片手キーボード Twiddler訓練日記①

MIRO
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先日ウェアラブル・コンピューティングへの執着を語ったりしましたが、このとき注文した片手キーボード「Twiddler 4」が届きました。

なお、注文した、届きました、などとサラっと書いてはおりますが、まだ販売元のTek Gearでは「COMING SOON!」扱い、つまり未発売の商品なので、なぜかググったら販売ページが出てきた…とはいえおそらくまだパブリックに販売しているものではないのでご注意ください。

Twiddlerは非常に歴史のある(なんと初代が登場したのは1992年。32年前!)片手で入力するタイプのモバイルキーボードで、握った状態で使うため机がなくとも自由な姿勢でタイプできるのが特徴です。ただし、ジャンルとしては「コーデッドキーボード」に属する、複数のキーを同時に押すことで特定の文字を入力する、キーの組み合わせをひたすら覚える必要がある、というマz…熟練者向けのキーボードになります。買ってすぐ自由自在に使えるわけではなく使う人間側に訓練が必要なのですね。

で、このTwiddler。熟練すればかなり高速にタイピングできることが示されています。先のウェアラブルコンピューティング記事でも参照しましたがTwiddlerユーザーは平均47wpm(word per minutes)、人によっては67wpm入力速度が出ており、しかもブラインドタイプが可能、という結果が出ています。特定の訓練フレーズを、しかもキー設定を高効率にカスタマイズした場合で130wpm!まあそれは外れ値として置いておいたとしても、これはフルキーボードの速度にかなり近い数字です。

…とはいえ、さすがにTwiddlerを訓練までしてがっつり使おう、という人はそれほど多くないのか、動画などを探してみてもいまひとつ実際のところどれくらい速度が出るのか、訓練にどれくらい時間がかかるのか、はっきりしません。

日本語入力でいうと、14年前(Twiddler 2)の動画でこれがあるくらいでしょうか。

なのでまあ、自分が使えるようになるかはさっぱりわからん、実際のところどれくらい練習すれば使えるようになるんじゃ、それとももうおっさんの自分は新規に学習する能力が追いつかず使えないままだったりするんか、みたいなところをハッキリさせたく、訓練と上達の様子をここに書き留めていこうかなとおもいます。いつかはTwiddlerを使って更新できるようになったらいいね!

届いた

右手で練習するか、左手で練習するか、をまず決めなければいけません。最初は

  • Twiddler 4はマウス機能も持っており、親指でマウスポインタ操作が可能になっている

  • キー入力は右手でも左手でも構わないだろうが、微妙なポインタ操作は利き手のほうがいいのではないか

  • なので右手で練習しよう

ということを考えていたのですが、実際少し練習してみると

  • 標準のキーバインドが左手入力のほうがピンとくる感じがある

  • マウス機能は思ったより使いにくく、あまり積極的に利用する気にならない

  • だったら右手をフリーハンドにしておいて、キー入力は左手にまかせたほうが便利では

となり、最終的に左手で練習することにしました。左手にTwiddlerをにぎってポチポチしながら、右手でトラックボールをくりくりしたりしています。これはこれでよさそう。

練習はTwidder用のタイプ練習ツール Typing Tutor を使います。

レッスンの構成は、

  • まずキーの配置をひたすら覚えるターン(キーの配置を列ごとにひたすら繰り返してどの列にどのキーがあるかを覚える)

  • 複数の列のキーを組み合わせたパターンを覚えるターン

  • 全体を使ってテキストのフレーズ入力を練習するターン

という流れになっています。上に挙げたキャプチャは最初の「キーの配置をひたすら覚えるターン」ですね。

まずはひたすらこの単純なレッスンを繰り返していきます。

訓練1日目

  • Lesson 1

    • a,b,c,dの4キーの練習。これはキーコンビネーションもなくただ「押したキーが入力される」だけなのと、配置もa,b,c,d順に並んでいるだけなのですぐに覚える。とはいえ体に馴染ませるためにひたすら繰り返す。

  • Lesson 2

    • 同じくe,f,g,hの4キー練習。これもキーコンビネーションがない単純入力なのでひたすら練習。ただa,b,c,dよりも並びが瞬時に腹落ちしないので念入りに繰り返す

  • Lesson 3

    • i,j,kの3キー練習。ここからキーコンビネーションが入る。ここから人差し指で一番奥のキーを押しながら残りの指で3キーを押す、という動きになる。ここでいきなりめげそうになるw

  • Lesson 4

    • l,m,nの3キー練習。Lesson 3とやることが同じなのにつまづきかける。l,m,nの並びと指の配置が直結せずよく間違えてしまう

    • しんどくなってきたので1日目これで終了。

訓練2日目前半(朝)

  • Lesson 1から再度何度も繰り返す。同じ事を何度も繰り返すことで体に染みつかせることを意識する

  • Lesson 4

    • l,m,nの3キーは相変わらず安定しないが、いつまでもこだわっていても仕方ないので先に進むことにする

  • Lesson 5

    • o,p,q。これはLesson 4より素直に覚えられる。ここであらためて気づいたが、Twiddlerの標準キー配列、abcdef…とごく単純にアルファベット順に並んでいるだけではあるのだが、狙ってか偶然か母音はどれもけっこう押しやすい配置のところにある。oはかなり押しやすい!

  • Lesson 6

    • r,s,t。これがなぜかl,m,n以上に難航する。rとかsとかtとか思ったときにそのキーがすんなり押せず、間違えてしまう。エラーレートがかなり高い。ひたすら練習するがなかなか改善しない

    • えんえん練習するがエラーレート改善しないのである程度のところであきらめて先に進む

  • Lesson 7,8

    • u,v,w と x,y,z

    • r,s,tはなんだったのか、というくらいちょっと練習しただけで安定して入力できるようになった。やはり母音のuは押しやすい。

  • ここまで練習したところで、A〜Zまでのアルファベットを全部覚えたことになる。ので、自由テキストの入力を試みる

    • が、ぜんぜんまともに入力できない!!

    • 各列ごとに頭で覚えているだけで、文字から入力へ直接記憶が参照できていない。たとば「k」を入力したい、となったときに、えーと、kはi,j,kの列だから…この列で…3番目だから…と順に思い出していかないと配列にたどりつけない。一文字一文字じっくり考えながら入力している感じ

    • 自分は卓上の普通のキーボードの場合、「キーの位置を覚えていて運指は適当(近い位置に指があれば決まった運指以外の指も反射的に使ってしまう)」というタイプのしかたをしているんだけれど、同じノリでTwiddlerを使おうとしてしまい大混乱する。Twiddlerは決まった指で決まったボタンを押すことが強要される形状をしており、別の指を使うと絶対失敗する。ここの感覚的な矯正が必要だと痛感する。

訓練2日目後半(夜)

  • 夜になって、あらためてLesson 9から先に進むことにする。これまでやったものと同じじゃん、と思っていたら実はちょっと違うことに気がつく

  • 上がLesson 2のe,f,g,h列練習。下がLesson 12。またe,f,g,hかよ!と思いつつ練習をはじめると…3語目に「egh『t』」と、e,f,g,h以外のキーがしれっと含まれている。しかも「eight」と近い順になっており、実際の単語でよく使う順。一語だけなんだけど、この課題設定具合にテンションがあがる。よくできてる。

  • 同じようにLesson 12以降は1列の課題と見せかけて1列+αの課題になっており、複数の列にまたがる入力を体験できる。これはいいぞとみっちりやる。念入りに繰り返す。2時間くらい。

  • Lesson 27,28,29で記号(-,!,?)も入り、Basic Level 1終了。だんだん「複数列にまたがる入力」に馴染んできた

  • チュートリアルがBasic Level 2(テキスト入力)に入って冒頭、この3レッスンを練習しているときに、突然なんらかのシナプスが繋がった

  • 複数の列にまたがる文字列の入力の練習をしているときに、それまで「この列の何番目だから」という認識だった、言い換えると「文字→列→運指」という記憶参照しかなかったところに、「文字→運指」のインデックスがあらたに生成されて一発で引けるようになったかんじ。

    • ここで練習した「o」「n」「t」において、文字から直接運指に結びつくようになり、突然その後ほかの文字も文字から直接運指がイメージできるようになった。積み重ねてきた体感に対して、あとからパシっとリンクがされたようなイメージ

  • まだ迷うし間違えはするけど、文字から運指に直接繋がるようになったことで、一気に「脳直デバイス」の実感がわくようになる。まだ文字を脳裏に描き、そこから運指を思い出し、指を動かす、というステップを踏んでいるが、これは訓練を繰り返せばほぼ反射的に入力できるようになるだろう、という実感がある

  • 上記ポストでは10wpmと書いてるけど、ちょっと盛った。まだ8wpmくらいかも。

  • 指はおもったよりつらくない。デバイスの位置が掌にパシッとはまれば小指使う時もスムースに動く

  • 2日目前半で感じた「決まったキーを必ず決まった指で押さなければいけない」問題は、この時点で「押すボタン」ではなく「指の形」で記憶がつながったもようで、まったく迷わなくなった

  • ここまで累計練習時間は8時間くらい(ただ上記Tutor以外でも少し自由文で練習したりはしています)

@miro
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