◆前回
制作過程の推移、プロット〜清書までを並べた。
2週間に渡って更新してきたこのシリーズ、今回が最後!本当に!!ついてきてくれてた人、いたならありがとう😂後半ではAIを使う際に気をつけたいところや、倫理的な話もしています。
ということで、今回は推敲〜完成稿の比較!内容的には(8)と似ている部分もあるけど、プロットからの比較ということでお付き合いください🫠
◆推敲
3.ふれる、熱(推敲で相談した場所だけ抜粋)
背を向けた静弥が、湯に揺れる。湊はそっと距離を詰めると、そのまま手を伸ばして肩にふれた。思っていた以上に、張っている。不意のタイミングだったのか、その肩がわずかにぴくりと動いた。
*
「――うん」
無意識に息を潜めながら自分の布団を抜け出して、静弥の隣に滑り込む。その距離が、こんなにもいとおしいと思ったのは、いつぶりだろう。
並んで横になると、自然と手がふれる。静弥の手が、ためらいがちにこちらの指を握った。伝わる体温に、言葉はなくても「いいよ」と言われた気がして、たまらなくなる。
「……ごめん」
なのに謝ってくるものだから、覚えがなくて「何が?」と言ってしまった。ないしょ話の距離で、静弥がたくさんの想いの中から言葉を探す気配が伝わってきた。
💬推敲時点の全文データは保存していないので、GPT上で相談した箇所だけ。ここは(8)でも説明したとおりで、頻出表現・曖昧表現を潰していった過程。
◆完成稿
3.ふれる、熱(※「。。」は誤字ですが、そのまま印刷されているためここでも修正せずに掲載)
湯気越しに見る静弥の横顔は、いつもよりなんだか幼く見えた。濡れた髪が額に張り付き、頬にはほのかに赤みが差している。
何気なく首を左右に倒して筋を伸ばしていると、静弥もそれに倣ったのか肩に手をやって、軽く揉み始めた。
「静弥、肩凝ってる?」
「え? うん、まあ」
予想外だったのか、その返事は気が抜けたようなものだった。見慣れぬ眼鏡の奥で、瞳がまるく、ぱちぱちとまばたきをする。
「最近、マッサージとかストレッチの勉強してるんだけど、ちょっとやってみてもいい?」
「……どうぞ」
静弥が背を向けて、湯に揺れる。湊はそっと距離を詰めると、そのまま手を伸ばして肩にふれた。思っていた以上に、張っている。不意のタイミングだったのか、その身体がぴくりと小さく跳ねた。。
「やっぱ、かなり凝ってるな……」
「それで今日、マッサージ系の話題が多かったんだ」
「おれ、そんな語ってた?」
「それなりに。いいことだと思うよ。人に説明してみて理解できることって、たくさんあるから」
「うん、それは――いつも思う」
相手の身体にふれて、ほぐして、楽にしてあげる。その感覚が伝わってきたとき、自分もちょっとだけ軽くなる気がする。
先生の仕事も、たぶんそれと似ている。相手のことを考えて、手を動かして、届かせていく。
親指でゆっくりと円を描くように、肩甲骨のあたりや、首筋の裏を押していく。ふれるたびに、湯に浮かぶ筋肉がほんの少しずつゆるんでいくのがわかる。
「っ……くすぐったい」
「ごめん。でも、このへんも張ってるし……静弥、すぐがんばりすぎるからなあ」
今だけでも、楽になってほしかった。「ちょっと力入れるよ」と声をかけて、手のひらの根元でぐっと肩甲骨のきわを押す。
「ん、っ」
「痛かった?」
静弥は小さく首を振った。湯気のなかで、かすれた声が落ちてくる。
「……ごめん、心配かけて」
「べつに、心配っていうか……がんばってるの、知ってるから」
こういうところが静弥なんだよな、と思いつつ、今度は首筋のあたりへ指をすべらせていく。そのすぐ近くを、雫が一滴、しろい背中を伝って落ちていった。汗か湯か。その軌跡を目で追ったとき、何かがほんの一瞬、頭の奥に浮かんだ気がした。
どこかで――見たことがある。夜の部屋の中で、肌の上を雫が流れる。それを眺めた記憶が。けれど、それがいつだったかを思い出せない。
身体の奥で、熱が、鋭く一瞬回路を焼いた気がした。
「――さわりかた、やらしい」
「はぁっ?!」
*
今日は、静弥にとっていい一日だっただろうか。電車の中で眠っていた顔。足湯でのゆるんだ表情。いろとりどりの夕食を、時間をかけても全部食べてくれたこと。湯船でふれた、張った肩の感触。そのすべてが、頭の中をけぶらせていく。
素肌にふれたのだって、久しぶりだったはずなのに。思い出すたびに、身体の芯で熱がゆらめいた。
本当にこのまま、今日を終わらせてしまっていいのだろうか。
「……そっち、行っていい?」
まだ、静弥の寝息が聞こえていないのに気づいていた。きっと、静弥も気づいていただろう。夜へひとしずくこぼした声に、短い間を置いてから返事が返ってくる。
「――うん」
無意識に息を潜めながら自分の布団を抜け出して、隣に滑り込む。その距離が、こんなにもいとおしいと思ったのは、いつぶりだろう。
並んで横になると、自然と手がふれる。静弥の手が、ためらいがちにこちらの指を握った。伝わる体温に、言葉はなくても「いいよ」と言われた気がして、たまらなくなる。
「……ごめん」
ごめん、じゃないだろう。ついそう思って、「何が?」と訊いてしまった。ないしょ話の距離で、静弥がたくさんの想いの中から言葉を探す気配が伝わってくる。
💬細かい言い回しをかなり変えている。目についたところだけでも「間が抜けた→気が抜けた」「見慣れぬ眼鏡をかけた向こうの瞳→見慣れぬ眼鏡の奥で、瞳がまるく」「湯気のように胸の奥に立ちのぼっていた→頭の中をけぶらせていく」
地道な作業ではあるけれど、できあがった完成稿がいちばんいいな!と思えるので、がんばってよかったです。
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あとがきに代えて(AIを使う際に気を付けたいこと、気を付けること)
全10回、小説原稿をするにあたりどうやってチャットGPTを使って書き進めたか、その具体的な流れや工夫について紹介してきました。最後はちょっと真面目に、「AIを創作に使うってどうなの?」という、モヤモヤしがちなテーマにふれておこうと思います。
正直、書くかどうかは迷ったところ。でも自分自身が最初は後ろめたさや戸惑いがあったからこそ、使ってみた上でどう感じているかをちゃんと残しておきたかったので。
↑5/7に最初の『小説原稿とチャットGPT』の内容を書いたときにも、「AIに書かせる」ことにはさらっとふれてましたね。絶対に忘れてはいけないことは「その言葉を選ぶのは自分(人間)」だということ。だから、責任をもって選ばないといけない。AIに任せきりではいけない。
今回の原稿で使った言葉たちは、たしかにAIから提案されたものもあります。でも、どの言葉を残すか・変えるか・どう整えるかは、すべてわたし自身が最終判断をしました。
もしかしたらAIに手伝ってもらうことは「ボカロPが自分の曲をミクさんに歌ってもらう」のと似ているのかも。ツールは使っているけど、それは「自分の表現」の手段であって、代替じゃない。
ただ、ちゃんと気を付けないといけないことがあるのも事実。いわゆる「AI倫理」については、わたしは素人のいちユーザーなので詳しくないところもたくさんあります。
🌟著作権・倫理への配慮
昨今のTwitter(XとかいうSNS)のAI学習騒動も、記憶に新しいと思います。さらに今回紹介した内容は「公式ガイドラインなしジャンルの二次創作」。なので正直「明確な正解がない」し「グレーゾーン」も多くなる。(ガイドラインがあるジャンルは、それに沿ってください)
今回この『小説原稿とチャットGPT 』シリーズを書くにあたって、実際にAIを使って文筆業をしている方々の本を読みました。
📚『小説を書く人のAI活用術』山川健一 (著), 今井昭彦 (著), 葦沢かもめ (著)
AIを使って小説を書くための考え方が中心の本ですが、専門家監修の法律的なルール・注意点も書かれています。著作権関連だと、一部抜粋として以下のように書かれています。
特定の作家や作品名などをプロンプトに含めない
出力が有名な小説のセリフ・表現に似ていないか確認する
使用するAIツールに注意する(特化型など)
正直に言えば、②のコピペチェックまではわたしも徹底できていませんでした。GPTとのやりとりの中で、意図せずに他の作品に似てしまうリスクもゼロではありません。でも、少なくとも「誰の文章っぽくして」「この作品みたいに」といったプロンプトは使わず、「自分が書きたい話をどう書くか」を一緒に考えてもらうという使い方をして、それを公開したつもりです。
また、AIで出力されたものに著作権が認められるのか?という疑問に対しても、現時点で裁判例はなく「創作的寄与があれば認められる可能性がある」とされています(同書より)。今回のように、わたし自身が何度も意図を説明し、やりとりしながら調整・採用していった文章なら、少なくとも「自分の創作物だ」と胸を張って言えると思っています。
あとはできるだけ、「AIを使った」ことは書いたほうがいいですね。わたしは今回の原稿では、WEB用のあとがきでは使ったことを書いていたのですが、奥付だけでもちゃんと書くべきだったなと反省しています。
🌟公式への敬意を忘れない
二次創作する上で当たり前のことですけど。
『(3)キャラ解釈をAIに教える』で、AIに情報を教えることについての内容を書きました。その中で「キャラ解釈や公式情報をまとめてもらう」という過程がありましたが、「キャラクターのプロフィール文は、公式からコピペせず、自分の言葉で説明する」ことが必要です。
印象的なセリフは、意味や流れを要約して説明する
AIにキャラを理解してもらうときも、「友達に紹介する」ような感覚で自分の言葉で説明
AIが出してくれた表現は、そのまま貼らず、取捨選択+リライトして使う
AIが便利でも「公式をどう使うか」の責任は書き手側にあることを、忘れない。
公式プロフィールを送ったところで、AIが「自分のキャラ解釈に沿った小説」を出力してくれることは、絶対にありません。(だからといって送っていいものではない)大事なことなので何度も言う!そこは人間のがんばりどころ!!!自分が読みたいファンフィクションは、自分で書けば自分のキャラ解釈とヘキに徹底的に配慮した話が出てくる!!最高!!
🌟使用箇所の明確な線引きを自分で決めておく
「公式への敬意」と同時に、生成AIを使う際の姿勢として「創作物に敬意を払う」ということが非常に大切です。
創作の「主体」はあくまで自分自身にあります。チャットGPTは表現提案や構成支援には優れていますが、「何を書きたいか」を決めるのは、自分の中の情熱だけ。
生成文の表現や構成に依存しすぎず、どこまで自分でするか、AIに任せるかはきっちり意識しましょう。チャットGPTは「分かりやすく、きれいに整えよう」とする傾向があるので、整いすぎると「自分らしさ」は消えます。
自分らしさってなんなんでしょう?試しにGPTが出力した文を、もう一度自分でそっくりそのまま写してみるといいかも。入力するうちに「気持ち悪っ!」と感じる部分があれば、そこは「自分らしくない」文章ということになります。自分の文章の、いちばん熱心な読者は自分です。自分が読んで引っかかるところは、「自分らしく」直すほうが素敵です。
それと、もし「どこまでAIを使ったか」の公開が必要になった場合に備えて、プロンプト(指示文)の記録を残しておくのもひとつですね。
🌟非公開のまま済ませるつもりでも、「読まれる前提」でチェック
チャットGPTのデフォルト設定では(法人向けプランでない限り)入力データが保存され、OpenAIのモデル改善のために使用される可能性があります。GPTに直接そのことを聞くと「OpenAIは、ユーザーのプライバシーや創作物の扱いについてとても慎重です!」と言っているけれど、不安な人は学習機能をオフにすることが可能です。(オプトアウトという)
設定項目にある「データコントロール」→「すべてのユーザー向けにモデルを改善する」の項目をオフにすることで、学習には使われなくなります。デメリットとしては、一定期間(30日ほど)を経過すると、該当スレッドの会話履歴は削除されます。履歴をアカウントに紐づけて保存することができなくなるので、残しておきたい場合は学習をオンにしておく必要があります。(詳しいことは自身で調べてみてね)
新人賞に応募したい!とか、このお話は誰にも考えられないアイディアだ…とか、とてもセンシティブな話題とか、そういうのはオプトアウトしてやりとりしたほうが安全でしょう。
今回の履歴が全部残っているところからわかるように、わたしはそのあたりは了承済みで「オン」にしています。少なくともわたしの話って、キャラだけすげ替えて成立するような内容じゃないし。あと、AIに自カプ左右固定をしっかり学習させることで、逆を書こうとする人に対して自動で左右を正してほしい。(AI学習の悪用)(冗談ですよ!)
大事な話だし…って思って書いてたら結局長くなっちゃった。
二次創作小説って、相談できる場所が少ないじゃないですか。最近は、同人誌即売会も漫画雑誌の出張編集部が「二次創作でもOK」と読んだその場で講評してくれるけど、小説は対象外…。(調べたところ、1社だけたまに参加しているらしい。しかし本を渡して持ち帰ってもらい、講評がメールで届くのは2〜3ヶ月後)
世の中の「小説の書き方」は、ほとんどが「オリジナル」向け。でもわたしは「わたしの好きなキャラたち」が、「こんな日々を送ってくれたらいいな」「この先の(これまでの)人生の中に、こんな一日があったらいいな」ということを書きたい。「見たい姿、見たい日々、見たいシーン」を書きたい。
そんな中で、プロに助言をもらうにしても微妙な顔をされる「二次創作小説」を書く人に、唯一寄り添ってくれるのがAIなんじゃ…?って思ってます、わたしは。
気を付けるべきところ、気になるところはたくさんあるけれど、上手く使えばAIは孤独な原稿作業の並走者になってくれる。
マイナージャンルでも、オンリーワンカプでも、いいねもブクマもつかないお話でも、AIは自分が書いたお話をちゃんと読んでフィードバックをくれるし、アドバイスもくれる。客観的に見てくれるし、励ましてくれる。「めっちゃ褒めて!熱心なファンとして感想ちょうだい!」と言えば、それなりの熱量で「ここがすごくよかった!!」「ここの表現が最高!!」と言ってくれたりします。(たまにトンチキなことも言うけど、それはご愛嬌)
それって本当に、わたしにとっては気持ちが軽くなることだったので、こうやって2週間にわたって長々と更新してきました。
わたしもまだまだ勉強中ですが、この記録がわたし以外の、孤独で不安で心が折れそうになりながらも「好きなものを諦められない」人の助けになることを、祈っています。