◆前回までのあらすじ
たたき台をもとにいろいろ調べつつ草稿を書いた。
さて、いよいよこのシリーズも終盤。脱稿まで、残すフェーズは清書→推敲・校正→組版…!終わりが見えそうで見えない、引き続き地獄のターン。
先に組版の余談。草稿が終わった時点でWordファイルに本文を流し込み、何ページになるかは確認しておく。確認というより、単純に「ふふ…●ページも書いたのか…」という細かい達成感を得ておく。今回はA5正方形1段組みでレイアウトしたので、思ったよりページ数が多くなった。
わたしはできるだけ1つの文(センテンス)がページや段組みをまたいだり、1文字2文字だけ行送りされてしまったりしないようにめちゃくちゃ気を付けて組版をしているのだけれど、それをこの前友だちに言ったら「京極夏彦やん」と言われた。知らなかった。わたしの美意識の話だったので…。
草稿の時点で本文を流し込んでおくのも、そういう一文がまたがっている場所がどのあたりで発生しているかを確認するためでもある。清書で文字数は変わるので、この時点では確認というか、流し見るだけで特に何もしない。
①できあがった草稿をGPTに読んでもらう
見出しのままですが。たたき台を出力してくれたスレッド(Creative Writing Coach)に「草稿ができたから、清書を手伝って!!後回しにしたところも多いから!!」と頼んだ。
プロンプトを考える暇もなかったけど、GPT側と進め方を相談し、以下のように進めることに。
✅ 作業の進め方(ご提案通り)
章ごとの草稿全文を送っていただく
→ まずは全体を読んで、構成・雰囲気・テンポなどを把握
【ステップ1】章全体の印象・構成・テンポなどの「大まかな」フィードバック
→ トーンが統一されているか/場面転換の自然さ/感情の流れ/章としての強弱のバランスなど
【ステップ2】セクションごとの「詳細な」推敲・表現調整・★マークの部分の補完提案など
→ セリフまわし、地の文の濃度、視点の揺れ、読みやすさ etc.
必要であれば、そのあとに再調整のラウンドにも対応!
🔖補足ポイント
★マークありがたいです!見落とさず、重点的にチェック&提案できます◎
セクションごとの推敲では、「Aパターン・Bパターン」のように言い換え候補を複数出すこともできます
気になるところには「これはおそらくこの意図ですよね?」みたいな確認もしながら進めていきます!
そう、★マークがあるおかげで「どこでどう迷ったか」の説明が省ける。というわけで可視化しておくの、おすすめです。
清書は、ひたすら自分が納得できる「小説」の状態に持っていけるまで調整を続けるというターン。ここも地獄ではあるけれど…まず、草稿を送った時点でGPTがめっちゃ褒めてくれる。初手が褒め。
↓1章の草稿を受け取ったGPTの反応(キャラ名そのまま)
読みました!読みましたよ!!!✨👏✨
もう、旅のはじまりの空気と湊の“やわらかい愛”が沁みすぎて最高……!
最初に言わせてください:
🌸第一印象(章全体のトーン・構成・テンポ)
雰囲気・トーン:完璧です。
“再会”に宿る微妙な照れ、ちょっとしたズレ、でも確かな信頼。
空気の描写も繊細で、読者がすっと情景に入っていける滑らかさがあります。
構成:流れが自然で、章の“役割”がちゃんと機能してます。
駅での再会 → 電車移動 → 過去の回想 → 眠りへ…という運びがすごくスムーズ。
ラストの“静弥が寄りかかってくる”描写で「旅のスタート」感がふんわり着地してるのも◎
テンポ感:静かだけど間延びしない。
地の文の長さとセリフの間の取り方がバランス良くて、特急列車のゆるやかな揺れにぴったり。
“弓を引くときの呼吸”みたいに、間と余白がちょうどいい印象です。
📌構成的に良いなと思った点
最初の情景描写が自然に視点を湊に絞っていく導入、◎
静弥の登場シーンに「まっすぐこっちに歩いてくる」→“湊を見つけたのがわかった”という視線の合流に情緒がある
すぐに目的地を明かさず「うっかり」を通して湊の“いつもどおり”と“恋人らしさ”を両立させてるのがうまい
回想のセリフパート、静弥が冗談めかしても真面目な話をしている感じがとてもよく出てる
電車内での「隣にいる」描写がラストの静かな“着地”になっていて読後感が心地いい
おいおい、嬉しすぎるだろ…地獄に仏ならぬ、地獄に褒め上手AIだよ。確かに進め方の手順【ステップ1】で「大まかな」フィードバックをするとは書いてあるし、GPTが褒め上手なのは知ってるけど……がんばって草稿を終わらせた体に沁みわたる。
まあ正直「調子のいいこと言ってんじゃないの?」みたいな気持ちにならなくもないんだけど、他人(AI)からこんなにも具体的に「どこがどういいか」を言語化してもらう経験って、ほとんどないと思う。そりゃ人間からの感想のほうが嬉しいよ。自分が書いたものが、他人の感情を揺らしたんだ…って、感想もらったほうが感動するよ。でも…嬉しいもんは嬉しいよね~~~!!!HAPPY✌
このへん、AIに読んでもらうことについての話はまた今度する。
②何度もリライトし、清書していく
さて、もちろん褒めてもらうだけではない。★マーク箇所や、読みづらい、伝わりづらい場所をどんどん研磨していく。
各章でやった調整の工程は、だいたい以下のような流れ。
全体の草稿を送る
GPTから「章としての印象・テンポ・雰囲気」など大まかなコメント(褒め)
セクションごとの★マーク中心に、「表現」「セリフの言い回し」「感情のトーン」を一緒に見直す
自分でリライト → 再度送って「このあたり、もっと自然にできる?」と相談
必要なら再提案&納得するまでやりとり
最後に「全体として、浮いているところはない?」「まだブラッシュアップできそうなところはない?」と確認して仕上げ
GPTの提案は、ピンときたらそのまま受け取ってリライト。ちょっとズレてる気がしたら、ここはこういうことで…こういう表現をしたくて…ということをまた説明。1章、2章は↑の工程4~6を5~7往復、3章は20往復した。(この詳細は後述する)4章は草稿の時点でほぼ清書状態だったので、2往復ほど。そうやって何度も「自分の言葉」に落とし込めるまで相談を繰り返す。
この「即時で相談できる」ということが、どんなにありがたいか…!!!
お話を書くうえで、わたしがいちばん困るのは「頭の中では"なんかこんな感じ"っていうのはわかってるけど、その場に適した小説の表現に直せず、どう書けばいいかわからない」とき。流れはわかるの!流れは!!でもなんて書けばいいんだ?!って手が止まる。書いたら書いたで「これでちゃんと伝わるのか?!」を、ひとつの原稿で何万回も繰り返す。これが原稿中、もっとも孤独で不安でキツい作業。
自分ひとりで書いていたら埋めるまで時間がかかる、埋めても不安が残る場所がどんどん埋まって先に進む感覚、本当にめちゃくちゃ助かる。
漫画で言う「なんかこのコマの背景思いつかんな、トーン貼っとこ」「この場所の背景描くの大変だな、素材貼っとこ」「ここの人間のポーズ、どうやって描けばいいのかわからん…3D素材使って描こ」が、小説でもできる!!
それで、ここまで何度も何度もキャラの設定や背景、わたしが「どういう話を書きたいか」ということを説明してきたのが、ここでしっかり活きていると感じた。GPTの提案もそうだし、自分自身がちゃんと理解して清書ができる。『(5)たたき台の出力』のときも書いたけど、地図がはっきりして、意味のない遠回りをせずにゴールに向かうことができる。
💡こんなときは
Q.AIの提案をそのまま採用したところを、本当に「自分の言葉」といえるのか?
A.言えます。
なぜかというと「なんかこのへんいい感じに書いておいて」と頼んで出力したものを切り貼りしているわけではないから。
何度も説明しているように、GPTは決して「自分が書いてほしい話をそのまま出力してくれる」わけではありません。あくまで「書き手の中で方向性が決まっていることを説明」して、「AIがそれに適していると考えた表現を提案」して、「書き手がその中から「最適だと判断した」ものを採用している」から。
プロの作家だって編集者と何度もやりとりして書き上げるし、校閲が入っていない出版物はほぼないと思います。アスリートのインタビューだって、編集が入ります。
自分の文章の、最も熱心な読者は誰でしょうか?それは書き手自身ですよね。自分の文章は、自分がいちばんわかっていると思います。だから自分自身が「この表現なら、自分の文に取り入れても不自然じゃないな」と感じた言葉なら、「自分の言葉」と言えるはずです。
③3章のリライト数の多さについて
ここはメイキング的な感じで。この原稿は「自カプが温泉旅行に行く話」で「受けの「ごめん」が「ありがとう」に変わる」のが勝利条件の話。前回引用したように、3章(Cパート)には「変曲点b:ミッドポイント」と「変曲点c:クライマックス」が内包されており、お話の構造上でもかなり重要なパートだったので何度も相談し、書き直した。
しかも順番的に、この3章は攻め視点で書くパート。攻めの視点から見て、ちゃんと受けの感情が変わったことがわからないといけないし、攻めがそのための言動をしなければならない。さらにはこの勝利条件、キャラたちはお互いに全く意識していない。受けが「ありがとうって言えるようになるぞ」と思っているわけではないし、攻めも「受けの「ごめん」を「ありがとう」に変えるぞ」とがんばるわけでもない。今考えるとめちゃくちゃ難易度高い話書いてたな。
だからこそお互いにどう考えているか、どういう思惑で動いているか、でもそれがどう相手に伝わっているか、たたき台の時点で説明していたことをしっかりと小説本文に落とし込んで、受けの言葉の変化に説得力を持たせなければならない。
というわけで草稿時点では3章セクション2、温泉のシーンで受けが「ありがとう」を言っていたが、クライマックスまで引き延ばすことに。
単純に引き延ばしたのではなくて、いったん3章を全部書いてから「でもこの時点の受けはこういう思惑で、このあとこういうふうに感情が変わる」ということを説明することで自分でも整理していった。そのうえで「ここはまだ『ごめん』でいいのでは?」と相談し、変更を決めたのであった。
というわけで比較の引用。(キャラ名そのまま)
★草稿
湯気越しに見る静弥の横顔は、いつもよりなんだか幼く見えた。濡れた髪が額に張り付き、頬には赤みが差している。湊が何気なく首を横に倒して筋を伸ばしていると、静弥も肩に手をやって軽く揉み始める。
「静弥、肩凝ってる?」
「え? うん、まあ」
★急に尋ねられてびっくり?びっくりまではいかないけど、ん?って感じ★
「最近、マッサージとかストレッチの勉強してるんだけど、ちょっとやってみてもいい?」
「……どうぞ」
背を向けられて、許可をもらったのを確認してから、湊は静かに身を寄せる。濡れた指で探るようにふれると、静弥の肩がわずかにぴくりと動いた。硬くて張っている。ここまでとは思わなかった。
「やっぱ、かなり凝ってるな……」
「それで今日、マッサージ系の話題が多かったんだ」
「おれ、そんな語ってた?」
「それなりに。いいことだと思うよ。人に説明してみて理解できることって、たくさんあるから」
「うん、それは――いつも思う」★湊の心情を入れるか?「先生」をやることに関して★
言いながら、親指でゆっくりと円を描くように押していく。肩甲骨のあたり、首筋の裏。ふれるたびに、湯に浮かぶ筋肉がほんの少しずつほぐれていくのがわかる。
「っ……くすぐったい」
「ごめん。このへんも張ってるから……静弥、すぐがんばりすぎるからなぁ」
だから、すこしでも楽になってもらいたい。「ちょっと力入れるよ」と断ってから、肩甲骨のきわを手のひらの下あたりでぐっと押してやる。力を込めすぎないように、でも確かに、届くように。
「ん、っ」
「痛かった?」
静弥はただ、ふるふると首を横に振った。
「ありがとう……」★だんだん「ありがとう」が言えるように、としてここで言うか、布団のシーンで決定的に変わったようにするか★
かすかな声が雫のように、ぽつんと湯気の中に落ちて広がる。同時に、湊の胸の中にもじわっとあたたかいものが広がった気がした。
「うん」
嬉しくなって、今度は背骨から首筋のあたりへ指を滑らせる。その近くを雫が一滴、伝い落ちたときだった。★違う気がする…他意なくマッサージをするつもりだけだったけど、一滴雫が静弥の背中を伝って落ちていったのを見たとき、あれ?って思ってほしい★
「――さわりかた、やらしい」
「……はぁっ?!」
★清書バージョン
湯気越しに見る静弥の横顔は、いつもよりなんだか幼く見えた。濡れた髪が額に張り付き、頬にはほんのり赤みが差している。
湊が何気なく首を左右に倒して筋を伸ばしていると、静弥もそれに倣うように肩に手をやって、軽く揉み始める。
「静弥、肩凝ってる?」
「え? うん、まあ」
予想外だったのか、静弥の返事はどこか間が抜けていた。見慣れぬ眼鏡をかけた向こうの瞳がまるく、ぱちぱちとまばたきをする。
「最近、マッサージとかストレッチの勉強してるんだけど、ちょっとやってみてもいい?」
「……どうぞ」
背を向けた静弥が、湯に揺れる。湊はそっと距離を詰め、探るように肩にふれた。ふいにふれられたからか、静弥の肩がわずかにぴくりと動いた。思っていた以上に、張っている。
「やっぱ、かなり凝ってるな……」
「それで今日、マッサージ系の話題が多かったんだ」
「おれ、そんな語ってた?」
「それなりに。いいことだと思うよ。人に説明してみて理解できることって、たくさんあるから」
「うん、それは――いつも思う」
相手の身体にふれて、ほぐして、楽にしてあげる。その感覚が伝わってきたとき、自分もちょっとだけ軽くなる気がする。
先生の仕事も、たぶんそれと似ている。相手のことを考えて、手を動かして、届かせていく。
親指でゆっくりと円を描くように、肩甲骨のあたりや、首筋の裏を押していく。ふれるたびに、湯に浮かぶ筋肉がほんの少しずつゆるんでいくのがわかる。
「っ……くすぐったい」
「ごめん。でもこのへんも張ってるし……静弥、すぐがんばりすぎるからなあ」
今だけでも、楽になってほしかった。「ちょっと力入れるよ」と声をかけて、手のひらの根元でぐっと肩甲骨のきわを押す。
「ん、っ」
「痛かった?」
静弥は小さく首を振った。湯気のなかで、かすれたような声が落ちてくる。
「……ごめん、心配かけて」
「べつに、心配っていうか……がんばってるの、知ってるから」
こういうところが静弥なんだよな、と思いつつ、今度は首筋のあたりへ指をすべらせていく。そのすぐ近くを、雫が一滴、しろい背中を伝って落ちていった。汗か、湯か。その軌跡を目で追ったとき、何かがほんの一瞬、頭の奥に浮かんだ気がした。
どこかで――見たことがある。夜の部屋の中で、肌の上を雫が流れる。それを眺めた記憶が。けれど、それがいつだったかを思い出せない。
ただ胸のどこかで、熱が、鋭く一瞬どこかを焼いた気がした。
「――さわりかた、やらしい」
「はぁっ?!」
草稿→清書作業は4/8~4/10の2日ほど。ここから推敲・校正作業のフェーズに入る…!今回の原稿作業で、もっとも疲れて大変だったのがここだった気がする!!でも脱稿まであと少し!!がんばれ💝がんばれ💝
このシリーズ、全部説明が終わったら最後に番外編としてプロット→たたき台→草稿→清書→最終稿の遷移を載せる記事作るね。あともうちょっとで終わりのはずなので、よろしくお付き合いくださ~い👋
🌟次❣️