ドラマが好きです。三度の飯と同じくらい好きです。ドラマ感想本をうっかり出してしまうくらいにドラマの感想を語るのも好きです。なのでブローガスト月の最後に好きなドラマのはことを書いてみようと思います。
某所で「日本のドラマは薄っぺらい」という批判があったそうで(火元は追えてない)ドラマTL界隈でちょっと話題になってたのを見たのだけど、ドラマに限らず、映画や小説でも同じようなことは言われるので、ま〜またか、という気持ちではあった。
そもそも海外に輸出されるコンテンツは国内および他国ですでに評価されているものがほとんどなので、逆から見れば自国のものより国外作品のほうがアベレージが高く見えるというのは全然あると思う。だからどこの国にもくだらなくて薄っぺらいコンテンツはきっとある。
そもそも「薄っぺらい」の反対はどんなドラマなんだろう。「重厚感がある」「社会的意義がある」、そんなドラマだろうか。いやいや、日本にもちゃんと「薄っぺらくないドラマ」はありますよという反論もたくさん見た。それはわたしもそう思う。日本にも良いドラマはたくさんある。
でも、じゃあ、「薄っぺらいドラマ」には価値はないんだろうか?
そもそもテレビドラマはなめられてる。例えば映画は「(アート寄りの)作品」だけど、ドラマは「消費物」。もちろんグラデーションはあるけれど、そんなふうに見られているような気がする。
もちろん、テレビドラマに「消費物」としての側面があるのは否めない。最終回が終わればすぐに忘れられていく作品だって多い。一方、名作と呼ばれるような映画は長い時間をかけて新たなファンを獲得していく。時間の経過に耐えうる作品はたしかに価値が高いだろう。
でも、人が何に癒やされるのかはわからない。批評家やインフルエンサーが絶賛するドラマより、深夜のBLドラマのほうが楽しみな人だって多いだろう。人の数だけ価値がある。個人を軸に置いたとき、「作品としての価値」よりも、見た人が「どれだけ癒やされたか」のほうが大事なんじゃないか。
見た人に何かを考えさせるような、社会的意義のあるドラマはたしかにすばらしいし、わたしも好きではある。だけど一方で人って生きてるだけで疲れるし、一日のうちのたった数時間(もしかしたらそれは数十分かもしれない)の自由時間くらい、何も考えずに楽しめる、誰かの言う「薄っぺらいドラマ」を見て癒やされたい。それだってその人にとっては大事な時間なのだ。だから作品の価値ばかり推し量るのはもうやめたい。「薄っぺらい」なんておとしめたりしなくていい。
作り手より長生きするかもしれない名作の価値は高いかもしれないが、有限であるわたしたちの生きる時間のほうが絶対に尊いし、知らない誰かの評価の集合体のような「作品の価値」よりも、わたしやあなたの「好き」のほうがずっと、わたしやあなたにとっては大事なはず。
というわけで、わたしはわたしの好きなドラマの話をしたい。
とらつば以前のドラマについては感想本にあれこれ書いたので(↓)、『虎に翼』以降のドラマ(地上波)で好きな作品を放送年順で並べてみました。
『海に眠るダイヤモンド』(2024)
このドラマの何がすごいって2024年に炭鉱町のドラマをつくったことじゃないでしょうか。わたしは一時期海外の炭鉱町を舞台にした映画を見あさってたのですが、邦画あまりないなぁと思ったら、日本では炭鉱を舞台にした映画はあたらないのであまり作られなかったそうです。広島と比較するとまだ描かれることの少ない長崎の被爆が描かれたことも良かった。
そしてウェルメイドに収まらないどこまでもドラマチックなラストは、現代ものであればどうしても野木さんに背負わされる「正しさ」からも解放された、「物語」ならではの喜びに満ちていて最高でした。
『アンメット』(2024)
一日しか記憶が持たない記憶障害を煩う脳外科医の物語って設定だけ聞くと突拍子もないんだけど、不思議と地に足のついた物語に見えた。「映画みたいな」っていうとまた映画を上に見てるようであれだけど、やっぱりテレビドラマでは見ないテンションと間合いの演技、奥行きと温かみを感じる映像にぐいぐい引き込まれた。こちらも主演の杉咲花と若葉竜也が素晴らしかったです。
『ライオンの隠れ家』(2024)
地方在住の兄弟二人が主人公の物語というだけでも連ドラとしては新鮮なルック。二人の前に突然現れたライオンという少年の謎を巡るミステリという大きな物語と同じくらい、自閉症当人の生きづらさやケアする家族のしんどさなど兄弟の日常が丁寧に描かれ、回を増すごとに夢中になったドラマです。家庭内DVに転嫁される有害な男らしさの問題など〝男性問題〟に光を当てたドラマでもありました。自閉症の青年を演じた坂東龍汰くんもすばらしかったし、弟をケアする長男を演じたのが柳楽優弥くんであったことも彼の鮮烈なデビュー作を思い返すと勝手にぐっとくるものがありました。
『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』(2024)
人気映画シリーズから初のドラマだったわけだけど最初から深夜ドラマだったんじゃないかってくらい、深夜ドラマという枠がハマるコンテンツでした。テーマはまさかのパワハラ。とくに終盤のジョブローテ編と柄本時生演じる日野さんがかっこよくて最高でした。このシリーズまだまだ見たかったな〜



『宙わたる教室』(2024)
好きすぎてすでに長い感想を書いてます↓
名作の多いNHKのドラマ10の枠ですが、とくにこの時期の『宙わたる教室』からの『東京サラダボウル』の流れ、「共生」というバトンが渡されたようで良かったな〜と思ってます。
↓触発されて上野の科学博物館にこんな展示を見に行ったりしました。相澤さん…

『舟を編む』(2024)
初放送はBSで2024年ですが地上波放送は2025年ですね。わたしは原作も映画版も好きなんですが、この連ドラ版もまた、原作をアップデートした物語でありつつ言葉への愛に満ちていて本当に良かったです。脚本はのちに『銀河の一票』を書く蛭田直美さん。
原作にもある有名な恋愛の定義についてのエピソード(異性間のみじゃないですよねという疑問)もドラマでは実際に同性愛者のキャラクターを出すことで現実としっかり繋げ、SNSでの誹謗中傷など言葉が人を傷つける現代の問題も丁寧に描き、そして原作その他で結末を知っている人たちにとってはサプライズともなったラストの展開!コロナを描いたことも含め、2024年に改めて映像化する意味を十分に感じられた作品でした。
『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(2025)
戦争のない江戸中期に花開いた江戸文化を描くという、大河ドラマとしてはめずらしいだけにむずかしいテーマかと思われたんですがさすがは森下佳子先生、一年間ずーっと面白かったです。
というか半分以上は政治の話でしたよね。戦という手段のない社会で飢饉やむちゃくちゃな政治に翻弄される民たちの姿には共感しかなかったです。とくに現実の2025年も米不足でもあったので……わたしたちも打ち壊しとかすべきでは??と思いながら見てました(真顔)
↓上野の東京博物館でやってた蔦屋重三郎展に行きました


『東京サラダボウル』(2025)
国際捜査課刑事・鴻田麻里と通訳・アリキーノの二人によるバディミステリ。在日外国人が抱える生きづらさや問題に丁寧に寄り添った物語で、実際東新宿あたりで撮影してることもあって映像にもリアリティがありました。アリキーノの過去が明かされる終盤はほんとうにつらかったし、鴻田さんの子ども時代の回も自分とルーツが近いこともあって印象に残ってます。実際これだけ外国人労働者が増えた社会なのだからもっと彼らを主役にしたドラマがあってもいいよねと思います。原作漫画は続いてるみたいなのでドラマも続編あるといいですね!
↓東新宿のふつうの路上でやってたドラマ展笑。小道具もいっぱい見せてくれて楽しかったです。


『晩餐ブルース』(2025)
病みかけのTV局社員・優太、仕事を辞めた元料理人・耕助、離婚したコンビニ店長・葵の同級生三人がはじめた、ただ晩御飯を一緒に食べる晩活からはじまる物語。
友人同士による相互ケアの話であると同時に、カウンセリングに通ったり、部屋を片付けたり、食事を大事にしたりというセルフケアの話でもあり、そして自分を立て直せれば他者をケアすることもできるという、良い循環までも見せてくれた物語でした。優太の職場の先輩や同僚の上野さんも、それぞれのストレスを言語化することで少しずついい顔になっていくのがよかったです。愚痴は大事。もっと言っていこう。何かと心が疲れる現代だからこそ、もっとこんな話をしたいと心から思えるドラマでした。テレ東ありがとう。もっとこんなドラマ作ってくれ。
『日本一の最低男』(2025)
妻を失いシングルファザーになった正介(志尊淳)とその義兄である大森一平(香取慎吾)の男性二人で家庭を回し子育てするという男性ケアラーたちの物語であると同時に、同性婚や保育士の待遇など身近な政治トピックを組み込みながら終盤は区長選という選挙ドラマになだれこむ。『フェンス』の北野P、この直後に『銀河の一票』を書く蛭田直美さんがメイン脚本を務めたというのが納得の政治ドラマでした。
個人的には大森一平がTVプロデューサー時代の自身のパワハラに向き合うエピソードが印象に残ってます。『ライオンの隠れ家』や『晩餐ブルース』もそうだけど、男性のストレスが結果として弱者へのハラスメントをはけ口としてしまう問題を見つめるドラマが出てきたな〜と思います。
『ばけばけ』(2025)
「日に日に世界が悪くなる〜♪」が流行語大賞でいいのでは??と思うくらいにこの主題歌がドラマよりも現実の世相に沿いすぎてて怖いくらいでした。それはそうとふじきさんのコミカルな脚本にヒロインの高石あかりがぴったりすぎたし、松江という舞台も新鮮で面白かったです。
アイルランド大使館や佐野史郎さんによる朗読イベントに足を運んだりもしました。

『ひらやすみ』(2025)
放送当時も楽しみに見てましたが最近また通しで一気見しちゃったくらい好きなドラマです!ヒロトとなっちゃんの平屋暮らしはそれだけで癒やされるんですが、この物語の本当の良さは、一見脳天気にただ毎日を生きてる人のメンタルの落ち込みを丁寧に描くことにあると思っていて、どうしたってかつての自分を思い出してしまう、そんな切なさやノスタルジーを感じるシーンにグッときます。リアル阿佐ヶ谷で撮影されているのもとても良いです!
『じゃあ、あんたがつくってみろよ』(2025)
原作の谷口奈津子さんが大好きで、過去にドラマ化された『今夜、すきやきだよ』も大大大好きだったので本作も期待してました。竹内涼真が思ってたのの10倍くらい面白かったのでそれに引っ張られた感はありましたが笑、ジェンダー不平等の問題をコメディというガワをかぶってお茶の間にお届けする大変教育的なドラマだったと思います。親世代に見てほしいドラマナンバーワン。
『いつか、無重力の宙で』(2025)
こちらも大好きな夜ドラでした。高校時代に天文部だった四人が大人になって再会し、超小型人工衛星の打ち上げに挑む物語。四人のケミストリーが本当に最高でずっと見ていたかったし、だからこそ一人欠けるのが身を切られるようにつらかった。ファミレスのシーン、全部大好きでした。あと週の終わりにかかるエンディングの映像が素晴らしくて週を重ねるごとに切なくて泣いてました。
こちら9月からプライムで配信だそうです!
『銀河の一票』(2026)
秋ドラマのラインナップがほんとヤバい(良い意味で)のでまだ確定は出せないのですが2026ベストドラマはこれでは!?!?というくらいよかったです。みんな見てるよね。もし見てない人がいたら今から見られるのがうらやましいです。
きれい事が馬鹿にされるこの社会で、「きれい事じゃない、きれいなことだよ」と肯定してくれるドラマにどれだけ心洗われたか。正しくない世界に生きる私たちは正しい言葉に癒やされる。私たちはもっと理想の政治を語っていいし、望んだっていい。私たちがなくしてしまった、そんな当たり前を取り戻してくれるようなドラマでした。
↓デモついでにロケ地にも行きました。


結局社会的評価の高い作品ばかり!というかNHKばかりでは!?!?という面白みのなさについては本当に申し訳ない……だけど本当に好きな作品ばかりで推して悔いなしです。
誰もがアクセスできる地上波ドラマっていいよねと、今改めて思います。いろんな人の感想を目にするからこそ、自分だけの価値観にとどまらずにいられる。自分にとっては大事じゃないと思えたものが、誰かにとっては大事であるかもしれないということを忘れたくないなと思います。
最近ちょっと視聴モチベが落ちてるのですが(手芸で忙しい)、秋スタートのドラマはスタッフキャストともに期待できる作品が多くて今から楽しみです!
プライムタイムだけで大忙しの予感ですが『今夜すきやきだよ』『じゃああんたが作ってみろよ』の谷口奈津子さん原作の新ドラマもテレ東で深夜に放送されます。忘れないように自分のためにもメモ。
これからも好きなドラマの話をもっとしたい。すごいなと思うドラマだけじゃなく、今の自分にとってはこれが必要だったと思えるドラマをちゃんと捕まえて、それを言葉にしていけたらいいな〜と思います。そして自分以外の誰かの感想を読むのも楽しみにしてます!