
cool942tbは、Bluetooth接続、ロウスタッガード、40%、分割、トラックボール付きのキーボードです。一応、今できることを全て注ぎ込んでみました。
ファームウェアはzmk_firmwareを採用することで、省電力でBluetooth接続ができるため、一度充電すると、長期間使用することができます。技適についてはクリアしているxiao bleを採用しています。
xiao bleは国内でも入手可能で1個あたり2000円ほどです(秋月電子)。自作キーボードのBluetooth接続で多くの使用例がある、BLE Micro Proよりも安価になります。
キーマップ編集はキーボードとPCを繋いで、Webブラウザでzmk studioに接続すれば、容易にできます。

コンボキーなど詳細なキーマップ編集は、keymap editorでできます。どちらもGUIなので、使いやすいです。

これまで、私の設計する自作キーボードでのBluetooth接続は、BLE Micro Proを使用してきました。ただ、BLE Micro Proは1個当たり4500円ほどで、結構高価です。分割キーボードの場合、2個必要となり、さらにPCBとBLE Micro Proとの固定に使用する取り外し可能なコンスルー4つを含めると1万円かかります。そのため、購入者の負担を考えると、無線で分割のキーボードを積極的に設計してきませんでした。
昨年秋に、要望のあったcool642で分割のBluetooth接続のキーボードを設計し、その流れでcool937を設計した限りです。
BLE Micro Proの他にqmk_firmwareを使えて、技適もクリアしている条件のものはないので、仕方がありません。「自分で作ればいい!」と思い、ネットで見たものを真似してやってみました。
これはラズパイピコWを使用したBluetooth接続キットを作りました。ただ、電源を5V確保しないとうまくいかないのと、この装置自体がキーボードを大きくしてしまうと、実験のみで終わりました。
偶然、天キーで、zmk_firmwareを使用したトラックボール付きキーボードのmoNaに触る機会がありました。トラックボールによる操作も予想以上によく、これならば「zmk_firmwareをやってみたい」と気持ちが強くなりました。
私の手元には、何かのきっかけでアリエクで購入したnice!nano V2がありました。多分、そのうち、使うだろうと思って買ったようです(我が家にはそんなものが結構あります)。これを使おうと、総務省に申請を出しました。12月6日から6ヶ月間、自宅で実験できるようにしました。
nice!nano V2はBLE Micro Proと同じような位置にピンが配置されています。そのため、今持っている、BLE Micro Pro対応している私のキーボードに取り付けて実験しようと思いました。しかし、ファームウェアを作るところで挫折しました。うまくいかないのです。そして、その通知(「失敗だよ」とメール)が届くと、何気に落ち込みます。3週間ぐらい、がんばりました。でも、ダメでした。
その間に、何か参考になるものはないか、検索ワード「zmk_firmware」で調べました。その中で、天キーで触ったmoNaのを見つけて、読み解いていくと、ピンの表記が、2種類混合していることがわかりました。でも、その理由がわかりませんでした。しかし、この混合問題は、公開されているroBaのファームウェアとkicadの回路図を見たことで、一気に理解できました。
私は自分のキーボードをzmk_firmwareに対応させるよりも、新しく作った方がいいのではないかと思い、roBaおよびmoNaのファームウェアで動く、キーボードとしてcool942tbを設計しました。cool942tbにroBaまたはmoNaのファームウェアを入れると、動くと思います。最終的には、キーレイアウトを変えているので、誤ったキーが入力されると思います。
roBa設計者のkumamukkey(@kumamuk_key)さんはkicadのデータのほかに、ケースデザインのデータも公開しているので、そのまま使用すれば、自家版roBaが作れてしまいます。しかし、私も設計者の端くれなので、「自分の好みであるカラムスタッガードに変えてしまおう」と野望を持ち、実行しました。
12月30日に発注したver.1.0は届いてから、フットプリントの表裏や、配線のミスが見つかり、動作確認もできないものでした。ver.1.10と修正して再発注しました。次の基板が届くまでに、ケースだけでも作ってみようとFusionで作ってみたところ、右手側のトラックボールの配置が私にとって、ダメなことに気付きました。
この配置ですと、ボールケースが手の中にうまく収まらず、とても打鍵しづらいことがわかりました。これを作ってに、トラックボールの配置を見直して、1U(約2cm)左へ動かしました。また、ボールは34mm球ではなく、25mm球を使うことにしました。
結果として、再発注の翌日には、右手側だけ、トラックボールの配置を変えた修正版ver.2.0を発注しました。
1月下旬、発注した基板が届き、組み立てに入りました。組み立ての様子は、別に記事に記載してあります。
無事に動くものが完成したので、言えることですが、kicadのデータを公開しているkumamukkey(@kumamuk_key)さんには感謝の言葉しかありません。あれがなければ、cool942tbを設計することはできませんでした。そして、あのデータは、今後、zmk_firmwareで自作キーボードを設計する際、お手本となると思います。分割、トラックボール、ロータリーエンコーダーと、最近の自作キーボードで欲しい機能が網羅されています。これを土台にして、他の人は自分のキーボードを設計できると思います。
私もcool942tbについては、ファームウェア、kicad、ケースの3Dデータなどを公開しています。
私の一歩が誰かの礎になれば、幸いと思い、本記事を書きました。
この文章は主にcool942tbとiPadにて執筆されました。