読んでいただけたら嬉しいです。
おもしろかったりしたら、応援的なことをしていただけると、とても嬉しいです。
以下、今回の小説を書くまでのことを簡単に書いておきます。今後の自分がまた小説を書くときなどに、参考記録とすることを主な目的としています。
おもに「これが大変だった!」という話や、「こういうつもりで書いた!」という話が書かれるはずなので、小説そのものを読んでいただく予定がある場合は先にそちらを済ませていただくといいかもしれません。
あと、参考作品として既存の映画やマンガのネタバレをしている部分があります。
前回の小説を書いたときの記録はこちらです。
制作について
前回、はじめて書いた短編小説「17」を公開したのが6月15日でした。今日が7月20日なので、だいたい1ヶ月で書いたことになります。この1ヶ月はお仕事がかなーり暇だったり、家族が3連休ずっと外泊していたりという事情もあったので、だいぶ時間のボーナスがありました。
今回は、note社が開催している「note創作大賞」に応募することを目標にして制作しました。ちょうど投稿締切までの期間が1ヶ月強あり、前回が7日で5000文字くらいのを掛けたのだから、5倍の期間があれば5倍の分量も書けるだろうという浅はかな考えがありました。
前回よりも前から「この話を書きたい」と思っている題材があって、しばらくは挑戦したのですが、今回も結局あきらめました。まだ早いようです。
題材は、「恋愛小説」にしました。自分は恋愛マンガがけっこう好きなのです。ホラーやミステリをいきなり書ける気はしなかったし、ノンジャンルも広すぎて大変です。
書き始めるにあたっては、森山さんが書かれている下記の記事を全面的に参考にしました。
それと、「三幕八場構成」を中心にした映画脚本制作などの考え方の記事も非常に参考にしました。
ただ、実際にこれで書こうとしてみて、かなり難しい部分も多かったです。プロットの段階で考えて決めておいたことを、実際に詳しく物語にしていくうちに、「そうはならんだろ」とか「このキャラクターはそんなことしない」とか悩んでしまって何度もひっくり返りました。たぶん、プロットの段階の詰めが甘かったんでしょうね。
物語について
「恋愛小説」というお題で書くことを選んだので、恋愛を題材にしたフィクションについて検討しました。
おそらく、恋愛ものは「なんやかんやあって、くっつく」か「なんやかんやあって、別れる」の2パターンしかありません。
マンガ『正反対の君と僕』のメインカップルは第1話でいきなりくっついて、そのあとなんやかんやが進行するけど。でも連載でアツいのは他のカップルの「くっつくまでの、なんやかんや」なのです。
「なんやかんやあって別れる」パターンの典型例は、難病で死んじゃうやつだと思っています。別れのタイミングが予告されていて、そこまでの期間で何をどうするのか。恋人が別れるまでを描く恋愛映画は意外とあります。『ラ・ラ・ランド』とか『(500)日のサマー』とか『花束みたいな恋をした』とか。
せっかく書くのだから、どちらでもないものを書きたいと思いました。わたしがとても好きなマンガ『付き合ってあげてもいいかな』は、主人公たちが付き合って、別れて、そして別れてからの人生のほうが実は長いんだよね、という話を描いています。できれば、こういうのをやりたい。
うまくいったでしょうかね。
難しかったこと
いまの自分の限界なんだろうなあと思うのですが、わたしは「悪いことをする人間」や「理解できない人間」を書く度量がまだなさそうです。フィクションに「天才」を出すのは難しいと森博嗣あたりが言っていた気がしますが(作者は自分よりも頭のいいキャラクターを思いつけない)、悪人を書くのもたぶん同じように難しい。
ある段階で考えていた結末は、主人公の行動原理はもっと別のものになっていました。プロットの状態ではその行動は理解できるものだったんですが、小説の状態になっていくうちに「この主人公って、そんなことしないよな」と思ってしまった。すると、そこには3つの選択肢があります。「違和感を無視して、主人公に荒唐無稽な行動をさせる」か、「結末が成立するように、前半のキャラクター描写を修正する」か、「前半で描写されたキャラクターが自然と選ぶであろう結末に変更する」か。わたしは3つめを選んだつもりですが、成功しているかどうかは不明です。
参考にしたもの
今回の小説をは、とてもいろいろな小説やマンガをしています。
一番意識したのは、斜線堂有紀の短編集『愛じゃないならこれは何』でした。このシリーズは狂気的な恋愛をしている主人公が出てきます。自分の主人公にも、ほんとうはもっと狂気的な恋愛をさせたかったんです。
サガンの『ブラームスはお好き』も座右に置きながら書きました。
あとは、本編のなかで書名が登場する小説や映画も参考にしています。また、ラスト近くで触れている前田敦子が出演した「恋愛映画」も参考にしました。
それから、直接的には物語とは関係ありませんが、テレビドラマ『虎に翼』は非常に影響を受けています。エンタメをやる。同時に、アクチュアルな文芸もやる。おもしろいものをやることと、興味深いものをやることは、両立させられる。自分もその意気を持って取り組もうと思っていました。
書くためのパワーという意味では、千葉雅也が少し前の文芸誌に書いていた短い「私小説論」と、野崎まどの小説『小説家の作り方』にも助けられました。どちらも、書くことが一意に決まるわけないよね、という話が書かれています。
仕掛けについて
本編には大きめの仕掛けがあります。どういう経緯で思いついたのかは忘れてしまいましたが、「これが成功したら面白いんじゃない?!」と興奮しました。もちろん、そのぶん、余計に書くのは大変になったと思います。
面白いかどうかはさておき、結果的には、わたしが書いておきたいテーマについて書くことができたのかなと思っています。
体験
とにかく大変であり、そして同時に楽しかったです。
いままでは、創作活動をするのは苦労が多いみたいな話を理解できていなかったんだなと思います。宮崎駿や庵野秀明のドキュメンタリーを観ていたとき、彼らの感情にはよくわからない部分がありました。今回の経験で、少しだけ共感しやすくなったと思います。こういうことをしているんだな、と。
次のこと
また、別のものを書きたいなと思っています。
前回と今回は、コロナ禍以降の東京を舞台にして、現実に起こりうることを書きました。登場人物の雰囲気も近くて、わたしが書くということは、こういうものを書くということなのだろうなとは感じています。
が、次は、もっとぜんぜん違う話をやってみたい。剣と魔法の世界もやってみたいし、特殊設定ミステリみたいなこともやってみたいし、大阪の話も書きたい。
「悪い人」を書いてみたいなと思います。保坂和志の『書きあぐねている人のための小説入門』には、小説を書くときにネガティブなことを書かないようにした、みたいなことが書かれていました。ただ、今回わたしが思ったのは、「悪い人を出すの、大変」ということです。悪い人について深く考えたくないです。この悪い人ならどんな行動をするかな、どんなセリフを喋るかな、過去にどんなことがあって人格が形成されたのかな、みたいなことを考えるのが大変だなあと思ったのです。だから、「悪い人」を書いてみたい。難しそうだから。
こういう文章だとあっという間に3000文字になっているのに、小説を書くのはなんだってあんなに大変なんですかね。でもおもしろかったなあ。
そういえば、今回の小説を書く過程では、読書系YouTubeチャンネル「ほんタメ」の齋藤明里さんとヨビノリたくみさんを仮想的に想定読者として設定していました。このふたりを同時に刺したい!と思いながらつくった部分があります。