3月になったので、また個人的に気に入っている百合漫画を紹介していきたい。作品の内容や感想を言語化するのは、実はあまり好きではない。それでも敢えて言語化しているのは、こうした漫画を読む人が増えて作品が増えて欲しいからである。気になる作品があれば、ぜひ買って読んでみて頂きたい。
桜の世界／つるせ
裏稼業の事務所にひっそり身を寄せる、やけに世間知らずで年齢よりも随分幼い雰囲気の桜。無愛想で荒っぽい性格ながらずっと桜の無二の友達であった月華と、家族のいない桜を拾ってきて母親のように見守ってきた千春に、桜は唐突に秘密をうちあける。「彼女ができました！」。それぞれ孤独を抱えながらも互いに寄り添って生きる、四人だけの優しい世界。全編が桜色のカラーで描かれている。ひたすらに温かい雰囲気が私も大好きで、この世界にいつまでも浸っていたくなる。『桜の世界』は上下巻でひとまず完結だが、作品の制作は続いており、作者のつるせ先生のツイッターやFANBOXで後日談やスピンオフが読める。
百合オタに百合はご法度です⁉︎／U-temo
お嬢様どうしの百合を見守る（眺めて堪能する）ために、念願のお嬢様学校に進学した百合オタクの渡辺。しかしそこにはあまりに場違いなギャルが紛れ込んでいた。空気を読まずにギャルオーラを振り撒く吉岡から理想の百合空間を守るべく、渡辺はお嬢様たちから吉岡を引き剥がそうと奔走する。流れで渋々ながら吉岡と一緒に過ごす渡辺だったが、そうこうしていくうちに二人の距離は自然と近づいていって……。メタ百合な変化球かと思いきや、実は安心して読める正統派ギャル×オタク百合。絵柄もややギャグ寄りで、明るくて楽しい。物語はふたりの高校卒業とともに大団円を迎えるが、個人的には大学生編も読みたい。全３巻完結済み。
割り切った関係ですから。／FLOWERCHILD
高校生の綾は高校生活に馴染めず、勢いで年齢を偽ってマッチングアプリに手を出したところ、高校教師の静と出会う。毎日の鬱憤と欲求不満を晴らすように綾を求める静。静の腹黒い本性に気付きながらも拒めない綾は、次第に静との歪んだ関係にはまり込んでゆく。性的描写にも躊躇のないドロッドロの泥沼百合であり、個人的にも特に好きな作品のひとつでもある。百合はやはり恋愛こそ本懐であり、恋愛とはしばしば独占欲と征服欲になりかわる。ハードな作風ゆえに百合作品初心者にはお勧めしにくいが、本作はまさにそういう感情に正面から衝突する名作だ。全4巻完結済み。FLOWERCHILD先生は現在は新作を連載中なので、そちらも大いに期待したい。