毎月好きな百合漫画を勝手に発表するこの連載だが、5月に入ったのにすっかり忘れていたので慌てて執筆していく。
これまで毎回3作品を取り上げていたのだが、3作選ぶのが案外たいへんなこと、「好きな百合漫画」を紹介する速度が早すぎて紹介する作品が無くなってネタ切れしかねないことに気づいたので、しばらく普通に1作品ずつ紹介する形式でやってみることにする。
ラーメン大好き小泉さん/鳴見なる
高校生の大澤悠はある日、転校してきたばかりの「小泉さん」がラーメン屋の行列に並んでいるのを目撃する。その容姿に惹かれて仲良くなろうと悠が話しかけても、他人に興味を示さずまったくつれない小泉さん。しかしそんな無表情無関心な小泉さんは、ラーメンにのみ異常な執着を見せ、ラーメンを食べているときのみ幸福に満ちた恍惚の表情を見せるのであった。
人間関係としては悠が小泉さんにつきまとうくらいで、百合漫画としてみると薄味であることは否めない。しかし悠はめげずに小泉さんにつきまとい、料理の腕を活かしてラーメン好きの小泉さんの胃袋を掴むなど、悠と小泉さんの進展も少し期待させる展開がないこともない。とはいえ、主軸は濃厚なラーメン描写であり、渋い趣味を女子高生にやらせるタイプの趣味漫画という位置づけが適切であろう。
メインヒロインといえる小泉さんは、見てくれは美少女であるものの、
とにかく毎日ラーメンを食う
ラーメン以外のすべてに無関心
ラーメン食べ歩きのためだけに衝動的に全国をひとりで回る
寿司屋でもラーメンを食う
ラーメンが苦手と発言した生徒からはそそくさと逃亡
なんと一日に五杯のラーメンを食している回も
うっかりラーメンを食べそこねると倒れる
などなどと、異常ラーメン食べ女としか言いようのない完全な変人である。しかし、何かを美味しそうに食べている女子は可愛い、という一点張りで強行突破してくる、軸のブレない安定感に溢れる作品だ。どうもあとがきによれば、作者自身がたいそうなラーメン好きであるとのことだ。タイトルはもちろん藤子不二雄漫画に登場する「ラーメン大好き小池さん」のオマージュであろう。
最近セールでまとめ買いをして、筆者もラーメン好きなこともあり、ちびちびと読んでいて気に入ったので今回紹介した。悠と小泉さんの関係の進展にほんの少しだけ期待しつつ、そして破滅的な量の塩分と脂肪分を日々摂取し続ける小泉さんの体調を心配しつつ、ゆっくりと読み進めたいと思う。