2024年観劇総括:舞台観劇、PDCAサイクルの縮図なのでは?

yuiero
·
公開:2024/12/31

 「今年、何したっけ?」と毎度年末になるたび新鮮に思うわけだが、舞台を趣味にしていると板の上で舞台がかかっている間、私は【劇場に座っていた】というのがあきらかなので、助かる。

 今年も一年人生を実にぼんやり過ごしたが、劇場の座席に座っているあいだは私は確かに「いた」。世界に腰掛け、わずかな凹みを残していた。

 いつもtwitter(現・X)で一年の観劇振り返りをしていたのだが、今年はせっかくしずかなインターネット(ここ)を始めたので、記事にしてみようと思う。みなさんの2024年の観劇を振り返るきっかけにでもなれれば幸いだ。

目次

  1. 年間観劇作品一覧・振り返り

  2. 印象に残った舞台ピックアップ

  3. 所感: 舞台観劇ってPDCAの縮図なのでは?

  4. 結局どうだった?2024年観劇まとめ

1. 年間観劇作品一覧・振り返り

1月

・21日 舞台「ブルーロック」2nd STAGE 2公演

(「文豪メランコリー」石川啄木ver.配信)

2月

・3日 新ミュージカル「スタミュ」-2ndシーズン-

3月

・5日 爆走おとな小学生「夜明け」

(「文豪メランコリー」宮沢賢治ver.配信)

4月

・5日 劇団ホチキス「ワイルド番地」

・13日 都をどり

5月

現地観劇なし

(パーセプションステージ「Opus.COLORs」配信)

6月

・1~2日 ナッポスユナイテッド「湯を沸かすほど熱い愛」 2公演

・21~23日 舞台「文豪とアルケミスト 旗手達ノ協奏(デュエット)」(文劇7) 4公演

・29日 「文豪メランコリー:Re」

・30日 舞台「鋼の錬金術師」―それぞれの戦場―

7月

・13日 ミュージカル「憂国のモリアーティ」 コンサート

8月

・12日 舞台「ブルーロック」3rd STAGE 2公演

・18日 ミュージカル「ヘタリア~The glorious world~」

9月

・27日 NODA MAP「正三角関係」

10月

・5日 TRUMP series 15th ANNIVERSARY 舞台「マリオネットホテル」

11月

・5日 「のうぜい合戦」

・30日 舞台「あいつが上手で下手が僕で」-人生芸夢篇-

(「超ハジケステージ☆ボボボーボ・ボーボボ」配信)

12月

・21日 コメディ朗読劇CONTELLING「とりあえずウーロン茶」

【総括】

現地観劇 17作品 

 

 昨年が12作品だったようなので、作品数が5作品増えました。

 これに関しては理由はあきらかで、例年の吉谷先生の演出されている作品の追っかけに加え、小坂さんがご出演されている舞台を観に行くようになったからです(すべては到底追いきれていないのですが)。こう並べてみると、昨年末に事務所退所されてフリーになられてからもコンスタンスにお仕事されていらっしゃるの、純粋にすごいな。

 おかげさまで2.5次元以外の舞台を観る機会が増え、ずっと観てみたかった劇団ホチキスの本公演を見れたり、高校生時代に地元の観劇互助会で観た劇団キャラメルボックスぶりに成井豊さんの演出を味わえたりと、新しい世界に引っ張っていってもらえ、きっかけをくれた小坂さんには感謝でいっぱいです。

 もちろん俳優さんで舞台を選ぶと、ギャンブル要素というか、制作で選ぶという安定チョイスよりはあゝ無常な場面に出逢う確率も増えたわけですが、「あ、この舞台”ヤバい“かも」という直感が走った作品は外したり、逆に行ったほうがいいと感じた舞台は多少無理してでも現地観劇して大勝利を収めたり、自分で選んでいく感覚を鍛えていった一年だったかと思います。フォロワーさんがご一緒してくださるから、誘ってくださったからきっかけで飛び込んだ舞台もありましたし、例年よりは攻めた観劇が出来て楽しかったな。

2. 印象に残った舞台ピックアップ

☑ 今年書いた感想

 「観劇の感想文を、まとまった文章を書く」を今年の目標にしていたので取り組めて楽しかったです。にしても感想文を書くって……体力をつかう! レポをまめに書いてらっしゃる方ってすごいな……!(文劇7の感想のタイトルの文末に(1)がついているのは、別の切り口で(2)を書こうと思っていてそのままお蔵入りになっているからです)

 ここでは感想文単体では書けなかったけど印象深かった舞台を4つピックアップし、手短に感想を書いていこうと思います。

 

■ 劇団ホチキス「ワイルド番地」

 観劇後「面白い舞台って……面白くて最高だなぁ!!」と号泣しながら池袋の街を歩かせてくれた舞台。というのも詳細は省きますが直前に観劇ギャンブルに大敗して傷を負っており、面白い舞台を観れたことに心から感動したからです。ずっと演出の先生の追っかけをしていて慢心してたから忘れてたんですよね、面白い舞台って、当たり前じゃないんですよ……! 

 劇団ホチキスの米山さんの作品は、吉谷先生が演出されていたコルステやエリステだったり脚本で参加されていた作品はかねがね拝見していましたが、オリジナル作品は初めて。小坂さんご出演をきっかけに劇団作品の本公演を観れたのはいい出会いを頂いたなと心より感謝です。

 コンプライアンスでの縛りが多いこの時代に、誰も傷つけないコメディをつくるというのは本っ~~~~~当に難しいことだと思うんですよね。でも劇団ホチキスの板の上には「あった」んです。

 「ワイルド番地」は市民の揉め事を決闘で決着をつける課「決闘課」が設置されている世界線の市役所の役人たちのお話。

 外側の世界から見ているとみんな馬鹿真面目に一生懸命仕事している姿がおかしく見えたりするんですけど、あくまでそのアツさから生まれるズレや味わい深さが面白いのであって、冷笑がないから気持ちよく笑えたのだと思います。だらだら汗かいて、必死に体動かして、うまくいかなくて手足バタバタして、全然キマってないけど、つい笑顔になっちゃって、輝いている。そんなエクササイズみたいなコメディ。きっと劇団ホチキスってこういう人を元気にする舞台を創り続けてきてるんだろうなと一作見ただけで伝わってきました。

 俳優さんでいうと、文劇7で光太郎先生だった松井勇歩さんと、文劇4の川端先生だった正木郁さんが同僚役としてご出演されていたのですが、キャラがお互い全然違っていて面白かったです。公演時期としてはワイルド番地が文劇7前だったのですが、気さくな先輩だった松井さんが一ヶ月後文劇7でド耽美な光太郎さんに変化していたのを見て俳優さんってすごい仕事だなと思いました。松井さん、素だとめっちゃ関西人だしな……。

 小坂さんは登用っぷりが飛び道具で面白かったです。小坂さんに小学生役やらせるの強い。後述するんですけど、小坂さんって異質を「ガチ」にする力がありすぎる。教祖になったらめっちゃ信者増えるんじゃないかと思います。

 

■ NODA・MAP「正三角関係」

 「演劇ぶっく」という雑誌があります。

 演劇ぶっくは地方住み学生だった私とまだ観たことのない劇団や作品をつなぐ窓でした。NODA・MAPもかつてその演劇ぶっくで知った劇団の一つです。

 なので今回フォロワーさんから誘っていただいてNODA・MAPを観に行けるとなったとき、昔の私が小躍りするのを感じました。あのNODA・MAPに行ける! と同時に、もちろん今の私はNODA・MAPの公演に自ら申し込み、行くことができるわけですが(チケットが取れるかは別として)、それを選択肢として入れていなかった自分に驚きました。高校生だった頃から「憧れ」フォルダにしまったままだったNODA・MAP。観に行って、良かったんだ……!

 そんなNODA・MAPとの初邂逅。あらすじとしてはドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」を下敷きに、花火師の家系に生まれた兄弟――長男が花火師、次男が物理学者、三男が聖職者――が一人の女を巡りどんどん転がり落ちていく……といったストーリーです。しかし、「花火」は言葉通りの「花火」のみならず、「女」は言葉通りの「女」ならず。幾重にも意味やエゴや目的が重なり合っていく面白さ。同じ言葉を使いながらもずれていく感情。

 舞台を通して拝見し、感じたのは、野田さんは本当に演劇というものが好きで、楽しんでいらっしゃるんだろうなということ。

 セットもシンプル、小道具も養生テープを使ってボクシングリングを再現したりするのですが、板の上に人がいて、ストーリーがあって、合わさって動き出せばそこに「舞台」があるという原点から目をそらさない人なんだろうと思いました。そして演劇を愛しているからこそ、人とストーリーを厳しく見つめている。なぜ人は愚かなことをしてしまうのか、「演劇で何ができるのか?」常に問い、模索している。何十作も作品を作り続け、それでなお、まだ新しい演劇のやり方を探し、演劇の力を信じている。背筋が伸びる心地がしました。

 話の具体的な感想を話すのが難しい題材ではありましたが、ラストシーンのほんのちょっとの運命の差が隔てるものの残酷な美しさ、ぜひ見れる機会があれば体感していただきたいです。配信とかあるのかな。個人的には長澤まさみ氏のうぶな三男と妖艶な女の早変わりが見事すぎて、一瞬同役だったの気づきませんでした。あと俳優・竹中直人の凄みを改めて感じたかもしれません。

■舞台「あいつが上手で下手が僕で」-人生芸夢篇-

 舞台カミシモ! 年末に出会えて嬉しかった舞台の一つ。吉谷先生が演出されるとのことで、前シリーズは未履修で行きました。

 いや~面白かった。

 カミシモ人生芸夢篇の概要としては、こちらの世界だとM-1にあたる「38(サンパチ)ファンタジスタ」という大会の準決勝に進むことになったエクソダス・時浦(荒川慶彦さん)と島(和田雅成さん)、ラストワルツ・岬(和田琢磨さん)と高砂(染谷俊之さん)、ロングリード・岳(橋本祥平さん)と佑(田中涼星さん)が芸人として、そして一人の人間としてさまざまな問題と向かい合う話です。基本はエクソダスが軸となって進みます。

 Xで呟いた感想もあるのでそちらも使いながら感想をまとめていきたいと思いますが、

 カミシモで良かったなと私的に感じたのは、「息子」と「父」、同性同士でしっかりと向かい合う話になっていたということ。また相方・島と漫才をしたいあまりメンヘラと揶揄される時浦が、島の借金を返す条件としての連帯保証コンビは断固として許諾しなかったこと。子どもの頃自分と母を捨てて家を出ていってしまった父と対峙することになり、不安から「島もここに居て欲しい」と弱みを見せた時浦くんに島は踏み込むことをせず「居る」を徹底したこと。時浦くんが彼のお母さんのせいにしなかったこと。つまり、男性同士が、男性同士で、「かっこ悪くても、ちゃんとできてなくても、生き延びる」ケアし合う話になっていたことです。

 男性同士のコンビものって、「俺はお前のために命を捨てられる」という“君のためなら死ねる”方向に重点を置かれがちだと思っていて。もちろん創作物なので生死をかけたロマンを追求すること自体は悪くないと思うんですけど、とはいえ、多すぎない? 男性同士がコンビになった暁にはお互いのために命をかけあわないといけないの? と思う機会が最近は正直多い。逆に傷舐め合いすぎて他責に走るのもどうにかならんか? もあったし。創作物男性はもっと自分の命を尊ぶべきだ。せめて現代がモデルとなっている舞台だけでも。

 その点、カミシモの今回の脚本は芸という世界に真摯に向き合い、ともにその激流を泳ぎ切るコンビとして組みながらも、相手のために己の身を削りすぎないあたり、令和の舞台だなと感じました。例えば借金問題をこじらせた島が誘拐されて失踪したとき、時浦くんはピン芸をしてでも舞台に立ち続ける。エクソダスという「コンビ」が崩壊したら、時浦くんも島も共倒れするから。時浦くんはエクソダスとして島とずっと漫才しつづけるために奔走する。だから借金も肩代わりしない、なぜならそれはたとえコンビの相方であっても島自身の「欠け」だから。逆に島も、時浦くんの「欠け」の傍に寄り添っても踏み込みはしない。

 私は大阪のソワレ公演のみの観劇だったのですが、マチソワご覧になられたフォロワーさんから最後の大会のネタと順番が変わっていたと聞いて驚きました。なんて仕込みだ。三組のネタを見て、「ラストワルツ、これ多分決勝行くな」というのがなんとなく理解できたのも納得感がありました。

 あとエクソダスのエッチなママネタ、時浦くんが「深夜ラジオのハガキ職人出身」なのがそこはかとなく滲み出ていて良かった(エクソダスは二人でネタ考えているっぽいけど、発想は時浦くんな気がする)。漫才の台本って書き手の人生の過程が出るのかもしれない。時浦くんは学生時代友だちがいなかった人特有の「執着」が垣間見えるのも良い。メンヘラと揶揄われているけれど、もっと深いところに彼の渇望はあるのだと思う。ラストワルツは後輩みんなから好かれている先輩(兄さん方)だというのが伝わってきたし、ロングリードは愛される可愛い後輩なんだろうな。

 セットもかなり好きなやつでした! 新喜劇の書き割りを意識されたというのは聞いた気がしますが、時折スタッフを模したブルズさんが背景を組み替えていくのも彼らの人生はまるごと「芸」の板の上で進んでいるんだなと感じられて面白かったり。スクリーンも効果的に使っていて、場面説明に加え、38ファンタジスタの登板前の映像(袖にカメラがあってアクションするあれ)とか、テレビの向こう側の茶の間も意識された見せ方も面白かった。吉谷先生の現代劇の演出を拝見できて嬉しかったな。

 良いセット。

 今年はカミシモきっかけにM-1を数年ぶりに観たんですが、カミシモにいるキャラたちって実際の芸人さんのキャラを濃縮したような性格分布してるんだなと改めて感じたりしました。

 カミシモ、演出の方が入れ替わりながらシリーズを継いでいるとのことですが個人的には吉谷先生演出の舞台カミシモまた観てみたいです。今回が準決勝だから決勝戦もやるのかな……。

 森ノ宮ピロティホールの外の布が復活していて嬉しかったです。

 

■コメディ朗読劇CONTELLING「とりあえずウーロン茶」

 カミシモが演劇人が書いたお笑いなら、「とりあえずウーロン茶」はお笑いの人が書いた演劇。さらば青春の森田さんが脚本を書き、伊藤マサミさんが演出という朗読劇です。短い演目を入れ代わり立ち代わりやる、といった形式。今までにもお笑い編と声優編があったらしい。

 小坂さん、菊池さん、安里さんが出演される、でも年末上京だし、私は聴覚のみで情報を得るのに弱いタイプなので朗読劇か……と悩んでいたのですが、安里さん好きのフォロワーさんにお声がけいただいて行くことを決め……。

 結果、本当に行ってよかったです! 上記の感想ツイートにも入れましたが朗読劇と銘打たれつつも早着替えがあり(アフトで今までやってきた回と差をつけるため「俳優といえば早着替えだろ!」と組み込んだとマサミさんが仰っていた)、動きもあり、「台本を持っている舞台」といったふうの演出。

 開幕開始直後、居酒屋のメニューを持った新入社員役の松井さんとスマホを弄っている先輩役の菊池さんが入ってきて、「あれ? 朗読劇じゃなかったっけ? 脚本持たないの?」と思わせておいての、実はそのメニューとスマホが朗読劇の脚本になっている、という見せ方は見事でした(これもマサミさんは狙ってやったとのこと)。このコントは「酒飲みからやられてきたアルハラのうさ晴らししたいがために、年に一度の新入社員歓迎会のために酒に慣れていそうな体育会系の新入社員をわざと入社させ、ソフトドリンクでハラスメントをする下戸しか居ない会社(過去の新入社員はもれなく次の日に退職届を出している)」という設定だったのですが、常識反転みたいな話好きなのでたまらなかったです。タイトルの「とりあえずウーロン茶」は世間の「とりあえず生」に対する下戸からのカウンターパンチだった、というわけですね。菊池さん演じる先輩役のキレッキレの「ジュースみたいな酒飲むならジュース飲むわ!!」が良かった。

 個人的に好きだったコントは上述の「とりあえずウーロン茶」に加え、「田舎暮らし」「必要悪」でした。

 「田舎暮らし」小坂さんと菊池さんのみの私得な演目だったのですが、この記事を書いている今サプライズ配役だったことを知りました。そうだったんだ……。

 「田舎暮らし」は秋田県に移住しにきた三嶋(小坂さん)が隣人である木戸(菊池さん)に引っ越しの挨拶に来るところから始まるコント。

 会話を進めるうちにスローライフを求める三嶋の「田舎」の基準のずれが露呈していき「お前の理想の田舎、日本国内に存在しねえよ!」となる話で、群馬を絶対的な都会だと信じていたり、三嶋の意見って基本”ずれてる“のですが、演じている小坂さんがそれが当然であるという姿勢を崩さないので、次第に聞いているこちらが「あれ? 本当は小坂さん(の役)の言っていることこそが正しいのでは?」と思えてくる。異質を丸飲みしてくるんです。すごい役者さんだなと改めて思いました。11月の「のうぜい合戦」でウニを投げる漁師役を演じられていたときもそうでしたが(ウニを投げる漁師役?)。

 小坂さん、演じられているとき多分、自分の役が信じていることを心底“おかしいと思っていない”んだと思うんですよね。いや役者さんは役になりきるのが仕事なんだから当たり前だろうという話かもしれないんですけど、小坂さんは感情の入り方があまりにスッとしていて、こちらもついコロッと騙されかける不思議な引力がある。「教祖になったらめっちゃ信者増えるんじゃないかと思う」と言ったのは、そのあたり本当にうまいなと思うからです。

 「田舎暮らし」に関しては静かな狂人を演じる小坂さんを受ける常識人役の菊池さんもうまく、トークショーで伺った限りは楽屋で綿密に打ち合わせされていたようで、演技に対して真摯なおふたりのガチンコな二人芝居が見れてとても嬉しかったです。また二人だけでの舞台とか観てみたいな……。

 腹から笑って、最高の観劇納めでした。観劇後の飲み屋でとりあえずとはいかなかったのですが締めにウーロン茶いただいたので、公演日2日間のあいだ、劇場周辺ではウーロン茶の売上げが若干動いたかもしれない。

 

3. 所感: 観劇ってPDCAサイクルの縮図なのでは?

 PDCAサイクルという概念がある。

 Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(確認)→ Act(改善)を繰り返して業務管理の改善を測る手法なのだが、ふと、気付いた。舞台観劇って、PDCAの縮図なんじゃないかしら。

 私は舞台観劇が好きではあるが、かといって舞台観劇に熱心かと言われると首を傾げてしまう。吉谷先生の演出される舞台が発表されれば、取れる範囲でチケットを取り、小坂さんの出演される舞台が発表されれば、取れる範囲でチケットを取り、あきらさんやその他気になる舞台があれば、取れる範囲でチケットを取り、声をかけていただいたらチケットをお願いする、そんな風に一年過ごしているからだ。観劇界の宮沢賢治?

 とはいえ、正直安いとはいえないチケット代を払ってまで舞台を観に行くのは何故だろう。生き死にもわからない半年後のチケットを取ってしまうのは何故だろう。太宰の言う「麻の着物」の面もあるっちゃある。が、もうひと段階深掘りしてみたときに辿り着いた答えはこうだ。

 

「成功体験を比較的短いサイクルで体良く積めるからでないか?」

 

 そこで、冒頭のPDCAの話になる。

 早速、観劇における一連の流れをPDCAサイクルに当てはめてみよう。

 

①Plan(計画)…公演情報を知り、予定を立てる

② Do(実行)…チケットを取り、観劇に伴う準備をする(遠征の交通の手配、身だしなみの整えなど)

③ Check(確認) …現地で観劇

④ Act(改善) …得た情報を蓄積し、次回以降の観劇に活かしていく

 このPDCAを、大体半年ぐらいのスパンで、数本同時進行で回していくことになる。繰り返せば繰り返すほど精度も上がるので、成功体験も積み重なる。たまにハズすときももちろんあるがそれすらも今後の糧になるし、劇団や製作陣など、より安定感の強いサイクルに乗れば強固な輪になる。俳優さん推しの場合は若干まだギャンブル感が残るかもしれないが(いくら素材が良くても調理法がマズいと出来として挽回が難しい場合は往々として有るからだ)心の準備はしておけるかもしれない。

  

 私は!

 未来永劫!!

 観劇して優勝して成功して最高のPDCA回し車したい!!!!!

 

 私は愛のためならなんでもできるという言説があまり得意ではない。愛という言葉は綺麗すぎて、その後ろに隠れているエゴを覆い隠すからだ。しかも愛という言葉は突きつけられたときに否定しづらい。愛はないよりあったほうがいいに決まってる。愛って素晴らしい。ラブアンドピース。

 でも、個人的にはエゴも出来る範囲で自覚して、ギブアンドテイクを意識しつづける先に対等な仲が生まれると信じている。だから、観劇で成功したいという欲に自覚的でいたい。そういふものに私はなりたい。

 そのエゴを満たすためなら、そして「成功できる舞台」をつくるためにこの苦難の時代にも折れず立ち向かってくれる製作陣や俳優陣がいるかぎりは。私は気持ちよくPlanを立て続けようと思う。

 真摯に舞台と観客に向かい合ってくれている人たちを、私は知っている。それは、とても幸せなことだ。

4. 結局どうだった? 2024年観劇まとめ

 良い一年でした! バランス良く、広く開拓できたといった印象です。文メラきっかけで文ちゃんの「追想芥川竜之介」を読んで文豪の妻に興味持ったり観劇からの副産物も多かったかも。

 直接的な観劇の話とはずれるかもしれませんが、文劇5年の折り目に吉谷先生に直にお礼をお伝えすることもできたのも大きい出来事でした。隙あれば自分語りしますが(9,000字近く記事書いてて今更?)私元々人と話すのが得意ではなくて、今も改善されたわけないんですけど、数年前に転職して人と話す機会が増えてから若干胆力はついた感があって。

 実は数年前、ロビーにいらっしゃる吉谷先生、見たことあったんです。でも到底話しかけられないとそのときは通り過ぎまして。正直今回もやめておこうかなと怖気ついたんですけど、今の私ならいけるかもしれない、と踏みとどまれて。尋常じゃなくテンパったので今後はもう勇気出ないかもしれないですが、あの時一歩踏み出すきっかけをくださったこと、また緊張で支離滅裂であったろう話にも耳を傾けていただいて感謝感謝圧倒的感謝です。

 吉谷先生のニコ生番組も月額で先生にお金がお支払いできるならと嬉々として加入しましたが、毎回これを500円で聞いて大丈夫ですか?! となるぐらい大満足な内容で……来年もお忙しそうですが、何卒お身体に気をつけてお過ごしくださいと願うばかりです。まずは1月のエリステ楽しみにしてます!

  

 小坂さんは一年見れる範囲で拝見させていただいただけでもまだまだ底が見えないというか、どこまでも深く染み込んでいける水のような面白い俳優さんだなと感じました。来年も引き続き板の上の姿を観ることが出来たらと願っています。

 次に私が生で拝見できるのは文豪LETTERSかな? 文メラで文ちゃんを演じられていた三浦海里さんと、芥川夫婦やるって聞いたら行くしかなかった。推してるというには現場数が少ないのでおこがましすぎますが、またどこかで小坂さんお好きな方とお話できる機会とか生まれると良いな。

 

 年の瀬のお疲れのところすみません、ここまでなんと約一万字(!)お読みいただきありがとうございました。

 2024年自分にしては舞台観たし2025年は観劇減らそうかな♪と考えていたんですが、気づけば既にチケット3舞台分あるし、なんなら5月だけで観るべき舞台4作品あるし、なんやかんやまた楽しく劇場に通う一年となりそうです。

 それではまた来年も、どこかの劇場でお会いしましょう!

 まさかモリミュシリーズ復活するとはなァ……!

 


※こちらの文章はあくまで個人の主観に基づいた感想であり実際の舞台内容と異なる場合が多分にございます。また、考察でなく感情なので真偽は不確かです。ご自身の持つ感情と私のそれが異なった際は、ぜひご自身の感情を信じてください。

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