のほかに20万の寄付を頂いてるのよ? 足したらい~くらだ♪」

 グレイスの実家、めっちゃ太いじゃん……

「いままで、ひとりふたりの失踪者はいたけど、ひゃーくにんって、魔法院の信用に関わるわぁ」

 てゆーか、その話し方。

「魔女っ子をすべて魔法院に戻してーって言いたいところだけどぉ、まー無理でしょう? それでぇ、もしあなたたちが魔女っ子学園を作るんだったらぁ、そこを正式に魔法院の姉妹校にしてもいいって、上のほうは言ってるの♪」

「上というと? ベルカミーナが?」

「んーん♪ 探求官サーチャー様は発言権を失って静かにしてる。決定は長老会」

「長老会が? わたしたちの独立を認めてくれるってこと?」

「そうよー。うらやましいわ♡」

 なーんかもう、イライラする。わざとやってんのかな、この話し方。

「断ったらどうなるの?」

「あなたたちが断っても、対外的には『魔女っ子学園は魔法院の姉妹校でぇす』ってゆー立場を貫くと思う♪」

「なんでそうなるの? わたしたちがウソだって言ったら?」

「それがねえ♪ 言えないのよぉ♪」

「はあ?」

「あなたのお友だちの、雛菊牧場デイジーランチの子たちいるでしょう? そのなかに魔法を覚えたいって子がいたから、3人ほど招待してるのぉ。ちっちゃい子は10歳って言ったかしらぁ?」

「ピリア!?」

「そうそう! ピリアちゃん! けっこう有能だって話よ?」

「ピリアを人質にするってこと!?」

「人質だなんてとんでもない♪ 自分の意志で来たのよ♪」

 敵か味方かわかんないって思ってたけど、敵じゃん……。

「デネア姉さまって……そんなひとだったんだ……」

「いやん♡ よーく考えて、アリスロッテ♪ ピリアを取り戻すのは、それほど難しくないわ。きっとできるはずよ。でも、魔法院の……『ある人物』は、そういうことをいくらでも思いつくひとなの。あなたの友人にも、家族にも、恋人にも揺さぶりをかけてくる。それが永遠に続くのよ? そしてその『ある人物』は、決して表には出ない。あなたが戦う相手は、あなたが殺したカーキスやユズみたいな、普通の魔法使い。あの子たちを殺したとき、どんな気分だった? スッキリした? また殺したい?」

 最悪。

「つまり……どうしろと……?」

「たったひとこと、『ウィッチリア魔女っ子連邦は、フルト・グレイド魔法院の姉妹校です!』って宣言するだけよぉ」

 

 どどだだだどでがすかぁぁぁぁぁんっ!

「あれ? 帰ったんじゃなかったっけ? 忘れ物?」って、フレア。

「ちょっとあなたたちに相談があるの! ほかのふたりは!?」

「生徒会室。ちょうど内装が終わったって連絡が来て……」

「ちょうどいい! あなたも来て!」

「ああ、うん。って、なにごと?」

 なにごともなにもだだどどどででがどでれかどぉぉぉぉぉん! と廊下階段走ってがらがらっ!

「たいへんなのグレイス! ヴェルデ!」

 生徒会室。まだ会長は決まってないけど、たぶんわたし。理事長と兼任。その暫定会長様のお出ましに、談笑してたふたりがきょとんとしてこっち向く。

「どうしたの? 魔法院の刺客でも乗り込んできた?」

「近いっ! 刺客じゃないけど――」

「三角?」

「遠ざかった!」

「五角形?」

「多角形から離れて! いや、そうじゃない、どうでもいいの、多角形どうでもいい。デネア姉さまが訪ねて来て、あれこれ言われたんだけど、わたしじゃ決めきれなくて!」

「とにかく落ち着いて。デネア様はなんて言ってきたの?」

「それは……」

 

 ――わかった……魔女っ子の3人に相談してみる……。

   返事はそれからでもいい?

 ――もちろん。色よい返事を待ってるわぁ♪

 

「……ということなの!」

「それで?」

「デネア姉さま、白いフリフリな傘をくるくる回して透明になって消えてった」

「そういうことじゃなく」

「とりあえず伝書コウモリを預かったんで、賛成なら青く塗って、反対なら赤く塗って返せばいいって」

「いーけないんだ。動物虐待いーけないんだ」フレア。

「魔法で蛍光させるだけでしょう? 虐待でもなんでもないわ」グレイス。

「あ、そうなんだ。わたしてっきりペンキ壺にぼっちゃんするのかと」わたし。

「要は、姉妹校の提案を受け入れろってことでしょう? わたしは賛成よ。それで備品が揃って学校として滑り出せるんだったら、それに越したことはないわ」

 グレイスが机に腰掛けて言う。

「でもさあ、それならわたしたち、外に出る必要なんかなかったってことになるじゃない? 言っちゃあ悪いけど、こんな辺鄙な森のなかまで来て『フルト・グレイド魔法院の姉妹校です』なんて、わけわかんない」

 頬杖してフレア。

「ヴェルデは?」

「一長一短ってところかしら。わたしたちの意志を通したいのはやまやまだけど、意地を張ってばかりでもいられない」

「賛成1、反対1、保留1ね」

「それじゃあ、アリスロッテ生徒会長の意見で決まりね」

 うわー。責任こっちきた。

「それなんだけどさあ、グレイスの実家には相談できないかなあ」

 言った途端、空気が凍った。

「…………」

「…………」

「…………」

 3人ともリアクションなし。

 リアクションないどころか、明らかにヤバい空気。ピッキーンって。やっばぁ、なにこれ。この3人、友だちじゃないの? 間になにがあるの?

「わ、わかった! わたしが決めるよ! 生徒会長だからね! うん!」

 

 いやー、変な汗かいたーって、生徒会室を出ると、フレアが追いかけてきた。

「よう! ちょっとカフェつきあって!」

「あ、うん。てゆーか、カフェまでできてたんだ」

「そ。ブサイクたちがやってんの。コーヒーオタクが混じってて、エチオピアとかニカラグアとかのスペシャルティコーヒーが飲めるの」

 ありとあらゆるオタクがおるんかーい。

「その地名って、どこ?」

「ん? わかんないけど、有名なコーヒーの産地らしいよ?」

 がらがらがらっ!

「ラズベリィモカマキアートにエクストラホイップ!」

「ダブルトール・シュガーリーフラテにヘーゼルナッツシロップトリプルで!」

 お金は円が使えた。円はトビチノ村で支給されてるものが細々と流通してる。

「あのさあ、大きい声では言えないけど、実家のこと、言わないほうがいいよ」

「そうなの?」

「わたしらみんな、地元の貴族に支援されて魔法院に来てるの。元から裕福で通ってる子ってほとんどいないんじゃないかな」

「あ、そうか。わたしも庄屋がお金出してくれたんだ」

 入学できなかったけど。

「でしょう? それで魔法院で3年学んだあとは、地元に帰って貴族のお抱えの宮廷魔道士になるの」

「わーお。きらびやかじゃん」

「気楽でいいよね。アリスロッテは」

 フレアはそういってなんとかマキアートをストローでくるくる。

「いいでしょ。これだけが取り柄だもん」

 わたしもなんとかラテをくるくる。

「ラハガキセの戦いから10年しか戦ってない。ヴァラー騎士団がガタガタしてるいま、またいつ戦国時代に戻るかわかりもしない。そうなるとわたしたち、3年後に、戦場で、敵として会うかもしれないのよ?」

「あー、そういうことかー」

「未来のことばかりじゃないよ。過去もそうだよ。わたしにお金を支援してくれてる貴族が、わたしの親友の家族を虐殺してるかもしれない」

 わー。リアクションムズいヤツきたー。

「でもさあ、そういうの、わたしたちには関係なくない?」

「関係ないって言えるのは、学園にいる間だけだよ。卒業したらコマになるんだよ、わたしたち。あなたの出身って、蒼鯨そうげい騎士団の双子原ふたごばるでしょう? 雛菊牧場デイジーランチを壊滅させた」

「そうだけど、それは領主のカルティカ公が勝手やったことで、わたしは止めようとしたの! だいたい雛菊牧場デイジーランチの子だって、わたしの親友なんだから」

「ふーん。学費はだれが出してるの?」

「学費は庄屋が。それに、正式には入学してないから……」

「そっか。いいよね。貴族と紐付いてないひとは。でも、わたしの友だちのほとんどはそうじゃない。親友の支援者から家族を殺された子だっているかもしれない。それでも友だちでいれるのは、なにも知らないからなんだよ」

 うえーん。重いよう。

「まー、わかるけどー。わかったところでさあ。じゃあわたし、どうすればいいのよ……」

「どうって?」

「魔法院の姉妹校の件。グレイスは賛成だっていうし、あなたは反対でしょう?」

「あなたが決めればいいのよ。あなたが決めたら、だれもその理由を問わないわ。だれも理由なんて知りたくないもん。だって、みんなあなたと友だちでいたいから」

「ええーっ。嬉しいけど、重いーっ」

 そんなこと言われたらもう、だれにも相談できないじゃん。そういうの相談できるのが友だちだと思ってたのにー。どうすんのよこれー。

「みんなお人形なんだよ。魔女っ子のお人形。お人形同士だから友だちでいられる」

 って、フレア涙ポロリしちゃうしぃ!

 ハードル上げ過ぎだよ、もう!

 

B ほかほかのパン

 ぽーん ぷーん ぱーん ぴーん

 生徒会長件理事長、アリスロッテ・ビサーチェから至急の連絡がある

 各部の部長はただちに生徒会室に集まってくれ

 繰り返す

 各部の部長はただちに生徒会室に集まってくれ

 ぴーん ぱーん ぷーん ぽーん 

 

 待つこと3分、各部の部長40人が生徒会室に大集合!

「部活って40もあったの?」

「実際にはもっとあるはずよ。ほかの部の部長と兼任してるコもいるんじゃないかしら」

「魔女っ子はたった百人なのに?」

「たいがいのコが4つか5つ兼部してる」

「なんと、そんなことが」

「それに、コーヒー部はブサイクたちがやってるよー」

「なんじゃそりゃ」

 とーにーかーく!

「みんなに集まってもらったのは他でもない、部費のことについてだ!

 現在、学校の運用資金についてはいくつか当たっているところだが、資金を頼めば、手綱を握られることになる。われわれが自由に活動していくために、まずは我々だけで稼ぎ出せるかどうかを試してみたい。その間の……半年から1年……各部の運営は厳しいものになるだろうが、どうか理解して欲しい!」

 ざわざわざわ。

「なにか質問があるものは?」

「はい! アメフト部です!」

 魔女っ子の学校にアメフト部があるのか。それはそれで心強い。

「アメフト部はプロテクターを買うだけでたいへんなんです! マワシ一本でできる相撲部といっしょにされたら困ります!」

「それはわたしたち相撲部に対する侮辱です!」

 相撲部もあるのか。頼もしいぞ。

「わたしたち機織り部はどうすればいいんですか!?」

 機織り部……。機織り機がなければはじまらんな……。

「わたしたち電車部は!」

 待て!

(電車ってなんだ!?)

(なんかそういう……なんというか……概念みたいだよ)

(電車という概念?)

「電車部はイマジンで乗り越えてくれ!」

「だったら機織り部もイマジンで布を織ればいいわ!」

「待って! それじゃあ機織り部の布を当てにしている水泳部はどうなるの!?」

「相撲部みたいにすっぽんぽんでやればいいでしょう!」

「それは相撲部に対する侮辱です!」

「とにかく! とにかくだ! 1年乗り切ってくれ! 金を稼ぐ手段はそれぞれの部で考えるとして、まずは自分たちでやってみよう!」

 

 ふう。やれやれだわ。でもわたしには息抜きがある。

 コートとレイチェルの愛の巣へ。

 窓から覗いてレイチェルにサイン送って作戦開始。待ってるとすぐにコートが出てくる。レイチェルに頼まれて井戸に水汲みに。その隙にわたしはレイチェルの家に上がって、パイの実のヌードルになってハイエイトチョコつけてクローゼットに潜んでスタンバイ完了!

 しばらくするとコートが「ただいま」って帰ってきて、ここからは見えないけど、レイチェル、コートをベッドへと誘う。

「でも、まだこんな時間ですよ?」

 うう……コート。なんてうぶなの。駄菓子に時間なんて関係ないのよ。

「でも今日はまだだよ♡」

 と、そのままチュッパチャップス♡ コートは「んっ」とか言ったまま押し切られてベッドへ。たまらん。わたしやばい。コートはベッドに座らされて、扉の隙間からじゃよく見えない。レイチェル「ちゃんと見て」って、コートの目の前にぷ・よ・ま・ん♡

「元気になった?」

「は、はい!」

「じゃあ、続きはコートが」って、コートの手を内紙にかけさせて、包み紙とってぇ、薄紙とってぇ、コートが下ろした内紙がつるんと取れると、「まだ触っちゃダメぇ」って、どっかからテープ取り出してコートに目隠し。仰向けに寝かせて「首輪つけてもいい?」って聞くと「ええ。いいですよ。レイちゃんが好きなように」って、悔しい。首輪ってなに? どんなプレイしてるの? こんなこと毎日してんだこのふたり。

 そしてレイチェルが「じゃ、取ってくるね」って、おもむろにクローゼットの扉を開けて、うっふん! ヌードルなアリスロッテ登場!

 ベッドには眩く輝くコートのうまい棒! つやつやの個装! 先っぽだけちょっと覗いてる! 眩しき!

 レイチェルがコートの首に首輪をつけて、鎖をつないで、わたしにおいでおいでして、いよいよわたしの番! 鎖を渡されて、ジェスチャーで、「指で、先っぽを、触って」って、アリスロッテ了解っ!

 まずは指でツンツン。

 あんあん。

 反応良好!

 あんまり大きい方じゃないけど、角度はばっちり。立派よ、コート、反り返ってるわ。心臓の鼓動が血液を送り出すごとにとくとくと上下する。シロップを垂らして先端ヌルヌル。手のひらを露出したところに押し当てると「あん」って声が漏れる。ふたつの玉羊羹に反対の手を添わせながら、手のひらでぐりぐり。ベッドの脇ではレイチェルが、ご自愛の栗しぐれ♡ 濡れた先っぽ。ゆっくりと個装を剥いて、ぷるんって甘栗むいちゃいましたぁっ! コートがびくん。透明のシロップにねるねるねるね。ここはお口できれいにペロチュー。舌がさきっぽにふれるたびにびくんびくんって。経験少ない男子ってこんなに敏感なの? これ、1回目はどうだったの?

 ある程度すると、レイチェルから「召し上がれ」の指示。アリスロッテ了解っ!

 コートにまたがって、おこしを浮かせて、コートのシュガーツイストをわたしのハニーディップに。ううう。この瞬間をどんなに夢見たことか……。まさかこんなシチュエーションで迎えるとは……。そしてふたりのドーナツはドッキング。ああん、熱い♡ 点でつながってるだけなのに、全身ガクガク。なんだろこのいままでにない感覚。スイーツ最高♡ 最高だわ♡

 次の司令、チュッチュゼリーして……? 次は? 目隠しを取って……? アリスロッテ了解っ!

 お口に深く深くチュッチュゼリー、ちっちゃい舌、歯が当たる、リップの裏まで、ぜんぶペロティ。わたしのシロップはぜんぶコートのお口に。コートの荒い息遣い。悔しいわ。レイチェルだと思ってんでしょう。レイチェルのチュッチュゼリーだって。でもそうじゃないの。アリスロッテなの。チュッチュゼリーしたまま目隠しを取って、顔を離すと……コート呆然! はーい! アリスロッテでしたぁ!

「こ、これは!?」

「びっくりした? いままでのアリスロッテだったんだよ!?」

 って、紅潮した頬でレイチェル。

「ご、ごめんなさい、レイちゃん、アリスロッテさん」

 きゃーっ♡ なんであなたが謝るのっ♡

 コートはカラダを引こうとするけど、「ダメよ、ダメダメ、ちゃんと感想聞かせて」ってレイチェルがコートの手を握る。

「感想って?」

「アリスロッテのドーナッツ、美味しい? わたしのとどっちがいい?」

「お、美味しくなんかないですよう。レイちゃんじゃなきゃダメですよう」

「じゃあ、なんでこんなに元気ハツラツなのぉ? アリスロッテもこんな状態で終われないわよねー」

 ううう。なんかごめん、コート……。でもおこしが動いちゃう。

「で、で、でも、ダメですよぉ! アリスロッテさんとベビースターしちゃいますぅぅぅぅ! 僕、レイちゃんとベビースターしたいんですぅぅぅぅぅぅ!」

 あーん悔しくてますますスイッチ入っちゃう!

「ええーっ。やだぁ。そんなことになったら離婚しちゃおうかなぁ♡」

 なにげにレイチェルが鬼♪

「そんなことになったら、ぼーぐーいーぎーでーいーげーまーぜーんーっ!」

 こんこんこん。

「あれ? お客様?」

「どうしよどうしよ。みんなもぎたてフルーツなんだけど!」

「コートが出て! ヤバいものこれで隠して!」

 って、フタバメロンシャーベットの容器を手渡す。

「ええーっ?」

 やっぱ鬼だ。

 コートがメロンの容器でうまい棒隠して、猫背で玄関行って、ドアあけると見習いの魔女っ子。魔女っ子、目を伏せる。

「アリスロッテさん! 理事長室にお客様が見えているそうです!」

 魔女っ子から見たら、メロンでうまい棒隠したコートの後ろに、ハイエイトチョコのマスク付けたわたしとレイチェル。なにを想像してるかわかんないけど、たぶん、その想像は当たってる。

「アリスロッテ先輩、ここにいるって聞いたんで! い、いますぐ学園に来てほしいそうです!」

 魔女っ子は走り去る。

 純真だなぁ。若いっていいなあ。

「で? お客様ってだれ? 伝言ひとつちゃんとできないの?」

「いやいや、しょうがないって、このシチュエーションじゃ」

「とりあえず、続きやろっか、コート」

「や、やるんですかぁ!?」

 

 レイチェルといっしょに梅ジャム塗ってペロペロしてたら遅れちゃった!

 大急ぎで学校へ! 理事長室に飛び込むとバカでっかいトロールがどーん!

「遅かったわね、アリスロッテ」

 ホッ。グレイスが相手してくれてたみたい。

「ちょ、ちょっと離せない用事があって。ところで、こちらのトロールさんは?」

「おまいがここん責任者ばいね! さっきから何べんでっちゃ言うとっばって、抗議しに来とったい!」

「ええっと……抗議というと?」

「なんか、うちの魔女っ子……宝飾部の子たちが、勝手にトロールの鉱山で石を掘ってたらしいの」

「宝飾部が……? もしかして……宝石を掘り出すため……?」

「そげんて。おいだんのじっちゃんの山ん勝手ん入って、勝手ん掘っとらすと。もう、なんばしよっとかーちおらんだっちゃ聞きゃせんけん、おまや舐めくさっとったらぼてくりこかすぞ、なんばにやがっとーとかちゆーて、こげんこげーんしてやったったい!」

「…………」

「先祖代々掘ってきた鉱山に、勝手に侵入されて採掘されたそうよ」

「な、なるほど」

「なるほどちゃなんか。ひとごとんごつなんばゆーとっとか。ゆっとくばって、おまいんこっちゃけんね。わかっとーとか。わがんこつぞ」

「まって。ちょっとまって。ええっと、わ、わたしが自分たちで稼げって言ったせいで……? こんなことに……?」

「そうみたいね――」

「稼ぐち言うたっちゃぞ! そげんひとんとこん来て稼いでよかならおいでっちゃこのへんば掘り散らかしてよかごつなるばって、そいでよかとかっちゅう話やろうが。そん理屈んわからんなら、けーさつ呼ばにゃいかんたい、けーさつ」

「ああ、ちょっとまって、あの、はい、ええっと、ちょっとだけ、ごめんなさい」

「いま表面化してるのは宝飾部だけだけど、園芸部やハンティング部がなにをやらかすか考えると……」

「そのへんばうろーんころーんさるきよらすとが、その園芸部やらハンティング部げな。ぞーたんのごつばさらかおらすたい」

「わかった! なんとかする! わたしがちゃんと言って聞かせる! ところでその、宝飾部の3人は?」

「心配せんでっちゃ、ちゃんと生かして檻に入れとるけん。死んじゃおらんめーたい」

(どういう意味?)

(心配しなくても、生かして檻に入れてるから、死んではいないだろう、って)

「ばってん、返して欲しかなら、落とし前ばつけないかんばい」

「落とし前ったって……わたしたちお金とかないし……」

「なんば言いよっとか。金で解決でくるわけなかやんか。ほかほかパン二個ツーば出さんか。そいで許しちゃろうたい」

「ほかほかパン二個ツー

「なんも考えんで出しゃよかろうもん。出さんと魔女っ子3人は豚骨ラーメンの出汁にして食うたっちゃよかつぞ?」

「そ、そんなぁっ! ほかほかパン二個ツーって! わたしにだってプライドがあるんだからっ!」

「あーもうしぇからしか! こっちの姉さんなもう出さっしゃったとぞ!?」

「グレイス!」

「魔女っ子の命がかかってるのにプライドもクソもないでしょうに! クラスメイトが豚骨ラーメンの出汁にされてもいいのっ!?」

「それはそうだけど、やりかたが一方的すぎる!」

「またそげんすらごつばゆー。一方的に乗り込んで来たつはおまいらやろが!」

「ああもう! わかったよ! ほかほかパン二個ツーあげればいいんでしょ!」

「やっとわからっしゃった。こげん遅なって。ばってまあよかたい。ほかほかパン二個ツーもろたら許すちゆーたけん、そいでチャラたい」

「だけどこの件はロンウェー公爵に問い合わせる。そのうえで改めて連絡する」

「あ、ちょ、ちょ、待ったんね! ロンウェー公爵まで上げんでっちゃよかろうもん!」

 あ、びびった。

「いいえ、これはウィッチリアとトロールたちの契約の問題よ。あなたとだけ話しても埒が明かない」

「そげんゆーばってんくさ、話ん大きゅうなるとおろよかたい」

(おろよかってなに?)

(わたしに聞かないで!)

「あーもう、しょんなか! 今回はそっちがルールば知らんでけんこげんなっただけやけん、よかよ、多目に見るたい!」

「んー、いまいち納得はいってないけどありがとう!」

「魔女っ子もすぐ返すけん。そいと、そっちんお姉さんに貰たほかほかパン二個ツーも返すたい。ほら」

 わー。かわいいパンニ個ツー

「広げて見せなくったっていいでしょう!?」

「ところで、ロンウェーさんにゃ逢うたことあっと?」

「あ、はい、一度だけ。がばいカッコ良かったばい」

「またそげん、がばいとかウソ筑後ちっご弁ばつこうて。がばいとか佐賀ん言葉やけんね。佐賀と久留米ん間にゃ筑後川ちっごがわんあっけん、そこんにきで言葉は違うとるたい。おいだんがそげんちゆーとばあんひとたちゃそぎゃーんそぎゃーん言いよらす。そぎゃーんそぎゃーんち、そぎゃーん虫の鳴いとるごたっちゆーて笑たら、佐賀んひとん真っ赤んなって腹かかしゃっ」

「ええっと、ロンウェー公爵はなまってなかったような……」

「なーん、カッコつけとらすとよ。昔、駅前にさわそう会館ちあったやんね。そこん後援会の集まりで見たこつのあっばってん、ふつーに久留米弁ば使うとらしたたい。こっちも酒ん入っとっけん、ロンウェーさんな靴下んかたちんばなっとっばーいちゆーたら、あんひたなんちゆーたち思う? も、人間のできとらすけん、そげんかたちんばとか言うちゃいかんばい、ちんばちゃ差別用語やけんしぇからしかこつになったいちゆーて、ばってんこっちゃそげんこつ言われたっちゃいっちょんわからん。そいじゃどげんゆーたらよかとですかー、かたちんばさんちゆーたらよかとですかーち聞いたら、なんかよーわからんこつばいろいろ言われて、ばってんがこっちゃそげーん学のなかやん。頭も悪かけん、そげん言われたっちゃ覚えきらんですよーちゆーたとばってん、性格が真面目かとやろね。いろいろ話しゃさっけん、あーそげんですかー。しぇからしかことになっとーとですねーちゆーて、もう、こげんよ。こげーんして、あ、はい、そげんですね、はいちゆーて聞くだけたい」

 トロールは帰ってった。

「これからどうするの、アリスロッテ」

 パン二個ツーをしかるべき場所に戻しながら、グレイス。

「とりあえず、トロールとトラブルを起こさないように、ルールを徹底するしかないわね」

 がらがらがらっ!

「アリスロッテ、大丈夫!?」

 フレアだ。乗箒ほうきライディング部員たちも一緒。

「理事長室にトロールが乗り込んだって聞いて、慌てて駆けつけたんだけど、なにかされなかった? 怪我はない?」

「ありがとう。大丈夫よ。話し合いでケリがついたわ」

 と、部員たちを見ると、みんな箒を持ってる……。あれ?

「箒、どうしたの? 3本しかないって言ってたよね?」

「ああ、これ? トロールがほかほかパン二個ツーと交換してくれたの」

「交換したんかいっ!」

「えっ? ダメだった? 実家から持ってきたパン二個ツーいっぱいあるし――」

「いっぱいあってもダメなのっ! ってか、パン二個がいっぱいってなに!? パンがいっぱいとは違うの!?」

 

 エクステリア部。

「青いペンキある?」

「あるよー。何に使うのー?」

「ちょっと。暗い空を青空に変えたい」

「うわー。ポエムじゃないですかー。そーゆーのに弱いんですよー。泣いちゃいそうですぅー」

 エクステリア部の……本名は知らないけど、エクステリ子にバケツいっぱいの青いペンキを用意してもらって、デネア姉さまから預かったコウモリをちゃぷん。

「うわー。めっちゃ動物虐待じゃないですかー」

「キィ! キィ!」

「めっちゃ苦しそうじゃないですかー。涙出てきましたぁー」

 真っ青に染まったコウモリ!

「ほうら! デネア姉さまのところに飛んでいけーっ!」

 わたしたちウィッチリア魔女っ子部長国連邦は、フルト・グレイド魔法院の姉妹校になるよ! だってもうしょうがないじゃん! それでどうなるかなんて知らない!

 


困惑するアリスロッテシリーズ①

魔法のアバンチュール

困惑するアリスロッテシリーズ②

処女聖アリスロッテの帰還

@sonovels
さよならおやすみノベルズという個人小説レーベルで地味に書いています。サイトで読めばタダ。Kindleで100円。 sayonaraoyasumi.github.io/storage