11月5日午前10時、球団公式より和田毅投手の引退のお知らせがされました。
率直に、気が狂うかと思いました。いろんな感情が濁流になり、物理的に福岡と距離があってよかったとすら思いました。とても人には言えないような、凶悪な考えが次々と浮かぶほどの怒りと悲しみと絶望で、のたうちまわるほどでした。慟哭とはあのような自分の状態であったと思います。
いろいろあって2日経ちましたが、改めて引退会見後の囲み取材記事を読んでいたところ、あることに気づきました。まずはいったん感情を切り分けて、純粋に「21年間愛してきた選手の引き際」について書こうと思います。(わたしが和田さんに出会った日が2003年10月27日なので、21年間と書いています)
2019年にケガから復帰して以降、確かに和田さんは「いつ辞めてもいい」「これが最後の一球になるかもしれないと思いながら投げている」「次にケガをしたらそれが辞めるとき」という言葉を何度も口にしていました。これが最後かもしれない、と思いながらも5年続けられたり2年前に自己最速球速を更新した和田さんの努力、研鑽、向上心はどれもすべて素晴らしく、誇らしいものです。
最初に懸念が生まれたのは、和田さんが「中継ぎ転向」をしたタイミングです。なぜなら和田さんはかなり「先発投手」にこだわりや美学を持って20年以上やってきたのを知っていたからです。それに、過去「先発投手をやれなくなったら潔く辞める」とも言っていました。そのため、明らかに調整ではなく「中継ぎ投手」として一軍に帯同し始めたとき、かなり戸惑いました。
ですが、彼が「チームのために自ら志願した」という報道を見て、「そういうことか」と納得していました。ファンとしては、潔く辞められるよりも貪欲に現役続行の道を模索してもらえる方がありがたいです。考え方が変わったのならそれでいいと思っていました。
そして11月4日、各新聞社が一斉に「和田 現役続行」の報道をしました。もともと9月24日にも一度報道が出ていたので、個人的には「当然ですが…」という気持ちでした。9月のものも含め、報道内容としては「球団は、和田投手を来季も必要な戦力としている」というものです。
少し怒りが混じりますが、ここで球団が来季構想外なんて言おうものなら……そりゃあ……詳細は差し控えますが、犯罪に手を染めるようなことにならずよかったです。
わたしはこれらを朗報と受け取っていましたが、ひとつ気になる記事がありました。
東スポだけは『それでもベテラン左腕は現役続行ありきではなく「まだ自分の中で言える段階ではない」とここまで真摯に熟考を重ねてきた。』という、本人の言葉を書いていたのです。
東スポというと、あまりいい印象を持たない方もいるかもしれません。しかし、ここ数年ホークス担当の方の記事は素晴らしいものが多く、他社があまり書かないようなエピソードを取り上げており、わたしは信頼していました。
したがって、11月4日時点の心境としては「早く本人の口から現役続行の言葉を聞きたい」というものでした。引退の可能性を全く考えていなかったわけではなく、今年一年つきまとっていた不安を早く本人の口から払拭してほしい、と祈るような気持ちでした。
それでも、タイミングとしては最悪だったと思います。こんな形は望んでいなかった。こんな終わり方はあんまりだ。ここは長くなりそうなので、あえて年始のあれこれは『無かったこと』として考えます。
青木おじさんの引退試合・セレモニーについて書いたときに「近い将来に和田さんのこれを見ないといけないのか…とリアルに思い描いてしまった」ということを書きましたが、厳密に言えば、セレモニーで花束を持って話している姿しか思い描けていませんでした。引退試合のシチュエーションが全くわからない。
1イニングだけ、記念のように投げるのか?和田さんがそんなことをするだろうか?じゃあ例えば5イニングくらい投げる?それはもう普通の試合では?引退する選手の試合ではなくないか?充分に戦力なんだが…。あと、和田さんって泣いたりするの?泣いてるところを見たことがない。もし泣きながらスピーチする姿を見たらどうしよう。考えただけで球団が憎い……。
そんな中、本人が語った「引退試合をしたくない」「自分のキャリアに"華を持たせてもらった"ような三振を記録したくない」という考え方は、とても和田さんらしく…。しかし予想まではできなかったので、そうきたかぁ…となりました。
負けず嫌いすぎる。最高?もう大好き。和田さんが22年間大切に大切に築き上げてきた「プロ野球選手・和田毅」という作品に、"お情けで得た成績"など加えたくない、という強烈なプライド。投手すぎるよ。
いつも温厚で優しくて穏やかでちょっとお茶目。ただ、投げることに関してはめちゃくちゃ負けず嫌い。それが、わたしが思う和田さんの好きなところです。わたしは、彼のそんなところが21年間ずっと好きでした。
本人は「ファンにとっては『裏切り行為』なのかもしれない」と言われていましたが、裏切られたとはまったく感じていません。本人の意向がいちばん尊重されるべきものですし、和田毅投手の、そんなところが好きだったのだから。
さて。ここからはただの憶測かもしれません。都合のいい解釈かもしれません。また、根拠が有料コンテンツのためはっきりとした引用ができないことをご了承ください。
――現役続行という記事が出た
「何でしょうね、まあ、隠し通せたんだなと。どこからも漏れず、自分のシナリオ通りに。『和田引退』っていうのが(日本シリーズ終了の)次の日に出なかったので。ファンの方にも公式発表で伝えることができた。それは記者さんにとって良かったのか悪かったのか分かりませんけど、僕としては良い形で伝えられたのかなと思います」
これについて。会見後の囲み取材をほぼ全文WEBに公開しているのはスポーツ報知だけのようですが、スポーツライター・田尻さんの有料記事にこのときの記者の質問や、和田さんの回答の細かいニュアンスも記載されていました。
結果として、11月4日時点の「和田 現役続行」という報道は『誤報』となりました。上記の引用は、そのことについて聞かれたときの回答です。「何でしょうね」というところから書かれていますが、田尻さんの記事にはそれよりも前に一言ほどコメントがあります。有料部分なので引用は避けますが、わたしはこの一言で重要なことに気づきました。
他にも、有料コンテンツ「鷹フル」では公式発表前に情報を掴んでいたようですが、本人の意向で公表を控えていたと書かれています。(有料記事なので、見出し以上のことは書きません)
結果、鷹フルは公式で引退発表されてすぐ、かつ引退会見前に和田さんの想いを単独で報道することに成功しています。こうして「情報を漏らさない」メディアであると信頼されているから、和田さんも話をされたのでしょう。
要するに、和田さんは自身の「現役引退」という一大ニュースを、一切外部に漏らさず、公式発表まで隠し通せる人だということです。
出所の不確かな報道で大切な情報が漏れ伝わるのではなく、公式からしっかりとファンに向けて発表できるだけの人徳がある人ということです。
本人がはっきりと「やる」と言っていないことを、ああして各社報道媒体が一斉に報道してしまったなんて、怖いですねえ。あー怖い怖い!もしかしたらこれまでも、本人が言ってないことが、あたかも真実のように報道されてしまったことがあるのかもしれないですよねえ。なんて怖いんでしょう!
これに気づいたとき、笑っちゃいました。そして泣きました。わたしの推し、21年間愛してきた選手、最高じゃん。こんなことできる選手、他にいた?いないよ。
和田さんは何一つ裏切っていなかった。後ろめたいこともなかった。
憶測でもいい。都合のいい妄想でもいい。この引退発表こそ、ポジティブな話題であっても、言ってもいないことが報道されることもある、という和田さんからのメッセージだと、わたしは受け取りました。
そうなると居ても立ってもいられず、「わたしの推しは引退する瞬間まで最高だった」という想いを先に書き残しました。もう少し整理したい感情もあるので、これはまた後日書きます。
ま、まだあるの?!あるに決まってんだろ!!!
※追記
以上の内容は11月7日の15時までに書いていたのですが、18時に鷹フルより囲み取材全文の記事が無料会員向け記事として配信されました。無料記事なので、改めて該当の一問一答の内容を引用します。(一応販促?として、田尻さんの記事では質問・返答ともにさらに細かいニュアンスまで書かれています。読みたい人は課金しましょう)
——結果的に現役続行という記事を書いてしまった。報道をどう見られていた?
「僕は決して(現役を)やるとは一言も言っていなかったので。隠し通せたんだなと。どこからも漏れずに。自分のシナリオ通りに……。まさか全紙がね、続行と書かれるとは思っていなかったので。そこはびっくりしましたけど。和田引退というのが(日本シリーズが終わった)次の日に出なかったので。隠し通せたなと。ファンの方にもちゃんとした形で、公式発表で伝えることができたので。それは記者さんにとって良かったか悪かったかはわかりませんけど。僕としては、いい形で伝えられたのかなと思っております」
もはや和田さんが「ゴネた」と言っている人は、真実はどうでもよくてただ単純に誰かを叩ければいい、さもしい存在なんでしょう。引退会見の動画コメント欄にもそのようなことを書いている存在がいますね。ふふっ…そういう鳴き声なのかな…😄
いや〜ほんと、本人が「一言も言っていない」ことがあんなふうに報道されちゃうなんて、怖いですね〜!怖い怖い!