一番美味しいフランス菓子を売っている雑貨店がある。
前にも日記で「幻みたい」「(差し入れ先にて) 瞬殺で売り切れ」と書いた、あれだ。
はっきり言って、決定版だろう。おれは東西のクッキー缶を取り寄せ買い集める焼き菓子モンスターであるが、風味の面でこれを越えるビスケットにはまだお目に掛かっていない。

(↑画像はシードル (林檎の発泡酒) のギフト3本セット)
規模の大きくない店の話なので内緒にしておこうかとも思ったのだけれど、このブログというものは、 (稀に検索エンジンから辿り着けてしまうこともありつつ) 基本的に オーナーが貼った直接的なリンク以外からのアクセス方法が存在しない= 大勢の目に触れて店に迷惑が掛かるような影響力を発揮する恐れが限りなく低いタイプであるから、数少ない読者たるあなた方にだけ特別に紹介しようと思う。
※問題に発展する気配を感じた時点で記事を取り下げる可能性があります。
遡ること8年前、神楽坂駅から徒歩圏内にある賃貸の小屋に棲みついていたおれは、休日の度にポケットに小銭を入れて坂を上ったり下ったりしながら遊んで暮らしていた。
すると、坂の中腹辺りの道の端に「フランス ブルターニュ地方の『ビスケットとキャラメルのお店』お気軽にどうぞ」という黒板が立て掛けられているのを発見したのだ。
お気軽に、と言われれば「では遠慮なく…」となるわけで、吸い込まれるように入店。
昔のことなので曖昧だが、何やら良い香りのビスケットの試食をご馳走になって、シードルの小瓶を買って帰って飲んだら凄く美味しくて驚いたような気がする。
以来、2020年に引越すまでに何度も通った。それからコロナ禍だの何だのがあり、しばらく間が空いたが、最近になって おれに仕事をくれる出版社が神楽坂にあるという都合から 近くを訪れる機会が増え、再び店に寄れるようになった。
その場所こそが…
「レピスリー ル ブルターニュ」
"レピスリー" (エピスリー) は、フランス語で 食材や調味料や保存食品などを取り扱う商店 を指す言葉らしい。
記憶が正しければ、2017年頃は「ブティック ル ブルターニュ」という店名であったように思うのだけれど、いつの間にか変更されたのだろうか。
すぐ手前には「カフェクレープリー ル ブルターニュ」を名乗る系列のレストランが隣接 (というか連結) している (両店では蕎麦等を原材料に含む商品を扱っているので、アレルギーのある人 (おれもそう) は注意されたい)。
位置的には飯田橋駅と神楽坂駅を繋ぐメインストリートを1本脇に入った所で、どちらの駅からも (一番近い出口から) 徒歩10分くらいのはず。
知らなければまず入らない小道の奥にあるものだから、そもそも見つけられる人が少ないのか、口コミサイトなどへの投稿も目立たない。
店内は小さめな入口から想像するよりは広いが、割とコンパクト。でも品揃えはかなりのもの。ちょっとカルディみたいな雰囲気でもある。
木目調の床、テーブルいっぱいのビスケットやジャムや蜂蜜、ずらりと並んだ缶詰とシードルの瓶。どこを切り抜いても絵本のように可愛らしい。温かなライティングも相まって、ヨーロッパへ旅行に来たみたいな気分だった。
店の中をうろうろしていると、店員の方がビスケットの瓶を持って試食を勧めてくれる。いつ来ても親切で気さくな接客だ。
もう何度も訪れ買って食べているというのに、ビスケットの欠片を貰う度にあまりの美味しさに歓声を上げてしまう。この日買い物に付き合ってくれていた友人の作家・犬怪寅日子さんと一緒に大喜び。

…というわけで、各方面へのギフトとしてシードルやビスケットを10点くらい購入した。キャラメルクリームや陶器製のシードルボウルも魅惑的だったが、さすがに (物理的に) 重すぎるので断念。
しかし、嵩張り加減のことはあまり考えず次々カゴに投入していったがために、結局 大荷物になってしまい、帰り道の間 犬怪さんが半分持ってくれた。ありがとう…。
↑画像の下段中央に写っている黒い絵具チューブみたいなものは、新商品らしいマロンペースト。800円ほどだった。
店員の方に食べ方を尋ねると、「モンブランの上の部分の味。ギリシャヨーグルトやクレープ、パンに塗っても美味しい。でも (最終的に) そのまま舐めちゃう」とのこと。その仕草がチャーミングでまた大盛り上がり。
(たまたま他の客がいないタイミングだったというのもあり、) 面倒なラッピング注文にも快く応じていただけた。色々とサービスまでしてもらい恐縮である。
会計を待つ間に簡単なアンケートを頼まれて用紙に鉛筆で書き込む。返礼として竹の皮で包まれた小包 (↑画像下段左から2番目, 中身はキャラメル) を貰った。トトロのお土産みたいだ。
包装してもらいながら店員の方と和やかに雑談。おれのことを指して「イギリス人の友人に凄く似ていて (来店に) 驚いた。とても良いこと」と言ってくれる。なぜか他人から「夢に出てきたよ」と言われることが多い。

袋を纏めていただけますか、とお願いしたところ、「オリジナル紙袋の在庫が切れていて」と、大きい無地の紙袋に店のロゴのでかいスタンプを押すところを見せてくれる。印刷じゃないんだな。面白い。

帰宅して、自宅用に買ったビスケットの詰め合わせを早速開封。
シンプルなガレットバタービスケット。奥の丸型が厚焼きで、手前の花形が薄焼き。
上質なバターが贅沢に使われていて、「わぁ」と声が出るくらい感激の味。芸術的だ。厚焼きも間違いなく抜群なのだが、薄焼きがずば抜けすぎている。
どこで作っているのか気になってラベルを調べると、フランスで製造しているものを「ル ブルターニュ」が輸入した形になっているようだ。
原材料 (厚焼き) は「バター」「砂糖」「小麦粉」「卵黄」「食塩 / 膨張剤」と意外にシンプル。
しかし、なんでこんなに美味しいんだろうな。魔法がかかっているとしか思えない。このためだけに神楽坂に足を運んでも損はしないだろう。永遠に存在し続けていてほしい。

こちらのキャラメルはリンゴ風味。
よくある人工甘味料的な感じではなく、すりおろしたリンゴの柔らかく甘酸っぱい素朴な風味だ。大人向け。
ここで朗報なのだが、実は一部の商品は公式オンラインショップからも購入することができる。シードルやレシピブック、キャラメルなんかもラインナップにあるぞ。
特に薄焼きのバタービスケットは味も香りも大変にリッチな絶品であるから、絶対に欠かさずゲットしたほうがよい。150%の感動。これ1袋のためにポットにたっぷりの紅茶が飲むことができる。1日1枚なんて到底守れない。もっと買えばよかったな、と思うことだろう。
送料無料ラインが1万円であるから、おれの一押しの薄焼きビスケットも入った「フルール・ド・カンペール缶(大)」を2つ買うとちょうど良く収まる計算。それだけ大きく仕入れても後悔はしないと思うぜ。
ちなみに 2025/12/中旬時点で購入したビスケットの賞味期限は 2026/7/31。本当か? と二度確認したが、真実のようだ。かなり長保ち。
(店頭では少量 / 少し安価な簡易包装タイプも展開されている)
…と、なんだか回し者のような宣伝ぶりになってしまったが、おれと店の間には何の癒着もなく、ただおれからの一方的な愛のみが存在している。
あなた方におかれましても、ぜひ伝説のビスケットを賞味し 幸福の前に微笑んでみてほしい。
以上 🍪
[おまけ その1]
これは去年書いた神楽坂マップエントリ。
煌めく人気の海鮮丼店や おれたちのミステリー小説『リストランテ・ヴァンピーリ』(新潮社より発売中) の執筆時に参考にしたジェラート屋をはじめとする グルメ情報満載の読み物になっている。
[おまけ その2]
余談だが、最近 神楽坂にリニューアルオープンした甘味処「紀の善」は 平日昼間にもかかわらず とんでもない大行列の様子であったから、ついでに巡ろうとしている方々には時間に余裕を持ったプランを組むことを推奨する。
あの一帯に営業する全飲食店の中で一番人が並んでいたんじゃないか?