承前。おれは友人の結婚式に出席するために、万難 (大の苦手である航空機に搭乗すること) を排して愛媛県・松山市に馳せ参じていた。
軽く下調べしてから行ったものの、愛媛にはあまりにも美味しい食べ物が溢れすぎている。しかしまあ、他人との会食の都合があったとはいえ、振り返るとずいぶん脈絡…というか節操のない巡り方をしているものだ。
おまえは1日何食取っているんだよ、という感じでもあるが、とにかく方端から紹介していこう。
トップバッターは愛媛グルメの大定番・鯛めし。
これはSNSで人に教えてもらったのだけれど、鯛めしには2種類あって...
[松山タイプ]:加熱された状態の鯛の入った炊き込みご飯。
[宇和島タイプ]:鯛の刺身と出汁醤油で溶いた生卵を掛けた白米。
まずは松山空港内に提供店のあった後者を試してみる。
「鯛めしかどや 松山空港店」
店内は清潔感があり、14:30頃だったからか割と空いていて広い席に通してもらえた。ピーク時は大繁盛の気配がする。

宇和島鯛めし (1,980円)。牛丼屋と同じくらいの提供スピード。鯛を模した器がダイナミックで面白い。思ったよりも出汁醤油はたっぷりだ。

海賊、火の使えない舟の上の「メシ」はどこから…? 炊いた状態で持ち込んでいたのだろうか。よくわからないが、細切れの刺身を手前の生卵&出汁醤油を溶いたものにくぐらせ、白米の上へ乗せればいいとのこと。その上で好みで出汁を掛けて食べる。

出汁醤油が甘くて香り豊か、鯛の刺身は癖がないのに柔らくて濃厚。これは幸先が良いぞ。

夜は道後温泉街にある「瀬戸内料理 金兵衛」へ。2階の座敷席に案内される。

数時間振りの鯛との再会。

まずは宇和島100%温州みかんジュースで乾杯しておかなくてはならない。甘味料的でない純粋なみかんの風味。気に入って2杯もリピートした。

メニューにレコメンド表示があった天然釣太刀魚。もちっとしていて何とも似ておらず、だけど、目隠しして食べたら鯛の刺身と区別が付かないかもしれない。

愛媛伊予牛のくわ焼き。田畑を掘り起こすあの農具「くわ」の形をした謎の鉄板で焼かれたジンギスカン風の味付け牛肉。くわに乗せるメリットは全く不明だが、この世の終わりのようにぐらぐらと熱されていた。

今治焼豚玉子めし。焼豚丼にも似た今治のB級グルメの一つだけれど、愛媛出身の友人曰く「本物はこんなもんじゃない」。それでもジャンキーな味がして美味かったぜ。

おれが独断で頼んだ「真蛸天ぷら」。なんといっても時代はタコだ。熱々さっくりで麵つゆ添え、分厚いタコの身は簡単に嚙み切れる。5人いたので複数皿注文したが かなり爆速で売り切れた。

前述した [松山タイプ] の鯛めし。見た目通りかつ期待通りの上品な釜飯。
2日目。今回は訳あって (主におれの潔癖と神経質さに起因する) 友人が手配してくれた2つの宿泊所を行き来していたのだけれど、朝食は「茶玻瑠」という老舗ホテル (旅館?) 内のダイニングを予約してもらっていた。
愛媛の名物をアピールしたビュッフェスタイルだ。

おれは食べ合わせというものを気にしない。スモークサーモンと出汁巻き卵とエッグベネディクトを同時にピックする。見たか、この胆力、控えおろう。

ホテルの近くの射的屋 (たぶん別エントリで紹介する) で景品として貰ったパックのポンジュースを飲みつつ…

道後温泉街を彷徨いながら「道後ぷりん」の店でプリンを食わずにバニラ&みかんのミックスソフト (400円) を注文。
そのとき、レジ脇に「温泉アヒルちゃん (150円)」という気になるポスターを見つけた。
………🐤
……🐤
…🐥

レジの担当者は「えっ、温泉アヒルちゃん…?」と困惑しながら、そっと手の平に2匹を乗せて3枚のコインと交換してくれた。
中央に挟まれているのは「道後ぷりん」の向かい側にあったゲームコーナーから攫ってきた温泉ひよこ。同行の友人が欲しいと言うから久し振りに腕捲りをしてユーフォーキャッチャーに挑戦したのだけれど、奇跡的に1発でゲットすることができた。100円です。
愚かにも小雨の中ソフトクリームを食べて凍えたおれたちは、身体を温めに「名代つるちゃん」へ。
時刻は14時頃。うどん店のようだが、店前のサンプルショーケースにはおでんのディスプレイが。おれたちはこの後に友人の結婚式&披露宴が控えているので、しっかりとした食事を取るほどの余裕はないが、おでんくらいなら平気だろう、という判断で入店。一応店員の方に「おでんだけの利用でも大丈夫ですか」と尋ねたところ、快くOKという返事。

愛媛のうどん店 (とラーメン店) にはセルフサービスのおでんが置いてあり、勝手に取って食べた後に串の数で会計をするシステムと聞いた。去年訪れた韓国の屋台でも同じ方式だったな。
このときは食い逃げ犯に遭遇して呆気に取られている。何という思い出だ。

串に刺さったおでんはどれを選んでも1つ150円と良心的。

友人と一緒に大根×2, 牛すじ×2, こんにゃく, 餅巾着 を席に持ち帰る。うどん店なだけあって、温かい抜群の出汁がよくしみ込んでいて本当に美味しかった。
そして夜。この旅の真の目的・結婚式へ…。
ホストが「料理で式場を選んだ」と言っていた通り 披露宴で振る舞われたフルコースも大変にグレートで夢のようであった。写真は沢山撮ったが、掲載の許可を取っていないので 割愛する (しかし伊勢海老やみかんジュースの飲み比べショットなどが出てきて 出席者は皆ずっと食事の話ばかりしていた)。
翌朝。式の余韻に浸りながら、念のため (何の?) グレープフルーツとライチを大量チャージ。

今日のみかんジュースがまだだったな。飲みに行こうか。
「愛媛の食卓1970」

あの「蛇口からみかんジュース」の原点というみかんジュース専門店だ。
細長い店内には人が溢れ、壁際にはずらっと品種ごとの蛇口が並んでいる。そのバリエーションはなんと20種類!

品種のラベルの貼られたプラスチックカップに自分でみかんジュースを充填するシステムで、これは楽しくスリリングだ。

一部品種には子供用の低い位置のシンクも用意されていた。1杯220円~400円で、奥に進むほど高額になる。特にセット料金などはないから好き勝手に組み合わせられる。

おれが選んだのは、河内晩柑・八朔・愛媛果試第28号 (通称:紅まどんな)・はるか・甘平の5種、計1,590円。散財してしまった。
どれも個性がはっきりしていて、甘さや香りから全く異なる印象を受ける。最も鮮やかだったのは、意外にも八朔。美味しくて飲みやすいレモンジュースという感じで、非常に酸っぱいがとても好みだ。
はるかは白っぽい色の通り林檎ジュースのようなまろやかさ、みかんらしい理想形を追うなら やはり愛媛果試第28号がトップというところか。甘平は見た目に反して苦くて驚いた。みかんの皮のイメージが脳裏に過る。

集合させると凄い眺め。友人のブラッドオレンジを貰って少し飲んだが、これは確かに外国の味。

続いて、Blueskyでお勧めしてもらった愛媛の銘菓・坊ちゃん団子のカスタム屋を訪問。
「my botchan dango 30」
洋菓子店のように美しいショーケースに並べられた色鮮やかな餡子玉の数々。30種の中から3つを選んでオリジナルの団子が作れるということだ。

フレーバーごとに値段は80円~150円。極めてリーズナブル。

手順をよく読んで、レジ前のスタンプ台へ。

専用の用紙に好きな種類の餡の書かれたはんこを押していく。

…おれのチョイスをどう思う?
伊予柑は人工的でない本格的かつフレッシュな甘み、ずんだも仙台の出身者として納得のクオリティ、赤ワイン餡はちょっと目が覚めるような渋みのある変化球。団子だけにな。
色合いも可愛らしく、スタンプを自分で探して押す体験も楽しく盛り上がる。これで320円だから、皆も近くに来たら絶対に寄ったほうがいいぜ。店を教えてくれたあなた、どうもありがとう。
さて、おれたちはまだまだ空腹だ。次へ向かおう。
「どうごゆけむりかふぇ」

宿泊所に置いてあった観光案内のパンフレットを読んで、道後ではいまジェラートがアツいと新情報を得る。そういえば駅の近くにもジェラートの看板があったな…ということで。

ゆけむりジェラート シングル (400円)。店舗の1階で注文し、商品を受け取ったら2階の趣ある座敷で真摯に球体と向き合う。
友人たちには「あんたはいつもそういう色の食べ物を持って嬉しそうにしている」と呆れられたが、このユニコーンアイスを見逃す訳がないだろう。ちょっとヨーグルトっぽくもあるハピネス味。途中から自分でも何を食っているのかわからなくなって混乱した。
そこから車で松山ロープウェー街方面へ。まだ鯛めしに出会っていない友人のリクエストにより再び宇和島式鯛めし専門店へ。
「鯛めし もとやま 3号店」

鯛めし (2,398円) と これも愛媛県の南予地方の郷土料理である じゃこ天 (揚げ蒲鉾) をオーダー。

復習は入念に…

猛烈な提供スピード。刺身が厚切りで大きい。

指南に従って頂きました。お魚大好き、毎日だって食べたいぜ。

じゃこ天には大根おろし付き。魚介風味の強いざりざりとした食感の厚揚げのよう。これは屋外で食べたら興奮しそうだ。
ここまで、愛媛滞在記も折り返しの3日目。まだ半分残っているのにこの分量。纏めきれないので前後編に分割する。
そういう訳だから、次回もお楽しみに!
【おまけ】
いつの間にか友人がホテルの冷蔵庫に入れていた いよかんチューハイ。おれは酒を飲まないが、色々を誤魔化してちょっとだけ分けてもらって試飲した。アルコール感はそれ程でもなく、果実味の弾ける美味しいジュースだ。

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