製造業における「生産性向上」のこれまでとこれから①(全体サマリー編)

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19世紀後半から、第二次産業革命と呼ばれる工業化の進行・資本主義の発展や経済の拡大により、企業は経営資源を効率的に運用し、生産力を増強することを目指すようになった。そのような状況の下、20世紀初め、アメリカの技術者・テイラーが「科学的管理法」を、フランスの経営者・ファヨールが「管理過程論」の原型をそれぞれ発表、経営管理の研究が始まった。一方、ドイツの社会学者・マックス・ヴェーバーは、組織の支配形態(カリスマ支配、伝統的支配、合法的支配の3つ)を分析し、合法的・合理的な組織は官僚制組織であるとした。その上で組織の合理的・機能的側面に注目、組織構造という概念を考え出し、「官僚制組織論」を提唱した。これらの3人の研究が、経営管理論の出発点と言える。

引用元:Wikipedia(経営管理論)

以下、20世紀以降の製造業における「①生産性向上の定義・認識の変化」「②生産性向上のための手法・技術の変遷」「③生産性向上の取り組みが労働者・組織文化に与えた影響」を振り返ることで、私たちを取り巻く状況や何が求められているのか?を整理していく

  1. 工場制機械工業の発展期(20世紀初頭)

    • 「生産性向上」とは何であったか??

      • 人当たり、労働時間当たりの生産量の増大

    • 「生産性を高める」ための活動

      • 科学的管理法

        • 作業の標準化、時間研究、動作研究など、作業効率を科学的に分析・改善する手法が導入された

    • 「その結果」

      • 生産性の大幅な向上

      • 労使関係の一時的な改善

      • 労働環境の一部改善と新たな問題の発生

        • 単純反復作業が主流となり、労働の非人間化が進行(創造性の軽視)

        • 職場の人間的なつながりが希薄に

  2. 品質重視期 (戦後~1970年代)

    • 「生産性向上」とは何であったか??

      • 生産性=品質向上による顧客満足度の向上と原価低減

        • 単位時間・単位コストあたりの生産量の最大化が重視された

    • 「生産性を高める」ための活動

      • データに基づく品質管理と、従業員参加型の継続的改善活動が普及した

        • 統計的品質管理、全員参加の改善活動、ジャストインタイム生産などを導入

    • 「その結果」

      • 製品の信頼性と耐久性が大幅に向上

      • 顧客満足度の向上によるシェア拡大

      • 無駄の削減と生産リードタイムの短縮化

      • 一方で作業の細分化が進み、労働の単純化が続く

  3. ITによる自動化期(1990年代~2000年代前半)

    • 「生産性向上」とは何であったか??

      • 生産性=ITによる自動化と情報の一元管理で無駄を削減

    • 「生産性を高める」ための活動

      • 自動化

        • 製造実行システム(MES)の導入

        • ロボット化、FA(Factory Automation)の推進

      • 情報の一元管理

        • CAD/CAMの活用によるデジタル化

        • ERPによる一元的な情報管理

    • 「その結果」

      • 生産プロセスの自動化が進み、作業の効率化が図れた

      • 製造データのデジタル化が進み、ペーパーベースの業務が一部削減された

      • 製造データの一元管理と高度な分析が可能になり、無駄の特定と改善が容易に

      • 一方で大規模なシステム投資が必要で中小企業には導入が困難

  4. サプライチェーン最適化期(2000年代後半~2010年代

    • 「生産性向上」とは何であったか??

      • 生産性=サプライチェーン全体での最適化による無駄削減

        • 経済環境の変化に素早く適応し、無駄のない効率的な生産体制を実現するために、ITを活用しながらサプライチェーン全体を俯瞰して最適化することが生産性向上の本質だった

        • 部分的な改善ではなく、全体の流れの最適化が重要視された

    • 「生産性を高める」ための活動

      • 環境変化への適応体制の構築

        • サプライチェーン・マネジメント(SCM)の導

        • 需要予測の高度化とリードタイム短縮

      • 無駄削減

        • 在庫削減、アウトソーシングの活用

        • グローバル調達の最適化

    • 「その結果」

      • 事業構造のスリム化と柔軟性の向上

        • 製造コストの大幅削減

        • リードタイムの短縮と在庫削減

        • 中核事業への経営資源の集中

      • 市場対応力の向上

      • グローバル・シナジーの創出

  5. デジタルトランスフォーメーション期(2010年代~)

    • 「生産性向上」とは何であったか??

      • 生産性=デジタル技術とデータの徹底活用による付加価値創出

    • 「生産性を高める」ための活動

      • デジタル技術とデータの徹底活用によって、"製品・サービスの高付加価値化"と"生産プロセスの最適化"を同時に実現

        • IoT、AI、ビッグデータ解析の製造現場への本格投入

        • デジタルツインの構築による仮想生産ラインの活用

        • マスカスタマイゼーションの実現

        • スマートファクトリーの推進

        • データドリブンなプロセス改革の推進

    • 「その結果」

      • 新たな成長機会の獲得と競争力強化に向けた取り組み

        • デジタル技術を活用した新たなビジネスモデルの創出

        • グローバル展開の加速と海外市場での事業拡大

        • 事業ポートフォリオの見直しと選択と集中

      • ビジネスプロセスの効率化とグローバル経営の高度化

        • グローバル生産・調達体制の最適化

        • コーポレートガバナンスの強化と企業価値向上への取り組み

  6. サステナビリティ実現期(2020年代~)

    • 「生産性向上」とは何であったか??

      • 生産性=環境・社会に配慮しつつ、デジタル技術・データを活用した新たな付加価値創出

        • 環境対応とイノベーション創出の「2つの転換」を同時に実現することが、この時代の生産性向上における最重要課題

    • 「生産性を高める」ための活動

      • 環境負荷の大幅削減と、デジタル技術を活用した新たな付加価値創出の両立を目指す

        • 具体的には、

          • 循環型社会への移行(サーキュラーエコノミー推進)

          • 温室効果ガス排出ゼロ(カーボンニュートラル)への取り組み

          • デジタル技術の徹底活用による製品/サービスの高付加価値化

          • デジタル人材育成と働き方改革

          などを通じて、製造業のグリーントランスフォーメーションと同時に、新たな成長の実現を図る活動が行われた

    • 「その結果」

      • 環境負荷の大幅な低減が期待される(現在進行中の取り組み)

      • 新たな製品・サービスの創出による成長機会

      • 社会の持続可能性に貢献できる企業が選ばれる

      • ただし大規模な投資と大転換が避けられない