2025/05/07 ヒカリと夜の音楽、またはクロノスタシス

たーんえー
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公開:2025/5/7

『くもりガラスの銀曜日』と同じく、イルミネーションスターズのイベントシナリオを読んで行くシリーズ。順番に読み進めていて、今回は最新の1つ手前、『ヒカリと夜の音楽、またはクロノスタシス』。評判は少し聞いたことはあったけど、想像を超えて非常に良かった……永遠を願うことの尊さ、音楽の素晴らしさを描いたシナリオで、シャニマスでもトップクラスに好きかもしれない。

イルミネーションスターズの3人が非常に仲が良いことは、これまで繰り返し描かれてきた。中でも八宮めぐるさんは特に思いをダイレクトに言葉にしてくれるのでわかりやすい(聴いているこちらが恥ずかしいくらいに)が、他の2人も同様に思っているのは伝わってくる。そんな仲の良い3人が、これからもずっと一緒にいられるのか、この仲の良い関係性を続けられるのかが一つのテーマとなっている。

作中ではイルミネーションスターズの中の関係性は"まだ"大きくは変わっていないとされる。みんな忙しくなってはいるが、時間を作って通話などをして、会えない時間を埋めていると。これも現代の文明の利器あってこそで、それがなかったら疎遠になっていた可能性を示唆しているとも取れる(ない時代にはアイドルって職業自体もないだろ、というのは置いておく)。

一方で、イルミネとファンだったり、ファン同士の関係性は、大きく変化している様子が描かれる。一例としては両方イルミネファンで仲の良かった少女2人組で、このシナリオでは彼女たちの変わっていく関係も掘り下げられる。また、イルミネのデビューライブには行ったりしたが今は全然イルミネは追えていない、という台詞も登場する。一時期は追っていたが今は全然、というのはこのコンテンツ過多の時代、ありふれたことだろう。そういった例から、永遠に続くものなど存在しないのではないか、と感じさせられていく。クロノスタシスとは、素早い運動を見た直後の一瞬が長く感じるという錯覚である。永遠は錯覚であると、この単語で表現できるセンスがすごい。

永遠がないとしたら、過ぎ去った時は忘れ去られていくだけなのか。このシナリオでは、そんな思いに「歌」が答えてくれる。音楽はただ音の連なりであるだけでなく、聴いていたあの頃の、失ったと思っていた日々を記憶から呼び起こす力があるのだと。副題の「あしたが、まだ永遠だった頃」と「きのうが、永遠になった」の対応が、美しい。

イルミネの仲の良さを直に感じている番組ディレクターの「まだ10代だから仕方ないかもしれないけど」「本当に『ずっと一緒』なんて、あるわけないんだから」。という台詞は、こちらを突き刺してくる現実だ。しかし、イルミネは純粋純朴なだけの少女たちではなく、永遠がないことも、関係はいつか変わることも知っている存在として描かれる。それでも彼女たちは、永遠を願う。少しばかり長く生きて、永遠なんてないとわかった風に言う(予言者の顔をする)大人よりも、よほど尊いと思う。

イルミネが成長していくにつれ、会場は段々と広く、客との距離も遠くなり、あの頃客席にいた人も今この場にはいなかったりする。それでも、この会場でなくても、きっとこの宇宙のどこかにはいるのだと。だから彼女たちは、"今"歌うのだ。永遠を、様々な願いを託された星として、距離も時間も超えて生き続ける歌を。「輝きをみんなに届けよう、イルミネーションスターズ」


余談だが、このシナリオが『ロボット・ドリームズ』と近いところがあるという言及を事前に見掛けていた。読んでいる間は意識しないようにしていたが、読み終えた後だと確かに重なるところはだいぶあると感じる。過ぎ去った思い出の美しさ、それを呼び起こせる音楽の尊さが描かれた両作品であった。どちらもオススメです