2023年に読んだ本ベスト10(10冊とは言っていない)後編

amy
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公開:2023/12/30

前篇に引き続き、後編です。いくぞー、おー!

⑥曖昧さを受け入れるということ『ケアの倫理とエンパワメント/小川公代

自己と他者の関係性としての〈ケア〉とは何か。強さと弱さ、理性と共感、自立する自己と依存する自己……、二項対立ではなく、そのあいだに見出しうるもの。ヴァージニア・ウルフ、ジョン・キーツ、トーマス・マン、オスカー・ワイルド、三島由紀夫、多和田葉子、温又柔、平野啓一郎などの作品をふまえ、〈ケアすること〉の意味を新たな文脈で探る画期的な論考。

そもそもケアってなんぞ?というところからこの本は始まる。数ある文学作品のなかから、当時の風潮や倫理や社会的なできごとをふまえて、文学作品はケアをどういうものとしてきたか。そしていま求められるケアとは何か

私はこの本を通して「ネガティヴ・ケイパビリティ」という言葉を理解した。二項対立的な、白黒どちらでない、0か100かで区切らない、はっきりとしない状態。その状態を受け入れること。世の中のしくみとしてその曖昧さが許される環境がなくなってきているよねえ。何でもかんでも言いきって、はっきりさせることがよしとされてるもんねえ…つらい

ケアって聞くけどいったい何がケアなんだ?とか文学作品で女性が担ってきたもの、押し付けられきたものが気になる人はぜひ

⑦三島由紀夫がラブコメを…?『永すぎた春 (新潮文庫)/三島由紀夫

T大法学部の学生宝部郁雄と、大学前の古本屋の娘木田百子は、家柄の違いを乗り越えてようやく婚約した。一年三カ月後の郁雄の卒業まで結婚を待つというのが、たったひとつの条件だった。二人は晴れて公認の仲になったが、以前の秘かな恋愛の幸福感に比べると、何かしらもの足りなく思われ始めた…。永すぎた婚約期間中の二人の危機を、独特の巧みな逆説とウィットで洒脱に描く。

これはたまたま図書館で返却されたばかりの本のカートに入っていたやつなのですが、三島由紀夫のラブコメめちゃくちゃおもしろかった。三島由紀夫といえば「金閣寺」「仮面の告白」「豊饒の海」「潮騒」などなど。まあ、難解で重い話が多いのだけど、そういう作家の書くラブコメ、おもろすぎ。ってか小説がうまい。それはそう

時代とかは昔なんだけど、郁雄と百子が悩むところとか倦怠期になってしまうあたりとか、めちゃくちゃいまっぽい。というかいつの時代もカップルがつまずくところってそういうところだよね、うん…となるのであった。軽い感じの三島由紀夫が好きな人は「夏子の冒険」あたりもおすすめ

⑧知らなきゃならない、読まなきゃならない『正・続 まんが パレスチナ問題 (講談社現代新書)/ 山井教雄

いつも「複雑な」と言われる「パレスチナ問題」。宗教や民族という日本人にはなじみにくい概念が問題のベースになっているし、昨日までの味方同士が突然戦争を始めたりして、たしかに、わかりにくいのはたしかです。だからこそ、本書では少しでもわかりやすいように、ユダヤの少年ニッシムとパレスチナの少年アリ、そしてエルサレムのねこ、2人と1匹が、旧約聖書の時代から21世紀のいままでの「パレスチナ問題」をガイドします。日本から少し距離のある国のお話ですが、すべてがつながっている現代では、けっして遠い世界のお話ではないのです。

これは2冊セットで。続編もあわせて1000円ちょっとです。もちろんガザのことがあって読みました。本当はもっと早くに読んでいなきゃならなかった。これはわりとどちらに寄っているわけでもなく、難しいパレスチナ問題を変に簡略化したりもせず、でも語り口は易しめに書かれている。これは感想というか、とにかく誰か一人でもいいから多くの人に読んでほしい

⑨個人の幸福を無視して大勢の幸福は訪れない『客観性の落とし穴/村上 靖彦

「その意見って、客観的なものですか」。数値化が当たり前になった今、こうした考え方が世にはびこっている。その原因を探り、失われたものを明らかにする。

これを読んだのは最近ですね。しずかなインターネットにも感想を書きました。

客観的という尺度で人間をはかるのはどういうことか、それがどれたけ冷たいものであるか。色んなものを数値化することで何が取りこぼされるのか、そして現代における諸問題は行き過ぎた客観性によるものではないのかと疑問を示してくれている本

⑩愚かさを許すことこそ人間讃歌である『汝、星のごとく星を編む/凪良ゆう』

私が大好きな作家さん!凪良ゆうさん!やっぱりこの人の著書なしでは締めくくれない。ほんと大好き。「汝、星のごとく」の続編というかその後のことが描かれた「星を編む」。凪良ゆうさん自身が2冊でひとつと仰っていたのでまとめさせてもらいました。

「星を編む」もしずかなインターネットに感想書いてたね

「汝、星のごとく」の感想はnoteに↓

凪良ゆうさんの作品は「人間讃歌」を力強く訴えていて、どの作品にもあなたの人生はあなただけのものである。他人によって傷ついたり侵害されたりしていいものではないのだということを書いてくれる。個なんて捨て去れとでも言われるようなこの国で、私の大きな気持の拠り所になっているのだ

以上、これが私の読んだ本2023ベスト10である。いや、近藤史恵の〈ビストロ・パ・マル〉シリーズも含めるとベスト10なのに15冊になっている。でもいいいの、私の記事は私がルール!ちなみにここにのせた以外の本はブクログで管理してます

10冊じゃないベスト10だけど、これをきっかけに読んでくれた人がいたら嬉しいし、もし好きな作品が被っていたらそのときはレターで教えてください

前後編でわけたのに長くなってしまった。2024年はまとめるということを覚えましょうね…

@amy
悲しみを埋めるには 幸せの予感