有栖川帝統くんのこと

tndr215
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公開:2025/8/27

ヒプノシスマイクのシブヤディビジョン・Fling Posseの3番手、無頼のギャンブラー有栖川帝統(ありすがわ・だいす)くん。はたち。

かわいい帝統くんのブロマイド

🎲有栖川帝統くんを好きになった理由

5年前に彼が好きだと自覚したとき、自分でも「な、なぜ……?」と思った。周りにも「帝統くんなんだ?意外」という反応をされた。妥当である。どう考えても飴村乱数(あめむら・らむだ)か山田三郎だから、普段のわたしが好きになるのは。山田三郎が163センチだったら絶対にそっちだったんだけど。

帝統くんが好きな理由は、よくわからなかった。なんだか、かわいい…。「無頼のギャンブラー」といえばかっこいいが、住所不定無職で金や食べ物に卑しく常にすかんぴん(公式プロフィール)、平気で借金とギャンブルを繰り返す。チームメイトにエグい金額の借金があるだけでは飽き足らず、チームメイト名義で勝手にサラ金を借りる。

でも、底抜けに明るい。カラッとしている。話せないことはあるようだが、裏表がなく素直で騙されやすい。とにかく人懐っこくて愛嬌があって憎めない。友達がバカにされたら、怒る。友達が話したくないことなら、無闇に聞かない。友達が困っているなら、手を差し伸べて助けようとする。そういう面から「なんか、好きだ…この子が…。おいしいごはんを食べてほしい…」となっていた。

わたしがヒプマイに手を出したタイミングはちょうど5年前の夏で、CDでいうとBefore The 2nd D.R.Bがリリースされたあと。初のオフィシャルガイドブックが発売される前だった。ヒプマイは謎の多いジャンル(前向き表現)なので、公式の出している「ドラマパート」と「コミカライズ」だけでは到底ストーリーが整理できない。ファンの解釈もかなり大事になるというか、公式が明らかにファンの解釈に依存しているところがある。なんせ楽曲提供をしたアーティストも、ファンフィクションにまで手を出して理解を深めたと公言している人が複数いる。

そんな中で「帝統と乙統女は親子なのでは?」という考察があった。東方天乙統女(とうほうてん・おとめ)様。中王区・言の葉党のリーダーであり内閣総理大臣、実質的なヒプマイ世界の支配者、ラスボスポジションである。当時コミカライズなどで開示されている情報を照らし合わせると、たしかに、そうかもしれない…いや、しかしミスリードかも?なんにも関係ないかも?むしろ関係なくあってくれ…と思っていた。わたしは。

中王区はヒプマイ世界におけるヴィランである。ヒプマイは男🆚女の対立を煽っていた。特には深く考えらていない、お手軽女尊男卑の「武力ではなく言葉が力を持つ」世界観のストーリーだ。

帝統くんのチームFling Posseは、この中王区と深く関わりのあるチームだった。リーダーの乱数ちゃんは中王区の傀儡で、彼女らの意図に沿って動くよう指示されていた。乱数ちゃんが中王区の指示によって帝統くんと夢野幻太郎(ゆめの・げんたろう)を誘い、チーム結成に至った。しかし彼女らは「感情を持ち、思うように動かない」飴村乱数を「失敗作」として処分しようとしてしまう。飴村乱数はクローンで、オリジナルの乱数ちゃんだけが感情を持って人間のように生きており(クリエイティブな仕事までして!)、他のクローンは感情もなく使い捨ての道具として使われていた。

そんな乱数ちゃんを、夢野も帝統くんも「友達だから」という理由で助けようとしてくれる。出自なんて関係ない。友達だから、お前が困っているなら、助ける!と手を差し伸べてくれた。『マリオネットの孤独と涙と希望と』のドラパが嫌いなポ女はおらん。(デカ主語)

が、しかし…このように乱数ちゃんを追い詰めたのは、間違いなく中王区の女たちである。その頂点に君臨している乙統女様と、帝統くんが、親子なんて……イヤだ。単純に。母親が友達の命を狙ったり、とても表沙汰にできないような悪行をもみ消して国の頂点に立っているかもしれないのは…イヤだ。親子でもいいけど、せめて生き別れてて帝統くんにその自覚がないとか、乙統女様側は帝統くんを完全に見捨ててるとかで、「親子だけどほぼ他人」の距離感であってくれ…と思っていた。

願いは叶わず。その後明らかになっていくことだが、帝統くんにはバリバリに内閣総理大臣が実母という自覚もあり、乙統女様側には「息子を愛している」という描写が入るようになる。なんなら帝統くんはヒプマイキャラで唯一出産時のシナリオがある。どんなに愛されて望まれて産まれてきたかが書かれてしまった。

ガイドブックでこの親子関係などが明らかになったとき「だからわたしはこのキャラを好きになったのか…」と腑に落ちた。母親と折り合いが悪いキャラ。現在母親が明らかに悪行に手を染めており、過去も帝統くんにとって話したくないような、傷のある関係性。なんせ彼はギャンブルなど「命を賭けた勝負」をしないと「生きてる」という実感が持てない。まだハタチなのに。なんの傷もない子供時代を送っていたとは到底解釈できない。

当時わたしは母親との関わり方に悩んでいた。母親が自分を愛してくれているのはわかるが、それをもう受け止めきれないと思っていた。それを受け入れ、過去につけられた傷をなかったことにして振る舞うことはもうできないと思っていた。わたしの中には確実に、母親につけられた傷がある。「母親がわたしを愛しているというのなら、わたしは傷つけられていても受け入れないといけないのか?」ということをとても考えていた。だから帝統くんの今後、物語としてこの母子の関わりがどうなっていくかは、かなり注目せざるを得なかった。

🎰わたしが帝統くんに求めていたもの

帝統くんはどんな選択をするんだろう。ラジオで「自分の人生に親は関係ねーだろ」とは言い切っていたけど、シナリオで今後母親と関わることは間違いないだろう。そのとき一体どんな態度で、どういう感情で対峙するんだろう?彼の言う「自分の生きる人生を愛せ、自分の愛する人生を生きろ」とは、どういう結論なんだろう?

もしも親が「子どものためを想って・子どものために」を免罪符に、いろいろ本人が望んでもないことをやる、という文脈に帝統くんが巻き込まれていたら…さらにそれを帝統くんが受け入れたら…わたしはマジでもう二度とヒプマイを聞けなくなるなと思っていた。幸い、乙統女様の「ヒプノシスマイクを使い、愚かな男どもに変わって女性が言葉の力でこの世界を一新する」という信念に「息子のために」は含まれていなかったようで、そこは安心していた。(明言はされていないが)

初めての親子対峙となったドラパ『Catch Us If You Can』で帝統くんが「(俺のダチを)モノ扱いしてんじゃねーぞ!」とキレてくれたのが嬉しかった。自身も父親に、女であることがまるで人間ではないかのように扱われ「私はお父様の道具じゃない!」と抵抗したはずの乙統女様が、乱数ちゃんを道具扱いするというダブルスタンダード。そこは言わないといけないことのはずだ。

いいぞ帝統くん!そこは許せないよな、許さないでくれ!ついでに母親と和解しないでくれ!だって友達をモノ扱いして処分しようとした実母なんて、イヤだもんな!どんなに事情があったとしても、許せないよな!な!?頼む!「母親が自分を愛していたとしても、その行いを全て許す必要はない」という選択でわたしに勇気をくれ!!

と思いながら、帝統くんを見ていた。「いくら母親が自分を愛してくれているとしても、その愛を受け取るかどうかは自分で決めていい。自分が苦しんだのであれば、母親と和解せず生きていい」という選択を見せてほしかった、帝統くんに。

当時の感想などでほんのりと帝統くんの境遇にやたらと激重感情を抱いてしまうことは書いていたが、本音としてはそう思っていた。

💛傷跡が絆になったFling Posse

わたしはFling Posseを「どこにも帰る場所(故郷という意味で)がない、誰にも助けを求められないひとりぼっち」3人が寄り集まったチームだと思っていた。彼らにはみんな「誰にも本当のことを言えない」「誰も(本当の意味では)助けてくれない」という傷があった。(と解釈している)

帝統くんも夢野も「本当は誰かに助けてほしかった」過去があったからこそ、1人で戦わざるを得なかった、命を脅かされた乱数ちゃんに対して「お前を助ける」と必死に手を差し伸べてくれたんだと思っていた。それが、付き合いが浅く中王区の思惑で意図的に組まされたチーム、刹那の友・Fling Posseが、お互いに助け合うようになった理由として最も納得できるわたしなりの解釈だった。

ここでは帝統くんの話に限るけど、帝統くんの幼少期に「自分は家族に愛されなかった」「望まれていなかった」という傷があるなら、それは「両親はちゃんと帝統くんを愛していて、望まれて産まれてきた」「けれどもさまざまな周りの事情から、手放さざるを得なかった」ということを知って、傷を塞いでほしい。「誰も助けてくれなかった」という傷は、帝統くんがFling Posseというチームで「友達」を大切にして、その友達にも大切にされることで塞がったと思う。

2nd D.R.Bで優勝して、宙ぶらりんなひとりぼっち3人が寄り集まってできたチームFling Posseが出した答えが、「"今"を居場所にする」ということ。傷跡は、絆となって結ばれた。

でも帝統くんが親につけられた傷は、事実を知った上で塞がったとしても、「母親が友達の命を奪おうとした」ことに関しては「許さない」と選択してもいいじゃないか。中王区の思惑とはいえ帝統くんがFling Posseと出会って、いっしょにいたら楽しい、心からの友達を手に入れられたことはよかった。けど、だからこそ、そんな友達の命を奪おうとした母親に、今後どうやって接するのか?

優勝CDまではよかったけれど、そのあと『CROSS A LINE』に収録されたドラパやコミカライズで開示された情報に「こいつら(公式)やっぱなんも考えてない」と思わざるを得なかった。だから「このままヒプマイのシナリオを信じたら、裏切られそう…」という気持ちが大きくなった。シナリオというか帝統くんについて、わたしが望むような展開にはならなさそう…。8thライブで『キズアトがキズナとなる』を現地で聞きながら「頼む、Fling Posse…ここで終わって永遠になってくれ!!!」と願うしかなかった。

🎤ヒプマイから少し距離を置いた日々のこと

ヒプマイはそれ以降、コンテンツとして中王区もソロ曲を出したりグッズも出るようになっていった。彼女たちにもこんな思いがあった。こういう意図があった。確かにそれは間違っていることもあった。これからはここはこうして、こういう道に進んでいこう…みたいなシナリオが展開していく。それは、まぁいい。女性向けキャラクターラップコンテンツとして、女性キャラも大切にすることや楽曲で「女性としてのかっこよさ」を表現することでエンパワメントできることだから。

それでもわたしは、帝統くんの「母親との折り合いの悪さ」というか「母親が許せないこと(友達をモノ扱いし、処分しようとした)をした」ことに対する答えがどう出るのかということに、引き続き注目していた。わたし自身と重ね合わせながら。母親側の事情ではなく、帝統くんがどう受け取ったのか。そして結果として、どうするのか。それを知りたかった。

しかし「望む結果は出なさそう…」という尽きない不安から、しばらくヒプマイのシナリオを忌避してしまった。それはぱっと見「シナリオが自分の思い通りに進まないとイヤ」というワガママにも見えるかもしれない。でも「自分と似たような悩みを持ったキャラが、理由もなく納得できない答えを選んでしまう」どころか「どこにも解決のために悩んだ形跡がなく、なんとなくでその悩みをスルーさせてしまう作り手の雑さ」が見えてしまったら、それは「わたしが今抱えている悩みや傷」まで雑に扱われたと感じられてしまう。それがいちばん怖かった。

帝統くんが考え、悩み、結果として「母との和解」を選ぶのなら、それでよかった。残念だけど、君はその道を選んだんだね…と見送るしかない。わたしも日々考えているので、帝統くんと同じ道を選ぶかどうかはわたしが決めればいい話。

そもそもこの母子の「和解」は非常に複雑になっている。なぜかというと、親子の絆を結び直すより先に、Fling Posseの3人の間に決して切れない絆が結ばれたから。帝統くんはFling Posseを大切に想っている。大切な居場所だと想っている。なら、それを壊そうとしたのが実母だという事実を、どう受け取るのか?その実母と、今後どう関わるのか?なにを持って「和解」とするのか?これはわたしもずっと考えていたことだった。

🎬ヒプムビの「ふんわり和解」がイヤな理由

発売から1年越しくらいに聞けた『The Block Party』のドラパで、帝統くんが意気消沈した乙統女様を叱咤激励するような展開になっており、「彼にそういう役割を負わせるのはやめてくれ!」と思った。帝統くんが収監されている乙統女様を助けるような行動を取る理由が「ここで息子が助けに来たらアツい!」くらいの作り手の思惑しか感じられなかったから。乙統女様にとっては意味があったかもしれないけど、帝統くんにとっては意味がない展開だと思う。なにか葛藤などが書かれて納得できればよかったけれど、特になにも開示されなかった。

そんな状態だったから、7ヶ月連続リリースのCDもヨコハマまでしか聞けなかった。『.Fling Posse』がリリースされたとき、ものすごく怖かった。他人の断片的なネタバレから母親と関わり、帝統くんの出自が乱数ちゃんと夢野に明かされるのがわかっていたから。前回がああだったんだから、きっと上手い回収はされない…どうしよう…と思い、結局ヒプムビを観るまで『Just Friend』は聞けなかった。

そして観るかどうかものすごく迷った末観たヒプムビの、ラストにあった(ある意味)サービスシーンで帝統くんと乙統女さんが穏やかに笑い合う「和解した」と表現できるようなカットが入り、「うわ!イヤだ!でももしかしたらわたしが聞いてないドラパでなんらかの解決があったのかもしれん!」と思ったから『Just Friend』を聞いた。(なかったけど)

帝統くんは引きずらないキャラだから!あっけらかんとした子だから!だけでは、どうしても納得できない。たしかに帝統くんの何事も引きずらない、表裏のないカラッとしたところが好きだ。だけど母親に対しては、複雑な感情を持ち続けていたのも事実だったじゃないか。一度も使ったことのなかった連絡先。生気のない目でブレザーを纏い、高そうな車に乗せられていた学生時代。いくらお金があっても自由がない子供時代だったから、敷かれたレールを進む人生なんて嫌だと18で家出したんじゃないの?母親はそんな不自由な場所から「助けてくれなかった」相手なんじゃないの?それからギャンブルに出会い、「賽に宿る神」だけを信じて生きることにしたんじゃないの?

そんな帝統くんが出会ったFling Posseを、「僕たちは永遠のポッセだ」と笑い合える大切な友達を、居場所を、実母が奪おうとした。帝統くんが「乱数と幻太郎は大事なダチ」だと思っているのなら、ますます実母に対する葛藤や折り合いはつけた描写をするべきでは?それがないから感情に一貫性、整合性がないと感じてしまう。

ただでさえ21人もメインキャラがいるんだから時間がない、入れる隙間がない。それが理由なら、そんなふんわりとした「和解風」イラストカットを入れないでほしかった。キャラクターの感情を、傷を、もっと誠実に扱ってほしかった。

帝統くんの選択は帝統くんのものだ。結論が「和解」だとしても、彼に母親につけられた傷がある以上、大切なものを母親に傷つけられたという事実がある以上、悩み、考え、葛藤した末に「和解」を選んだという過程がほしかった。

どんなに愛されているとしても、望まれて産まれてきたとしても、母親がやったことを全て受け入れるのはイコールじゃない。

たとえ相手が親でも、どんなに愛された過去があったとしても、自分の人生と心の声を優先していい。それが、自分の生きる人生を愛せ、自分の愛する人生を生きろ。ってことだと思うんだよ、わたしは。

💫終わりに

「ヒプマイにそんな期待するほうが無駄」「公式はそこまで考えてない」で片付けられる話かもしれない。じゃあ、帝統くんに苦しい過去を、傷をつけないでほしかった。乙統女様との親子関係を作らないでほしかった。メインキャラの1人とヴィラン(しかもラスボスポジ)を「親子」という設定にするのなら、責任を持ってそこにはなにかしらの意味やしっかりとしたストーリーが必要だと思う。そこをうやむやにしたのは作り手の雑さであって、キャラクターを扱う誠実さに欠ける行為だ。

それでいうとわたしは山田家のずさんさにも辟易してるんだけど、そこは山田家が好きな人に任せます。

母親との今後の関わり方に悩んでいる時期に、まるで何かに引き寄せられるかのように好きになった有栖川帝統くん。だから彼の中にある「家族によってつけられた傷」が軽視され適当に扱われると、わたし自身の傷も軽視されたように感じてしまう。それがつらかった。だからヒプマイのシナリオにしっかりしてくれと言い続けていた。

結局、わたしの傷は無視されて、「家族だから仲良く✨」の文脈に押し込まれてしまうのか。という無力感があった。ヒプムビで彼らがふんわりと「和解〜🌸」みたいな絵を描かれたことに腹が立った。そしてそれを、喜んでいる人の方が多く見えることも。(実際はわからない)

でもわたしはこういう観点から、こういう解釈をしてたから、和解してほしくなかったし、ああいうイラストには喜べないんだってことを、書いておくことにしました。

ここまで書きながらずっと考えていたけど、帝統くんのことはこれからも大好きです。

💫8/31追記

乙統女様に対してどう思っているかということを書いてなかったので、補足しました。

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なまえ・ジャンル:ふらみんちゃん(17)ところにより天瀬ちゃん インターネット17歳をしています おしゃべり大好きオタクsizu.me/tndr215/posts/5insomdbriwu