謎の赤魚くん

半井ユキヤ
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 配偶者の実家に行くと、義母が必ず食べ物をどっさりくれる。人付き合いがいい人なので何かともらってしまい、一人で消費するのが大変だからというのもあるのだろうが、何故か自分が食べるはずだっただろうちょっとしたおやつまで気前よくよこす。気前よすぎないか。それはご自分で食べて下さいせっかく買ったんでしょうに。

 先日もそうして即席袋麺やら冷凍のプチ肉まんやら冷凍のコロッケ(2個)やらカステラの切れっ端やらカレーせんべいやら梨やらを袋にぎゅうぎゅう詰めてくれたのだが、その中に冷凍ものの大きな魚の干物が一枚あった。私はちょっと嬉しくなった。海ナシ県ではないが山の方の街、魚はちょっぴりいいお値段になってしまうので、(鮭でなければ)食卓に出すものが増えて助かる。

 しかしうちの冷蔵庫はさほど大きくはない。お弁当用にとかぼちゃの煮物を作って小分けして冷凍室に入れたばかりでスペースがほとんどない。この大きなお魚は早く食べてしまわなければ。

 というわけで、食べることにした。

 一枚だが、二人で半分こすればちょうどいい。久しぶりに大きな焼き魚だ。やったー

 って、

 赤魚 イズ なに…………?

 見たことはある。が、食べたことはない。

 赤魚とは、なんかそういう感じの魚の総称であるというのは知っている。切り身の粕漬けなどは見掛けるが、よくわからなすぎて手に取ろうと思わなかった。「赤魚好き!」という人が周囲にいないのでどんな味なのかわからないし、旬がいつなのかもわからない。検索しても満足できるほどの情報がない。そんなことから、「赤魚……って……?」という赤魚に対する不信感めいたものが私を赤魚に近付けさせなかった。

 未知の魚・赤魚。

 とうとうそれと対峙することになり、Xで「赤魚とはどんなものかしら」みたいなことをつぶやいたら友人が「タラより少し身がしっかりしていて甘みがあったような」と返してくれたけれども、果たして――

 実食!

「ホッケみたいな匂いやな」と配偶者が言った。確かにホッケの干物に近い香りはする。ということは、ホッケのようなホクホクとしたおいしいお魚なのでは?

 食べてみる。

 干物特有の塩気はある。が、可も不可もない淡白な味。魚を食べているというのは確かだが、「赤魚を食べています!」という感じはしない。「なにか“魚”を食べている」という感覚だけがある、それが赤魚だった。

 香りに見合った味がしたかというと、正直そうでもなかった。ハードルを上げすぎていたのだろうか? 舌が肥えている? いやしかし、それにしたってこんなにいい香りがしているんだからもうちょっと味らしい味があっても……

 特に「また食べたい」とは思わなかった。多分、またもらったりしない限りは、もう食卓には出ないだろう。別に嫌だというわけではない、が、どうせ食べるのなら「おいしかった、また食べたい」と思いたい。「う~ん……まぁ、一応魚を食べたな……」だなんて、曖昧な気分で食事を終えたくないではないか。

 そうして、残念ながら選択肢のひとつが潰えていったのだった。

 おいしいお魚食べたいなぁ。

@nakyukya
まったくここはしずかなインターネッツでつね