2023年に読んだ本たちのちょっとした感想めも。読んだ順番はめちゃめちゃ、ネタバレ配慮なし、うろおぼえだったりそうじゃなかったりします。
ジョジョノベライズ
2022年12月に突然ジョジョにハマり、年末までにアニメを5部まで完走しジョジョ二次創作の宝の山に飛び込んでみたところ各所で「恥パ」という単語を見かけ、なるほどノベライズもよんだ方がいい……ってコト!?ということで2023年に入ってからは毎週のように書店へ足を運びジョジョ関連書籍を買っていた。とてもたのしかった。ちなみにノベライズ作品たちは公式二次創作の一種だと考えています。
・恥知らずのパープルヘイズ–ジョジョの奇妙な冒険より–
2022年の大晦日にJr.EXILE EXPOに同行してくださったフォロワ~にお借りして年が明けてソッコー読んだ2023年初読の本。なるほどフーゴの二次創作をするなら解釈一致/不一致はともあれひとつの世界線としてこれは読んでおいて損はない……と思ったしわたしはめちゃめちゃ好き。ゼロ年代のおたくながら上遠野浩平先生の著作は未読だったのだが、肌が「知ってる」文体すぎてびっくりするほどするする読めたし随所にア~このひとすっごくジョジョが好きなんだな……を感じてニコニコしたしキャラクター・スタンドの容貌を客観的に描写する文章がすご~~く参考になった。
・クレイジー・Dの悪霊的失恋–ジョジョの奇妙な冒険より–
漫画の単行本は買っていたけれど小説……ハードカバー……置き場所……と買うか悩んでいたのだが、クレイジー・Dの名を冠する本のタイトルがホロ箔になってるカバーがサイコーすぎて書店でひとめぼれしてそのまま買った。恥パでもジョルノくんとDIOの血縁関係に対する作者の強い「思想」を感じていたけれど、悪失もまたジョセフさんと仗助くんの血縁関係に対する「思想」を感じ……そうだった……仗助くんってジョセフさんの直系の息子なんだった…………と再確認する「食えなさ」で、クレイジー・Dの名を冠する小説でありながら仗助くんの本音はうまく読めないところがほう……と思った。ツッコミどころはあれど個人的には漫画に比べより読み応えがあって好き。(でも漫画の作画の仗助くんのヤカラっぽいお顔もだ~~い好き)
・JOJO’S BIZARRE ADVENTURE OVER HEAVEN
小学生の頃からほんのりずっと西尾維新作品を読んでいるゼロ年代おたく、ジョジョを知ったことでようやく西尾維新の書いたジョジョがよめる!!!と浮かれていたが、あまりに劇薬すぎてきがくるったしジョジョにズブズブにハマった最後のトドメになったしいまだにチラッと読み返そうとするたびにこころがメチャメチャになるしオバヘを読み返して……ジョジョミュへ行くべきなのか………?とずっと煩悶している。DIOを信仰しているフォロワ~がはるか昔に途中まで読んでメチャメチャになって止まっていると仰っていたのだが、わたしがあんまりにもメチャメチャになりすぎてよんで!!!!いますぐ!!!!!たすけて!!!!!!!!と連絡をしたらしっかりと完走してくださってありがたかった。(フォロワ~はその後寝込んでから1日でいちまんじ以上の夢小説を書いていた)DIO視点から描かれるジョセフさん、スゲ~いやがられてるじゃん……とウケた。
・The Book
個人的にはノベライズ作品の中でいちばん好き。本当に4部のその後にあっただろうなと感じられる、The Bookというタイトルに収束していく物語、仗助くんとクレイジー・ダイヤモンドはいつだってかっこいい。敵キャラにもきちんとしたカタルシスがあって魅力的で、ア~このひともジョジョが大好きなんだな……を感じられてよかった。
・野良犬イギー
装丁がかわいすぎる!!銀紙の紙カバーに包まれたコーヒー色の本体ハードカバーにたくさんのイギーがいるのが本当に好きすぎるしありとあらゆる描写からアヴドゥルとイギーの3部での戦いのことが思い出されて読みながらずっとどうして……どうして…………と言っていたしアヴドゥルとジョセフさんの出会いのシーンでオイ!!!!女を口説くな!!!!!!!!!と声が出た。どのノベライズ担当者もジョセフ・ジョースターさんのことをトンデモ男だと思っていると感じられるのが愛(いと)です。
・JORGE JOESTAR
フォロワ~が「しばらく前に挫折したきり読んでないしたぶんまあしばらく読まないと思うので返すのはいつでも大丈夫です」と言って貸してくださった舞ジョジョ、噂の通りマジで一生読み終わらなくて大ウケしたけど本当にめちゃめちゃおもしろくてみんな……読んで………ッ!!!と頭を抱えているし、それはそれとして公式がこのノベライズを許してるなら二次創作で何してもまあゆるされるんじゃあないですか!??という謎の自信を得た。本当におもしろかったのに舞城王太郎の文章を読むことに抵抗がなくジョジョを7部までよんでいないとその楽しさを100%で浴びられない軽めの鈍器(矛盾)あまりにハードルが高すぎる。岸辺露伴の言動にドン引きするアバッキオが好きすぎたこととこれって実質カーズさまの夢小説じゃあないですか?と思ったことが印象深い。
・岸辺露伴は叫ばない 短編小説集
・岸辺露伴は戯れない 短編小説集
・岸辺露伴は倒れない 短編小説集
どの作品も一定のクオリティが約束されていて、書き手の皆さんが岸辺露伴を魅力的なキャラクターだと感じていることがビシビシ伝わってきてとてもおもしろかった。「オカミサマ」に登場する税理士の方などオリジナルキャラクターもしっかりジョジョっぽい!他のノベライズ作品もそうだけれど、本当にジョジョという作品が愛されていて、その愛がこの小説作品たちになっているのだな……と感じられるのがうれしい。執筆者一覧に各々好きなスタンドが明記されているのがサイコー!
森見登美彦作品
ジョジョノベライズを続けざまに読み「紙の本で文字を読む」……したい!の波がきたので、ちょうどジョジョの話をしていた森見登美彦フォロワーのフォロワ~からオススメを伺って買ってみた。購入後に書籍の置き場のなさにいまさら気づき、以後図書館を……図書館を利用するぞ……!と頭を抱えた。
・恋文の技術(ポプラ文庫)
いつものウダウダ言ってる京都の大学生ならこれ!と言われ読んでこれこれいつもの味~!とはしゃいだし書簡体の小説、おもしろ~い……書いてみた~い……と思った。マジでいつもの味だし「夜は短し歩けよ乙女」も「四畳半神話大系」もやってること(言ってること)はだいたい同じなのにぜ~んぶ違うおもしろさがあるのがすごいなあと思う。
・熱帯(文春文庫)
本当におもしろくて読み終えてからしばらく呆然としていたのだけれど、そのおもしろさをどう言語化していいのかわからずさらに呆然としていた。「熱帯」読了後ほどなくして映画「君たちはどう生きるか」を鑑賞し、これまたおもしろさをどう言語化していいのかわからず、これが物語・作中世界に没入できる体験の楽しさ、これが「読書体験」のおもしろさ……としみじみ感じた。
・有頂天家族(幻冬舎文庫)
・有頂天家族 二代目の帰朝(幻冬舎文庫)
アニメ化していたけれどそういえば読んでなかったしアニメも見ていなかったので、た、たぬきの話なんだ!カワイッ!になったしすこしふしぎキョートのお話、すごく好きだ~……としみじみ噛みしめながら大事に読んだ。「狸であったらだめですか」「だって私は人間だもの」のやり取りがすごく好きで、弁天は天狗じゃあなく「人間」なんだよな……を何度も噛みしめている。
桜庭一樹作品
「紙の本で文字を読む」間は比較的脳内のクソデカポップアップ希死念慮がましになるのでは?と気づいたため、文庫を買って部分的に読んだきりだった「じごくゆきっ」を読み、それからしばらく読んでなかった著作を読み漁った。
・じごくゆきっ(集英社文庫)
「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」の後日談という宣伝文句から「暴君」「脂肪遊戯」だけを読んで3年ほど積んでいたのだが、改めて読んで、へ、癖(へき)~~と身もだえ、その後「じごくゆきっのかけおちに誘ったら付き合ってくれるヤンキー/付き合ってくれないヤンキー」の夢小説の話をしばらくしていた。いつだって危ういバランスの上に成り立つ鋭利な刃物のような「女の子たち」の関係を描くのがうまい……好き……。また、「ゴッドレス」冒頭の描写に、すごく感銘を受けた。
私は心の中にたくさんの扉を作ると、順番に鍵をかけていった。扉ひとつにつき南京錠を十個くらいつけてみる。そしていちばん奥で天文学的な数の鍵をかき集めて握りしめ、こう言い聞かせる……。
”香さんのすることではもう傷つかない。無事のまま帰ろう。だって、どんなに香さんがおかしくっても、人の心をコントロールする技術を持ってても、私はもう子供じゃない。自分の心一つぐらい、いくらでも守れる”と。
(中略)
自分の意思で地元を離れて、香さんの許から逃げだしたはずなのに、もう私のことはいらないのかな、と悲しみを感じてしまった。
しまった、と舌打ちしたくなる。
心の中でつきづきに南京錠が壊れて、音を立ててつきづき地面に落ちていくイメージが見える。両手から天文学的な数の鍵が落ちていく。
傷つかないために期待しない、わたしは傷つかないと言い聞かせながら他者とのコミュニケーションのたびにあっさり傷ついてしまう自分が情けなくて、傷つくと同時に自己嫌悪に苛まれる人生なのだが、この感情はわたしだけのものではなく、普遍的に他者にも存在する感情なんだ……ということに安心したし、のちにヤマシタトモコさん特集のユリイカに寄稿されていた桜庭さんのエッセイにおいて「名前のないものを一つ一つ指差しては名付けていく、そうすることで可視化させていくのも物語作者の大事な仕事の一つと考えていた」と述べられているのを読み、そうして可視化されたことでわたしのこころはほんのすこしでもすくわれているのだと深く感じた。
・紅だ!
さくっとよめそうだなと感じて図書館でその場で読んだ。一昔前にラノベレーベルで書かれていたようなテンション感の作品に感じて、けれど文章は今の桜庭一樹さんのものであったので、あの頃の「圧」で続きを描いてほし~~のきもちになった。おもしろかった。
・少女を埋める
SNS上で勃発していた当該の論争については一切無知、いち桜庭一樹ファンとして表題作および続編をよみ、これまでの彼女の人生、著作、さまざまなことに感情を巡らせた。先行研究が皆無の中当時確認できたインタビューや書評を参考に彼女の著作で論文を書いた経験のある身として、世に発表される「書評」がそういった参考文献になり得ることを鑑みれば、桜庭さんが自伝として一冊の本に事の経緯をまとめることは本当に必要なことだったのだろうと思う。内容に反して装丁がメチャかわいくて、装丁に惹かれて手に取っていたので、内容との差にビックリした。
・彼女が言わなかったすべてのこと
しばらく読書から距離を置いていた(読書という趣味の優先順位がだいぶ下にあった)こともありCOVIDを題材とした作品を読んだ機会がそうなかったのだが、読み味が独特で、世界観があいまいにずれていくような居心地のわるさ、薄らと感じる「終末」感は昔のまま、けれど人生をサバイブしていく女性の物語として話がまとまっていて、ああこれは「少女」ではなくひとりの「女性」の物語なのだなあと思った。休職からほどなくして後述の「BUTTER」と同時期によんだため、ああ、定職に就くということにこだわらないひとは、世の中にわたしの思っている以上にいるのかもしれないなと、いまさら気づいた。
柚木麻子作品
そういえばこの間フォロワ~が「BUTTER」を絶賛していてずっと気になっていたんだよな~と思いよんでみたら女同士の関係の描き方にめちゃめちゃ「女子校」を感じて興味を抱いたので、2023年に新たに出会った作家さんの中でいちばんたくさんの御本をよんだ。「この間」と思っていたフォロワ~の感想は6年ほど前のものだったのでおのれの時間感覚のバグり方におびえた。
・BUTTER
2023年に読んだ本の中でのマイベスト。題材となった事件にももともと関心があったのでなるほどな~と思いながら読み始めたけれど、現代女性の抱く怒りや違和感をずっと丁寧に描かれていてとても考えさせられたしとにかくバターを使った料理がおいしそうすぎて読み終えてからずっと「エシレのバターでバターしょうゆごはん……」とうめいていたし読書メーターの感想を覗きにいったらみんなバターしょうゆごはんにとらわれていてウケたし後日実際にエシレのバターでバターしょうゆごはんを食べたらめちゃめちゃおいしかった。料理の話題から人生にも「適量」があり、その「適量」を見つけるのが難しいよねという話をしていたことが印象深かったし、自分の人生におけるあらゆる「適量」のことをずっと考えている。
・ランチのアッコちゃん
・3時のアッコちゃん
・幹事のアッコちゃん
「BUTTER」は本筋が重かったからおいしそうなごはん描写をすなおに堪能したい!と調べてシリーズでよんだ。アッコさんの言葉に背筋が伸びるような心地になりながら、現実そんなにうまくいくかよという拗ねたきもちも同時に抱いていたら「アンチ・アッコちゃん」でその拗ねたきもちを指摘されたような気がしてぎょっとした。柚木麻子さんの描く女同士の描き方、女同士の連帯の強さ(性欲の絡まない距離の近さ)が本当に「知ってる」関係性で女子校~~を感じる。
・あまからカルテット
女子校出身の四人組の短編集、それまでにも感じていた女子校~~!感がこれでもかというほど詰め込まれていて、共感で登場人物たちをいとしく思ったし、学生時代からの友人だし対等な関係だけれど自分は明らかにみんなより手取りが低い……と気にしている登場人物の描写に、ア~……わかる……言えないのもわかる……とめちゃめちゃ頷いたし、これ、わたしは女子校出身のシャカイジン女性としてめちゃ共感してよんでるけど男性はどんな感情でよむものなの……?と疑問を抱いた。(柚木麻子作品を読むような男性は身近にいないので疑問の答えはない)
・ナイルパーチの女子会
「BUTTER」「アッコちゃんシリーズ」「あまからカルテット」がどれも好きだったこと、どれも共感し得る女友達の関係、女同士の連帯を描かれていたことからヨシ!柚木麻子さんの作品はどれを読んでも外さないでしょう!と特に内容も確認せずハードカバー表紙の印象からてきとうに選びとった一冊、人間関係の構築が苦手(自分から相手に向ける感情が異常に重くなりがちなことを自覚している、自分の感情の重さは客観的に見れば怖いだろうな……とどうにかひた隠しにしようとしては失敗している)な身につきささりすぎてめちゃめちゃダメージを負った。めちゃめちゃおもしろかったけどしばらく再読はしたくない……。
・嘆きの美女(朝日文庫)
内容に対して文庫版解説が森三中の黒沢かずこさんだったことになるほどなあと思った。主人公はあらすじで「ほぼ引きこもり、外見だけでなく性格も「ブス」、ネットに悪口ばかり書き連ねる耶居子」と紹介されており、まあそれはたしかにそうなのだけれど、引きこもりであっても生命力のある主人公だからこそこの明るいエンディングにつながったのだなあと思ったし、全編通して「怒り」って生命力だよなあと思った。個人的に耶居子の負の側面にあたる個性に共感できる側の人間なので、その耶居子がLDH系の男といい空気になることにいいんですか!????と勝手にきゅんとしてしまった。
・本屋さんのダイアナ
育ちの良い女の子がマジョリティから少し外れたところにいる美少女に憧れを抱く姿、わかる……と思ったし、良い家庭で良い環境で育てられた女の子が共学の大学に進学して誰にも守られずに道を外れてしまう姿がわかりすぎてつらくなった。自分の身に起きたことは暴力ではないのだと思いこもうとするさまが生々しくつらくて、これ、これを読んで世の男性はどういう感情になるんですか?「ナイルパーチの女子会」もそうだけれど、女同士の(時には過剰な)好意が悪意に変わってゆくさま、悪意のうちには捨てられない執着が存在するさまを描くのが上手だなあと思った。
綿矢りさ作品
「生のみ生のままで」が書店に表紙の見える形で置かれているのを見かけ惹かれたところから、そういえばなんだかんだ「蹴りたい背中」「ひらいて」くらいしかまともに読んでない気がするな……ということで、作家読み……するか!と片っ端から読んでみた。柚木麻子作品の女たちには女子校~~を感じるけれど、綿矢りさ作品の女たちには共学~~を感じる。個人の主観です。
・生のみ生のままで
主題は女性同士の恋愛ではあるのだが、逢衣が女性と恋愛していることに対して両親が拒絶的な反応を示したこと、けれど逢衣自身のことを愛していることには変わりがないこと、だからこそどう対応すればいいかわからないと逢衣の父親が告白するシーンに対して、ああ、そういうものか……と恋愛とは違うところで深い感銘を受けた。理解できない、受け入れがたいことと愛していることは並列で成り立つのだということ、小説で読むまで想像もしなかった。あと綿矢りさ作品の性描写、エロスを感じるのにいやらしさを感じないというか、絶妙~~にうつくしいと思っているので、改めて感服した。
・かわいそうだね?
表題作の男女三人の関係性にドラマ「獣になれない私たち」を思い出したが、こちらの作品の方が早かったんだ~と思った。わたしは女たちを愛し男に怒りを抱くタイプの人間なのでオメーーが最初からハッキリしとけばよお!!と思ったしラストにはおう言ったれ言ったれ!と思いながら読んだ。世の女、全員幸せになれ……。「亜美ちゃんは美人」の方が胸に刺さったというか、わたしは綿矢りさの描く女同士の関係性(憎しみはたしかに存在している、けれどひとかけらのいとしさも存在する)が好きなんだろうな~……としみじみ思った。
・勝手にふるえてろ
映画を先に観ていたので、このド・一人称小説をよく「カメラ」という客観視のフィルターを介する映画という媒体に落とし込んだな!??と改めて感動した。(映画も原作もメチャメチャ好き)どうすればヨシカを理解できるのか?というニの問いに対する答えが「アニメイトで一時間」という身も蓋もない、けれどまあたしかに理解……できるかもな……という一言で返ってきたのがめちゃくちゃ好き。
・憤死
柚木麻子「嘆きの美女」の感想としても前述したが、「怒り」って生命力でパワーなんだよな……としみじみ感じた表題作。表題作こそなぜか読み味がさわやか(?)だったけれど、収録作品が全体的にイヤ~~~な空気、というか「おとな」「トイレの懺悔室」が「嫌」すぎてめちゃめちゃよかったし(「おとな」、淡々と描写されているだけなのに「嫌」で文章がウメ~……と思った)「人生ゲーム」はそのうち世にも奇妙な物語で実写化しませんか?もうした?
・私をくいとめて(朝日文庫)
終盤のAとみつ子のやり取り、人生にはなくても困らないものばかりだけどそゆものが人生には必要なんですよという話がすっごく好きでツイッターに引用メモしていたのにツイートがさかのぼれなくて今静かに悲しんでいるので文庫を買おうと思います。
・意識のリボン
短編集としては「憤死」の方が好きだったなという感想を抱いた記憶がある。
・オーラの発表会
海松子と萌音がめちゃめちゃ好き。というかヨシカ、みつ子、海松子を通して綿矢りささんからの同性に対するいとしげなまなざしを感じるような気がして、すごくいいな~と思う。キスされた海松子が主体的に舌を入れたことで男がちょっと引く描写にワーーハハハと大ウケしてしまった。海松子、好きだ……。綿矢りさ作品は読んでいて胸が痛い(良い意味で)印象があったのでどこかで海松子が決定的に傷つくんじゃないか……とハラハラしながら読んでいたがやさしいお話で安心したしとても好き。
・大地のゲーム
個人的にはいまいちぴんとこなかったのだが、主人公がマリに向ける感情、終盤ふたりきりの時に地震に見舞われたシーンはめちゃめちゃ好きで、なるほどわたしはこういうのが好きなワケね?と気づいてきた。
・ウォーク・イン・クローゼット
「いなか、の、すとーかー」がめちゃめちゃイヤ~~な感じでよかったし綿矢りさ作品の女友達の描き方が好きだ……やっぱり……と思った。
・手のひらの京
現代版細雪と評する声を見たが「細雪」は未読。(「生のみ生のままで」も「卍」を読んで自分も同性の恋愛を描きたいと考えたと仰っているのを読んだので、影響は受けているのだろうなあ~)次女の羽依ちゃんが好きだし「いけず」の章がめちゃめちゃ好き。
・しょうがの味は熱い
どんな話だっけ……と感想メモをさかのぼってみたら「綿矢りさの描く神経質な男~~~」とだけ残されており、わかる~~~~と思った。「蹴りたい背中」の印象がどうしても強いため。
・夢を与える
綿矢りさ作品は読んでいて胸が痛い(良い意味で)印象があったけれど、意外とやさしい話の方が多いな……と思っていたところで読んでめちゃめちゃ胸が痛くなり、ああ、やっぱりこういう作風だったよね……そうだよね……と納得した。
・嫌いなら呼ぶなよ
「夢を与える」がめちゃめちゃ読んでて胸が痛くてつらかった(とてもおもしろかった)のに対しても~~読んでてめちゃめちゃおもしろかった!「眼帯のミニーマウス」がいちばん好きなのだが、アッこの子たち海松子の同級生じゃん!と気づいた時にめちゃテンションが上がった。収録作品のどれもが「現在」に近く感じられたので、刊行してわりと早めに読めてよかった~と思った。「老は害で若は輩」、タイトルからしてサイコーすぎる。
西尾維新作品
戯言遣いの……娘……!??とひとまずキドナプキディングを買った話を10年くらいぶりに会った同級生にした際、デビュー何周年記念のシリーズの方だけ買ってまだ積んでるわ~と返ってきて、えっそっちは知ら~ん……になり、どちらも読んだ。
・キドナプキディング
ジョジョ「済」となってからはじめて読んだ西尾維新作品、ジョジョネタがさらっと入れられていることに気づいてニコ……としたし、わたしが気づかなかった(知らなかった)だけで戯言シリーズや物語シリーズにもジョジョネタはあったんだろうか……ありそう……と思った。数年ぶりに読んだ西尾維新作品、ア~実家の味……。
・怪盗フラヌールの巡回
・怪人デスマーチの退転
いや本当に実家の味……やれやれ系主人公、ウルトラ探偵、イカれた登場人物たち、これよこれ……。「怪人デスマーチの退転」を読みめちゃめちゃビブリオバウムに行きたくなった、てゆか金沢に行きたくなった。(という話を西尾維新好きの知人にしたところ、旅行好きの作家が旅行解禁されてうれしそうなのを感じてうれしい……と返され、わたしもなんだかうれしくなった)
・ウェルテルタウンでやすらかに
個人的西尾維新作品マイベストとなった一冊。上述の知人にフラヌールとウェルテルタウンどっちのがオススメ?(読む順番の参考にしたい)と聞いた際「ウェルテルタウンをオーディブルで聴くのがオススメ」と返され、あっこれオーディブル作品なんだ!??と知った(紙版が新刊として並んでいるのを見て作品を知ったため)のだが、読んでみたら「聴いて読む」想定の言葉遊びが並んでいてなるほどね~と思ったし、「聴いて読む」ことに意味のある物語になっていてニクいな~!と思った。小学生の頃から大好きな作家が、物語の力を信じているという物語を描いてくれているということ、とてもうれしい。
・デリバリールーム
物語としてはおもしろかったしさわやかな読後感のある作品だと思うけれど、「妊婦たちのデスゲーム」という題材を男性作家が書いていることをどうしてもグロテスクに感じてしまい、ノットフォーミーだった。でもおもしろかったし本当にネトフリでドラマ化したらおもしろいと思う。(と思ってたら実写PVが出ててエッ本当にするんですか?)
吉本ばなな作品
知人から「キッチン」を勧められて読み、好きだった~と話したら別の友人に「哀しい予感」を勧めていただき、また同時期に好きなツイッタラーさんが「白河夜船」を大好きな本として挙げているのを拝見して続けざまに3冊を読んだ。
・キッチン(角川文庫)
・哀しい予感(角川文庫)
・白河夜船(新潮文庫)
どれも読み味が似ているなあと感じたけれど、個人的には「キッチン」がいちばん好き。中学生だか高校生の頃、読書感想文を書くために読むよう強要された本がどうにも合わなくて結局読まずに感想文を出した記憶があるのだが、「今」のわたしにはすごく合っていた、というか、「今」の自分のこころのうちのやわくて傷つきやすい部分をそうっと撫でてもらっているような心地になって、あっ今読んでよかったなあと思った。特に「白河夜船」は中高生の頃に読んでもぴんとこなかった気がする、毎日眠り続けている自分に罪悪感を抱きながら生きている「今」だからこそ刺さった一冊のように思う。
特に「キッチン」作中の下記描写がすごく、言語化できない、わたしのやわい部分をそっとすくいあげてくれたように感じた。
世界は別に私のためにあるわけじゃない。だから、いやなことがめぐってくる率は決して、変わんない。自分では決められない。だから他のことはきっぱりと、むちゃくちゃ明るくしたほうがいい、って。たとえば、今は昨日よりも少し楽に息ができる。また息もできない孤独な夜が来るに違いないことは確かに私をうんざりさせる。このくりかえしが人生だと思うとぞっとしてしまう。それでも、突然息が楽になる瞬間が確実にあるということのすごさが私をときめかせる。度々、ときめかせる。
あと文庫版あとがきの下記、そうなんだ、そうなのかなあ、と思いながら、ずっとぼんやり噛みしめている。
「感受性の強さからくる苦悩と孤独にはほとんど耐えがたいくらいにきつい側面がある。それでも生きてさえいれば人生はよどみなくすすんでいき、きっとそれはさほど悪いことではないに違いない。もしも感じやすくても、それをうまく生かしておもしろおかしく生きていくのは不可能ではない。そのためには甘えをなくし、傲慢さを自覚して、冷静さを身につけた方がいい。多少の工夫で人は自分の思うように生きることができるに違いない」
余談。何年も前、わたしの書いた夢小説を読んでくださった方に「吉本ばななさん好きですか?」と聞かれたことがすごく印象に残っていて、当時は前述の通りだったのでいや読んだことないですね~とだけ返したのだが、その方は吉本ばななさんの作品が好きで、わたしの書いた文章にも似た気配を感じて好きだと言ってくださって、当時のわたしはその「好き」だけをすくってありがたいな~と思っていたのだが、いまさらきちんと吉本ばななさんの作品を読んで、このやさしい物語を描くひとの文章に似た気配を……感じとっていただけたのか……といまさらおそれおおさとありがたさをぎゅっと胸に抱いているし、わたしの不始末でその方との縁が切れてしまい、いまさらそのお礼を伝えることもできないことに、深い悲しみで途方に暮れている。人生~……。
短歌集
・老人ホームで死ぬほどモテたい
・オールアラウンドユー
・うたわない女はいない
読んだ歌集は好きな短歌をいくつかツイッターにメモしていたのだが、こちらもほぼ遡れなかったのでかなしみに暮れています。あのさあ………。以下2冊はメモが遡れたので好きだなあと感じた短歌を引用させていただきます。
・俵万智訳 みだれ髪
うつくしき命を惜しの神のいひぬ願ひのそれは果してし今/命かけて願った恋が実ってもまだ生きているこの恋のため
みだれ髪を京の島田にかへし朝ふしてゐませの君ゆりおこす/朝シャンにブローした髪を見せたくて寝ぼけまなこの君ゆりおこす
ゆあみして泉を出でしわがはだにふるるはつらき人の世のきぬ/湯上がりの乙女の肌を覆うのは世間という名のつらき洋服
星の子のあまりによわし袂あけわて魔にも鬼にも勝たむと云へな/星の子のあなたあまりに弱かった封建的な悪魔の前に
三たび四たびおなじしらべの京の四季おとどの君をつらしと思ひぬ/三たび四たび歌わせられる「京の四季」うんざりしちゃうわこのオヤジには
道を云はず後を思はず名を問はずここに恋ひ恋ふ君と我と見る/世間体道徳来世関係ないここにいるのは恋する二人
・玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ
邦題になるとき消えたTHEのような何かがぼくの日々に足りない
いつの日もぼくのラッキーナンバーはおまえの電話番号なのだ
おまえとはできないことをしたくなるおまえの部屋でだらけていると
閉じた目にきみが勝手に住んでいて夏のねむりをずたずたにする
映画まとめに引き続き文字数がぜ~んぜん足りないので後編へつづく!