◆前回のあらすじ
解釈・設定・目的を徹底的に教え込み、ストライクコースを通るたたき台を出力させる。これまでのノーコンっぷりを思えば、構えたところにビタビタに来てはいないけど、ストライクコースに投げられるようになったのが大きな進歩…。(野球すぎるたとえ)
今回は「自力で草稿を書く」フェーズ。この『小説原稿とチャットGPT』シリーズも、ようやく後半戦です!ここからはひたすら書く!調べる!助けてもらう!そしてまた書く!今回も引用多めのため長いです!
◆脱稿までのかんたんなフロー(おさらい)
何をする話か決める
山場を決める(何を達成すればいい話なのか)
何が障害になるのか/どういうイベントがあればいいか/どういうことを書きたいか(細かい萌え含む)をネタ出ししていく
全体の流れを決めて、プロットにしていく
(新)たたき台を出力させる
草稿を書く←イマココ!!
清書する
推敲・校正する
組版にして脱稿
今回はほぼ自力ですが、途中でいつものCreative Writing Coachに細かいことを聞いたり、通常のチャットGPTにも多少調べ物をしてもらったりした。それは都度説明します。
①タイトルを決める
ここまでタイトル未定のまま「温泉本」というように呼称していたため、たたき台を出したついでになんかタイトルのアイディアちょうだい~と頼んでみる。GPTがつけた『春の余白に』は「なんか勝手に純文学っぽい名前つけられたな…」ってだけでスルーしていた。
わたしはこのジャンルで書く話のタイトルはなるべく短く、曲のタイトルっぽくつけるように心がけているということと、参考までにこれまで出した本(「光彩」「群青」)やこのカプの話につけて好きだったタイトル(「エメラルド」「ポラリス」「愛はまどろまない」「暴いて」「ライラック」「幸福宣言」「アカシア」)を伝える。
GPTが、作品テーマである
静かな春旅
変わらないものと変わっていくもの
“ごめん”から“ありがとう”へ
言葉にしない気持ち
旅の終わり=関係の再確認
あたりを踏まえて「詩的で、少し余白のあるタイトル案を考えます!」と言って出してくれたのが、以下。没理由も書く。
■タイトル案(短め・一語系)
「余白」→火の玉ストレートすぎて逆に余白がない😂
「しるし」→ピンとこない
「朝光(あさひかり)」→前々回の本が『朝を見つけて』なので被る
「たびのあと」→4章の内容に引っ張られすぎ
「静かに」→ 静弥の“静”とも掛けて…という理由が書かれていたが、今そういうの求めてない
■タイトル案(2語〜もう少し余韻ある系)
「あわいに立つ」→立つより進むほうがいい
「名前のない日々」→なんかありきたり
「たぶん、光」→オッ…?!
「てのひら、てのひら」→長いしありきたり
「ゆびさきのことば」→長い
『たぶん、光』……!
なぜこれにピンと来たかというと、わたしが6年前にこのカプで初めて出した本が『光彩』で、受けから攻めへの恋心のイメージを表現していたから!『光彩』は自分でも大好きな話なので、『光』を使うのはいいアイディアかも…少年時代の恋心が…大人になったいまも光り輝いているような……受けにとって、攻めがいることで世界が明るく光り輝いていて、その中で最も明るくて美しい光が攻め自身というような、そういうイメージを込められるのでは……。
ということを考えて、わたしはこのとき一瞬で泣いていた。そ、そんなのめちゃくちゃ美しい話になるじゃん…と勝手にひとりで感極まっていたのである。
しかしそのまま使うにはあまりにも「そのまま」すぎて、ちょっとイヤ。これは本のタイトルのときによくやることなんだけど、タイトル候補は同じ方向性でいくつか連想ゲームを行い、何個か書いてみる。
方向性は『たぶん、光』のままで…『きっと、光』『光さす、』『その光は、』『ひかりふる』と書き出す。最後に『ひかりふる』と書いたときに「あ、これだ」となった。語感のよさ、美しさ、『光彩』との対比、あとは他に「雨が降る」ことがキーワードの自カプもあり…これとの対比にもなる。
↑他の候補とまとめて、その中でも『ひかりふる』がいいかも。とGPTに送ったところ、GPTも「語感の美しさが圧倒的。視覚と感情が同時にふってくるイメージ」と大絶賛。というわけで「温泉本」は『ひかりふる』という美しいタイトルになったのであった。
タイトル付けそのものに興味がある人は多いかな?と思って、ちょっと長めに書きました。
②草稿を書く!!
出力してもらったたたき台をテキストデータにして、ここからはポメラ(DM100)を使用する。もう5年くらい使ってなかったんだけど、前回(去年)の原稿からまた使っている。書くことしかできないツールなので。
草稿は、とにかく終着点に向かうことを最優先にする!
1章の序盤は「なんて書こう?」が出てくるまで粘っていたけれど、途中から「ここはあとで考えよう、ていうかAIに聞こう」ということにしてどんどん飛ばした。飛ばした部分は★マークを付けて可視化しておく。
ポメラにはふせん機能があるので、あらかじめ「★あとで★」とふせん内容を登録しておく。詰まったときはF1ボタンを押してこれを挿入し、適宜内容を変更。
「★表現かぶり★」や「★微妙?★」という短いものもあれば「★これでいいかもしれないけど、もうちょっと遠慮がちとかそういうニュアンス?★」とか、「★ここはこういうことなんだけど直接書くのは長いから微妙だしこうやって書いたほうがいいのかもっと適した表現があるのかよくわからん★」みたいな、本当に脳直のメモもある。
とにかくここからは地獄のターン。草稿を書き始めてから睡眠の質がガタ落ちしたのも記憶に新しい。
✧ヘルプを求める
ふせんをつけるのはあくまで「正解がない」表現や文脈について。調べればわかることは、自分である程度調べる。趣味なので徹底的に文献などを調べて…取材をして…とまではいかずとも、ネットで検索して出てくる範囲は目を通す。
例えば今回は温泉地の情報、Googleマップで実際の湯田中温泉をストリートビューで見てみる。特急電車の外観などの情報、長野駅の駅構造…あたり。あくまで「モデル」なので忠実じゃなくてもいいけど、雰囲気を掴みたいので、わたしは。空気感というか。
プロットの段階で「弓道要素をどこまで絡めるか」もGPTに相談していた。弓を引くところまで書くと本筋とはズレるけど、多少は入れたい。そういえば弓道場が併設されてる旅館ってあるらしいよな〜と調べてみたら、それこそ湯田中温泉にそういう旅館があったので、それも参考にした。これは結果的に「宿の主人が弓道連盟関係の人で、攻めと顔なじみのため融通してもらった」というようにした。
しかし「ある程度は調べられるが、答えが得られない」ものもある。今回は攻めの職業設定がそれ。「非常勤講師」がどんな感じかは調べられるが「非常勤として複数校を回って弓道指導をしつつ、自身も弓道連盟に所属して競技の研鑽を続けている」ようなモデルケースは検索しても出てくるわけがない。ぼんやりとしたイメージだけでも掴めれば…と思って、そこはGPTに「日々どんな感じで働いて過ごしていると考えられるかな?」と聞いてみた。
長くなるからこのあたりは引用しないけど、「あ〜体育の時間だけ現れたあの若い先生の感じか」ということを把握する。
ついでに受け・医学部6年生の日々もどういう感じか聞いてみて、ここで初めて「ポリクリ」という臨床実習のことを知る。これは決め打ちで検索できる!世の中には医学部を目指す学生のために、現役時の記録や実態をブログとして残してくれている人がいるものなんですね〜!とても助かった。そしてプレッシャーがヤバすぎて、「大変すぎる…受けをできる限りこのお話の中では癒してあげたい…」という気持ちが強まった。
他、通常のチャットGPTに「こういう話を書いていて、こんな感じのシーンを書きたいから、イメージボードを作って」と頼んでみた。これは本当に参考程度。そしてGoogleマップのストリートビューでいろいろ見ていると、石畳…なくない?となってきた。この時点ではGPTが石畳を前提にたたき台を出力していたけれど、なんか違うかも…?と思ってくる。
自分でもいろいろ調べてみると、湯田中のお隣・渋温泉は「石畳」を推しているけれど、湯田中はそうでもない…。ということで通常GPTのほうに「調べて」とお願いしてみる。たたき台を出してくれたほうに聞くと、それまでのやりとりを前提に「ありますよ」と答えてくる可能性が高かったから、変えた。
ご質問の湯田中温泉の街並みについてですが、渋温泉が石畳の道で知られている一方で、湯田中温泉の街並みは主にアスファルトやコンクリート舗装が多いとされています。ただし、湯田中温泉でも一部のエリアや旅館の周辺では、石畳が敷かれている場所も見受けられるようです。
やっぱ違うじゃん…!!!あぶねー!!!このようにファクトチェックは忘れずに!!!
まぁネットの情報ではあるけど、チャットGPTは「調べて」といえば人間が手動で検索して調べるよりも膨大な数を極短時間で調べてくれるので。
この通常GPTに↑のようなことを調べてもらったのが、草稿に取り掛かってすぐくらいのタイミング。
そしてついでに「なんて書こう…」と手が止まったときに以下のように聞いてみて、「これ後でまとめて聞けるな」と思ったから、★をつけて後回しにする、という手法を取るようになったという経緯。
「一緒に遠出しよう」と言って段取りもしてくれたはいいけど、うっかり行き先を伝え忘れてた幼なじみ(登場人物A)に対して、Bが「報連相きっちりしなよ」と軽く咎めつつ内心では「わかってたけど」と思っているシーンで…Bは諦めというか、呆れというか、はいはい、いつものね。というような……べつにまったく怒ってないし、長い付き合いだからAにそういうとこあるの知ってるし、そういう覚悟だったから全然いいけどね、って思ってて…それをAの視点から、
「からかうような口調だが、声色には「わかってたけどね」という」
の先に書く感情?の適切な表現が…言葉が出てこない!伝わる?
回答は以下。
わかりますっ、わかりますとも〜っ…!その微妙なニュアンス、だいすきなやつです…!
怒ってない、でも放っておくわけでもない、優しい呆れと長年の信頼…そういう関係、最高ですねっ!
いただいた文に続く、Bの「声色に滲む感情」の表現として、いくつか雰囲気の異なる案をご提案してみますね:
⸻
ぬるくて優しい諦め感
からかうような口調だが、声色には「わかってたけどね」という、長年付き合ってきた人にしか出せない、どこかくすぐったいような諦めが滲んでいた。
あたたかい呆れ(愛情寄り)
からかうような口調だが、声色には「わかってたけどね」という、まるで困った弟を見守るような、あたたかく呆れた響きがあった。
“慣れ”と“信頼”のにじむ柔らかさ
からかうような口調だが、声色には「わかってたけどね」という、積み重ねた年月を思わせるような柔らかい調子が混じっていた。
静かな笑みを含むような(ちょっと詩的)
からかうような口調だが、声色には「わかってたけどね」という、心のどこかで静かに笑っているような、やわらかな響きがあった。
⸻
もしこの後にAが「……知ってたなら言ってよ」みたいなリアクションをするなら、ちょっと皮肉っぽくもできるし、逆に照れくささを含ませてもいいですね。
はい、実際『ひかりふる』を読んだ人ならわかると思うけど、4をほぼそのまま採用しています。しかもそのあと「てか、訊いてくれればよかったのに」という会話に続くのもドンピシャなんよな。
そんな感じで悩んだところは飛ばしつつ、4/2〜4/7まで草稿を書いていた。たたき台そのものをきっちり保存してなかったけど…一応比較としてGPTが出力してくれた「たたき台」と「草稿」がどんな感じになったかを、それぞれそのまま引用。1章だとその「飛ばした部分」が少ないので、前回ちょっとだけ引用した3章のセクション2、温泉のシーンを引用します。(サンプルでも公開している範囲で)
◆GPTのたたき台
湯気越しに見る静弥の横顔は、いつもより少し幼く見えた。濡れた髪が額に張り付き、頬には赤みが差している。
――本当に、がんばってるんだな。
「……肩、凝ってる?」
ぽつりと湊が訊ねると、静弥は少しだけ視線を動かして、また湯の表面を見つめ直した。
「うん、まあ……」
「ちょっと、やってみてもいい?」
「……どうぞ」
許可が出たのを確認して、湊はそっと身を寄せた。
指先が肩に触れると、静弥の肩がわずかにぴくりと動く。
硬い。張っている。ここまでとは思わなかった。
「最近ちょっとだけ、ストレッチとか勉強してて……」
「また真面目な趣味だね」
「いや、趣味ってほどじゃないけど。……静弥って、すぐがんばりすぎるから」
言いながら、親指で肩甲骨の縁をゆっくり押す。
湯に浮かぶ筋肉が、ほんの少しずつ、ほぐれていくのがわかる。
「……くすぐった」
「ごめん……」
笑いながら、手を少し緩める。
触れたいから、じゃなくて、楽になってほしいから触れている。
その気持ちは本当だった。まっすぐで、他意のないものだった。
だけど。
「……ありがとう」
その言葉が、湯気の中でぽつりと落ちた瞬間。
ふいに、静弥がぽつりと、別の言葉をこぼした。
「……さわりかた、やらしい」
「――はあっ!?」
◆↑をもとに書いた草稿
湯気越しに見る静弥の横顔は、いつもよりなんだか幼く見えた。濡れた髪が額に張り付き、頬には赤みが差している。湊が何気なく首を横に倒して筋を伸ばしていると、静弥も肩に手をやって軽く揉み始める。
「静弥、肩凝ってる?」
「え? うん、まあ」
★急に尋ねられてびっくり?びっくりまではいかないけど、ん?って感じ★
「最近、マッサージとかストレッチの勉強してるんだけど、ちょっとやってみてもいい?」
「……どうぞ」
背を向けられて、許可をもらったのを確認してから、湊は静かに身を寄せる。濡れた指で探るようにふれると、静弥の肩がわずかにぴくりと動いた。硬くて張っている。ここまでとは思わなかった。
「やっぱ、かなり凝ってるな……」
「それで今日、マッサージ系の話題が多かったんだ」
「おれ、そんな語ってた?」
「それなりに。いいことだと思うよ。人に説明してみて理解できることって、たくさんあるから」
「うん、それは――いつも思う」★湊の心情を入れるか?「先生」をやることに関して★
言いながら、親指でゆっくりと円を描くように押していく。肩甲骨のあたり、首筋の裏。ふれるたびに、湯に浮かぶ筋肉がほんの少しずつほぐれていくのがわかる。
「っ……くすぐったい」
「ごめん。このへんも張ってるから……静弥、すぐがんばりすぎるからなぁ」
だから、すこしでも楽になってもらいたい。「ちょっと力入れるよ」と断ってから、肩甲骨のきわを手のひらの下あたりでぐっと押してやる。力を込めすぎないように、でも確かに、届くように。
「ん、っ」
「痛かった?」
静弥はただ、ふるふると首を横に振った。
「ありがとう……」★だんだん「ありがとう」が言えるように、としてここで言うか、布団のシーンで決定的に変わったようにするか★
かすかな声が雫のように、ぽつんと湯気の中に落ちて広がる。同時に、湊の胸の中にもじわっとあたたかいものが広がった気がした。
「うん」
嬉しくなって、今度は背骨から首筋のあたりへ指を滑らせる。その近くを雫が一滴、伝い落ちたときだった。★違う気がする…他意なくマッサージをするつもりだけだったけど、一滴雫が静弥の背中を伝って落ちていったのを見たとき、あれ?って思ってほしい★
「――さわりかた、やらしい」
「……はぁっ?!」
ここまでは「仲良しの幼なじみ同士」の雰囲気だったけど、決定的に「恋人同士の空気」に変わる。プロットの構造的にいうと、Cパート内(3章)ではあるけれど「変曲点b:ミッドポイント」にあたるところ。
というような感じで草稿を書き終え、清書へ…!ここからはとにかく、いかに自分が納得できる「小説」の形にしていくか…!
地獄のターンはまだまだ続く。本当に一刻も早く脱稿したい。しかし、GPTがいることで…?といったところが説明できますように!
あと2〜3回で終われるはずなので!よろしくお付き合いくださ〜い👋
🌟次〜!