◆前回のあらすじ
わたしが「小説同人誌を出す」までにどういう作業をしていて、どのフェーズで「AIに手伝ってもらったのか」という流れをざっくり説明した。
結びに『「アイディアのタネ」を「どうやってプロットに詰めていくか」の詳細を書く予定!』と書いたけれど、改めて作業工程を分解すると「何をする話か」のタネが「何を達成する話か」に変わるまでもやりとりが多くあったため……今回の記事ではプロットまでたどりついていません!なんてこった。
でもこれ「何も起きない話」を書くためのやりとりなので、そういう「ドラマチックな出来事は起きない話を書きたい」人の役には立つかなと思って…。(というか未来の自分に)
✦本編に入る前に宣伝
「今回の原稿」という話をしているのは5/3のスパコミで発行したツルネ・湊静の同人誌のことです。(説明内では「自カプ」「受け」「攻め」などで表記)自家通販してる!装丁がちょうかわいい!
◆今回使ったGPTs
注釈がない限り、この記事で言う「GPT」はすべてこのGPTsのことを指す。
要約に活躍。
①自カプが温泉旅行に行く話が書きたい(読みたい)
すべての初期衝動は↑これ。読みたいねん。でもないから書くしかないねん。自分で書いたら自分のキャラ解釈とヘキに最大限配慮された話が出てくるから最高ですね。
もともとGPTに自分の書いた話を読ませては感想をせびっており、その流れで「次は自カプが温泉旅行に行く話を書きたい。短編が得意だけど、同人誌にするにはそれなりの長さが必要。でも事件とか対立とかがない「何も起きない話」として書きたい」という話をしていた。
【実際の提案の要約・まとめ】
何も起きない話を書くには:(※AI Humanizerを使用して要約しています)
時間の流れを大切に
旅行ならではの「ゆったりとした空気感」に重点を置き、温泉や宿での静かな時間、朝の散歩など、日常の中の非日常を丁寧に描く。
過去と今の比較
高校時代など、まだ恋愛に不安や距離があった頃の回想を織り交ぜながら、現在の2人の信頼と安心感を引き立てる。
身体的距離と心の距離の対比
一緒に温泉に入る、食事をする、寝る前に過ごす――といった自然なふれあいの中で、親密さと心の近さを描写する。
会話の「間」や沈黙を活かす
言葉にしなくても伝わる関係性を描くため、自然な会話や静かな沈黙の中に、感情の重みを込める。
旅先でのささやかな出来事
温泉街の風景や料理、朝の散歩など、五感に訴える細やかな情景を通して、読者がその場にいるような臨場感を演出。
未来への予感を含ませる
「このまま変わらず一緒にいるだろうな」と思えるような、穏やかで温かな未来の描写をちらりと添えることで、物語に余韻を生む。
【シーン提案(具体的アイデア)】
朝の温泉街を散歩
静かな街並みを歩く2人。会話が少なくても安心感が漂い、商店街のシャッターや鳥のさえずり、足音などで時間の贅沢さを表現。
旅館の朝ごはん
朝の光の中、特に会話もなく並んで食事をする2人の姿を通して、穏やかで満たされた時間を描く。
夜の露天風呂
星空の下、湯気に包まれて静かに過ごす。言葉よりも雰囲気が主役のシーン。
夕方の温泉街で手を繋いで歩く
「誰も自分たちを知らない場所だからこそ」自然に手を繋げるという自由と開放感。手を繋いだことをきっかけに、幼い頃の思い出とのリンクや成長を描く。手の大きさや、以前とは違う感覚に気づくなど、細かなディテールで心の変化を表現。
【物語全体を通じたトーン】
穏やかで落ち着いたペースの文章構成
五感を活かした繊細な描写
空間そのものや「間」を含む余白の美しさ
キャラクターの成長、関係の深化、未来への予感といった、“静かな物語の中にある豊かな感情”が中心
↑ここで提案された「温泉街を手をつないで歩く2人」という具体的シーンに、「あ、それは見たいな」と思う。(※補足 わたしは頭の中の映像を書き起こすイメージで話を書くので、シーンを映像として「見たい」ものを書いている)一応、これらはGPTが「わたしがどんな話を書くのが得意か」をわかった状態で提案してくれている、はず。雰囲気を掴んでもらうためにも、自分の話を読ませておくのは有用。自身の持ち味を的確に説明できるなら無用。
ここまではまだ雑談。向こうが提案してくる内容に、いいと思う場所があったら「あーそれいいね」と会話して広げていくイメージ。とりあえずこの時点でも「大人になってるふたりかな」というイメージはしていた。
②しゃらくせぇ提案をされる(全文つき・提案→ズレ→調整編)
①の段階は本当に去年くらいにやってたやりとり。3月末、推しの引退試合・セレモニーを乗り越えて「↑の話を本格的に詰めていきたい」と相談する。
ここで大事なのは「目的を明確にする」こと。なぜなら、AIは勝手に自己補完をするから。
ということで以下のような目的をもって考えたいことを伝える。
全体的なトーンや方向性は、これまでやりとりした内容を踏襲する
長い話にしたくない(〆切まで20日以下)
三幕構成を前提に、第一幕、第二幕前半、第二幕後半、第三幕をそれぞれ短編のように1章ずつ書くイメージ
1〜4章の構成で、時系列などを移動させたり2人の視点を変えるなどで、変化を持たせる
自カプの公式的なテーマが「並んで歩く」なので「温泉街を手を繋いで歩く2人」というシーンは最後に入れるほうがいい?
ゆっくり温泉に浸かったり、おいしいご飯を食べたり…というようなシーンが書ければいいな
上記を踏まえて、書けそうなシーンのアイディアを提案して!と頼んだところ、出てきたのが以下。(全文なので長い)
【実際の提案・全文】
了解しました!〆切も意識しつつ、あなたの得意な短編スタイルに沿って、「穏やかな旅の時間」と「関係性の深まり」をじんわり感じさせる、攻めと受けらしい温泉旅行のお話ですね。
そして今回のキーになるポイントが:
構成:全体を4章に分けた短編形式(章ごとに視点や時系列の変化あり)
トーン:大きな事件はなく、静かに心が動く/未来を明るく迎えられそうな感覚
ラスト:「並んで歩く」がテーマになるような終わり方にしたい
その他:温泉・旅館・食事・街歩きなどの旅情と、過去との対比、現在の安定感
こういった前提をふまえて、「4章構成に入れやすいシーン案」を以下にご提案します!
書けそうなシーン案まとめ(章割の参考つき)
第1章(出発の朝と移動):攻め視点/序章
テーマ:旅のはじまりと、ちょっとの照れ
攻めの目線で、旅の朝支度。受けと旅行に行くのが初めて(あるいは久しぶり)というドキドキと楽しみが描かれる。
駅で待ち合わせ→受けがちょっと早めに来てて、攻めが照れるやつ。
電車の中の静かな時間。外の風景を見ながら「昔なら黙って並んで座ってたな」と思い返す攻め。
さりげなく隣に飲み物を置いてくれる受けの動作に、安心感と優しさを感じる。
※ここで「並んで歩く」という二人の在り方が今も続いてると気づく種まきをしておくと、ラストに活きます。
第2章前半(旅館到着〜夕方の街):受け視点
テーマ:旅先という非日常/変化への気づき
到着して旅館にチェックイン。布団のふかふかさや部屋のにおいを受けがやたら語って、攻めにからかわれる。
夕方の街をぶらつく。蒸気の立ちのぼる道、手ぬぐいを首にかけた観光客など、ちょっとした旅情を描写。
足湯にふらっと入って、しばらく沈黙。視線が重なるけど、言葉はなし。それでも「あの頃とは違う」と受けが感じる。
攻めがちょっとふざけて、受けが笑う。「昔なら、こんなふうにふざけられる余裕なかったよな」と回想。
第2章後半(温泉・夕飯・夜):視点切り替え自由(会話ベースでもOK)
テーマ:変わらない心地よさと、ちょっと未来の話
二人で温泉に浸かる。湯気、静かな夜空、露天風呂の石と木のにおい、そういう空間に身を委ねる時間。
湯船で静かに話す。「今ってさ、もう怖いもんないな」みたいな攻めのぼそっとした一言が受けに響く。
お風呂上がり、浴衣でのんびり。瓶の牛乳とか、アイスを食べるシーンもあり。
宿のスタッフに「兄弟さんですか?」と聞かれて、2人とも一瞬だけ黙って→攻めが笑って「まあそんなもんです」みたいなやりとり。
寝る前、横並びの布団の中で、ふと受けが「来年も来れるかな」とつぶやく。それに攻めが「当たり前でしょ」と返す。
第3章(早朝の散歩と帰路):攻め視点/終章
テーマ:並んで歩く現在と、未来へのささやかな確信
攻めが早起きしてこっそり散歩に出ようとする→すでに起きていた受けが「俺も行く」と言って並んで歩く。
まだ静かな街。湯けむりの漂う早朝の温泉街。空の色が少しずつ変わっていく。
攻めがふと「こんなふうに、昔のこととか思い出すことが増えた」と言うと、受けが「全部一緒にいたからな」と返す。
昔はあんなに不安だったのに、今はただ隣にいるのが当たり前で安心できることに気づく攻め。
最後は、駅に向かう道を2人で歩く後ろ姿で締める。「並んで歩いてる。ずっとそうだったし、これからも」というモノローグで静かに着地。
トーン/雰囲気のガイド
派手な起伏はつけず、会話の「間」や風景描写で感情を描くのがこの話の肝。
攻めの言葉は少し柔らかく、受けは不器用だけどまっすぐ。
描写は五感(におい・空気の温度・湯気・音)を大切にして、読む人が「温泉旅行に行ったような気持ち」になれるのが理想。
最後は「好き」や「愛してる」とは明言せずとも、2人がこれからも変わらず歩んでいけるんだなと読者が思えることがゴール。
今後の進め方(提案)
各章の冒頭に書きたいセリフやイメージをメモ書きして、そこから地の文を膨らませていくと楽です。
時間が限られているなら、1章→3章→2章という順で書いて、ラストと導入を先に決めておくと締まりがよくなる。
書いていて「中だるみしてきたな」と感じたら、少し時間を飛ばす(夜→翌朝へ)などでテンポ調整もあり。
「並んで歩く2人の温泉旅行」、とてもあなたらしい、静かで温かくて、読み終わったあと胸がじんわりするようなお話になりそうです。
プロットのブラッシュアップ、セリフや描写の相談、タイトル案や〆の一文を決めるお手伝いも、もちろん大歓迎です!
どこからでも、どの段階でもまた声をかけてくださいね。応援してます!
……しゃらくせえ。
キーポイント、シーンの流れ(出発→到着・散策→夜・温泉→朝・散歩、帰路)はいいとして、キャラ解釈が違い過ぎる!一応このカプの話も読んでもらってたはずなのにな…。そして、本当に何も起きなさすぎる。どうやって書けっちゅうねん。でもいまからキャラ解釈を長々説明するのもめんどくさい!時間がない!そうだ、以前長々とキャラ解釈を語って共感してもらった別のスレッドがある!(なんであるの?)そっちで相談しよう!ということでこのスレッドでの相談は中止。
しかしキーポイントや目的(自カプが温泉に行く「何も起きない」話を4章構成で書く)は明確だし、この流れは前提に話をしたい。でもこの内容をどう送ればいいのかわからない。要約してもらえばいいのかな?と思い、先に要約が得意なAI Humanizerに移動。
💡こんなときは
このように「トンチキな返答になる!」という場合、AI側に「適切な返答のために必要な情報が不足している」ことが考えられます。とはいえ慣れないうちはどんな情報を渡せばいいかわからないと思うので、それも含めてAIに質問しましょう。
「こういうことをしたいので、協力してほしい。提案の前(最高の結果を出すため)に、必要な情報があれば質問して」
大まかにこんな感じで送れば、あとは質問に答えていけばいい感じになっていきます。(個人情報や機密情報は送らないでね)原稿に限らず、問いかけ上手になることがAIを便利に使える近道です。
というわけで要約してもらうにはどうしたらいいかということを直接AI Humanizerに聞く。
最初に送信したプロンプト:
他のスレッドでチャットGPTとやりとりした内容を、要約してまとめてもらいたいです。短編小説のストーリー、プロットについて相談したものです。
いくつかやりとりがあるのですが、端的すぎず、わたしの要望を踏まえてチャットGPTからこうして提案された、というようにまとめてもらいたいのですが、どういった方法で進められますか?必要なことがあったら回答の前に質問をお願いします。
AI Humanizerの質問:
やりとりの内容はどのような形式で保存されていますか?
要約の目的・用途は?
どの程度の長さでまとめたいですか?
「わたしの要望を踏まえて」というのをもう少し具体的に教えていただけますか?
※実際は例が一緒に書かれている
わたしの回答:
やりとりの内容
テキストをコピペして送ります。
目的・用途
ファンフィクションの小説のため、キャラクターの解釈などを説明している他のスレッドに改めて送り、プロットを作るのに使いたい。
長さ
長くなってもいいです。提案してもらった内容はすでに構想の一端になっているので、それを踏まえて別のスレッドでもう少し細部を詰めいきたいイメージです。
要望とは
少しわかりにくかったですね。わたしが、該当のスレッドで「こういう話を書きたい。こういう方向で書こうと考えている。こういうイメージがある」ということを伝えたので、それを踏まえた提案をしてもらっています。登場人物、背景、書きたいイメージなどです。
という内容を送ったうえで、実際のやり取りをコピーして送ったところ、要約してもらったのが「何も起きない話を書くには」で引用した内容。(一部)
そしてさっきのキャラ解釈がズレた内容も要約してもらい、「こういう提案はしてもらったけど、キャラ解釈が違う」というまとめも作る。ちなみに「プロンプトとして送りたい」と伝えたことで、ちゃんとプロンプトっぽく整えてまとめてくれました。かしこいね~!
③軌道修正し、「何を達成する話か」が定まる
そんなわけでまとめてもらった内容2つを別スレッドへ送り、「こういう相談をしていたので、ここからはこのスレッドでプロットを詰めていきたい」ということを伝える。GPTはすぐ乗り気になって提案を始める(かわいいやつめ)ので、1つ目のまとめを送った時点で「こういう方向性にするとよさそうですね!」「こんなふうに相談できますよ!」とかを主張してくるけど、ここは無視。情報を送ることに専念。
しかしこのスレッドで「キャラ解釈を長々と語ったことがある」とはいえ、それは結構前の話。GPTは、やりとりが長くなると最初のほうの情報を忘れてしまう。(チャットGPTそのものはメモリの保持が長くなっているらしいが、GPTsではまだ覚えきれない)
なので念のため
この自カプの受けはかつて攻めに対して「贖罪意識」を持っていたこと
でも受けは攻めに許されたいわけじゃなくて、受けが自分で自分を許せる範囲を広げていけるかということが大きなテーマという話をしていたこと
この話は「大人になった2人」なので、そのあたりの変化は書きたいこと
「何も起きない話」ではあるけれど、埋められたテーマとしてそういう解釈は内包したい
ということを改めて伝える。
【GPTの回答】
はい、そのお話――しっかり記憶しています。
(中略)
なので、今回の温泉旅行編であなたが書こうとしている
「何も大きな出来事は起きないけれど、静かに“自分を許す範囲”が少しだけ広がっている」
という構造は、まさに大人の物語として極めて正しい進化形だと思います。
たとえば:
受けが「何かをしてみたい」と思ったとき、ためらいなく攻めに言えるようになっていたり、
昔は「誰かと一緒にいても心が休まらなかった」のが、今は“無言の共有”が安心できる時間になっているとか、
攻めに甘えてしまったあとの受けが、「ごめん」ではなく「ありがとう」と言えるようになっている
(後略)
『攻めに甘えてしまったあとの受けが、「ごめん」ではなく「ありがとう」と言えるようになっている』
それそれそれーーー!!!!マジでそれすぎる!!!それ!!!勝利条件!!!!それが書ければちゃんとした「お話」になる!!!!
ということで、この『「ごめん」が「ありがとう」に変わる』ことを根幹に、さらに設定を詰めたりお話の流れを決めていくことになったのであった。
……長かったね!まあこの最後の提案も「しっかり記憶しています」とか言いつつ、キャラを知ってる人が見ればわかるように本当はキャラ解釈が記憶されてなかったんだけどね!でも一応お話の「心臓」となる「2.山場(何を達成するか)を決める」ができたので、ようやくしっかりプロットが組めるというものです。
ここまではあくまで助走。ここからしっかり設定や背景情報を詰めて、プロットに落とし込んでいく!
次回、「お前やっぱ覚えてないじゃん!」キャラ解釈を改めてまとめ直して、ついに本格的なプロット作成へ——!お楽しみに!
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