「イース」シリーズが好きだ。
この言葉だけでは、なんの自己紹介にもなっていない。
イースを知らない人にはなんのこっちゃだし、知っている人にも「どのイース?」となるからだ。
イースの詳細は説明は割愛するが、つまるところ「長年愛されているファンタジーアクションRPGシリーズ」のことだ。
で、僕の好きなイースだが、「オリジン」と「7」である。
少数派かどうかで言えば、オリジンはかなりの少数派で、7もまあまあ少数派といったところだ。
オリジンがどれだけ少数派かというと、人気投票で下から2番目の11位、得票数も1021票中19票。2%にも満たないほどの少数派ということになる。
まあ、オリジンの話は別にいい。僕も、一つだけ選べと言われたらオリジンにはならない。
今回取り扱いたいのは、一つしか選べないとしても即答する「7」の話だ。
こちらは13作品中5位だが、得票数は41で、たったの4%である。1位と2位が全票の過半数を占めており、だいぶ偏ったランキングであることが分かる。
しかし面白いことに、1番人気なのは最新作ではない。最新作の9は3位で、1位はその前作の8、2位はなんと2である。
インディーとして狙うべきタイトルはどれなのか、このデータからは一目瞭然だろう。
そう、2である。
8は、本家のファルコムが取り組むべき題材だ。フル3Dでフィールドも広く、ナンバリングとしてもまだまだ新しいため、9の不評を10で払拭するべく8の再来を狙う可能性は十分にある。
一方、2はかなり前のタイトルだ。
時代に合わせて何度も変化を重ねてきたイースだが、懐古ファンは未だに2を支持している。
それだけ根強い人気があり、しかし今更本家が取り扱うには古すぎる。
まさに、弱者の戦略で拾うべき格好の隙間産業だ。
しかし、先ほど書いたように、僕が好きなのは7。
7は、初のフル3Dで6年ぶりの新作ということもあり、当時こそ絶賛されたが、今は話題に上がることの無い風化したタイトルだ。
PSP向けに作られたこともあり、どうにもローポリが地味で画面映えせず、ストーリーも王道すぎるが故にキャッチーな要素に乏しく、無難に仕上がりすぎたきらいはある。
しかし、王道ファンタジーとしてはこれ以上ない安定した仕上がりであり、減点要素がほとんど存在しない。
システムとしてもシンプルながら完成度が高く、ローリスク・ローリターンな使い勝手の良いステップ回避と、ハイリスク・ハイリターンなジャストガードを使い分けるテンポの良い戦闘は、今遊んでも病みつきになる。
以降のイースにもガードと回避の概念はあるが、使い分けの必要がなくどうにも戦略性に欠けるのであまり好きでは無い。
7の場合、回避には多少の無敵時間があるものの信用には足らず、使う場合はその尋常ではない移動力を駆使して敵から離れ、安全地帯に移動するために使うことになる。
スタミナの概念がないため連打し放題で、画面を縦横無尽に転がりながら離れては近づきを繰り返す、非常にシンプルな戦いとなる。
手軽な反面、敵から離れるためにリターンは少ない。
また、ブレスなどの持続攻撃や、辺り一面に毒を撒き散らすような禁止エリアを的確に避ける必要がある攻撃には、精密な位置調整が難しくやや信頼性に欠ける。
一方、ジャストガードはその真逆の性能だ。ボタンを押してから直後の攻撃しかガードできず、タイミングを間違えてしまうと自分がクリティカルダメージを受けてしまう。
そのうえ、入力ごとに一度しかガードしないため、連続技には都度ボタンを押してガードし直さないと失敗してしまう。
その代わり、ガード成功時に反撃すると確定でクリティカルとなる他、必殺技の発動に必要なゲージも大きく溜まる。
そのため、単調な持続技にジャストガードをタイミングよく連打すると、恐ろしい勢いで必殺ゲージが溜まる上、発動まで漕ぎつけたらクリティカルで特大ダメージをお見舞いできる。
失敗すれば大ピンチ、成功すれば形勢逆転。実に分かりやすい駆け引きだ。
全てをジャストガードで対処するのが理想だが、当然そんなに簡単にさせてはくれないため、どの技をジャストガードで受け止め、どの技を回避で妥協するかを見極めながら戦うことになる。
この塩梅が素晴らしい。
戦闘のテンポもシリーズ最高峰と言えるほどに速く、しかし複雑な操作や駆け引きはないので焦ることもなく、ひたすらハイスピードな爽快感と迫力に飲まれながら遊ぶことができる。
本当に楽しい。
僕が作ろうとしているゲームでも参考にするつもりだ。
しかし。
だがしかし。
イース7の魅力は、そこだけではない。
とにかく広がりを感じるのだ。
物理的な広さではない。PSPのゲームなので、昨今のオープンワールドと比較したらとんでもなく狭い部類に入る。
しかし、いくつもの村を巡り、それぞれの文化に触れ、各地に眠る五大竜と呼ばれる特徴的な守護獣を順々に倒していき、世界の真理に触れ……と、冒険ならではのワクワク感、次はどこへ向かうのだろうという好奇心を刺激する展開が盛りだくさんだった。
素晴らしい。こんなゲームが作れたらどれだけ幸せなことか。
しかし、作る気はない。
理由は様々だが、記事が長くなってきたので一つだけ話すと、技術的に難しいからである。
オープンワールドを作ろうとして諦めたこともあるが、この「次にどこへ向かうのか」というワクワク感は僕が好きな要素の一つである反面、作ろうと思えるほど得意分野ではないのも事実だ。
好きなものと作りたいものは、必ずしも一致しない。
めんどくさいからなのか、単純に手が届かないからなのかまでは真面目に考察していないから分からないが、とにかく「広がり」の部分においてはイース7を真似したくてもできない事情がある。
ただでさえ5位の人気なのに、再現すら難しいとは嘆かわしい。
今回作るゲームはダンジョンRPGになる予定だが、これは先ほど話した不人気作「オリジン」の特徴でもある。
話せば話すほど売れる気がしなくなってきたが、こういう時に「アダルトゲームだから、アダルトの作り込みで巻き返せる」という戦略に舵を切れるのはメリットかもしれないなと、そんなことを思いもした。