ブローガスト参加3日目。前回の続きです。続けようと思えば続くもんですね。2023年の記録がごそっとないけど、2度目の転職のアレコレで足が遠のいていた。新しい職場での仕事も落ち着き、またお店が近くなったこともあり頻繁に通い出した。今回も読み手のことを考えてないくらい長文です。サッとスクロールして目についたところ読んでください。もし最後まで読んでくれてる人いたとしたら、ありがとう…!
ペルシャン・レッスン 戦場の教室
鴛鴦歌合戦
ジーザス・クライスト=スーパースター
成功したオタク
ニモーナ
七つの会議
TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇
エル・マリアッチ
関心領域
ライカムで待っとく
ペルシャン・レッスン 戦場の教室
監督:バディム・パールマン 2022年
あらすじ:第二次世界大戦中、ナチスの強制収容所に送られたユダヤ人青年ジルは、生き延びるために「自分はペルシャ人だ」と偽る。ペルシャ語を学びたいコッホ大尉に命じられたジルは、実在しないペルシャ語を即興で作りながら教えることになる。嘘が一つでも露見すれば命はないという極限状態の中で、二人の奇妙な関係が少しずつ変化していく。
いつ嘘がばれてしまうのか、最後まで緊張感が続くサスペンス作品。ジルが即興で言葉を作り続けるという設定自体がおもしろく、終始ハラハラしながら観た。
ジルから偽のペルシャ語を学ぶコッホ大尉の心境が、物語が進むにつれて少しずつ変化していく。加害者と被害者という単純な構図だけではない、人間同士の複雑な関係性が描かれている。
映像は色彩が抑えられ、全体的に鬱屈とした雰囲気で統一されている。収容所の周りはまっすぐ伸びる高い木が生えていて、監獄のように感じる。空もずっと曇り。その重苦しい映像が収容所という舞台とよく合っていて、観ているこちらまでどんよりとした気持ちになる。突拍子もない設定だけど、全てが繋がる終わり方をして、それがとても好きです。
鴛鴦歌合戦
監督:マキノ正博 1939年
あらすじ:貧乏浪人の浅井禮三郎と町娘・お春を中心に繰り広げられる時代劇ミュージカル。恋愛を軸に、勘違いや騒動が次々と巻き起こるが、軽快な歌とユーモアに包まれながら物語は進んでいく。日本映画黎明期を代表するトーキー作品の一つ。
1939年、第二次世界大戦が始まった年に公開された作品とは思えないほど、明るく軽快で観やすい映画だった。和製ミュージカルとしてすごく完成度が高く、この時代にここまで本格的なミュージカル映画が作られていたことに驚いた。宝塚歌劇団で舞台化されたことをきっかけに作品を知った。
恋愛を中心としたコメディーで、ストーリーは単純明快。登場人物同士の軽妙な掛け合いには思わず笑ってしまい、肩の力を抜いて楽しめる作品だった。お春が傘作りをしているため劇中にはさまざまな柄の傘が登場する。モノクロ映画にもかかわらず、きっとこんな色なのだろうな〜と想像が膨らみ、とても華やかに感じられた。公開から80年以上経った今でも、音楽もストーリーもまったく色あせていない!
ジーザス・クライスト=スーパースター
2000年映画版ゲイル・エドワーズ監督、 アリーナ・ツアー2012年ローレンス・コナー演出
あらすじ:聖書を題材に、イエス・キリストが十字架にかけられるまでの最後の7日間を描いたロック・ミュージカル。物語は弟子ユダの視点を軸に展開され、「なぜユダはイエス(ジーザス)を裏切ったのか」という問いを描いていく。セリフはほとんどなく、全編が楽曲で構成されている。
音楽は『オペラ座の怪人』などで知られるアンドリュー・ロイド=ウェバーが手がけている。世界中で上演され、日本では劇団四季でも上演されている。
この作品では、ジーザスは「神の子」ではなく、一人の人間として描かれている。反体制的な思想を持つ民衆から支持を集め、スーパースターとなっていく。2000年映画のジーザスは、周りに担ぎ上げられる若者として、アリーナツアーのジーザスは理知的な指導者として描いていて、その違いも面白い。
また、物語がユダの視点で描かれることで、なぜ彼はジーザスを裏切ったのかという新たな見方が生まれる。JCSのユダは、ジーザスに対して信仰にも似た感情を持ち、また自分が一番ジーザスのことを思っているという過信もあり、周りを巻き込みながら自滅していく。それが哀れで人間らしく、愛おしく感じる。
楽曲のパワーがすごい!ロックサウンドがとにかく格好よく、コンサートを観ているような高揚感がある。特にジーザスの唯一のソロナンバー『Gethsemane(ゲッセマネの園)』は、曲が盛り上がったあとに、一度静かになり、また盛り上がりきるという構成をしていて、ジーザスの神へ問いかけだったり、揺れ動く心境が分かる名曲だと思う。
成功したオタク
監督:オ・セヨン 2024年
あらすじ:韓国のドキュメンタリー映画。K-POPスターの熱狂的なファンだった監督オ・セヨンは、推し本人に認知され、テレビで共演するほどの「成功したオタク」だった。しかし、そのスターが性加害事件で逮捕される。監督は同じような立場のファンたちに取材し、「推し」が加害者になったとき、人は何を思い、どう向き合うのかを見つめていく。
監督自身も長年アイドルを応援してきた一人であり、自分も結果的に加害に加担していたのではないかという葛藤や、推しと過ごした幸せな時間まで否定しなければならないのか、という苦しさが率直に語られる。
このテーマはアイドルだけに限らないと思う。映画監督や小説家など、著名人が不祥事や犯罪、差別発言などを起こしたとき、作品と作り手を切り離せるのか、好きだった自分をどう受け止めればいいのか。自分にとって大切だったものや、信じていたものが壊れてしまったとき、人はどう折り合いをつけていくのか。結論は最後まで出ない。テーマは重いが、ユーモアも交えながら描かれており、押しつけがましさのない、柔らかなドキュメンタリーだった。
ニモーナ
監督:ニック・ブルーノ、トロイ・クエイン2023年
あらすじ:近未来の技術と中世の世界観が融合した王国。無実の罪を着せられた騎士バリスターは、何にでも姿を変えられる謎の少女ニモーナと出会う。二人は協力して真犯人を追う。
Netflixで配信されているアニメーション作品。バリスターとニモーナの友情と冒険を描く、王道のヒーローファンタジーでありながら、多様性や偏見といった現代的なテーマも扱っている。
ニモーナはどんな姿にも変身できる存在だが、その力ゆえに人々から恐れられ、疎まれ、居場所を持てずに生きてきた。何者にもなれるのにどこにも属せないという孤独。作中には現実にも通じる差別的な言葉や価値観が描かれており、エンターテインメントとして楽しめる一方で、自分も潜在的な差別意識を持っていないかと自己反省した。
七つの会議
監督:福澤克雄 2019年
あらすじ:中堅メーカー・東京建電で起きたパワハラ問題をきっかけに、会社に隠された大きな不正が明らかになっていく。ぐうたら社員と思われていた営業部員・八角(野村萬斎)が、巨大企業の闇に切り込んでいく企業サスペンス。
半沢直樹シリーズとかの池井戸潤の小説を映画化。野村萬斎演じる八角がとても魅力的だった。八角の枯れているけど眼光が鋭い感じが良くて、野村萬斎が好きになった。一見やる気のない社員に見えるが、会社の不祥事を次々と暴いていく姿が痛快。
八角の上司である北川部長は、会社を守ろうとするあまり不正に飲み込まれていく。一方で八角は会社に抗い続ける。その対比が印象的だった。及川光博、北大路欣也など、おじさん俳優たちの演技も見応えがあり、競争社会の中でプライドを懸けて戦うの姿が、とてもよい!
TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇
監督:藤井亮 2022年
1970年代に放送された特撮番組という設定で制作された、NHKの5分間の特撮ドラマ。岡本太郎の展覧会の宣伝のために制作された。岡本太郎の作品や言葉を巨大ヒーロー番組として映像化した。特撮番組を岡本太郎の芸術や思想で再構築した作品で、シュールでデタラメな展開がとにかく面白い。
タローマンの必殺技は岡本太郎の言葉が元ネタになっており、「芸術は爆発だ!」で奇獣を爆発させて倒す。必ずしも正義の味方ではなく、人類のためだけに戦う存在でもないところも岡本太郎らしい。地球を破壊して終わるラストが、なんとも言えない高揚感と清涼感があって好き。
毎話の最後にはサカナクション・山口一郎さんのインタビュー映像が流れ、「子どもの頃に観ていた」「グッズも持っていた」などと語る。その徹底した作り込みが本当におかしい。架空の番組なのに、まるで実在していたかのようなリアリティがあり、全力で架空を作っている。
エル・マリアッチ
監督:ロバート・ロドリゲス 1993年(日本公開1994年)
あらすじ:流しの歌い手・マリアッチは、黒い服に黒いギターケースを持っていたことから、殺し屋アズールと間違えられ命を狙われる。勘違いから始まる逃走劇を描いたアクション映画で、『デスペラード』三部作の第1作。続編は『デスペラード』(1995)、『レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード』(2003)。
7000ドルという、それで映画が作れるの?と思うほど、超低予算で制作されたにもかかわらず高く評価され、ロバート・ロドリゲス監督の出世作となった。アクション映画でありながらユーモアも多く、独特の空気感がある。ガンアクションは派手で工夫されており、カメラワークにも勢いとセンスを感じた。アイデアと熱量にあふれている。
続編の『デスペラード』では、アントニオ・バンデラスが主演で、いろいろと濃い。予算が段違いに増えたことが分かる。オープニングが良いので観てほしい。エル・マリアッチの主人公役の方も少し出てくる!2作に繋がりはないので、デスペラード単体で観るのでもいいと思います。私が好きな漫画のトライガンに出てくる武器や撃ち方は、デスペラードのギターケース型ロケットランチャーおよび、通称デスペラード撃ちを参考にしいるものがある。いろいろむちゃくちゃだけどそれが良い。
関心領域
監督:ジョナサン・グレイザー 2024年
あらすじ:アウシュビッツ強制収容所の隣で暮らす収容所長ルドルフ・ヘスとその家族の日常を描いた作品。美しい庭のある邸宅で穏やかな生活を送る一家のすぐ隣では、多くの人々が虐殺されている。収容所の惨状を直接映すことなく、「壁の向こう側」の存在を描き出したホロコースト映画。
ホロコーストや強制収容所を題材にしているが、映画の中心は虐殺そのものではなく、その隣で平然と日常を送る一家の姿にある。父親のルドルフ・ヘスはアウシュビッツ収容所の所長であり、部下から信頼される優秀な上司であり、家族にとっては良き父親でもある。広い庭付きの豪邸で暮らし、プールで遊び、パーティーを開く。一方、壁の向こうからは絶えず黒煙が上がり、叫び声や銃声が聞こえてくる。
残虐な場面を直接映さないにもかかわらず、音だけで収容所の惨状を想像させる。観客自身の想像力に委ねることで、かえって恐ろしさが際立っていた。最後、ヘスが暗く続く階段を降りていくが、ずっと上がってこれない、暗闇へと堕ちていくという描写なのかな、と思いました。
ライカムで待っとく
作:兼島拓也 演出:田中麻衣子 2024年(再演)
あらすじ:1960年代、沖縄で実際に起きた米兵による殺傷事件を題材に、戦後の沖縄で暮らす人々の姿を描いた演劇。事件を通して、基地問題や本土と沖縄の関係、沖縄が抱えてきた歴史を見つめ直していく。
演劇作品。KAAT神奈川芸術劇場で鑑賞。日本本土から見ると、沖縄は「青い海のリゾート地」というイメージが強い。しかしその一方で、「沖縄は日本のバックヤード」であり、沖縄の犠牲の上で日本の安全保障が成り立っているという現実には、十分な関心が向けられていないことを改めて考えさせられた。
『関心領域』とテーマが重なるように感じたので、映像作品ですらないが、一緒に話したかった。どちらの作品も、暴力や犠牲がすぐ近くに存在しているにもかかわらず、それを自分には関係のないこととして日常を送ってしまうのではないか、ということを突きつけてくる。遠い出来事として認識していないか。私たちはどれだけ目を向けられているだろうかと思った。