ちょうど一月前にミルグラムの軽い感想(所感?)を書いた。
あの時点では第二審までのMVを一通り観たのみだったが、最近はボイスドラマの方を聴き進めているので、そちらの軽い感想を書いていく。
当初ミルグラムを「MVから囚人の罪を推測していくコンテンツ」として捉えていたので、MVの外で囚人の口から情報を得るのは少し違うかな、とボイスドラマは後回しにしていた。実際に聴いてみると、追加で情報が得られてしまうのは確かであるが、こちらはこちらで非常に面白く作られているなと感じた。
ミルグラムには囚人、説明役のジャッカロープの他に、我々の依代である看守エスが存在する。我々はエスになりきってジャッカロープの説明を聴いたり、囚人の罪を推測し、審判を下していく。しかしボイスドラマでは、看守エスが囚人たちに尋問をしていく形になっている。エスが自ら声を発し、考えを述べていくことが、ボイスドラマ最大の特徴と言ってもいい。
エスが罪を見極めるために尋問して囚人を知っていくのと同様に、囚人もまたエスを観察しており、エスに対して向ける目や返す言葉は様々だ。エスは15歳の未成年であるため、成人の囚人から「君のような子供が……」という反応が返ったりもする(エスはこれを非常に嫌う)。また囚人との会話が、ミルグラムやエスの存在の不可思議な点を鋭く言い当てる結果となったりするのも面白い。ただの舞台装置でなく、ミルグラムそれ自体の謎もまたこの作品の要素の一つなのだろう。
前回の感想でも書いたが、第二審になると監獄内の状況は大きく変わってくる。それは囚人たちのエスに対する反応も同様であり、赦された/赦されなかったことに対してより直接的に感情をぶつけてくる。状況の変化はエスの予想を超えていて、エス自身も迷いを抱えながら尋問を行うことになり、かなり聴き応えがある。この監獄の状況を利用して、赦すことを求めてくる(求めてしまう)者、赦さなければ……と脅してくる者まで出てくる。
そして(これは結構なネタバレではあるので気にする人はブラウザバックしてもらいたいが)第三審の結果、こうした脅しは宣言通りに実行されてしまう。端的に言うと、三度目の審判を待たずに死者が、それも複数人出る。これが正式な形で知らされたのはジャッカロープの第三審開始通達。我々は囚人が死に至った場面に立ち合うこともなく、全て終わってから死の事実のみを伝えられたのだ。死の事実を後から知るというのはあまりにあっさりしているが、だからこそ現実で触れる死に近いような感覚を覚える。我々の下した決定による影響が反映され、それを後から知っていくのは(厳密には違うかもだが)リアルタイムコンテンツっぽさのある体験だ。
そして自分はボイスドラマを聴く前に誰が該当者か知っていたので、聴きながらこれが(我々の知る中では)最後の会話かと心が重くなっていった。心身ともに衰弱している中でも自分を強く持っていたあの囚人(一応誰かは伏せるが)は本当に凄まじくて……
そんな中でちょうど今日、囚人が死に至る場面が記録映像として公開されてしまった。いや、それはそれでしんどいって……囚人の詳細な情報まで公開されたので、おそらく死に至った囚人たちの楽曲は(少なくとも他の囚人たちと同じ形では)出ないのだろう。形態としては楽曲コンテンツなのに、選択の重みを楽曲の喪失という形でも表現するの、すごいコンテンツだぜ。