奈良へ行った(1日目)

miyaoka
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公開:2024/10/26
  • 関西に馴染みがないので調べてみると京都駅から奈良駅まではだいたい電車で一時間弱、大阪駅から奈良駅も一時間弱、京都駅~大阪駅が約30分というトライアングルな地理関係なんだなと認識する

  • 今回はJR奈良駅前に宿を取り、2泊3日でいろいろ巡った(黄色が1日目、赤が2日目、青が3日目)

  • 奈良県民からすると「これで奈良と呼ぶな、奈良県北西部と呼べ」と言われそうなので正確には奈良県北西部を巡った


  • 行こうと思い立ったその日にホテルとバスを予約し、23時に新宿からバスに乗り翌朝5時に京都駅に着いた

    • 値段の安さと早朝から行動できるという利点で夜行バスを選んだけど、最後尾の5列席になってしまいめちゃくちゃ狭くて全然寝れなくて最悪な体験だった…

  • 軽く朝食を食べ、京都から電車に乗って6時半にJR奈良駅到着

  • 京都から奈良はJRと近鉄の2路線が並走していて、近鉄の方が便がいいし近鉄奈良駅の方が観光名所に近いようだ

  • ただ今回はJR奈良駅前に宿を取ったのでJRを利用する

  • ホテルのチェックインはまだだけど、荷物だけ預けて身軽になって出発

  • 奈良は修学旅行で行っただけでなにも分からないけど、まずは奈良公園周りを巡っとけばいいらしいのでとりあえず初日はそうしてみる

  • 春日大社が6:30オープン、東大寺が7:30、興福寺が9:00なので、その順に回ることにした

  • あと世界遺産「古都奈良の文化財」を構成する8箇所は全部行ってみることにする(春日山原始林はハイキングになるので今回はパス)

春日大社

  • 人気観光地だけどまだ早朝だから人がいない。人はいないけど鹿は居る

  • 鹿、居るんだ、と改めて思う。特に柵とか無いので市街地でも好きに出歩いてる。これだけで奈良って思ったよりワンダーなところだなって感じた

  • 一の鳥居というところから入って広い道を進んでいく

  • 鹿の鳴き声。ハンティングゲームで使う鹿笛が確かにこんな音だったなと思い出す

  • 二の鳥居前

  • 鹿が神の使いとして祀られてる。だから鹿にとってこんなに好待遇なシカシティになっている

  • 灯籠が多いのも春日大社の特徴

  • 本殿まで行ってあと周りにもいろいろあるので一通り巡ってみる

  • 通りがかったところで自分以外客がいないのに儀式が行われてたりするので、イマーシブシアターみたいに観客が能動的に動き回って味わう没入型コンテンツっぽいなーと感じる(別に観客の有無で儀式をやってるわけではないが)

  • 東の出口のとこまで行く

  • かわいいポスターがあった

  • ぐるっと回って戻ってくると、観光バスも到着して人出が増えてきた

  • 8時50分から朝のお参りをやるというのでせっかくだから参加してみる

  • 受付で神拝詞と呼ばれる歌詞カードを貰う。読み仮名がついていて分かりやすい

  • やがて宮司さんと数人が出てきて朝の祈りを始める。途中でみなさんもご唱和くださいというので「かしこみ かしこみも もぉ〜すぅ〜」という例のやつを自分も声に出して読み上げてみる

  • やってみるとかなり棒読みになってしまう。あの独特の唱和にはしっかり前を向いて腹から声を出したりリズムが必要なんだなと感じる


  • 終えて宮司さんがいろいろ説明を始める。春日大社というのは飢饉や災害などの国難を鎮めるために作られたところであり、日々こうして祈りを捧げているとのこと

  • 国難が無ければ世界平和を祈る。昔で言う世界とはアジア圏のことを指していたが、今ではほんとにグローバルな世界が対象らしい。そして現在では能登地震という国難があるのでそれがトピックとなっている

  • その後、外に出ていくつかお参りをするというのでついていく

  • 若宮というところをお参りしてそこでまたいろいろな話を聞く。多い時は30人くらいいて話すのが大変らしいが今日は4人だけなので楽だと言っていた


  • 春日大社の本殿には4柱の神が祀られてるが、そのうちの2柱が夫婦なのでやがてできた子どもが若宮とのこと

  • 後に飢饉で国がヤバいというときになって若くて活力のある神が求められ、そこで若宮が持ち上げられたという

  • 天岩戸は太陽神が隠れてしまう話だけど、それはつまり天候不順で飢饉に陥る。秋に食べ物がとれなければ冬に食べるものがなくなる。今みたいに輸入なんかも無い時代

  • …という話を聞いて、これまで飢饉というとただ飢えて死ぬという漠然としたイメージしか無かったけど、今で言うと宇宙船みたいな閉鎖環境において酸素や食糧が欠乏するおなじみのシチュエーションと捉えると想像しやすいのかなと感じた

  • つまり今すぐ死ぬというわけでは無い。でも人員と物資を計算すると確実に供給が足りなくなり、この先集団の何割というレベルで死ぬ未来が待つ

  • ドラマとしてはそういう想像をさせつつ主人公が全員救うミラクルな活路を見出すということもあるけど、現実には間引きするしかない。この間読んだ「三体」にもそういう場面があった。そのままだとみんな死ぬが、人員を減らして食糧を奪えば一部は生き延びられる。飢饉という状況では常にそうした究極の選択はセットだったのかと思うと改めて壮絶さは増す


  • 春日大社がオリジンであるいくつかのことについて

  • まず灯籠を並べること。元々は灯籠というのは神前に一つだけ立てるのが正しいもので、いくつも並べるという風習は無かった

  • しかし若宮に拝舎を作った折に灯籠を脇に移したところ、そこから本殿に向かって灯籠を並べていくようになった

  • で、なんかそのスタイルがいいじゃんってことになって流行った。寄進するにもちょうどよかったらしい

  • あと若宮には舞台が作られていてそこで巫女が踊るようになった。元々巫女というのはシャーマンのことであり、今のように踊るのは巫女ではなくダンサーの役割だった。なのでけしからんからやめさせようとする動きもあったらしいが、やめさせるほうがけしからんと神に言われたらしくオッケーになったらしい

  • 踊りの伝統にもいろいろあるけど最近他のところでは宝塚を取り入れてるらしい。関西の芸能なら宝塚でしょということで、伝統を重んじつつも長い年月の経過でその時代のエンタメ的な要求が入ってくるんだなと感じる


  • そうしたことを宮司さんがずっと澱みなく、時に面白おかしく喋っていたので話術の高さに感心する

  • 戻り際にいたるところに社があるのでちょくちょく立ち止まって拝んでいく。多いんですねと言ったら全部で61社あるらしい。それぞれ年一で祭をやるので一年中なにかしらの祭をやってるらしい

東大寺 大仏殿

  • 3時間半ほどかけて春日大社を見終えて、やっと東大寺へ移動

  • 大人気ふれあいコンテンツ、鹿

  • こうして鹿ばかり見てると「しかのこのこのここしたんたん」が鹿である必然性もなんか分かる気はする(観てないけど)

  • 南大門

  • 中門

  • 大仏殿

  • でかい。広大なフィールドを進むたびにドン、ドン、ドンと立て続けにでかいものが現れる体験性が味わえる

  • さっきの話で聞いたように灯籠は正面に一つだけ配置するのが正しいというのが早速ここで確認できた(こっちは寺だから全然別物かもしれないけど)

  • そして大仏

  • …なんだけど、なんか思ったよりでかくないかも?と感じてしまった

  • 建物がでかいという時点で感心してたのでその中の大仏となると当然それより小さくなる。でもなんかむしろもっとでかくなることを期待してたのかもしれない。なんとなくこれの倍くらいのサイズを想像してた

  • 人がいっぱいいるから立ち位置を選んでじっくりとスケールを感じ取れてないというのもあるかも

  • 大仏の鼻の穴サイズを通るやつ。これは子供の時にやった気がする

鐘楼

  • 大仏殿を見終えて東のほうに進む

  • なんかかっこいい鐘楼があった

  • 国宝らしい

  • このへんあんま人居ないし拝観料も取らないのに、こんなにカジュアルに国宝が存在してるんだと驚いた

二月堂

  • このへんには二月堂、三月堂、四月堂とあり、これは二月堂

  • ちょっと登っただけなのに急に見晴らしが良くなった

  • 街を一望できる眺め、いい

  • かつては大仏殿の先に平城宮が広がっていたらしい

  • 銀杏の実を踏まないようにという注意書きがあったけど、それより鹿のフンに注意を促すべきなんじゃないか?と思った。建物やシカばかり見てると気づかず踏んでしまうなと今更になって気づいたので

法華堂(三月堂)

  • 二月堂と同じくこちらも国宝の建物

  • 入口を見ると拝観料800円とあり、さっき見た大仏殿より全然小さいのに同額なの??とちょっと驚いた。けどまあそういう値段設定ならそのくらいの価値があるんだろうと思って入った。大仏殿は大人気だけどこちらは全然人がいない

  • 中は撮影禁止だったので共同通信の動画を引用するけど、結論としてはめちゃくちゃ良かった

(なぜかめちゃ手ブレしてる動画)

  • 仏像のことなんてなんも分かんないけど、これはすごいなと感じ入ってしばらくいろんな位置から眺め回していた。実物は上記の動画よりも薄暗い空間で陰影が強くて迫力があり、ほぼ自分一人しかいなかったのでかなり没頭して見れた

    • ちょうど雨が強く降ってきて雨宿りがてら過ごしたこともあり、後で確認したらここだけで50分くらい滞在していた

  • センターに腕八本の観音菩薩を配し、脇を梵天と帝釈天が固め、前方を一対の金剛力士たちが左右からものすごい形相で睨みを効かせてくる(手には血管が浮き出てる)。そして邪鬼を踏みつけにした四天王が四方を固めている

  • ここにいる9体(+もう1体いるが普段は隠されてる)全部が国宝と書かれているので、すごいと思ったのはそうした情報を頭で食べてるせいかもしれない

  • けど単体で仏像を見せられるよりも数体のデッキとしてジオラマ的に組まれていることによって「我々こういう世界でやってるんですよ」という表現のコンテキストがより感じられる気がした

  • 特に3~4mほどの高さで構成される仏像たちのスケールは堂の中の空間において見る者を圧倒するのにちょうどよい。実際2mの人間でも目の前にいたらでかいと感じるように、人間にとってリアルな存在のでかさを感じられるのってこのくらいの距離・スケールなんじゃないかと思った。さっきの大仏がいまいちピンとこなかったのはそうした遠近感が頭の中でうまく結びつかなかったかもしれない

  • 以前読んだ目が見えないの人の美術鑑賞の話によると、全盲の人にとっては「距離が遠いと物体は小さくなる」という視覚の概念は驚かれるらしい。また「三体」の話では遠近法が適用されないことによってどこにいても一定の大きさに見えてしまう存在の寓話もあった

  • そういうのSFとしては存在の次元の話になってくるわけだけど、仏教の持つ途方もないスケールについてもこうした仏像の構成でどのように表そうとしたのかというのは一つのトピックであり、鑑賞するに当たっての取っ掛かりになるのかなと思った

SSRとしての国宝

  • 今回奈良をいろいろ見て回って勝手に感じたこととしては、「有形文化財はR、重要指定文化財(重文)はSR、国宝はSSR」というレアリティ具合

  • 友人の推しであるホロライブの学術系ライバー儒烏風亭らでんちゃんの解説によると、重文は現在1万3000件くらいあり、そこから調査・審議して満場一致で可決されることでやっと国宝として認められるらしい。現在国宝の数は1100件くらい

  • SRに対して1/10くらいの排出率。奈良で金払うところはだいたいSSR確定ガチャになっている。金額が高いと出てくる国宝も多い

  • そんなわけで展示物を見ていくときに「重文、重文、重文…、お、国宝きた!」みたいな俗な捉え方をしたりしていた。だからまあ法華堂みたいに全部が全部国宝なのはもうどうなってるんだみたいな感じになった

  • 後で調べたところによると国宝の保持数は東京、京都、奈良の順になるけど、彫刻(つまり仏像)のジャンルにおいては奈良だけで国宝の半数以上を占めていて圧倒的とのことだった

  • 文化財はいろんなジャンルがあってそれぞれ理解にコンテキストが必要になるだろうけど、奈良は仏像ばかりなので時代や様式の違い、重文と国宝の価値の差を初心者でもそれなりに見比べやすいのかなと思った

  • あと重文は英語でImportant Cultural Propertyなのに対し国宝はNational Treasureと書かれていて、なんとなくトレジャーって響きのほうが財宝を見てるんだなって感じがした

東大寺ミュージアム

  • 東の方を見たので今度は大仏殿の西側や裏手の方をまわり(戒壇堂はよく気づかずにスルーしてしまった)、南大門のほうに戻ってくる

  • 鹿が立つときって足のそこ使うんだって知った

  • 最後に東大寺ミュージアムに寄る

  • 美術館や博物館ってめちゃくちゃ疲弊するので実はわりと苦手意識がある

  • 歩きより立ち姿勢の状態が長くて腰が痛くなるし、解説をしっかり全部読んで体系的に理解しようとするとかなり時間がかかる。ダンジョンで宝箱を取り逃がさないようにする気持ちで臨んでしまうので疲れ果てる

  • おまけに写真や記録が録れないので外部装置に頼れないつらさもある

興福寺 五重塔

  • 東大寺も見終えるのに3時間半かかり13時半。ホテルのチェックインが15時なので残りは興福寺を見ていく

  • 鹿による信号無視横断。ドライバーのおっちゃんが距離を詰めてエンジンを吹かして煽りまくってたけど全然動じない

  • 奈良に来たときからなんかやってるなと思ってたけど、興福寺の五重塔は去年から改修工事に入っていて全部終わるのは令和14年らしい

  • 令和14年っていつなのかと思ったら2032年!?? 大変すぎる

  • 街中のいたるところからこの工事風景が見えるけど、そのたびに「本来ならあそこに五重塔があって、もっと奈良っぽい景観を形作っていたんだろな~」と思うと残念に感じてしまう

  • たとえばこういうアパート風景も背後に塔が有ると無いとではけっこう違いそうだ

  • 以前見たユトリロという画家は地元モンマルトルの町並みを多く描いていて、通りから垣間見える教会の尖塔が景色を特色づけていた感じがする

  • まあそういう意味ではどこを撮っても鹿がいるだけで奈良の光景になるので、鹿か塔どっちかあれば十分かもしれない

興福寺 中金堂

  • この建物は数年前に再建されたばかりらしい

  • 中には金ピカな釈迦如来像がセンターにあり、元々そういう姿だったんだろうけど建物も像も新しいのでいまいちよく分かんないなという気持ちになる

  • ものを見るときに時の洗礼を経て箔がついてるほうが分かりやすくありがたい気はするけど、創建当時の人は最初からそんなボロボロの状態で作ってるわけじゃないんだから新しかったときの姿をイメージすべきなんじゃないかという気持ちもある

  • 南円堂

  • 興福寺って春日大社や東大寺に比べたら小さいけど、元々は春日大社と一体化して現在の奈良公園の一部に広がる規模だったらしい。しかし度々の戦火や罹災、明治期の神仏分離と廃仏毀釈により大幅に縮小してしまったとのこと

  • 南側に階段を降りると朝に通った猿沢池のところに戻った


  • 近鉄奈良駅前はアーケード街になっていて観光用の店もあるけど地元民の利用も多そうで安心する

  • 奈良らしいものを食べようか迷ったけど、結局サイゼにした

  • 15時にホテルに戻ってチェックインし、くたくたに疲れたのでちょっと休憩

  • 夜。部屋のユニットバスでもいいから湯に浸かってしまいたかったけど、そこは我慢して銭湯まで行った。隣の京終駅前にあるほてい湯まで軽く2kmほどジョギング

  • めちゃくちゃ良かった。熱めの風呂もあって全身に染みる。番台のお兄さんも愛想がいい感じでほっこり

  • 戻ってご飯食べて寝た

  • この日は約3万歩、20kmちょい歩いた

2日目